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42【初めてのお正月、異世界の】

最近一話が長くてごめんなさい。でも皆さん読んでいただいて嬉しいです!

 この世界では一年が三百六十日と、数時間あって、毎月三十日きっかりの十二カ月。そして、大晦日に当たる十二月の三十日にうるう時間が存在している。


 一年最後の日の前日まで、俺は冒険者活動をすごく頑張った。

 魔物があふれてたというダンジョンでは、SランクやAランクの冒険者が討伐して、年内に平静を取り戻すことができた。


 俺も、最終日は、分けられたランクを超えたエリアで、ミノタウロスをはじめ、たくさんの魔物を討伐した。


 「おい、シュンスケ。ガキが夜中まで働くなよ、とっとと帰れ」

 「まあまあ、ゲールさん、この子たちのおかげで、帝都の人達は安心して年が越せるんですから」

 「・・・すみません師匠、ディシーさんも、年末にたくさん持ち込んじゃって」

 王都のギルドには、大量発生して大量に討伐された魔物を処理するのに、ポリゴン町から解体要員として、解体士のディシーさんと、暇を持て余していたゲール師匠が駆り出されていた。

 「いいんだよ。シュンスケ君はポリゴン町の期待の星だからね」

 「シュンスケ、ほら、ミノタウロスの角ここに置くぜ」

 「はい!師匠ありがとうございます」

 「それから、こいつを受付に」

 そう言って、獲物の種類や数、重さ、魔石の数など、査定に出す内容が描き出された木札をもらう。魔石はもう、山ほど手持ちがあるので、売ったり、もう少し使い勝手の良い小さいサイズの魔石と交換してもらったりする。でも、今回は交換は面倒なので、まとめて売却だ。


 「角なんて何にするんだ?こんなにあっても邪魔でしょ?」

 ディシーさんに聞かれる。

 まあ、子供は大人には分からないものがお宝に見えるのさっていう感じで行こうかな。

 「学校の課題に使おうかなって。それにほら、俺は空間魔法が使えるから」

 「なるほど」


 ミノタウロスの角は効き目があるかどうかは分かってない精力剤の素材の一つらしいが、いまでは、植物の中にもっと良い材料があるそうだ。生きているときは、先がとがっているし、脅威となる角だが、シカの魔物の角に比べると、重量があって、柔らかいので、武器の素材にもならない。まあ、ゴミだ。

 でも、俺は知ってしまった。鑑定と地球人の知識とネットのおかげで。

 ふふふ、これは今後もぜひゲットしたい素材だ。

 「それから、角ウサギの角も山ほどあるぜ」

 「はい!もらっちゃいます!」

 角ウサギは、食肉用の獲物だが、この子の角もミノタウロスの角とほぼ同じ材質だ。ほかには犀の魔物とかの角も。

 どれも、討伐確認用の提出部位だが、確認後はゴミになるのである。

 つまり、ただで手に入る俺にとってはお宝だ。


 これからも、手に入るなら定期的に集めたい。


 さて、角を山ほどアイテムボックスに入れて多分ほくほく顔の俺。

 そうそう、最近空間収納を二つも拡張する事ができるようになりました。

 一つは、サブボックス。アイテムボックスのサブで、アイテムボックスと全く同じもの。

 アイテムボックスの中の物は、混ざったりするわけじゃないんだけどね、人前で、食べ物や、汚したくないものと、狩たてで血が滴っていたり、泥が付いてたりするものや、ゴミなんかを同じところから出し入れしたくないでしょ?だから、もう一つ分けることにしたんだ。サブの方に生臭いものとかゴミなどを入れるようにしたんだ。容量はどっちも多いから、どっちがメインとかはないんだけどね。

 もう一つはアナザーワールド。動物とか、自分自身が入れる空間。かくれんぼにはもってこいだね。でも、アリサやウリサからは使わないように言われている。

 隠れすぎて、探してもいなくなっちゃったら困るらしい。空間魔法の中で六歳児が迷子になってたらシャレにならないのは確かだな。


 忙しい毎日を過ごしながらも、魔法使いとして成長している手ごたえが感じられるのはうれしいね。


 大晦日のまだ夜も明けきらない早朝にやっと帝都の冒険者ギルドから帰った俺達ウリアゴは、風呂に入って、夕方まで寝ることになる。

 完全に蝙蝠生活だなこれ。

 お風呂から上がって、これから寝ようとする前に、ダンテさんが来てカーリンと実家のあるラーズベルト辺境伯領に帰っていった。

 「シュンスケ君のお屋敷で滞在させてもらったのに、討伐のためとは分かっていたけれど全然会えなくて寂しかったわ」

 「そうですね、たいしたおもてなしが出来なくて申し訳なかったです」

 「そんなことはないの。ここは海が見えて、お魚も美味しかったし、とても素敵だったわ。

 ラーズベルト領の城も、すごく広い湖に面しているの。いつか行きましょうね」

 「はい、そのうち、冒険者として依頼があるかもしれないですしね」

 「ええ、ではまた、新学期に会いましょう」

 そうして、すっかり元気になったカーリンが帰っていった。


 彼女たちを見送った俺は、とにかく寝る!

 年末の季節とは言え、白色君と紫色君にお部屋の調光をお願いして熟睡した。もちろん同じ動きをするウリアゴたちの寝室もね。

 

 コンコンコン

 「坊ちゃま、お時間ですよ」

 ガチャ

 「セバスチャン、こっちです」

 普段ならとっくに寝てる時間。いまは二十一時。日本にいたころよりは早く寝る。テレビがないからかな?個人的には動画は見れるんだけどね。俺は、洗面所で髪を寝癖を梳かしていた。


 「おや、ちゃんと眠れたんですか?。坊ちゃまはいつも寝起きがよろしくて、実際に起こしたことがないですけど。こういう変則な時間でも起きられるのは素晴らしいですね」

 「ほんとうは、もう少し寝た方が背が伸びるんでしょうか」

 枕の下に仕込んだスマホのバイブ付きアラームって目が覚めるよね。

 「焦ることはありませんよ。背は、大人になるちょっと前にぐんと伸びた方がスタイルが良いですからね」

 「そうなんですね。でも実際小さいのが不便です」


 セバスチャンとたわいのない話をしながら、ポリゴンに行くための服に着替える。

 新年を迎えるのだから、新しい服にした方がと言われたが、孤児院にも行くからいつもの擦り切れた自分自身の古着を着る。古着だけど、母さんが洗濯してくれてた服は、綺麗なものさ。

 タートルネックのセーターとダウンジャケット。うん、もこもこだよ。せめてということで、下着だけを新調したけど、この国の子供用の下着はあれだ、カボチャパンツだ、フロントが男子用になっている一応。落ち着かんし、ズボンの中でくしゃくしゃするから、ゆったりするカーゴパンツしか選べなかった。


 支度を整えて、玄関ホールに行くと、ウリアゴのみんなも集合していた。

 きょうは、冒険者の仕事ではないので、新年用の晴れ着なのかな?

 ウリサ兄さんは、ダッフルコート。すらっとしているから何でも似合うね。

 アリサねえちゃんはショートコートに、フェルトっぽいスカート。暖かそうなブーツ。

 ゴダは、最近ちょっと髪の毛が伸びている!寒いんだって。でも丸刈り状態ではある。

 その丸刈りの上からニット帽、ダッフルぽいショートコート。

 暖かそうな余所行きである。


 「では、皆さん行きましょうか」

 「ああ、頼むよ」

 「「行ってらっしゃいませ」」


 で、いつものように、玄関ドアをあけて、ポリゴンの冒険者ギルドのドアにつなぐ。

 「こんばんわー」

 「アリサ、久しぶり。ウリサさん、ゴダも!」

 「アザレ元気だった?」

 「おー」

 「お、シュンスケ君、こんばんわ。今夜も頑張ってね」

 といって、暖かい蜂蜜レモンのカップを渡してくれる。

 「はい!わー温かくて良い匂い。」


 アザレさんは、ポリゴンの冒険者ギルドのレストランスタッフ兼冒険者。

 俺が夏に氷を作りまくってた時も一緒に頑張ってくれた人。ちょっとしたおつまみ料理も上手だ。

 今日は何でかサンタコスでいらっしゃる。寒くない?


 「じゃあ、俺は教会に先に行ってきます」

 蜂蜜レモンを飲んで新年会に臨む。


 「シュンスケ君!待ってた」

 「はい、お待たせしました!」

 こっちこっちと手招きされて、ライ先生に教会の音楽室に連れられる。

 今日もなんと俺が着る助祭の服がおニューになってた。本職じゃないのに三着目って。しくしく。

 しかも今回のストラは金色でした。あ、なるほど新年の色ね。ほんとだそういえば、ライ先生も、ジラッテ司祭様のも金色。こんなの顔の横にあったら眩しいっつの。


 音楽室で着替え終わった俺は、そのままそこで本番まで二時間あるので、練習と発声練習を。

 “黄色ちゃん、あとで皆にお披露目するのだから、今はちゃんと防音してね!”

 “わかってるー ぼーおんちゅう” 

 さっき貰った蜂蜜レモンで、のどの調子もいいですよ。


 今日は、お正月用の曲があって、帝都でもちょっとしか練習できなかったけど、複雑ではなかったからまあ、何とかなるかな。厳かに聞こえればいいさ。

 おれの声で厳かにするのは難しいんだけどね。


 準備が整った俺は、大聖堂に入る。


 ポリゴン町の教会は、海と宇宙の神 ウォーデン神のための神殿でもあるので、正面中央にウォーデン神の大きな半跏思惟像 その向かって右に月と魂の神 タナプス神、そのまた向かって右に創造と太陽の神 ゼポロ神の台座が並ぶ。 そして、ウォーデン神の向かって左に大地の女神 アティママ神、隣に一度お会いしちゃった 水の女神 ウンディーナ神、風の女神 ローダ神、火と文明の神 ヘファイド神 の台座が弧を描くように並んでいる。

 俺がひくチェンバロは、ピアノのように右側を開ける蓋があるので、ローダ神の台座の前にいつも置かれることになっている。

 そして、俺が座ると、ほぼ正面に、ゼポロ神の台座があることになる。


 今日の大聖堂は満員御礼だ。座席真ん中の通路にも追加の椅子が置かれ、立ち見席の人もいらっしゃる。

 一番前は子供達。夜中なのに頑張って起きているみんなと目と目で会話をしちゃう。

 頑張るから応援してね!なんてね。聞こえたのかな?にこにこうなずいている。可愛いやつらだぜ。


 子供と無言のやり取りをして、緊張がほぐれた俺は、司祭さまのお話が終わり、合図があったので、チェンバロに座り、自分では新曲を弾き始める。


 ~全知全能の父神様よ~

 ~この世界を作りたまいし~

 ~太陽の神よ~

 

 教会で正月一曲目に歌う曲はこの世界の創造と太陽の神、ゼポロ神を称える曲だ。

俺の正面に台座がある。そちらを見ながら、歌う。

 “ねえ、俺はなぜこの世界に来たのでしょう、地球には戻れないのでしょうか”

 なんて念じながら歌っていた。


 すると、ゼポロ神の台座が光り出して、見ると、そこには威圧感たっぷりの男が立っていた。足は、台座から少し浮いているから、立っているというより存在していた。存在はあるけど、物質って感じがない。光の加減でお姿が見えている感じだ。


 “我らに翻弄される、哀れな魂よ。お主の運命はお主のせいではないとは分かっておる。子は親を選べぬ。しかし、私の意志でもないのだ”

 頭の中に、目の前のと同じ威圧感たっぷりの声が響く。頭が痛い。

 見回せば、時間が止まっているようで、会場のみんなの顔は俺にしか向いていない。

 誰もゼポロ神の台座なんて見ていなかった。


 一曲目を弾き終わった俺は、静かに手を膝に置いて、向かいの神様の言葉が続くのを待つ。

 “お主の存在は、我にも喜ばしいこと。今後もこの世界のために健やかに成長してくれ。そなたの親を咎めることはあり得ないと、機会があれば伝えてほしい。あちらの世界への行き方は、、、”

 肝心なところを聞き取れないうちに、光が収まり、気が付けば正面の台座も静かにいつもの様子を取り戻していた。

 “ちょっと待って!あっちに戻れるの?もう一度言って!”


 どういうことだ、俺は地球に戻れるのか?いつ?ゼポロ神の言葉は何だったのだ。そもそも、本当に神様なのか?俺が不規則な生活が続いていて、幻覚を見たのではなかったのか。


 大聖堂の大勢の前で思考の海におぼれていく。


 「こほん」

 祭壇の、ウォーデン神の前に立っていたジラッテ司祭の咳払いで我に返る。


 気を取り直して、二曲目。これはいつものウォーデン神の歌。

 気になるけど、ここは祭事に集中しよう。とちったら台無しだしな。

 

 最後に、お正月用の歌があって、一年の無病息災と子供たちの成長と、大地の実りを願う華やかな曲をみんなと歌う。

 フィナーレにいいやと思いながら、聖属性魔法を発動する。

 俺の体から出るはずの聖属性魔法を、さらに空間魔法を使って、大聖堂のマーガレットのような図形を装飾された天井からふわふわと舞い落す。

 紙吹雪のような桜吹雪のような、幻想的な演出。

 “きゃははは~”

 “すごーい”

 “ほれほれーまいちれー”

 “みんなげんきになあれー”

 

 精霊ちゃんも張り切って、桜吹雪を端っこの席まで飛ばしてくれています。

 「「「きゃーキラキラー」」」

 子供達をはじめ、何人か精霊ちゃんのキラキラも見えているみたいで、子供達は手を上に伸ばし、大人たちは両手を組みながら呆然とした感じで上を見回していた。


 この世界に来て、初めてお世話になったポリゴンの町のみんな。健やかに、穏やかに一年が過ごせますように。

 この世界は、神様が近いかもしれない。どうか、俺の身近な人を、この町の人を、この国の人を、そして、これから出会うこの世界の人に祝福を!


 初めは理不尽に感じた異世界転移。でも周りの方に感謝を、そして、これからのこの世界の安寧を願って、俺は最後のフレーズを、大聖堂のみんなと一緒に歌い切った。


 俺の、聖属性魔法はとっくに発動を切っている。だが、まだ大聖堂いっぱいにホロラメが舞っていた。 

 お言葉は、謎がいっぱいだったけど、ゼポロ神は俺たちを見守ってくれている。

 

 「寒くてさっきまで肩凝りが酷かったのに、今はなんとも無いのよ」

 「俺はこの前魔物にやられた火傷が治っちまった。綺麗さっぱり」

 「聞こえづらくなっていた耳が、歌の出だしから聞こえていて、今はすっかりみんなの話し声が昔のように聞こえてる。どういうことだ・・・」

 「膝が痛くない。後でこの杖を捨ててしまおうか」


 にこにこ笑顔の人と、涙を流す人、興奮して隣りの人と騒いでいる人たち。 

 座席の人達は立ち上がり、出口に流れて行く。


 大聖堂から、その前にある広場に出た町のみんなは、広場の真ん中で燃やされている大きなかがり火の前で、輪になって集まり、新年を寿ぐ。俺が大聖堂で歌った曲をみんなでアカペラで歌い、踊る。


 そうして、真冬のお祭りではしゃいで、ポカポカと体が温まっている中、この世界も地球と同じ、東側からご来光が上がってきた。

 俺は太陽に向かって手を合わす。


 “ゼポロ神よ、この世界を知らぬ、迷える俺を導いてくれ。”


 「司祭様、私は、大聖堂でこのような奇跡を見たことはありません」

 「ライよ。儂だって、お前さんより何十年もこの教会にいや、他の教会にもいたが、今日ほど心が震えることはなかったのじゃ」

 「この教会に何が起こっているのでしょう」

 「教会に奇跡が起こっているわけではない」

 「司祭さま?」

 「儂がただ言えることは、あの子は神に愛されているという事だろう。愛されるあまり、早々に神の世界に連れていかれることなどがないよう、見守るしかないじゃろう」

 「そうですね」

 気が付けばジラッテ司祭は、大聖堂の入り口で神像や台座ではなく、外にいる小さな少年に手を合わせていた。


駿介「凧揚げの凧ってどうやって作るんだっけ。ここには電線とかないからやりたいなー」

アリサ「この間シュンスケが言ってた凧っての作ってみたよ」

駿介「おお、ホントだちゃんと奴さんになってて・・・てあれ?糸は?」

アリサ「ここ紐があるのよ、こうやってシュンスケの両手と胴に結わえて。よし出来た、さあ、飛んで」

駿介「飛ばし方が違ーう!」

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