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39【仮免冒険者、行きまーす!Vol1】

ちょっと、暴れてもらおうかな

 年末年始は、異世界も冬休みです。


 この世界に来て、そろそろ八カ月になるんだけど、いまだこの世界の名前をなんて呼べばいいのかわからない。そもそも、ここがとある太陽系のとある惑星だとは思うんだけど、まだそこまで海洋交通が発達していないから、一周できる星だとは認識されていなくて、地球にいたことがある父さんは。知ってるかもしれないけど、〈ここは惑星です〉って言ってもいいものだろうか。


 とりあえず宗教的には、何人かの神様がいて、創造神様が ゼポロって名前なので。もうこの際、〈ゼポロの世界〉でいっとこうかな。ゼポロ神が作った世界だからね。別に口に出すことはない、ここの人たちは、他の世界があることってことはホンの一部の人が薄っすらとしか分かってないみたいだしね。


 年明け日本でいう元日は、ゼポロ神がこの世を作ってくださったことへの感謝週間という休暇がある。教会や神殿では神職が中心になって、信心の厚い人や地域の代表などが集まってお祈りをするそうだ。

 俺は二か所の教会に出席を要請されているのだが、厳正なるくじ引き(コイントス)の結果、ポリゴンへ!


 だがしかし、俺は他の予定もあったりするのだ。

「魔の森?」

「そうだ、ちょうど学園の隣の森から続いたところに、樹海があるのだ」

「そこに魔物が大発生していると」

「ああ、樹海の奥にダンジョンがあって、少し溢れていうのかもしれぬ」


 冬休みに入った途端、ふだん、海でばっかりお世話をしている、帝都の冒険者ギルドから森への討伐要請が出ていたのだ。だが、森は海より少し標高があるし、冬なので寒い。

 それで、少しでも森の討伐ができるならと、Dランク以上パーティに召集がかかっている。

「防寒具やその他を用意出来たら行くぞ」

「「「おー」」」

 もちろんウリアゴチームも参加だ!


 俺は、覚えたての付与魔法で、メンバーが身に着ける服や靴に防寒の効果をせっせと付与する。あとは、武器の持ち手などが凍り付かないようにね。

 もちろんグローブは身に着けるけど、凍り付いたり張り付いたら困るし。


 俺も、たくさん持ってる武器で、この討伐用に選んだ武器やグッズを、それ用のフォルダに入れて、迷わずに出せる対策をした。


 水の女神さまにもらった薬も順次小分けして、ギルド経由で無償で配ってもらったり、ウリアゴパーティには沢山預けた!


 あと、スキー用のゴーグルに赤外線機能をつけた。ああ、薄着のシーズンまでには効果が切れるようにしたよ?ちゃんと。

 精霊ちゃん達と仲の良い俺には要らないけどね、魔物の体温を感知出来たらいいからさ。


 それに、俺は新学期の課題のために魔石が結構必要なんだ。それを自分で調達したい!


 そしてウリサねーちゃんには特別に、ババシャツもとい遠赤効果のあるインナーを進呈しました。レディースものなので母さんのストックかな?許してね。


 いつも通っている、学園の森の中に敷地を示すフェンスがある。その敷地の外側に少し開けた場所があって、そこに幾つかのテントが張られていた。


「君はこの間のお祭りでチェンバロを弾いていたシュンスケ君か」

「はい、アスランティック皇太子殿下、覚えていただいて光栄です」

 友人によく似たイケメン皇太子様。

 今日は討伐対策本部として、帝国からも一つの軍が対策に出ている。対策本部長はこの皇太子殿下。

「いつも、弟と仲良くしてくれてありがとう」

「いえ、こちらこそ良くしていただいております」

「だが、君がここへ来るとは思わなかった。確かに強いとは聞いていたが、まだ六歳だったろう」

「一応、冒険者登録はできているんです。大丈夫です。気をつけて頑張りますよ!」

「ああ、怪我をしないでくれよ」

「はい!あ、殿下にもこれを。」といってポーションを他の人に見えないようにこそっと一つ渡す。元気一発!のドリンクより小さいから、邪魔にはならないだろう。

「!これは。ありがとう」

 そういって、軍の方に振り向いた殿下は剣を抜き、風魔法の乗った声をあげる。

「では、討伐開始!」

「おー」


 討伐は冒険者がメインで行い、軍は打ち漏らしが帝都に入るのを防ぐのが役目だ。


 ウリアゴも割り当てられた区画へ進む。てんでバラバラにいくと、間違って他の冒険者をケガさせてしまうから、ここは計画的に作戦が立てられている。


 三日前ほどから雪が降っていたが、森なので、地面一面積もっているというわけではない。。常緑樹の森は、梢の方に雪が積もっている。それがドサッと落ちるのも、討伐時の危険を増加させているだろう。


 “おうじ、ふぉれすとぼあ がくるよ、いつつ”

「フォレストボアが五頭来ます」

「オッケー」

「了解」

「俺先行きますよ」

「あ、ちょっとシュンスケ」


 今日は森だから、俺は弓ではなくショートソードを腰に差しているが、最近メインは各種魔法だ。

 獲物の真上に跳んでというか飛んで、細く絞った風の槍を打ち込む。

 バシュッ バシュッ バシュッ

「ちょっとはおいらにもやらせてよ」

「はーい」

 打ち取った獲物を遠隔ですかさずアイテムボックスに入れる。

 アイテムボックスの中の獲物入れフォルダを作っております。


 きょうは、俺のバディともいえる黄色ちゃんも、もこもこの黄色いフードのコートを着ております。これまたかわいい(緊張感無し)


 “おうじーつぎはおーく けぶかいやつ、さっきのぼあが にほんあしで あるいてるかんじ”

 解説付きでありがとう黄色ちゃん

「次はオークですってー」

 ウリサの頭上から風に乗せて伝える。こうすると叫ばなくていいから獲物に聞こえない。

 チームの声も黄色ちゃんに届けてもらっているので、叫ばなくてもいいと伝えている。

「もう?オークが出るのか。早いな」

「異常事態だねたしかに」

「冬のオークは脂がのってるんだぜ。じゅる」

 さすが、ゴダはぶれませんね。

 みんなの声は黄色ちゃんが運んでくれるんです。

「ちょっと見てきますー」

 スマホもトランシーバーも要らなくて便利。

 “黄色ちゃん、俺のバディたのむよ!”

 “おうじ!きいろばっかりずるい!俺も手伝う―”

 赤色くんもやる気です!

「このまま行くから、あいつの気をそらして、ちょっと西側にファイヤーボールを静止させる感じ」

 “おっけー、まかせろ”


 おお、オークは結構いますねー、十頭いや十三頭。

「ウリサ兄さん、オークは十三頭です。俺十頭いけますから、のこりお願いします」

「十って、さすが戦える魔法使いは違うな」


 赤色くんの火の玉に気を取られたオークたちをどんどん脳天からやってしまいます。


 追いついたウリアゴが残りを一頭ずつ始末したら、すかさず十三頭を収納!


「確かに、森に入った途端にいつもより強いのが多いな」

「やっぱり、この先に何かあるのかしら」


 “おうじたいへん、となりのえりあのぱーてぃが、みのたにやられて”

「みのた、ってミノタウロスね。けが?生きてる?」

「まだ、しんでないけど、しゅんすけのともだち」


「ウリアゴ以外に冒険者の友達はまだいないんだけど。〈フィストアタッカー〉だっけ、エリアわけの紙に書いていた名前」


「ウリサ兄さん、隣のフィストアタッカー達がミノタウロスにやられているそうです」

 風に乗せて通信する

「なに、じゃあ、そっちに行こう」

「わかりました。俺、治療できるので先行きますね。他のミノタウロスはいないみたいだけど気を付けて」

 もう、実質ウリアゴとは五十メートルほど離れている。俺は彼らの周りの警戒も、自分の魔法と、黄色ちゃん達でやりつつ、ミノタウロスを探す。


「いた!うぉ、しゃがんでいるのにでかいな」

 二足歩行の水牛の魔物は、腰回りを布で覆い、こん棒を持つ。これまでの魔物より少し知性がある。そいつがしゃがみこんで何かしている。その周りで三人ほどの冒険者がミノタウロスに狙いをつけているものの動けない様子。

 あ、誰かが押さえつけられているのか。積雪に血がにじんでいる。

 ここはやっぱり風だよね。

 “黄色ちゃん!赤色くん、出来るだけ細くね!”

 “はい!” “オッケー”

 人差し指に風属性と中指に火属性を乗せ、真直ぐミノタウロスに狙いをつけて上空から足の間の下へピストルみたいに構える。下に人がいるから、突き抜けないようにコントロールする。

 青い炎が針金のように伸びる。

 プシュッ


 ミノタウロスは瞬殺できたけど、下手に倒れたら、下の人がやばい。

 俺はそのまま勢いをつけて方向を変え、肩から奴の正面にぶつかっていく。

「俺を後ろから押してー」

 タッパが小さくて、体重も軽い!俺の一番苦手なのは体当たりなんだから!


 “ようし。おうじ、いっけー”

 背中から風が押してくれる。

「うぉーっ」

 ドオッッ

 でかい体があおむけに倒れていく。

 直ぐに被害者の上にまわり、倒れるミノタウロスの足などが、当たらないようにガードする。

「おい、大丈夫ですか!これはひどい」

 剣士だろうか、アリサねえちゃんと同じような女性が、剣を持っている右腕を袖ごと千切られいる。

「「「カーリン」」」

 固まってた人達が動き出す。

 え?あ!カーリン?本当だ!同じクラスの。集合したときも気が付かなかったなんて!

「ああ、カーリン、しっかりして。今助けるからね。」

「シュ ンス ケ くん?」

「うん!もう大丈夫。ミノタウロスやっつけたよ!」

 俺は彼女の上半身を抱えながら、全身から聖属性魔法を発動してカーリンをそれで包む。

「ちょっと寒いけどごめんね」

 カーリンの袖の千切れたコートの前身ごろを脱がす。今の魔法で血は止まったけど、コートが真っ赤だ。

「ああ、痛かったな、もう少し頑張って」

 もう一つ下の服のボタンも外して、タンクトップ状態になる。

 “赤色くん、空気を温めてくれ”

 “よっしゃ!あ、かーりんだ、しっかりー”

 精霊たちは俺の周りの人の名前を憶えていたりする。


「シュンスケー!大丈夫?」

「アリサねえちゃん。俺は大丈夫。ちょっと手伝って」

「わかったわ、どうするの」

「そこに落ちている腕を持ってきて」

「これね」

 腕と、剣を両手に持って近寄ってきた。

「袖を外せる?」

「血が、少し凍り付いていて」

「こっちに持ってきて。あ、フィストアタッカーのリーダーさん」

「はい、俺らのメンバーなんです。何かできることないですか」

「彼女の予備の上着あったら出せますか?」

「わかりました」

 冒険者なのに受け答えが丁寧だな。

「シュンスケ」

 アリサ姉ちゃんが持ってきた腕の、千切れている傷口のところに、水に近いお湯を魔法で出してゆっくりかける。

「よし、袖が外れたわ」

 俺は、女神のエリクサーのアンプルを口で開け、カーリンに飲ます。

「もうちょっと頑張って。これ飲んで」

「う・・んく」

「のめたね。いい子」

 エリクサーを飲んだカーリンの肩の傷口も聖属性のキラキラが光り出す。


「じゃあ、アリサねえちゃん、腕をくっつけてあげよう」

「ええ」

 出来るだけちゃんとつながるイメージで、カーリンの肩と、上腕を押さえつける。そうして押さえつけた手から俺も聖属性魔法を再び発動する。


「リーダーさん」

 魔法を発動しながら、フィストアタッカーのリーダーを呼ぶ。

「上着ありました」

「はい。それと、カーリンは一命をとりとめましたし、腕もつながるでしょう。しかし随分出血しています。このまま彼女は討伐を続けるのはやはり危険です。寒いですから、体温が保てなくて低体温症になる可能性があります」

「ああ、今回は離脱しよう」


「シュンスケ君」

「カーリン。まだじっとして」

「私、課題用の魔石が足りなくて」

 ああ、俺と同じ課題のために討伐に来ているのか。

「大丈夫。カーリンの分も魔石を取ってくるよ!」

「そんな、シュンスケ君、私・・・」

「カーリンはクラスメイトなんだから!困ってたら助けるよ」

 務めて明るい表情でカーリンに笑いかけてみる。


「なあ、シュンスケ、彼女だけ離脱って手もあるのでは?」

 ウリサ兄さんが俺も思っていたことを言ってくれる。

「そうだね兄さん」

 まだ、昼過ぎたところだ。

「俺たちはまだ出来るんですけど。カーリン様を救護所まで運ばなければ」

 ん?カーリン様?あ、この人カーリンの従者だ。彼女が実家に帰るときとか、学園の門に迎えに来ているのを見たことがあるな。

「本部か軍にカーリンの身内はいらっしゃいますか?」

「皇太子の側近に従弟がいらっしゃいますが」

 アスランティック殿下のそばにいたのかもしれない。


「わかりました。では俺が連れて行って、すぐに戻ってきます。

 皆さんはここらで暖を取りつつ、少し休憩しませんか?」

「そうだな。多少消耗しているしな」


「じゃあ、薪を置きますよ」

 薪の準備の間、アリサねえちゃんにカーリンをお願いする。

「石持ってきたぜ」

「ありがとうゴダ」

 石を少し積んで、真ん中に薪を入れる。新聞紙に魔法で点火したら薪にくべる。

 本当は、薪に火がちゃんと燃え移るまで面倒を見る必要があるんだけど。

 “赤色くん頼める?”

 “まかせとけ!”


「アリサねえちゃんありがと。すぐに戻ってくるから。これ」

 と言って、お湯の入れてあるポットとティーバッグを幾つか渡す。

 カップは各自で持っているはずだ。

 あとこれ。と言って俺が預かっているみんなの分とあと三人分のサンドイッチを渡す。お昼だしね。

「うん。シュンスケ、気を付けてね」

「ねえちゃんも」


「じゃあ、カーリン行くよ」

「うん、え?あ」

「じっとしてね。カーリンは重くはないけど、俺が小さいから不安定でしょ」

 と言いながらお姫様抱っこをする。コートの下に着こんでいた鎧も外してもらっているので。背は高いけど、スレンダーだから平気だよ!


 瞬く間に、対策本部のすぐそばの森の影に瞬間移動()んだ。

「え?もう着いた?結構奥で戦ってたはずなのに」

「うん、結構奥だったよ」


 カーリンを抱えたまま歩く。本部の天幕を覗く。

「皇太子殿下あの、ここに」

「おや、シュンスケ、どうした?

 あ、そなたはカーリン殿じゃないか。おい、ダンテ、従妹君が」

 皇太子が、傍らのテーブルで地図に印を書き込んでいる男性に呼びかけた。

「はい殿下? カーリン。ああ、酷い血じゃないか、すぐに救護所に。」

 カーリンと同じ、紫色の髪と青い目の青年が俺に抱っこされたままのカーリンに心配そうな目を向ける。

「ダンテお従兄(にい)様、ごめんなさい。ちょっと失敗して」


「ダンテ卿、カーリンさんのクラスメイトのシュンスケと言います」

「ああ、チェンバロの」

 あなたも聴いてくださった方なんですね。


「カーリンさんは、ミノタウロスに遭遇して、利き腕を損傷したんです」

「なに。大丈夫なのか?カーリン。」

 上着は変えたけど、ズボンとかはそのままだ」

「ええ、シュンスケが、治してくれたの。もう傷跡もないわ」

「よかった。だからまだ討伐なんか早いと。っとすまないそれで?」

 ダンテさんは、カーリンさんを大事にしている良い従兄さんだな。

 んじゃ、しっかりお願いしよう。

「傷は治せたのですが、出血が多くて、二~三日は安静が必要です」

「そうか」

「それで、彼女だけ連れてきたのですが」


「さっそく救護所へ」

 皇太子も面識があるのか、当然のように手配しようとする。 

「だめです殿下。私はもう怪我は治っているのです。安静にするだけで、限りあるベッドを使うわけにはいきません」

「しかし、カーリンの実家は遠いし」

 そうか、カーリンは貴族用の寄宿舎で普段は生活しているけれど、いま、学校が冬休みで閉鎖しているな。


「あの、ダンテ様。差し出がましいようですが、俺の家で過ごしてもらってもいいですか?ここからなら馬車ですぐのマルガン邸の離れなんです。執事と侍女がいますので」

「うーん」

 ダンテさんは考え込んでいるが

「ダンテ、ここはシュンスケ殿に甘えろ。その方が安心だ。彼の治癒能力は教会のお墨付きだしね」

 そう言いながら皇太子が俺にウインクを飛ばす。

 うっイケメンのウインクは破壊力あります。


 考え込んでいたダンテさんが俺に向き合う。

「申し訳ないが、お願いできるか?この礼は必ず我々ラーズベルト家でさせてもらう」

「お礼は気にしないでいいですよ。クラスメイトなんですから。じゃあ連れていきますね。」

「うむ」

 そういって俺はフェンスをくぐり、学園側の森に入る振りをして屋敷に戻った。

 馬車は持ってきてないので。


すこし長編なので続きます

荒事に挑戦するのは難しいですが、お付き合いください。

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お星さまありがとうございます。もっと頂けたら♪

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