36.5【無限に広がる空間の魔法】
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帝国学園の図書館の地下の閲覧室で寝転びながら何冊かの本を読んでいる。
初めに読んだのは、
〈おサルでもわかる空間魔法入門〉
だが、〈はじめに〉のページで
〈これは分かるだけであって、使えるようになるかは本人次第の魔法である〉
ふむふむ。
そもそも、この魔法はスキル魔法の欄に〈空間〉が無いと可能性は無い。
・・・それはある。
一般的なものは〈アイテムボックス〉これは異次元を指定して物体を出し入れするものだ。物体を入れている間はその空間の維持のために魔力が消費され続ける。魔力量が魔法使いのエリートの宮廷魔法士クラスでないと大量のものを保存するにはむずかしい。
イメージするなら、魔法のカバンや、魔法の袋がよいだろう。あれは、アイテムボックスの優れた能力の魔法使いが付与して生産したものと、魔法陣を付与して作られたものがある。
魔法のカバン・・・母さんのウエストポーチもそうかな。そうだろうな。
寝転んでいる俺の尻の上らへんに装着しているカーキ色のポーチ。大きさからすれば、財布とスマホと、ハンカチとポケットティッシュを入れたらパンパンになってしまうていどの大きさだ。ここに今、無限に物が入っている。
これの中を意識して、目の前の一つの本を空間に入れてみようかな。あ、入った感じがする。目の前に会ったの本が一冊消えている。
それで、入っていった異次元から本を取り出して、元の場所に置く。置けたね。
それを何度か繰り返す。
今度は、ウエストポーチから、コップを出して、魔法で氷を入れる。
そして、氷の入ったコップごとさっき本を入れた空間に入れる。目の前からは消えた。
俺は、ちょっぴりクッションのきいた大型スーパーのキッズコーナーの床でゴロゴロしてみる。
誰も見ていないから恥ずかしくなんてないよ。でも別な意味でむなしいぜ。
さて、ゴロゴロしたので、またうつぶせになって、さっきの氷が入ったコップを出す。
入れた時のまま、溶けて水滴が増えているわけでもなく、ころころした氷が一つでも外に飛び出たり空間に置き去りになったわけでもない。
そういえばウエストポーチにもそのまま入れられるんだよ。
ウエストポーチの中に入ってる俺のリュックサックなんて、そこから出して普通に物を入れるなら、口の蓋がないと悲惨なことになるもんな。ペンケースさえばらばらになって、最悪マーカーの蓋が外れて、ノートが蛍光ピンクに染まったことがあったっけ。
でもアイテムボックスにはそのような事故はなさそうだ。
俺は【おサル】シリーズの本をもう一度見る。
アイテムボックスは、生き物は不可だそうだ。
この異次元は普通の空間と空気の密度が違うそうだ。空気を少し手も含んでいると、食品を入れてお行くと傷む。また多くの魔力を圧縮して作り出した空間なら、時間も止まり、物質の状態が止まる。例えば、冷たいものなら冷たいまま。暑いものなら熱いまま、生ものの食品は腐ることはなく、発酵食品は残念ながら発酵が止まる。ワインなどを入れておいても、製造年月日は過去になっていても、収納したときの風味のままになる。
なるほどなるほど。
では、もう一度氷をコップごと入れて、夜にどうなったか見てみようかな。
〈さて、アイテムボックスの容量だが、ある程度使いこなせば、自分の容量が把握できるだろう〉
うん?容量の把握?わかんない。まだ出し入れを何度かする必要がある?
〈次に、代表的な空間魔法としては、瞬間移動。一度行ったことのあるところにしか行けない。これを使うには相当な魔力が必要だ〉
一度行ったことのあるところ。たとえば、ポリゴンに帰れちゃう?
俺は裸足のまま立ち上がり、孤児院の本の部屋を思い浮かべて目を閉じる。
「あれ?シュンスケ?」
「ほんとだ、ていとにいったんじゃないの?」
あ、ヨネちゃんとチヨちゃんだ。
「おうじ?わあ、がっこうのせいふく?」
マツもいる。
「ほんとう、にあっててかっこいい!」
「似合ってる?ありがとう。
ちょっと魔法の練習でさ」
「魔法の練習?」
「失敗かも。じゃ」
といって、何とか図書室の地下に戻ってきた。
瞬間移動、めっちゃ便利!しかも全然疲れないぜ。
〈瞬間移動をうまく使うには、ドアを利用するのもよい〉
ドア? この部屋にはドアがない。一つ上の階ならあるんだけど。
そう思いながら、取っ散らかっている本を一度片付けに行く。
そして、地下の下の方にあるドアを、地下一階のドアに繋げるイメージをつけて開く。
お!うまく行った。地下三階分上らなくて済んだ。こりゃあ楽だ!
という事は、直接海の家に帰れる?
俺はもう一度地下へ行く扉を開けると、目の前にあったのは海の見える部屋とドーンと置かれている天蓋付きの別途だった。
そのまま扉を閉じて図書室に戻る。
ほんとに楽。しかし、行ったことがあるところしかいけない。
逆にあらゆるところに行っておけば、何処にでも行けるんじゃないの?
そうだ、東京の俺の部屋にいけないかな・・・。
何度かドアを開けてみた、クリスマスイブの朝に出かけた俺の部屋を意識しても、母さんが居るかもしれないリビングを意識しても、その向こうは図書室の地下閲覧室だった。
俺は、すこし沈んだ気分で、そのまま図書室の地下に歩いて降りる。なんだかもう魔法で移動したくなくて。
そうか、魔法を使っても帰れないんだ。東京には。
“おうじ、なんかおちこんでる?”
紫色ちゃんが俺の頬を撫でている。
久しぶりに東京を思い出して、泣いていたみたいだ。
ホームシックがまた来たのかな。
ちびっこでよかった。
「心配してくれてサンキュ。ちょっとな、母さんを思い出した」
“そうなの?よしよし”
ふふ、手が小っちゃすぎてくすぐったいぜ。
夜、まだ気分が浮上していない俺の様子がばれたのか、アリサがベッドに潜り込んできた。
確かに柔らかくて暖かい存在が嬉しかったのかもしれない。口には絶対出さないけどな。
おかしいな、母さんと寝た記憶なんて残ってないんだけど。
それから数日後の休みの日に、今度は自分の部屋で、地下の閲覧室から貸し出してもらった空間魔法の本を読んでいる。
今日のテーマは〈アナザーワールド〉
これを使える人は創造神か風の神の加護があるのが条件だ。
風の神様のご加護、ありますよ!
じゃあ俺にも使える?
なになに。〈アナザーワールドは等身大の箱庭をイメージする。
異空間に、もう一つの自分の部屋を作り出すのだ。初めはしっかりその空間の内容をイメージしなければアナザーワールドは開かない。
しかも、アナザーワールドは、アイテムボックスなどの何百倍も魔力を使う。使う魔力としては六〇〇〉
あれ?俺の魔力ってもっとあるよね、けたも違うぐらいに。
とりあえず、六帖位の扉の箱を作ってみようかな。
自分の部屋のトイレのドアを利用して一つの箱をイメージして開ける。
「あ、便器が無くなっている」
いやいや、トイレのイメージしてどうするんだよ俺。
もう一度開ける。
今度は、フローリングとコンクリート打ちっぱなしのような壁の箱が出来た。
四隅がある。
そのまま靴を脱いでそろりと入ってみる。
なるほど、これは入れるね。
後ろには俺が入ってきたドアの扉があるけど、いつものトイレのドアとはデザインが違う。
ドアノブを握って、自分の部屋に戻る。次は何も考えずにもう一度ドアを開けると、便器が復活していた。よかった。新しい部屋よりも、トイレが無くなってる方が困るよね。今は。
そのあと、いろいろ色々イメージしてはドアを開けて、最終的に、コンクリート打ちっぱなしの、まるでガレージや倉庫のようなものに落ち着いた。
ここを何かの作業の場所にしようかな。そこに、マルガン寮に滞在したときにかった、中古の椅子二つとテーブルを出して、先日アイテムボックスに入れっぱなしだった、氷の入ったコップを置く。うん、まだ全然溶けていない。
アナザーワールドでアイテムボックスの出し入れができるんだ。便利だし面白いね。
そして、その空間をそのままで、俺は自室に戻った。
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