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異世界転移したら尖った耳が生えたので、ちびっこライフを頑張ります。  作者: 前野羊子
第一章 ~始まりの章~

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48【南の島でクラーケン焼きパーティ】

粉もん大好き関西人の前野です~

 次の朝、いつもと同じ早朝にアラームが鳴って俺は目を覚ました。


 うーん!このまま、海底宮殿の素敵な庭園を散歩したいけど、色々確認するべきことがあるよね。


 俺は客間の壁の一部にアナザーワールドの扉をくっつけて、中に入る。

 ゴダが起きたら気付いてくれるだろう。


 まずは、〈風の女神のミッドソード〉だな。昨日海中で使ったから、塩水にさらされたまんまだ。そしてそのまま鞘に入れたからな。普通の剣だったらすぐに洗わなくちゃやばいんだけど。


 女神の剣を取り出す。あれ?海水が着いた後のあのベタベタ感がない。サラサラしている。

 そーっと鞘を抜く、刀身は、大丈夫そう。相変わらずキラキラシューシューしております。

 鞘の中をクンクンする。うん、磯臭くない。

 何とも無い事にほっとしながらも、魔法で出したぬるま湯で全部を洗い、水気をしっかり拭ったら、日本刀のお手入れセットに入っていた油をすこし塗って柔らかい布で拭く。まあ俺の古Tシャツの切れ端だ。

「あ、しまった」

 手がずれて指の上を刃が滑っていった。

「ん?あれ?」

 何とも無い。

 今度はわざと自分の手のひらを女神の剣でちょっと切ってみる。

 あれ?切れない?

 昨日の荒事で切れ味なくなった?

 俺はコピー用紙を出して切ってみる。


 スパッ


「所有者を傷付けることはないってこと?」

 答えるように剣が点滅する。

「へえ、すごいね」

 まあ、今日はお手入れだけ。

 ぬるま湯で洗った鞘の中も、風魔法で完ぺきに乾かして、剣を納めてポーチに戻す。



 次は海竜のモササにもらった袋だな。これ、例えるのはあれだけど、ホームセンターの大きなレジ袋ぐらいあって、何やらずっしりしている。

 巾着の袋を開けて上から覗く。そして覗いただけですぐに閉じる。


「やばい!真珠とか珊瑚とかピカピカの鱗、たぶん海竜(モササ)の?とか色々入ってる」

 オーマイガー!

 これを先に確認すればよかった!マーケットでお土産買わなくても良かったんじゃん!

 ま、まあ貰い物をすぐ他人にあげるのもまずいか。

 よく考えて有効に使わせてもらおう。


 次は、ステータスだな。

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 田中駿介 人間族 六歳(シュバイツ フォン ロードランダ 種族エルフ 十八歳)

 仮免許〈ランクA・一年六ケ月後確定〉 ウリアゴパーティ

 レベル  一〇五(+八〇)

 生命力 一一三〇(+三〇〇〇)

 体力 一〇九三六

 魔力 三八〇〇〇(+六三〇〇〇)

 魔法基本属性 全属性

 魔法特殊属性 全属性

 スキル魔法 空間・錬金・鑑定・精霊

 その他スキル 算術・剣術・弓術・投擲・料理・裁縫・癒し・音楽・治癒・素描ドローイング


 称号:白鯨の盟友


 風の女神の加護

 水の女神の加護

 海と宇宙の神の加護


 〈後見人 ドミニク フォン マルガン〉

 ーーーーーーーーーーーーーーー


 なんか色々数字が増えている!桁で増えるものなの?

 それに括弧ランクAってなに?八歳になったら自動的にAになるってこと?

 ウリアゴの皆んなを差し置いて?

 えー

 暴れすぎた?でもしょうがないよね。


 体力は数字では結構ある割にはすぐに眠くなるのですけど?


 ムーさんの盟友、これは素直に嬉しい!ここだけはめちゃ嬉しい!

 だけど、加護が増えてる!どういう事?ウォーデン様には会ってないじゃん!

 ま、まあ初めからある加護の〈風の神様〉にも会ったことないけど。


 我ながら恐ろしくも凄すぎるステータスを見た俺は、ふらふらしながらアナザーワールドを出た。


「ん-おはようシュンスケ。もう起きたんだ。昨日は大変だったのに。若いっていいね。すぐに体力が回復するんだね」

「ゴダ君も若いですけど?俺は若いというより幼いって感じだな」

「ははは、幼い子が自分を幼いって言うの初めて聞いた」

「そう?」

「普通は自分を小さいとか、ちっちゃいとか言うんだよ」

「しまった!」

 ゴダってたまに鋭いんだよ。

「ははは」

「と、とにかくご飯行こうか」

「ちょっと待って!顔洗うから」

「うん」

 宮殿の客間は備え付けの水回りがちゃんとしてある。トイレにシャワーにバスタブ。大きなガラスの鏡の付いた洗面。そして、ミニキッチン。まあ高めのホテルのツインルームって感じだな。ただ色々な部分にキラキラな装飾が施されております。


「ゴダ、ここ跳ねてる」

「え?どれ?」

 ゴダは赤みがかった茶色い髪をすこし伸ばして丸坊主じゃなくなっている。だから寝癖がつく。

 そのまだ短い髪を櫛で整えてやる。俺が背伸びしてね!ワックスも貸してやろう。

「よし。

 俺は大丈夫?」

「うん、シュンスケはいつもきっちりできて凄いよね」


「そういえば、ゴダは何で最近髪を伸ばしているの?」

「シュンスケが来てから、それにお屋敷に住むようになってから、毎日お湯で頭を洗えるようになったじゃん?」

「うん」お屋敷の水回りは高級魔道具なので、誰が使ってもお湯が出るし、風呂は24時間風呂だしね。

「だから、坊主にしとかなくても痒くなくなって」

「なるほど!納得!確かに今の方が男前だな」

「えーシュンスケに褒められても嬉しくない」

「なんでだよ。だってゴダってまだ背も伸びてるじゃんいいよな。

 あ、おはようございますぺスカさんマールさん」

 ゴダと話しながら、昨日晩餐してもらったところに朝ごはんをもらいに行く途中、漁師二人と合流する。

「おう、おはよう」

「きのうはお疲れさん」


 朝ごはん会場に行くと今日もヴィーチャがドレス姿で座ってた。うん?今日は人間族の姿だ!そしてヴィーチャの側には何人かの女性の人魚さんも(その人たちは人魚の姿だけど)ドレス姿で座っていた。ヴィーチャのたくさんいるお姉ちゃんたちの一部の方だって。一度に名前を紹介されても覚えられないよ。


「おはようシュンスケ」

「おはようございます。今日のヴィーチャは二本足だ」

 食事を始めながら、話が続く。今日の朝ごはんはココナッツのパンと、爽やかなスープとハムが添えられたサラダだ。

「ええ、ちょっとシュンスケにまたお願いがあるの」

「うん?」

「ここの教会でも歌わない?」

「なるほど、いいよ」

「やった!シュンスケのチェンバロをこの島のみんなにも聞いてほしかったのよ」

「わかった、でもヴィーチャの格好に俺も合わせたいな」

「そんなのは気にしなくていいわ」

「大丈夫、持ってるよ」

「では、あとで、お部屋に迎えに行くわ」

「うん」


 ご飯を食べて、着替えに一度部屋に戻るとき、ぺスカとマールにまた声を掛けられた。

「シュンスケ、また楽器を弾くのか?」

「そうみたい」

「俺たちも、お前の演奏とか歌が好きだからな」

「うん。たのしみだ」

「ほんと?ありがとう。頑張るね!じゃあまたあとで」


 演奏が決まったときにすぐ、今朝海に浮かんでいたムーさんに念話で話しかけてた。

 “ムーさん、海竜のモササに近くに来てもらえる?また歌うんだ一時間後ぐらい”

 “分かった呼んで来よう”

 “宝物いっぱいのきんちゃく袋のお礼に歌だけっていうのもあれだけどね”

 “そんなことはない、私もシュンスケの歌を聴きたいぞ”

 “わかった、頑張る!”


 部屋に戻った俺は、洗面に行って、口の周りをチェック。

 やっぱりココナッツの粉が付いてた!恥ずかしい!


 すこし考え事をしながら顔を洗ってもう一度髪を整える。


 ウエストポーチから助祭の服を出す。今日のストラは何色にしよう。俺の手持ちのも最近は色が一通りそろっているのだ。よし青色にしよう。海の色だしな。


 コンコン 

 着替えたところで、ノックがする

「シュンスケ準備できた?」

「うん。ヴィーチャ、そうだ、あの俺」

「なあに?」

「俺、実は今のヴィーチャみたいに、人間族の姿を借りているんだ」

「まあ」

「ほら、帝都って人間族至上主義じゃない?」

「そうね。私は町中に行けないから、何かあったわけじゃないけど」

「ここは色々な人魚族の人が居るところだし、どうかな。俺、ちょっとたまには本当の姿を見せてもいいかな」

 なんか急に、この島でありのままの種族で暮らしている人たちをみて、すこし、俺も自分自身に向き合いたくなった。この島ではむしろ人間族の方が少ないのだ。ごまかしていても意味がないというか・・・。

「ええ、ねえ、今少し見せてもらってもいいかしら」

「うん」

 首にかけている黒石の付いたひもを外して、左耳のピアスに触る

「キャンセル」


 ウリアゴとドミニク卿、エルフの教授以外の前で初めて明かすエルフ姿。


「まあ、なんて美しい」

 ん?美しいのは人魚姫では?

「どう」

「ぜひ大聖堂でその姿で演奏してほしいわ。今でもシュンスケがうっすらと光り輝いていて神々しく感じるの。きっと教会で歌ってもらったら、この島中が幸せになるわ」

「そうかな?いいね。じゃあ、演奏する寸前にしようかな。チェンジ」

 また黒目黒髪に戻る。


「では、ヴィーチャ姫、行きましょう」

 手を出すと手入れされた綺麗な手を乗せてくれる。

「ええ」


 ここの大聖堂は海底宮殿の一角にあって、ポリゴンと帝都の教会と同じウォーデン神をメインに祀っている。だから、最初に歌う曲はいつもと同じ。もう俺は結構な数を歌っている気がする。


 教会に入り、ここの司祭様に挨拶をする。司祭様もポセイドン族で、なんと先々代のご当主。ヴィーチャの曽祖父(ひいおじい)さん御歳四五〇歳だった!


 ヴィーチャを歌い手の定位置にエスコートした俺は

 チェンバロに座る。


 客席の真ん中にはタイナロン様も座っていらっしゃる。


 “シュンスケ、モササが宮殿の外門に入ってきた”

 白鯨のメッセージが響く

 “オッケーですありがとう”


「ヴィーチャ、そこにモササが」

 そう言って教会の開け放たれた扉を指さす。

「まあ」

 ヴィーチャが嬉しそうに門の外のモササに手を振る。

 モササも優雅にひげを震わせていた。


 しばらくして会場が静かになった。

 俺はおもむろにエルフの姿に変化する。


 悔しいけど、こっちの方がやっぱり自然に魔法が使えるんだよな。


「「「「ほう。なんと」」」」


 大丈夫かな?

 ヴィーチャに目で問うと頷きが返ってきた。


 よし。海の香りのする空気を肺いっぱいに吸い込む。

 俺は鍵盤に指を乗せ音楽を奏で始めた。最近はヴィーチャとも一緒に歌う。

 歌った方が楽しいもん。


 エルフ姿で演奏した俺は、発動を意識していないのに、会場中にホロラメの魔法が舞い出した。それは教会の外のモササの方でも同じ現象が起きているみたい。

 黄色ちゃんの実況中継が入る。


 ~大いなる(そら)と~海の父よ~


 それでも俺は歌うことに夢中になって、ヴィーチャとハモるのが楽しくて、演奏しながら歌う。お願いしなくても、黄色ちゃんは会場の音響を整えてくれて、さらにモササの方にも聞こえるようにしてくれる。俺たちの歌声はアジャー島へ響き、そして他の三島へは何となく聞こえるように届いているらしい。


 ~豊かな恵みを~も~たらす波よ~

 ~今日も~明日も~輝きながら~~~


 暖かい南国の暖かい人たち。これからも健やかに、心豊かに過ごせますように。正月のポリゴンでの歌を思い出しながら。


 その後も何曲かヴィーチャと選んでおいた曲を歌い、最後は皆で歌ういつものパターンにつなげていく。


 そして会場中が盛り上がりクライマックスを迎えた。


 「「「ワー!すごーい!きれい!」」」

 「「 感動した!」」

 「「「「しゅんすけくーん」」」」

 「「「「「ヴィーチャ姫ー」」」」」


 黄色ちゃんにお願いして増幅していた歌声なんかに負けないような喝采をもらう。


 俺はヴィーチャに駆け寄って、ハグを交わし、手を取り合って、お客様にお辞儀をする。


 魔法もいいけど、音楽もいいよね。みんなが笑顔になってくれるなんて。こんないいことはないよ。


「シュンスケ。私は幸せだわ」

「うん、俺も楽しいよ」


「「みんなありがとう」」


 繋いでいた手を離した俺たちはそれぞれ両手を振りまくってお客さんの拍手に答える。


「また、一緒に歌いたいわ」

「うん。いつでも誘って」


「ええ!」


 大聖堂の袖に引き上げたとたん、黒目黒髪に戻し、俺はアナザーワールドに入って速攻でアロハシャツと今度は海パンに着替えて出た。


 明日で帰るし、俺はもう少し島国を楽しみたい!


 観客の頭上を飛び越し、教会を出た俺は、モササの首に飛びついた。

「モササ、聴いてくれてありがとう」

「シュンスケ呼んでくれてありがとう!嬉しかったわ。まさかムー様にお使いを頼むなんて」

「えへへ。ムー様優しいから甘えちゃった」


「あの、シュンスケ様」

 モササと戯れているところを声をかけられて振り向くと、白いスーツの人と、何人かの人が集まっていた。


「私たちは昨日クラーケンから助けていただいた、帆船魔道フェリーのものです」

「ああ、船長さん!」

「おかげさまで、この通りセイレンヌアイランド共和国に到着することができました」

「よかったです!皆さんご無事で」

「この、お礼は必ず致しますので!」


「お礼なんて!あの魔物は放っておいたら、俺が住んでいるところにも被害をもたらすと聞いたので、自分のためでもあるのです。どうかお気遣いなく」


 海パンアロハシャツ姿でモササの前で両手をフルフルしていたら、船長の後ろから一人の二十代ぐらいの男性がやってきた。


「私は、ここから東にある大陸の海岸の国のトルネキという国の王太子をしていますアントニオといいます。お見受けしたところ、まだお若いというか失礼ですがかなり幼いように思います。

 この、紋章をお預けさせてください」

 と言って缶バッジみたいな大きさのエンブレムのようなものを俺の手に渡す。

「将来、我が国に来られることがあれば、国境でこれを提示してください。必ずやこの度の御礼も含めて歓迎させていただきたいです」


 アントニオさんは、褐色のお肌に黒目黒髪の精悍な男性だ。一国の王太子が乗った船だったとは。あのままクラーケンにやられていたら、大変なことになってただろうな。


 俺は、アントニオさんに向かって口を開ける。


「わざわざ、このような貴重なものをありがとうございます。俺の人生はまだまだこれからなので、きっとトルネキ国にも旅行することがあるでしょう。もし、そのような機会があればぜひよろしくお願いします。」


 渡されたエンブレムを持ってないほうの手を差し出すと、アントニオさんと握手をした。


「・・・このような小さな手で、クラーケンを倒したのですか」

「俺一人の力ではないですけどね。ああ、そうだ、皆さんにお願いがあるんですけど」

「なんでも言ってください」


「明日、クラーケンを皆さん一緒に食べてくれませんか?」

「それはかまわないが、そんなことは我々にはありがたいが、シュンスケ殿のお役に立つのか?」

「実はあのクラーケンが大きすぎて、ギルドで引き取ってくれなかったのです。少しでも量を減らしたいので。どうかお願いします!」

 思わず合掌しながらお願いする。

「そのようなことなら、喜んで参加させてください」


「では、タイナロンさまたちに、借りれそうな場所と日時が決まったらご連絡を、えっと」

「私どもも宮殿に滞在するので、宮殿の方にご連絡くださればいいですよ」

「わかりました!」


 宮殿のほうに向いて動き出す東から、来た人たちの背中を見送る。


「うー、モササと遊びたかったのに。準備しなくては」

「残念だわね。またいつでも誘ってちょうだい」

「うん」


 宮殿に戻った俺は、アントニオさんにも話を聞いたのかヴィーチャが相談に乗ってくれる。

「クラーケンの料理ができる場所ねえ。ギルドの近くにちょうどいいビーチがあるわ」

「そこしかないね。じゃあ、明日のランチで、皆にふるまおう。バーベキューの設備とテーブルセットをたくさん準備できるかな。あとはお皿と・・・」

「大丈夫、いつもお祭りで使ってるものがたくさんあるわ。ウィード、手配お願い」

「かしこまりました」

「じゃあ、マーケットに仕入れに行って部屋で仕込もうかな」

「わかったわ」


 俺は、また水上マーケットに出向き、先代様からインディカ米と薄力粉を手に入れて、鶏卵、油、そして!さすが島国!乾燥された昆布と鰹節がありました!やった!それをまた大量に買い込んだ。

 でも買おうとしたら、お金払わせてくれなかった!みんな俺が島の恩人だからとか言って!


 宮殿の客間に戻った俺は、アナザーワールドにヴィーチャと篭り、クラーケンをいろいろな料理用にカットし、たこ焼きの生地も大量に作って樽に入れた。

 母さんのウエストポーチに入ってた、たこ焼きの鉄板は、業務用だったのだよ。二十八個の穴の開いた鉄板が五枚も並んでいる。でも、こんなの出したって、クラーケンの十五本もある足の一本分でも足りないよな。でもやらないよりまし!


 それで、鉄板一枚分だけ練習した。ガスで焼けない分どうしたかというと。赤色君と黄色ちゃんの精霊たちの連係プレイで、最適な火力を実現しました。


 翌日、指定されたビーチで俺はクラーケン料理をいっぱい作った。とはいえ一人では限界があるから、みんなで作ったよ。


 たこ焼きをふるまうのは、異世界に転生又は転移した人のお約束。ウエストポーチに入っていた段ボールごと仕入れられて?いた市販のたこ焼き粉と、これまたなぜか一斗缶で何個もある、たこ焼きソースを放出。

 昨日試食したヴィーチャが

「これは、あれが絶対いるわね」とつぶやいて用意していたのはエールだ。樽に入ってるエールを会場にいっぱい並べていた。そういう発想が全然なかったお子様な俺は、たこ焼きのほかにも、先代から買ったコメで異世界一大きな(たぶん)パエリアを作ったり、シンプルにカットしたのを鉄板や網で焼いて、塩や、酢、俺が提供した醤油を塗ったり掛けたりしたのも楽しむ。

 忘れてはいけないものもある!刺身だ!

 寄生虫を念入りにチェックして、いない事を確認しながら、柵をつくり、さらに薄造りにする。皮とか吸盤が無い部位で作ったら、白いところしかないから、まるでイカだ。

 そのまま食べたり、マリネにしたり、ワカメと一緒に酢の物にしたりと。スマホのタコのレシピも片っ端から使わせていただきました。もちろん魔法で大量に出したかき氷もデザートに付ける。


「おーシュンスケ、たこ焼き変わるよ。お前も食べたら?」

「大丈夫だよゴダ。俺、もう昨日さんざん試食したから、飽きちゃってさ」

「なんだそれ」

「昨日試作したとき、食べるの止まらなくなっちゃったんだよね」

「わかる、たしかにクラーケンうまいな」

「でしょ?でももういいや」

「それにしても、クラーケンってでっかいんだな、一杯でこんなに料理できるなんて」

「ゴダ、今日俺がこの会場に提供したクラーケンは、十五本もある足のうちたったの一本だ」

「えーでかすぎだな」

「全部出しとくと傷んで臭くなるしな」

「ガスマニアの帝都に帰ったらまたクラーケン焼きしないとな」

「そうだ、帝都の漁協に投げる!そうしよう。クラーケン焼きだけじゃ俺のアイテムボックスからなくなってくれないし!」


 帝都に帰って作ってみたいのは、あとはタコ飯ぐらいだな。ポリゴン町のギルドや孤児院でもご馳走しよう。


 もうすぐ来るオクトパスヌーの蛸壺漁シーズンまでに食べきれたらいいな。


お星さまありがとうございます。もっと頂けたら♪

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