41【仮免冒険者、行きまーす!Vol3】
仮免冒険者三話目でーす
一日目の魔物討伐が終わり、カーリンの従兄を伴って屋敷に瞬間移動だ俺たちは、
本館の厩舎から、みんな揃って離れのホールへ歩いていく。
執事のセバスチャンが出迎えてくれる。
「ダンテ フォン ラーズベルト様 ようこそお越しくださいました。
皆様も、ご無事でお帰りなさい」
「今日は従妹のカーリンがお世話になったと聞きました。ありがとう」
「いいえ、坊ちゃまのお友達と聞きましたからね」
「ただいまセバスチャン。あれから、カーリンはどう?」
「先ほど、お目覚めになられたようです」
「そうですか、あ、ダンテ様そちらが手洗いになってます、それで、こちらのリビングで少しだけお待ちいただけますか?」
「わかった。手洗いを借りる」
「俺たちも先に着替えてしまおう」
「そうね」
「おいらたちは一度ギルドに行ってくる」
「そうだな、魔法袋を一度空にしたいし。こっちの分の魔石ももらってくるよ」
「兄さん、ゴダありがとう!」
そう言って、ウリサ兄さんとゴダは馬に乗りなおして出て行ってしまった。
まだ、六時台だしね。大人の男は英気を養ってきてくれ。
俺は、猿の返り血がちょびっと飛び散った服を脱ぎ捨てて、備え付けの手洗いで手と顔を洗いまくって、着替えた。
そうして、俺が自室から出るちょうど良いタイミングで、セバスチャンに連れられてダンテさんが三階に上ってきた。
カーリンのいる客間をノックする
「カーリン。起きてる?ダンテ様が来てくれたよ」
「シュンスケ君。大丈夫よ」
中から侍女のミアさんがドアを開けてくれた。
「ついていてくれてありがとう」
「はい。では、落ち着かれたら皆さん食堂へ」
「わかりました」
「カーリン」
「ダンテお従兄様!」
「よかった、少しは顔色が良くなったな」
「ええ、良かったです」
屋敷に連れてきたときは、本当に青白くなっていた。
「ごめん、ちょっといいかな」
「な、なにシュンスケ君?」
カーリンの頬を両手で包み、下瞼を少しめくってみる。
うーん、まあ、ツナバーガー一個ぐらいじゃ全然だよね。
コンコン
「シュンスケ、カーリン様にこれ」
「アリサねえちゃん、カーディガン貸してくれるの?」
「貧血の時は寒いからね」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
メイド服に着替え終わってるアリサが 直接カーリンに自分のカーディガンを着せる。
「セバスチャンが夕食にって。ダンテ様もどうぞ」
「いや、わたしは・・・」
「カーリンも知らない家で食事は始めは食べにくいでしょうから、一緒に行きましょう」
「では、お言葉に甘えて。カーリン、立てるか?」
「うん大丈夫よ」
ダンテさんがカーリンの手を取って支えながら部屋を出る。
「こちらです」今はメイドのアリサねえちゃんがうまく誘導している。
「セバスチャン、お客さんの分の晩御飯悪いね」
「いえ、今日は本館の料理人に、頼みました。私の料理をお貴族様にお出しするわけにはちょっと行かないですしね」
セバスチャンは器用だから、時々俺たちのご飯も作ってくれているけど、TPOに合わせた、手配がいつも完璧です!
それに、並べられたメニューも完璧!
俺がホストとして説明する。
「今日は、消化に良くて、貧血を改善する、海の幸尽くしの献立です」
マリネと焼き魚、茶わん蒸し。ここまであるのに主食がパンなんだけどね。あぁ米を食べたい。
「まあ、きれい。お野菜の彩りも素敵ね」
「魚はさっきの、ごつくて背の低い方の兄ちゃんがしょっちゅう漁の手伝いをしてて、貰って来ちゃうんだ」
「そうなんですね」
しばらくダンテさんにカーリンの学園での話を少し暴露したり、逆に暴露されたり、小さいときのカーリンのお転婆ぶりを聞いてしまったりと、楽しい会話の夕食が出来た。
「では、今しばらく、カーリンをお願いします」
二時間ほど滞在したダンテさんを見送る。
「はい、お任せください。また、明日よろしくお願いします」
「ああ、では、おやすみ」
入れ替わりでウリサ兄さんたちが帰ってきた
「ダンテ様はお帰りになられたんだな」
「ええ、明日も討伐の本部に詰められるそうです」
「討伐に行く俺らも大変だけど、差配する人たちも、俺たちにはわからない苦労があるんだろうな」
「そうでしょうね」
「それより、魔石ももらってきた、今日の分の報酬はもう口座に入ってるよ」
「はい、ありがとう兄さん」
魔石は、必要な場合は討伐した人のもの、魔石を換金した場合は討伐依頼の報酬と一緒に
パーティで均等割りという決まり。まだ俺がギルドに持っていけてない魔物も五十体持っている。・・・かなりすごい数だ。
「先に三人で風呂に入ろうぜ」
「そうですね!」
二人は、討伐後は魚より肉らしくて、ギルドでステーキ食べてきたんだって。
「それに、お前の友人だろうけど、気軽にお貴族様と晩飯なんて、食った気がしないぜ?」
「おいらも、ほら夏に、ここに来る途中のマルガン辺境伯様の晩餐っての?緊張したもん」
あれは、俺も緊張した!
風呂から上がって、寝巻に着替えた俺は、ウエストポーチから足湯用の檜で出来たバケツを出した。檜だから良い香りがするよ。
乾いた空っぽのバケツに幾つかバスタオルとかも持っていく。
同じく風呂上がりの寝巻に、俺があげたフリースを羽織ったアリサねえちゃんがいたので声をかける。
「ちょっと一緒に来て?」
「うん?何するの」
「カーリンもお風呂入りたいだろうけど、まだ貧血だもんね」
「そうね、一瞬でのぼせちゃうわ、危ないわよ」
「だから、代わりのやつを」
「まあ、そんなのがあるのね」
「うん、俺はしたことはないんだけどね、母さんは良くやってた。温まって眠りやすいんだって」
「へえ」
コンコンコン
「カーリン、寝た?」
「シュンスケ君。まだ起きているわ」
「失礼します」
「今日は、まだお風呂はだめだけど、足だけお風呂しない?」
「足だけ?」
「うん、こっちのソファの方に座ってね」
「わかったわ」
ソファの前に、バスタオルを重ねて、バケツを置き、火魔法と水魔法を混ぜながらそこにお湯を入れていく。
半分ぐらいまでお湯が入ったら、手を突っ込んで温度を確認。お風呂よりちょっと熱い方がいいんだっけ。よし、このぐらいかな。
「じゃあここに足を入れていて」
「うん、まあ、良い匂いね」
「でしょう、このバケツの木が良い匂いなんだよね。そしてさらにここに」
と言って、柑橘を出して皮をむいて少し入れる。
「ふふ、へえ、リラックスできるわね」
“えいっ えいっ”
黄色ちゃんが二人に増えて、湯気と香りが部屋にいきわたるように、頑張ってくれてます。加湿効果!
柑橘の方はどんどん剥いていって、みずみずしい実を三人で食べちゃおう。
ふふふ、お皿とフォークも三本持っております。アイテムボックスに。
「魔石はもうたくさん取れたから、カーリンにもあげるね」
「え?でも、なんかあの時飲ませてくれた薬も随分高価なものってお❘従兄様に聞いてたのに、魔石まで貰うわけにはいかないわ」
「でもね、百個以上あるんだ」
「ひゃく!」
「そう」
「そんなに魔物出たのね」
「ミノタウロスほど大きいのはなかったんだけど、ハリガネヒヒがちょっと厄介だったな」
「ハリガネヒヒ・・・」
「それからグレイウルフの群れ」
「それはもうCランク以上の仕事では」
「そうなの?俺自身はまだ仮免だからランクはないけど、パーティは俺が入らなかったらもうすぐCランクになるところだったんだよね?アリサねえちゃん。俺が入って足引っ張ってご免ね」
と見上げると、呆れた顔で返される。
「何言ってんのよ、ほとんどシュンスケが討伐しちゃったんじゃないの。あんたはすぐに単独でAランクになれるわよ。足を引っ張るのはむしろあたしかもしれないわ」
「まあ、でも、アリサさんもすごい冒険者さんだとギルドでは聞きますよ」
「え?あたしが?帝都に来てからはそんなに依頼を受けてないですけどね」
しばらく女冒険者たちの会話がつづいて、
「そろそろいいかな」
カーリンのほっぺもピンク色になってきたしね。
「ええ、手の指先とかまでポカポカしてきたわ」
「良かったですね。さあ、足を拭きましょう」
アリサ姉ちゃんがバケツから出したカーリンの足を丁寧にバスタオルで拭く。
そして、アリサお気に入りのボディクリーム(日本製)をいつの間にか持ってきてくれて、塗っていた。
「これ塗っとくと、乾燥しにくいからいいのよ。ついでにフットマッサージしましょう。血行?が良くなって良いんですって。魔法使いさんなら魔力の循環も良いらしいし」
「アリサさんありがとうございます。これも良い匂いですね」
「でしょう。お風呂上りにクリームを塗るとか、マッサージとか、シュンスケが教えてくれたの」
「強いだけじゃなくて物知りなのも彼の良いところですよね」
「ねー分かってくれる?」
「もちろんです。それに可愛いし」
なんか女子の話題にしては俺の話ばかりになってきた。
「じ、じゃあ、俺はお湯を捨ててくるよ。カーリンお休み」
「ええ、シュンスケ君ありがとう。おやすみなさい」
初日は、カーリンの大怪我というトラブルがあったものの、年末の魔物討伐は、死者を出すこともなく、終了した。
大晦日、すっかり元気になったカーリンは、ダンテさんとご実家の辺境伯領地に里帰りをした。
帰り際にカーリンは、
「ねえ、シュンスケ君、魔石のお礼に何がいい?たとえばぁ、私とか!」
「な、なにを言ってるのか、俺は子供だからわからないです!」
「えーだって」
「あ、じゃあ、新学期が始まったら、俺をリフモル先生からガードしてほしい」
「そんなの頼まれなくってもするわ!任せて!」
そうして異世界初の怒涛の年末が終わった。
カーリン「寄宿舎を引き払ってここで下宿したいわ、お従兄様」
ダンテ 「お前も可愛いもの好きか!」
カーリン「可愛いは世界を制するのよ」
アリサ 「名言だわね」
ーーーーーーーーーーーーーーー
お星さまありがとうございます。もっと頂けたら♪
ブックマークして頂くと励みになります!
それからそれから、感想とかって もらえると嬉しいです。