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45【南の島へのお誘い1】

寒い時こそ常夏の地に思いを馳せたいですね

 学園の連休に三日間のお休みの届けを足して、おれは五日間の弾丸バカンスに誘われた。

 正月の間にゴダから

「人魚族の島に行かないか?ヴィーチャたちの里帰りにぺスカとマールはもちろん、おいらもお誘い貰ってさ。せっかくだから、シュンスケも来ないか?」

「え?いいの?行く!」

 人魚族がいるところは、大陸でも南にあるガスマニア帝国の帝都の南の海をさらに南下したところにある、セイレンヌアイランド共和国という、いくつかの王国が集まった常夏の島国だ。島と言っても大陸から見たら島なだけで、地図や話を聞くと、四国位の広さはあるのじゃないかな。


 とにかく、大陸はまだまだ冬だしさ、そういう季節に南国へリゾートバカンスなんて、最高だよね。

 地球にいた時もハワイに連れて行ってもらったらしいけど、まだ小学生一年生ぐらいだったからもう覚えていない。

 はっ、今も小学一年ぐらいだけど!


 アリサは付いてきたがっていたけど、ウリサとともにドミニク卿とお友達をポリゴン町までの護衛の依頼が来たので。後ろ髪惹かれるけど、置いてきぼりです。

 一応、何かあったときの連絡用の黄色ちゃんを一人お願いしている。精霊ちゃんたちはネットワークもすごいから、伝言ゲームのように様子が届くんだ。しかも間違いなくそのままの様子を。


 ただ、休みは五日しかないのに、高速の船でも片道二日かかるらしい。


 今回は某海賊船のような、でももっとでっかい帆船。帆船魔道フェリーらしい。あ、空は飛べません。

 セイレンヌアイランドに年に三度行き来する定期航路船だ。

 日本で生まれてこの方、このような大きな船に乗ったことがないので、大興奮している。


 人魚族も一緒に乗る船なので、甲板には海水のプールのような穴が開いていて、人魚族の客室はそのエリアに区割りされているらしい。

 俺たちも、船で言えば海面に近いところに船室を取ってもらって、少しでもヴィーチャのエリアの近くで過ごすことにしている。

 渡航費用は、ゴダと漁師はヴィーチャの護衛ポジションなので、費用はヴィーチャの実家から報酬込みで出ている。そして俺は夏に彼女を助けたということで、完全なご招待だったのだ。

 少し船酔いが心配かなと思ったけど、漁船に比べたら全然快適だし、帆船なのに、魔動船なので、日本のフェリーより早く、時速八十キロ近くまで出るらしい。だから数時間もすれば緯度が変わってきたのか、はたまた南からの海流によるのか、空気が暖かくなってきた!


「ねえ、ヴィーチャ。俺も海のお部屋に行きたい!」

「シュンスケ、どうぞ。でも息が続かないのでは?」

「大丈夫!こう見えても優秀な魔法使いなのさ。って道具使うけど」


 ダイビング用のフルフェイス水中マスクを参考に、プラスチックとシリコンゴムでお手製のマスクを作ったんだ。そして、空気を出し入れする魔法陣を内側にペタリ!

 これで、ダイビング並みに海中を遊べるだろう。

 ダイビングの練習をして、来たるタコ壺作戦に使えたらと思っている。


 ドボーン

 水中マスクと海パン姿でヴィーチャの部屋にお邪魔した。

「やほー。お邪魔しまーす」

 フルフェイスはお話しできるのがいいよね。

「いらっしゃいシュンスケ。ふふ、無邪気で可愛いわね」

「俺は子どもですよ」

「そうでしたね」


 まあ、水中ではお茶タイムとか出来ないから、話をするだけだけどね。

 主に蛸壺の話なんだ。

 ひもを付けて二つぐらいつなげた蛸壺を出して、ヴィーチャに説明する。


「へえ、それは面白いわね。たしかに、沈没した船から落ちた、丸い風呂桶に人間位のサイズのオクトパスヌーが住み着いていた話は聞いたことがあるわ。小さいものならそこに入るでしょうね。仕掛けるときは、私も手伝わせてね」

「もちろん!お願いするつもりで作ってるよ」


 ひとしきりヴィーチャと水中でお話をした俺は、甲板に上って、水魔法で海水を流し、

 今度は人間族が船の旅を楽しむところなどを探検した。

 もちろんレストランもね!海パンの上から、Tシャツを着てパーカーを羽織った俺は、ビーチサンダルで甲板のレストランを見に行った。


「あ、やっぱりゴダもいた!」

「そりゃいるよ。シュンスケ、あれ旨そうだよ、でっかいザリガニ」

「あれはザリガニというよりロブスターではないの?他にはイカとかホタテ?牡蠣?本当に旨そう。魚ももちろん一通り食べようよ!おれ、お小遣い持ってきたから」

「シュンスケ、そこはおいらにご馳走させてよ。いつもウリサ兄さんやアリサに良いところ持っていかれてるんだからさ」

「ほんと!やった!ごちになります!」

「任せろ!」


 氷ベッドに並べられた魚介を選んで小さなバスケットに取っていく。

 ただ、新鮮だと思うけど、こういうのは怖いからさ、鑑定とかで牡蠣の状態とか、寄生虫とか調べてから選びましたよ。 

「あっちでバーベキューするんだね」

 他の乗客がもう盛り上がってらっしゃる。

「もうずっと良い匂いでさ、涎が止まんないんだよ」

「おれも」

 いこしてある炭に網を乗せたところがいくつかあって、その周りに椅子が並べてある。

 そこへ、ゴダと二人で陣取る。

 まずば二枚貝を置いて~

「そうだ、あれ出して」

「あれだねー」

 屋台の焼きとうもろこしで使ってたお醤油。

 貝がパカーンとなったところに

 ジュワー

「もう俺、涎がナイアガラ」

「何だそれ。じゃあ食おうぜ!」

「あははは、うん!あちっ」

「「うまーい」」

 お屋敷のビーチでもバーベキューするけど、船の上はまた違うねー。

「ここは、さらに俺のとっておきを出すぜ!」

 って、アイテムボックスから黒い液体の入ったペットボトルを出す。

 木でできたビールジョッキに魔法で出したロックアイスを入れて(ペットボトルは冷えてなかったから!)

「なに?しゅんすけ。お前は子供だし、おいらもアルコールはちょっと。それ、黒エールじゃないの?」

「お酒じゃないよ、ジュースだよ。まあまあ試しに飲んでよ。絶対シーフードに合うから!」

 そう言って俺は氷の入ったジョッキにコーラをなみなみと入れる。

 シュワシュワしとります。

 ウリサがいつも飲んでいるエールなんかより炭酸が刺激的なはずだ。

「なんだこれ、甘くて、良い匂いで美味しい!

 ほんとにシーフードに合うね」

「でしょう!おかわり入れるよ」

「ありがと」


「あら、良い匂いね」

 ヴィーチャの声だ。振り向くと、海水プールのサイドに腰を掛けている。

「「おお、俺達のとは違う匂いだな」」

 漁師二人組も甲板を歩いてきた。シーフードを入れたかごとエールのジョッキを乗せたトレーを持っている。

「俺の国の大豆で出来たソースなんだ。

 一緒にどうぞ」

「「ありがとう」」

「みんなで食べよう」

「俺たちが持ってきた分も、一緒に焼いてくれ」

 そうして甲板でのバーベキューは盛り上がっていた。

 ジョッキをあおる人魚の姿を初めて見ました。絵日記にしようかな。


 帆船魔道フェリーでの一泊目、スマホのアラームで起きた俺は空が白んできた甲板に出る。この船では俺はずっと海パンにTシャツとパーカーだ。今日も朝から海パン!

 東の地平線がきらめき出す。こういう風景は、地球と同じだな。

 でも、日の出の風景に入り込む海鳥?サイズはカモメより大きいかも。フォルムも空を飛ぶには太い?というか大きい。 空を飛ぶ鳥かな魔獣かもしれないしな?

 もう少し近くで見たくなって足元を重力に干渉して飛び上がる。


 快晴のキラキラと光る海面の上を、東に向かって飛んで行くと。鳥だと思っていたものが近づいてきた。逆光だから黒いと思っていたけど、近づくにつれ、それが真っ白だと分かってきた。真っ白な・・・

「鯨・・シロナガスクジラ?・・白鯨だ」でも、少し透けている。

 “おや、こっちだったか。ずれてしまったな”

 頭に響いてきた!

「おはようございます。はじめまして、俺は田中駿介といいます」

 “わたしは、ムー という、ウォーデン神に言われて、君を見に来たのだ”

 白鯨の言葉に俺の周りにいる精霊ちゃんが騒ぐ

 “むー ひさしぶり!”

 “むー あいかわらずおおきい!”

「ムーさんは、ひょっとして、この子らと同じ?」

 “ああ、こう見えて、私も精霊だ 属性ではなく、海の神ウォーデン神の使いをしている”

 はあ、壮大な話だ。

 なにしろ、このムーさんは、俺が乗っている帆船魔道フェリーと同じようなスケールなのだ。それがゆっくり浮かんでいるだけでも驚きだが。精霊と聞いてすこし納得。

 精霊は、物質の理はないみたいなので、質量とかはない。まあ、空に浮かぶくらいはあたりまえだね。

 それにしても、

「ウォーデン神とは宇宙と海の神様ですか?」

 “そうだ、ゼポロ神からお前さんに会ったと自慢されて、直接会いたいと言ってたが、水のウンディーナ女神に、シュンスケがびっくりするからやめなさいと窘められて、我慢されているのだ”

 “うぉーでんさまが、こうふんすると、つなみがおこるの”

「そりゃ、大災害だ」

 “それで、私が赴いて、こうして君とのやり取りを、私を通して見るにとどまっているのだ”

「なるほど」

 俺はフェリーの少し横で、並走するように行き先に向かって飛んでいる。

 船では目的地までは後半日掛かる。

「ムーさんと言うか、ウォーデン様は俺に何かあるのでしょうか」

 “この先の海底に淵があるのだが、そこに海竜が複数のクラーケンにやられて傷ついて落ちて行っているのだ”

 海竜?痛みで暴れたりしたらそれこそ津波が発生するのでは?もうセイレンヌアイランド共和国が近づいている。

「船が上を通過したら傷に響くでしょうか」

 “わからない”

「その海の上から俺が治癒魔法を流したら届くでしょうか」

 “六千メートルほどある”

 深!それはもう淵というより海溝では。

 “ウォーデン様が言うには、君達が元日に教会でやった方法だと届くやもしれぬ。楽器は要らぬ”

 元日?歌か!

「とりあえず、船に連絡して、一時停止をお願いしてきます」

 “うむ”


 さて、船のいわゆる船長さんに連絡するにも、俺は六歳のいわば客が連れた子供って感じだろうな。どうすればいいかなー


 まだ、客はこれから起きるだろう時間。船長さんに直接伝えて大丈夫かこれ。俺は迷いながら甲板の上を、子熊のようにぐるぐる回っていた。


「どうしたのシュンスケ?」

「ああ、ヴィーチャ!よかった。この船を大至急二十分ほど止めたいんだ」

「どうして?」

 頼めるのは、ここしかないかもと、先ほどムーさんに聞いた言葉を言う。

「まあ、大変じゃない!わかったわ!船長を呼んでくるわ」

 そう言って、海水プールに潜っていった。

 なんでも、ヴィーチャが滞在している海水の部屋や客室の通路などには、キャビンに連絡する伝声管という内線のようなものがあって、非常時のために備えられているらしい。

 そういえば、昔の海外の戦艦が出てくるような映画にあったな。


「あ、船が止まった」

 魔動線の魔法の風の音が止んだ。

 ヴィーチャが甲板に浮上すると同時に、白い制服の船長も甲板にやってきた。

 そして、俺が説明するより説得しやすいだろうと、ヴィーチャが説明してくれる。


「海竜が海溝に?」

「それで、二十分ぐらいでいいので、お願いします」

「わかりました、ヴィーチャ姫。もし難しそうでしたら、迂回もしますので」

「ええ、お願いします」


 やっぱりヴィーチャ姫だって。こういう時はしっかり族長の姫様をしてるじゃん。

「さて、シュンスケ。あたしが海溝を見てきましょうか」

「え?危ないよぅ」

「少しでも近寄った方がいいでしょう?」

「そうなんだけど」

「大丈夫よ。もしかして、私の知ってる子かもしれないし」

「え?海竜と友達なの?さすが!」

「じゃあ、決まりね、行くわ。」


 俺たちの話し声に、ぺスカとマールもやってきた。

「海竜が海の溝に?」

「刺激したらヤバイな」

「シュンスケが、どうかしてくれるのか?」


「少し、自信はないけど、がんばります!

 じゃあ、ヴィーチャ行こうか」

「ええ」


 そして俺は再び甲板から浮き上がり船の前へ出て海面の近くまで行く。

「「おおっ、飛んで行った」」


「シュンスケ!いくわよ」

「うん」

 ヴィーチャが海中に潜っていってしまった。

 おれは何となく前の方へ進む。


 十分ほどしたところで、ヴィーチャが上がってきた。


「いたわ、この下よ。かなり傷ついているわ」

「ヴィーチャのお友達だった?」

「ええ、モササっていうの」

「わかった、モササの回復を祈ろうね」

「うん」


 俺は少し海面から高さを取って何となく、空中なんだけど、裸足の足場を安定させようとした。おなかに力を入れたかったからね。すると俺の足元に、ムーさんが顕現して、その背で、俺を支えてくれた。

「ねえ、ムーさん、ヴィーチャも乗ってもらってもいい?」

 “かまわぬ”

 そうすると、透けていたムーさんは光り輝く真っ白な存在感のある姿になった。

 ヴィーチャをみると言葉になってないみたいだ。

 “おうじ、ふねのみんなからも、むーさんがみえてるって”

「それはすごいな」


「ヴィーチャ!こっちにおいで!一緒に歌おう」

「でも」

 ああ、ムーさんでかすぎて高さがあるね。

 俺はヴィーチャにかかっている重力も干渉して、魔法で持ち上げる。

 そして近づいたところで手を引っ張って、魚の体で隣に座ってもらう。

「じゃあ、一緒に歌おうか」

「ええ」


 まずは、聖属性魔法を発動する。ムーさんの体を伝って海へ振っていく。

 アカペラでもいいって言われたけど、スマホから前に録音()っていたチェンバロの音源を大きめのボリュームでスタートさせる。


 そうして二人で歌い出す。

 ~大いなる(そら)と~海の父よ~

 歌い出すと、聖属性魔法のいつものキラキラの濃さというか密度が上がって

 海の底へキラキラと落ちていく。

 ~豊かな恵みを~も~たらす波よ~

 ~今日も~明日も~輝きながら~~~

 ムーさんの体もますます輝いて、俺の魔法が増幅するのを手伝ってくれているみたいだ。


 “青色ちゃん、俺の魔法、海底に届いている?”

 “うん!もささもひかってる”

 海溝の底まで届くか心配だったんだ。

 “ホッホッホッ、なんかたのしくなってきた”

 プシュー

 ムーさんがキラキラの魔法で潮吹きをする。

 楽しいって、俺は見えない相手の怪我を治しているんですけど。

 “わあおうじ、みんなのおふねまで きらきら~” 

 おおっと少し広がっちゃったか。

「シュンスケ、モササの様子を見てくるわ」

「うん、ヴィーチャ、頼んだよ」

 トプンッ

「ムーさんって地上の人と交流あるの?」

 俺もムーさんの背から離れて空中を浮かびながら聞く。

 ムーさんの姿がゆっくり透けていく。

 “シュンスケが久しぶりだな。広い海原を行き来していると、なかなか人には会えぬ。特に普段のわたしを見れるものには会えぬよ”

 そうか、精霊が見えるとかは精霊の大きさじゃないのか。

「シュンスケ!モササの怪我が治ったわ。もう大丈夫!船に連絡しましょう」

「わかった、じゃあ行くよ」

 俺は海面から手を伸ばすヴィーチャの手を取ると、船の甲板に瞬間移動()ぶ。

 展望デッキには人がいっぱいいた。乗客が船の上部の展望デッキに集まって、海の様子を見ていたみたい。

 そのすぐ下の甲板に降り立った俺とヴィーチャに、船長が駆け寄る。

「姫、どうでした?」

「もう大丈夫、落ち着いたから、船を動かしていいわ」

「「「「わぁ」」」」

 展望デッキから歓声が上がった。

「わかりました、君も、ありがとう」

 そう言って、船長さんは俺の頭をくしゃりと撫でると、階段を駆け上がっていった。

「シュンスケ、お疲れ!」

「ゴダ、今回はさすがに魔法を使いすぎたかも」

「おいらは詳しくわかんないけど、地上でも遠くに魔法を飛ばすのは大変なのに、海底だもんね」

「それにしても、シュンスケ君は桁違いだな」

 漁師のぺスカがいう。


「ねえ、シュンスケ、モササがお礼をしたいって。まだ動ける?」

「うん、全然大丈夫だよ」水筒から水を飲んでいただけだよ。

「じゃあ、さっきのところにもう一度行きましょう」

 手を出すヴィーチャに答えて、さっきの海面に瞬間移動(もど)る。

 空中でパーカーとTシャツを脱いでアイテムボックスに突っ込み、水中フルフェイスマスクを装着すると、海中に飛び込む。


 ドボン

 身体が小さくてフィンも無く、潜るのが大変なおれをヴィーチャが引っ張ってくれる。


 海底は、棚のようになっていて、その端が崖のように切り込んでいる。その棚から崖に掛けて、美しい珊瑚が群生している。

 サンゴの間を色とりどりの熱帯魚が泳いでいる。

 まるで、いつか見た水族館の中を泳いているようだ。

「わあ、すごくきれい」

「本当にきれい。でもシュンスケが魔法を使うまではこんなに珊瑚はなかったわ」

「え?そうなの?」

 “ハッハッハー”

 ムーさんが俺たちのそばを潜っていく。もうヴィーチャには見えてないらしい。

 “君たちの歌と魔法でこうなったのだ”

 え?やりすぎた?

「まあ、すてき。ここもこんなに珊瑚が育って」


 しばらくすると海底から濃紺の鱗を煌めかせて大きな竜が上がってきた。

「貴方がシュンスケね」

 あ、お話しできるんだ。

「こんにちは、初めましてモササ」

「貴方のおかげで、大きな怪我が治ったわ。ありがとう」

「よかった」

「ねえ、モササ、貴方をケガさせた二匹のクラーケンはどうしたの?」

 ヴィーチャが問いかける。

「一匹は、仕留めたのだけれど、もう一匹はまだ、いるわ。なわばりを増やしたかったみたい」

 “あのクラーケンは獰猛だからな、モササをけしかけて、ライバルのクラーケンを消す事が出来たようだ”

「え?モササの縄張りを奪うためじゃないの?」

 “クラーケンの中での覇権を狙っておったみたいだね”

「性格が汚いな」

 “うむ、ライバルがいなくなった後自分のテリトリーの西の海に帰っていった”

「ねえムーさん、またクラーケンが関係のないものに害をなそうとしたら教えてくれる?」

 “うーむそれは難しい。しかし、君にかかわったものに害をなすなら知らせよう。それにはモササももう入ってくる”

「それでいいです!ありがとう。

 モササ、クラーケンはもう西の海だって」

「そう、よかった」

「そうね、こんなところにいられたままじゃ、セイレンヌアイランド共和国にも脅威ですもの」

 ヴィーチャが自分の腕を抱いて震えるようなしぐさをする。

「また、何かあったら教えてくれるようだから。そうしたら、連絡するよ」

「え?誰が教えてくれるの?」

「白鯨の精霊」

「まあ、シュンスケは精霊様とお話しされていたのね」

 モササが目を見開いて俺を見る。そっか、見えてないと俺が独り言を言ってるように見えるよね。ついうっかり声を出していたよ。

「シュンスケってすごい子でしょ?あなたの怪我を治すのもその精霊がシュンスケを手伝っていたわ」

「本当にすごい子ね!ヴィーチャは素敵な友達を得てるのね」

「ふふん。でしょ」

「ねえ、シュンスケ」

「なあにモササ」

 モササは立派な海竜だけど、話し方を聞いていたら女の子かな。

「私ともお友達になってくれないか」

 海竜と友達って最高ではないだろうか。

「もちろん!よろしくね!」

 水中で海竜の鱗に抱きつく。あぁ水中マスクなしで頬擦りしたかったな。

「人間ってこんなに可愛いの?」

「モササもシュンスケの可愛さを理解したのね」

 ?何のことかな。またわからない女子の会話が始まったよ。


「シュンスケ、これを受け取って」

 モササの前に突如として、巾着袋が現れた。

「これはどこから出してきたの?」

「モササもアイテムボックスを持っているのよ」

 ヴィーチャは答える

「なるほど・・・ってこれ?」

 海中でも分かるズッシリ感、

「今、開けたら散らばるから、地上に戻ってから開けなさいね」

 モササが慌てる俺に()()をしてくる。

「うん」

「じゃあ、私は根城に帰るわね」

「モササ、気を付けて、また会いましょう」

「今度はこの海のことをもっと教えてね」

「ええ、ヴィーチャ、シュンスケも」


 そうして、彼女は濃紺の鱗をキラキラさせながら海溝に潜って行った。


ゴダ「やっぱり泳ぐのをもう少し練習しようと思ったんだけど」

ぺスカ「手伝おうか?」

ゴダ「クラーケンが出るような海では何の役にも立たないよね」

マール「陸のミノタウロスだって俺らには討伐できないよ」

ぺスカ「身の丈に合った漁や狩で十分」

ゴダ「美味しいものを捕れたらいいよね」

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