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44【ちびっ子と言えば、ねんどあそび大好き!】

 カーリンが帰省を終えて学園に戻り、学園の新学期が始まった。

 おれは、魔女の教科に取り組んでいた。土属性ともうちょっと向き合って、よりよく習得するべきだと思っていた。

 だからって、新学期がまだ始まってない学園で、リフモル先生と二人きりでこのエリアに来る勇気はない!俺が素材になることがばれないか冷や冷やするもんね。

「ねえ、シュンスケ君、この間くれた希少な髪の毛ってどこで手に入れたの?」

「母にもらったんです」

「へえ?あなたのお母様は素晴らしい薬師なんですね」

 いや、工業デザイナーですけど。

「素材として貴重だって言うことは知っているんですけど、何の薬になるんですか?」

「知りたい?」

「一応、先生にお渡しした以上は知っておきたいと思うし」

「でも、これはすごく貴重な薬の材料だから、他の人がいる前では教えられないから、今度二階へ・・・」

「リフモル先生!ここ教えてくださいー!」

 チッ

「はい?どれ?」

 カーリン助かったよ!


 年末に俺たちのお屋敷に滞在していたカーリンと夕食の席でいろいろ話をしてくれた。

 カーリンはガスマニア帝国の北部の辺境を納めている辺境伯家の三女で、今はお父さんが領地を守っているのだが、五年前までの戦争で跡取りのお兄さんが亡くなられて、従兄のダンテさんが養子に入り、跡を継ぐ予定になっているそうだ。

 そんなカーリンも、帝都よりは森も多く魔物が良く出て、また国境ということもあって、冒険者として活動し、辺境の領地のために経験を積んでいるらしい。やっぱりすごくしっかりした女の子だ。


 さて、俺は今、粘土でいろいろな器を作っている。

 主に花瓶のようなものだ。

 ジャンクカンパニーにもあった魔道具のろくろにはまだ手を出せないので、ここは手びねりで。

 始めは粘土で七ミリぐらいのひもをたくさん作って、巻きながらくっつけていく。真ん中はちょっと膨らむように。そして、口をすぼめる。

 よし。こんな感じかな。


 一つの形がはっきりしたら、同じものを量産する。


 粘土は土や石を細かい砂の粒子にしてから、水を加えて練り上げて作る。もともと泥だったものが固まったところとかで、粘土を採取するみたいだ。

 去年、孤児院でピカピカ泥団子に夢中になってたときに、仕上げに使ってたあれよりもっと小さい粒子が良いと、緑色ちゃんにも教えてもらった。

 学園で粘土から作っても良かったけど、屋外はまだ寒いし、俺は小さめに展開したアナザーワールドの中で作業をしていた。材料は屋敷からギルドを挟んで反対側の海岸に細かい土のビーチがあるので、そこから採取した。そんな土の情報は、人魚族のヴィーチャからだ。


 アナザーワールドと、俺の部屋の間に、呼び鈴の付いた二重扉を付けた。

 俺の部屋の壁にもう一つ扉が出現している状態で、そこを開けるともう一つの大きな部屋が出現する。

 図書館の地下の閲覧室みたいにしようと思ったけど、作業場にしたかったから、コンクリートで囲まれた駐車場みたいな空間だ。

 晩御飯のときは部屋の扉で呼び鈴を鳴らしてもらう。

 二つの扉の間で、作業の泥なんかを落として、部屋に入れるようにするのだ。


 アナザーワールドの中で海岸の土から塩分や貝殻など余分なものを錬金術で取り除き、風魔法をフードプロセッサーのように使い、土や石を小麦粉よりもさらに細かい粒子にしてから、一度闇魔法で熟成させると粘土のもとができる。それに水を加え、練る。

 菊練りとか?前にモノ作りの動画で見たけど、ここでも手のサイズが!小さいので!ちょっとずつしか出来ない!力を入れるのは自分の体重に重力を加えれば何とかなるんだけどね。

 なんて悩んでいたら!あったんです。“真空土練機”ってのが!しかも手動で!母さんの持ち物に!工業デザイナーって粘土も使うのか・・・。完成品ではなくてモデル用かな?そういえば自動車も粘土で形をデザインしてたっけ。え?今も?


 そうして出来上がった粘土はサブ(アイテム)ボックスに入れる。アナザーワールドに置きっぱなしだと乾いてしまうからね。


 アナザーワールドの中では一つ、素焼きの植木鉢が完成している。

 錬金術と火魔法を使うと、釜も要らないし、時間も早いもんね。


 今は、植木屋さんでチューリップの球根を一つ買って植えている。


 そうして、俺は魔女の授業で、土属性魔法の練習と言いながら、たくさんの壺もとい、花瓶をこしらえている。

 闇魔法と水魔法、錬金術を駆使しながら、割れないように乾かして、その後火魔法と風魔法と闇魔法を駆使して今現在、野焼きをしている。


「ねえ、カーリン、焼き芋好き?」

 こそっ

「やきいもってなあに?」

 こそっ

「とっても甘いお芋を焼いているんだ」

 まあ、

 闇魔法は時間をコントロールするために使うんだけど、お芋の周りは闇魔法からガード!

 炭になったら嫌だもんね。


「そこ!何をこそこそお話しているのですか?」

「い、いえ」

「というか、シュンスケ君は、なんでそんなに沢山花瓶を焼いているのかな?」

「土属性魔法の練習なので」

「火属性も使っているじゃない」

「風魔法と闇魔法も必要です」

「花瓶が出来たら、先生にもお分けしますよ」

「結構よ、もうそこに花壇があるし」

「ですよね」

「あ、シュンスケ君、なんか良い匂いしてるね」

「そうそう、花がなくても良い匂いになる植木鉢の研究なんだよ」

 我ながら苦しー


 “もう、おいもやけたよ”

 “きっとほくほくよー”

 “よし、ちょくせつアイテムボックスに入れちゃおう”


 “ねんどもやけたよ”

 “ひもをつけるのは まだよ”

 “もえるぜ”

 “あついから ひもはまだつけられないよ”

 “さます?”


 アイムボックスから大きな素焼きのテーブル板のようなものをだして、

 真っ赤に焼けた壺もとい植木鉢をおく。

「冷ますか」

「シュンスケ君、急激に覚ますと割れるわよ」

「はい、先生。だから、闇属性で時間をコントロールして・・・」


 休憩を知らせるチャイムが鳴る。

「あら、ランチタイムですね」

「ほんとだ、さっきの良い匂いはお腹を刺激するわー」

 鋭いなカーリン

「食堂に行かずに、ここで食べちゃいましょうか。先生ここでランチをしてもいいですか?」

「いいわよ」

 壺はまだ高熱だから、他の子が触ったら危ないしね。

 了解が出たので、ベンチとテーブルを出す。

 テーブルに簡単にクロスをひいて、ベンチにクッションをおく。まだ、一月だからね。

 魔女の庭が魔法で暖房されていても寒いもんね。

「さ、カーリンどうぞ、先生も」

「え、いいの?」

「私はお弁当は持ってきてないわ」

「まあまあ」

 テーブルにお皿を出して、焼き芋をドーンと出す。

「まだ熱いから気を付けてね」

「さっきの良い匂いはこれね!」

「あら、甘藷じゃないの。焼いただけってシンプルね」

 本当は味噌汁にしたいんだけど

「コンソメスープもどうぞ」

 大きなマグカップをだして、琥珀色の暖かいスープも出す。

 喉が詰まったら大変だもんね。


「シュンスケ、何やってんだ?」

「あ、殿下にお出しするにはちょっと見た目が素朴すぎますが、一緒に食べますか?」

「うむ、もらおうかな」

 もう一つ椅子とマグカップを出す。


「あまーい。甘藷ってこんなに甘いの?」

「本当ね、お砂糖入ってるみたい」

「うむ、うまいなほくほくしているぞ」

 ひとしきりみんなで焼き芋にがっつく。


「それで、シュンスケは、大量に何を作っているのだ?」

「ああ、あれはですね、もうすぐほら、オクトパスヌーってタコの魔物の産卵時期って言うじゃないですか。それで仕掛けをすこし」

「そうか。オクトパスヌーは生まれてしばらくは、ただのタコだが、成長すると何故か漁船を転覆させたり、問題になるやつだな」

「はい、その上放っておくと今度はクラーケンが餌として沖に来ちゃうんですよね」

「うむ。さらに漁業が立ち行かなくなると、帝都も困るしな」

 まあ、建前はそうだけど、俺はタコを食べたいのだ。


「ひとつ、試作品の壺があるので」

 といって、俺はアナザーワールドで作っていた壺とロープをサブボックスから出して、

「これをこうやって括って、他の壺とつなげていって海に沈めとくんです。タコとは違うかもしれないですが、こういう狭いところが好きな性質がもし同じならと。まあ失敗しても普通のタコは入ってくるかもしれないですしね」

「へえ、案外簡単そうだな」

「沈めるのは人魚族にお願いしようかと」


「なんだ、花瓶じゃないのね」

 スープも飲んで人心地付いた魔女先生が殿下との話に加わる。 

「実はそうなんです。まあ、花瓶にも使えるけど、あれじゃ花瓶には武骨すぎるでしょ」

「なるほど」


「でも、オクトパスヌーが手に入ったら、またご馳走しますよ!」

 芋が好きならタコも好きだよね、きっと。


「そうね、シュンスケ君は何かと私の授業で、勉強と違う作業をしている節があるけど、帝都のためと言われたら、目くじらを立てるのもね」

「ご理解いただけて助かります」

 みんな良いように取ってくれて助かる。

「シュンスケ、ご馳走様。お芋、美味しかった!スープも」

「お粗末様です」

 殿下は自分の課題に向かっていった。


 テーブルセットを片付けて、焼き物に向かう。

「さ、そろそろいいかな?」

 とはいえ、まだ熱いから軍手をして、

「うん、大丈夫そうだね」

 効率よく焼けるように積み重ねていた壺を

 収納しやすいように並べていると

「あたしも軍手かして。手伝わせて」

「ありがとう、まだ熱いから気を付けてね」

「うん、あれ?このかわいらしい人形たちは?」


 昨日手慰みに作ってみた精霊ちゃん達。

 家に置いてきたはずなのに、なぜ一緒に仕上がってるのでしょう。


「うん、この子たちは、俺の大事な友達の姿さ」

「かわいらしいわね」

「いや全然。本物はもっと可愛いんだよ」

「あら、ちょっと嫉妬しちゃうわね」

「そうだ、この子たち、カーリンにあげるよ」

「え?いいの?」

「うん。きっとカーリンにもいいことが起きるような気がするんだ」


 授業の終了間際、すっかり冷めた精霊ちゃんの人形にアクリル絵の具で色を塗る。

 黄色ちゃん、赤色くん、青色ちゃん、緑色ちゃん、紫色ちゃん、そして、白色ちゃん

「あれ。色を塗ったらマシになったな」

「マシどころか、滅茶苦茶可愛いわ」


 ポリプロピレンと塩ビで作った、米びつのようなケースに六人の精霊ちゃんを入れる。

 つぶれないように間にくしゃくしゃにした紙を挟んでみたりして


「まあ、透明で素敵な箱ね。」

「でも、飾るときは出してあげてね。そして、時々甘いものをあげるといいよ」

「わかったわ!」

 カーリンはしっかり者だと思ってたけど。女の子だな

 お人形さんをみてテンションが高くなっているのが分かる。


 今日の終了のチャイムが鳴る。

「終わったわね」

「うん、じゃあ、また明日」

「シュンスケ、また明日。先生今日はありがとうございました」

「はい、また次の授業で」

「はいはい、そこも、もう終わりですよ。片づけなさい」

「はーい」


 次の日、

「シュンスケ!大変!」

「おはようカーリン」

「昨日もらった人形なんだけど!」

「うん?」

「言われたとおりに、ケーキを置いておいたの。そうしたら、朝にはケーキがなくなっ

 てて」

「うん」

「え?おどろかないの?」

「おどろいてるよ」

「それで、人形の手や口の周りがべたべたになってたの」

「えー」

 “みんな、どういうこと?”

 “えんしゅつだぜ”

 “りありてぃ”

 “こわかったかな”

 “おいしかったよ”


「ごめん、いたずらされちゃったね」

「?もしかして!」

「まあ、おいしかったって言ってるから許してあげて」

「そうなの?私の部屋にきてくれたの!」

 俺の周りに精霊がいることを知ってるカーリンは分かってくれたみたい。


 “しゅんすけのつくったおにんぎょうがあったらはいれた”

 “まどがしまっててもはいれた”


「カーリンの部屋にお邪魔したみたいだよ」

「そうなんだ。うれしいわ!シュンスケも一度来てよ!」

「え?カーリンのは女子寮でしょ?」

「大丈夫よ、シュンスケは可愛いから!」

「いやそういう問題じゃないです」


 異世界の女子は、日本より怖いかもしれない。冒険者だしな。


お星さまありがとうございます。もっと頂けたら♪

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