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46【南の島へのお誘い2】

南国の二話目です。しばらくお付き合いくださいね~

 青い海!白い砂浜!そして、ヤシの木!

王都のビーチも青くて白いんだけど、なぜ、南国は色が違うのでしょう。こっちの方が眩しくて鮮やか!


 とうとう、セイレンヌアイランド共和国に上陸した!

あのあと、ムーさんがこっそり空間魔法も使いつつ引っ張ってくれていたのか、夕方到着の予定が昼前にはもう到着した。


 セイレンヌアイランド共和国は 四つの島で出来た共和国で、上陸したのはその中でも一番大きな北側に位置する、アジャー島。ここに帆船魔道フェリーなどの大型船が泊まれる港がある。

 俺たちの乗ってたフェリーは、小さなボートに引っ張られて後ろ向きに着岸し、船の後ろの大きな扉が上から開いて岸との間を橋渡しすると、そこから馬車や荷車が出ていく。本当にカーフェリーのようだ。


 しかし俺らは、フェリーの隣に停泊していた、別の船に乗せられる。

 フェリーが接岸したあたりからヴィーチャは別行動で先に海へ潜って行ってしまった。

 漁師のぺスカとマールの二人は何度か来ているらしく、慣れたように乗り込むと、

 「シュンスケ、シートベルトして」

 「シートベルト?あ、これ」

 「うん、ゴダも、分かんない?ベルトのそっちの金具を、ここに差し込むんだ」


 乗り換えた船は、潜水艦だった。

 船首をものすごく前に傾けて水中に潜って行くのが、飛行機より小さい窓から見えた。

 こんなに傾くならシートベルト要るよね。


 「ううっ、痛て」

 「ゴダ?あ、耳が痛いんだね」

 「うん、なんか変な感じ」

 俺はポーチから水の入った水筒を出す。

 「ちょっとこれ飲んでみて」

 「うん?」

 ごくごく

 「あ、マシになった!すごい、シュンスケ!これも魔法の薬?」

 「違うよー、魔法で出したやつだけど、ただの水だよ」


 そうこうしているうちに、船は海の中の大きな城の入り口に入って行った。

 今度はすぐに、少しだけ浮き上がって停まり。俺たちは潜水艦を出る。

 

 まだ、海の底だと思っていたが、息のできる空間が広がっている。

  ・・・ここは竜宮城か?極彩色に彩られた宮殿があった。地面には人が歩く道と、人魚が行きかう堀や運河のようなものが周りに張り巡らされていた。上を見上げると、水の模様が動く空が見える。やはり海の底か・・・。


 その堀にヴィーチャが上半身を出し、

 「こっちよ」と宮殿の入り口を通り、さらに奥に連れていかれた。

 いつもはTシャツを羽織るだけのヴィーチャと違って、今は桜色の鱗と同じ色のドレスを着て、ネックレスやイヤリングをし、少しお化粧もしている。下半身はお魚のままだ。海水が掛かってもヒラヒラしてるのはどういう仕掛けかな。

 

 大きな広い部屋に着いた。壁には窓があるからイチニーサン・・五階分の吹き抜けの広間だ。

 建物の中でも床には、縦横に海水の水路がめぐらされている。

 正面には大きな椅子があり、そこに座っていた美丈夫が立ち上がった。

 彼は、腕の一部だけ鱗、下半身が魚になっているヴィーチャとは違って、二本脚の人間族と同じような体だが、鱗の範囲はヴィーチャより多く、マッチョな胸元から足首までが銀色に輝く鱗に覆われていた。年齢は分からないけど、顔の見た目は三十代後半?二十歳のヴィーチャと並んでも若々しいお父さんである。あれでヴィーチャの上に二十人お姉さんがいるんだからすごいね。

 髪はヴィーチャと同じ濃緑色で、鱗のない皮膚の部分はガスマニアの人たちより濃い褐色。瞳は青い。帝国の皇子殿下達もそうだけど、褐色の肌に青い目ってホントにかっこいいよね。

 南国なので、着衣は少なく、腰のあたりと、上半身は左肩だけのワンショルダーのベストみたいな形のものを纏っていた。着衣はすべて金色に輝いていらっしゃる!

 それよりなにより、彼の後ろの大きな壁には、白鯨のムーさんが斜め上を向いている状態で描かれていた。しかも、ほぼ原寸大だな。カッコいい!


 おれは、上陸する前に、小学生時代の夏の制服に着替えている。開襟の白い半そでシャツに紺色の半ズボン、白いハイソックスだ。小学生の夏の正装はこれですよね?

 そして、事前に漁師から挨拶の仕方を学んでいた。そのまま美丈夫さんの前で片膝をついて、相手の言葉を待つ。漁師はなぜか俺を前に出させて、漁師二人とゴダの三人は俺の後ろに横に並んで片膝をついている。


 「よく来てくれた。私は、このアジャー小国を納めているタイナロンという」


 うん、声もイケボだ。

 「はじめてお目にかかります。私は田中駿介と申します。シュンスケとお呼びください」

 「うむシュンスケ、そう畏まらなくてもよい。お主はわが娘ヴィーチャを助けてくれた恩人でもあるから」

 そう言いながら俺の前まで近づいてきた。

 「そのうえ、先ほどは我らの同胞も沢山乗っていた船の危機も回避してくれたそうじゃないか。しかも、このアジャーの国の守護神であり宇宙と海の神ウォーデン神の代理である白鯨のムー様ともお会いしたとか。ムー様が顕現なされたとは、これは吉兆である」

 はっはっはつ と豪快に笑う。

 そして、俺の頭に手を乗せ屈んで俺の高さに視線を合わす。

 「それにしても、幼いのう」

 うっ

 「ヴィーチャの話を聞いて、ついにいい人が見つかったのか!と思ったのだが」

 すみません。俺はまだまだまだまだ大人になれないそうなんです。


 この世界に来て、まだ一年未満。すごい出会い(筆頭は創造神のゼポロ様とウンディーナ様)があったけど、この人も強烈だな。南国だからか?濃い!

 ちっこい俺はタジタジしてしまう。


 「父上。そんなにぐいぐいされたら、シュンスケがひいてます!もう」

 ヴィーチャが助けてくれた!

 「すまんすまん。いつも押しが強いと言われているのだ」

 「まあ、そのぐらい力強い方が、民を引っ張るのに良いのでしょう」

 カリスマがあってリーダーシップ力もあるんだろうな。

 「お、分かってるね!なるほど、シュンスケは頭もいいな」


 人魚族は鱗を持つ海生の種族の総称で、いくつかに分類されているという。ヴィーチャはマーメイド、お父さんのタイナロンはトリトンと言われて、エルフよりはかなり短いけれど、寿命が五百年ほどあるらしい。ヴィーチャにお姉さんが二十人もいるのも納得だ。お兄ちゃんや弟も十人ぐらいいるらしいしね。

 マーメイドの寿命は親に影響されているみたいだけど、ヴィーチャの場合、トリトン族の血が混ざっているので、青年期が長く、老化が始まるまで結構時間があるだろうという事らしい。

 これは、超長生き予定の俺としては、仲良くなっておきたい家族だ。


 宮殿から、島の上に出た俺とゴダは、そこにもひかれている運河の水上マーケットに繰り出した。沈みそうなぐらい大量の荷物を積んだ船の間を、ヴィーチャが手配してくれた男性のマーメイドのウィードさんが押してくれる小舟で見て回る。漁師の二人は何度もここには来ているらしくて別行動だ。


 魚介類はもちろん、南国のフルーツ、香辛料、そして穀物など様々な食べ物を乗せた船で、おれは興奮していた!

 「米だ」

 「コメ?このカラフルなやつか?」

 精米されて山のようになっている米。

 黒米、赤米、インディカ米、もち米、そしてうるち米!

 「やったー!おじさん!うるち米沢山ほしいです!」

 「これか?普通料理するならこっちのインディカ米でないの?」

 「うるち米で大丈夫です」

 おじさんにが言うには、こちらの地域ではうるち米はココナッツミルクで炊いてタピオカみたいにスイーツとして食べるらしい。が、おれは普通に炊く!

 もう俺は生米を見ててもよだれが出そうだ。


 「あと、もち米も!」

 「うるち米はどのぐらい?」

 うるち米の山の向こうに米俵も見えている。

 「その俵もうるち米?」

 「ああ、米俵の方が今朝精米したところだな」

 「二俵でおいくらですか?」

 「中銀貨六枚だ」

 一俵は六十キロだから、百二十キロで三万円?日本人の金銭感覚じゃあ、めっちゃお得!

 「買う!それと、もち米三十キロ!と」

 「じゃあ中銀貨八枚か大銀貨四枚だな」

 もち米の方がちょっと高いのか。

 「はいこれ。おまけの小豆だ」

 「小豆!もち米には必要だった!ありがとうおじさん」

 サクッと払って、サクッとアイテムボックスに収納。

 大量に買う俺に、船上のおじさんもいい笑顔。この人もトリトン寄りだね。

 「おいら今までになく無邪気でテンション高いシュンスケを見たね」

 ゴダが俺を見て呆れた顔をするけど、興奮が止まらない。

 「俺の国では、これが主食だったんだよ!これで、少しは故郷を懐かしく感じる気持ちが減るかな?」

 「そうか、シュンスケは外国から来てお母さんとはぐれたんだよね」

 そういって、ゴダが抱きしめて頭を撫でてくる。だけど、南国でそれはある意味地獄だ。

 「ちょ、ゴダ、暑い」

 腕から解放してくれたゴダにそれでも下がらないテンションで言う。

 「屋敷に帰ったら、お米料理をご馳走するね!」

 「たのしみ。シュンスケは料理も上手いからな」


 土鍋で米を炊いてー、ゴダにもらってアイテムボックスに入れてある新鮮なマグロと醤油を一緒に食べたい!あ、ワサビは・・・チューブのがあったっけ。・・・もう、屋敷に帰りたいな。


 そんな俺に、船を押してくれている人魚のウィードさんが言う。

 「シュンスケ様、我々もコメが主食ですから、今夜の晩餐にも出ると思いますよ」

 「やたっ。わーい」


 その後、俺はフルーツを片っ端から食べて(やっぱりドリアンは遠慮しました)香辛料も色々買って(カレー食べたいからね、携帯で必要な香辛料を書き出して買いました)そうそう、香辛料の商品のなかに、バニラビーンズがあった!これもゲット。そして干したフルーツもケーキのために買う。


 そのほかに、貝や珊瑚などの宝飾品の材料と出来上がった宝飾品も買った。いつか学校の課題に使えたらいいなってものと、アリサたちへのお土産用だな。


 「お小遣いたくさん持ってきてよかったー」

 「シュンスケ凄く使うんだね。まえに、学費のために貯めるとか言ってなかった?」

 「それがね、お父さんが学費を振り込んでくれたんだよ!」

 「そっか、シュンスケのお父さんってお金持ちだったんだっけ」

 「顔は覚えてないんだけどね、お金持ちだったみたい。でもだからって無駄遣いはしてないよ。必要なものしか買わないさ」

 「ふーん、やっぱり、シュンスケはえらいな。俺はお金あったら全部食べるのに使ってしまいそう」

 「ははは、でもまだゴダはお酒飲んでないから大丈夫じゃない?お酒は高いらしいからね」

 「そうだな。俺も二十歳になったら飲もうかと思っているんだ」

 「うん、それがいいね」


 そうして、俺らが海上リゾートショッピングを楽しんでいた時だった、

 “シュンスケ、クラーケンがそっちの方角から言うと東の沖に出た”

 白鯨精霊のムーさんからのエマージェンシーコールが来た。


 「どうしたんだ?シュンスケ」

 「ちょっと待ってね」

 “ムーさん、クラーケンはどの辺りにいる?”

 “ここだ。あれは去年も何度か人間の船を沈めている凶暴な魔物だ”

 頭に座標が飛んできた。さすがムーさん、やることがスマートだぜ。

 おれはスマホのマップにそれを移すというか指先で印を打つんだけどね。

 あれ?クラーケンは西に行ったんじゃないの?この座標は東だな。じっとしない奴だな。

 「非常事態だ、ゴダ、先に宮殿に戻って、ヴィーチャかタイナロンに伝えて。東の方からクラーケンが来るらしいから、注意を。東側の人に避難とかね」

 「うん、シュンスケは?」

 「俺は行ってくる」

 「シュンスケ一人に戦わせるなんて、後でアリサになんか言われそう」

 「大丈夫、ここでは俺には白鯨が付いているでしょ?」

 「そうだな、分かった。

 ウィードさん、そういう事だから、至急宮殿へ行こう」

 「は、はい、しかしシュンスケ様は?」

 「大丈夫。あいつにはすごいやつが付いているから!」


 二人のやり取りの間俺は一度小舟の上でアナザーワールドの扉を出して、今度は母さんのウエストポーチに入っていた、なぜか今の俺にぴったりサイズのウエットスーツを着る。

 革鎧のような防御力はないかもしれないけれど、荒事に海パン一丁はやっぱり不安だしね。でも、どうして子ども用のウエットスーツって派手なの?こんなのじゃ獲物が逃げるじゃん。

 あとはウエストポーチ装着。防水スプレー処理をかなりしております。まあ、魔法のバッグだから要らないんだけどね。


 「よし、準備完了!」

 「シュンスケ、気を付けて」

 「はい、では、行ってらっしゃいませ」

 ウィードさんも心配顔ながらも送り出してくれる。

 

 小舟の上で浮かび上がると大きな影が頭上にかぶさる。


 「「「ああ白鯨が・・・」」」

 白鯨に向かって、水上マーケットの人たちがみな手を合わせる。


 『今日の商いは閉まって、家族と西へ避難するか災害に備えよ』

 空気を震わせて、ムーさんが皆に言う。

 祈っていた人たちが一斉にそれぞれの岸へ向かう。

 もう一隻トリトンの男性の乗った小舟が来て、パニックになりかけの水上の交通整理をする。舟のパトカーかな。 


 「ムーさん行くよ」

 “こっちだ、それよりシュンスケ、今度は水中マスクをしないのか?”

 「あれは少し視野が狭いからなーこういう時は難しいな。要改善だな」

 “そうか”


 俺は、帝都の冒険者ギルドで一目ぼれして買った、〈クロマグロもOK〉の銛をアイテムボックスから出した。槍より少し太くて、長い。前にビーチで拾ってサメをやっつけたやつの、壊れてないバージョン!


 普通の六歳児には無理だけど魔法で腕力を底上げした俺はその大きな銛を担いで、意気揚々とムーさんと東の海に向かった。

 ムーさんは空間魔法を使い、あっという間に目的地に着いた。その距離は、百キロくらいあるだろう。


 海の東の方にはガスマニア帝国から続く陸がある。もしやそっちの陸に行くのか?それも嫌だな。ムーさんが言うにはそのクラーケンは考え無しの暴れ者だと言っていた。

 東の陸から来たのだろうか、俺達が乗ってきたような、帆船魔道フェリーがセイレンヌアイランドに向かって航行している。


 “いたぞ、あれだ”

 大海原にでっかいタコのお化けがいた。ひょっとして帆船魔道フェリーを狙っているのじゃないのか?

 ムーさんは今半透明だ。ということはフェリーからは見えていない。


 俺は引き返しながら高度を下げ、甲板や展望デッキに出てる人に声を掛ける。

 「みなさーん、東の方から大きなクラーケンがこの船に向かっています。大きな波が来るかもしれないので、船の中に入ってくださーい」

 「きみはー」

 白い制服のこの船の船長さんが叫ぶ。

 「俺はこう見えて冒険者(仮免だけど)なので、やっつけてきますー。みんなが中に入ったら速度を上げて少しでも逃げてくださーい」

 「わかったー。頼みますー」

 「俺も冒険者だから手伝うぜー」

 「大丈夫ですー、皆さんの誘導をお願いしますー」

 「空を飛べるということはー、かなりの魔法使いなんだなー頼むよー」

 「はーい。頑張りまーす」


 これで良し。人魚族の島と、この船への注意喚起はした。

 そうして俺はムーさんとクラーケンを目指した。


駿介「クラーケンってダイオウイカみたいなんだと思ってたんだけど、この世界はタコなんだね」

ゴダ「うん?もしイカだったらどうするんだ?」

駿介「予定の料理が変わるぐらいだけど、バーベキューするなら焼くだけだよ」

ゴダ「どっちにしてもいっぱい食えるな」

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