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33【ちっこい俺でもビビる、小さい恐ろしい厄災が来ていた】

 「今晩はー」こそっと孤児院に入る。

 孤児院は、職員の詰所から入って子供たちのいるエリアになっている。変な人がいきなり入ってこないようにね。


「おやシュンスケ。今晩は。きょうは、ちょっとここには泊められないんだ」

「ライ先生。どうしたんですか?」

「質の悪い風邪が流行っていてね、一部の赤ん坊以外ほとんど寝込んでいるんだよ」

「それは大変ですね」

「だから・・・」

「せめて、シトの顔だけでも見れませんか?」

「そうだな、一緒に行こう。きみ、ここを頼んだよ」

 シスターに一言声をかけて、助祭のライが立ち上がる。

「あ、先生はまだ風邪をひいてないんですよね」

「ああ」

「ではこれを付けて」

 使い捨てのマスクを渡す。自分用に子供サイズも出す。

「こんな風に耳にひっかけるんだ」

「こう?」

「そうそう。では行きましょう」


「近寄ってはだめだよ」男の子の部屋の前。

 “おうじ、このおへや くうきわるい”

 黄色ちゃんの分析

 “どう悪い?”

 “ちいさい まものが いっぱい、いっぱいいる”

 うーん 空中の鑑定はしたことないけど出来るかな。

 鑑定:・・・インフルエンザウイルス浮遊中

 なるほど。

 “白色くん呼べる?”

 “うん”

 シトのベッドに近づいてカーテンを開ける。

 うわ、初めて会った時のように発熱中だ。

「ライ先生、みんなこんな感じですか?」

「そうなんですよ」

 ライ先生マスク似合うじゃん。

 とりあえず、俺の安眠のためにも

「シト、大丈夫?」

「あ、触っちゃだめですよ」

「俺は平気です」

 シトの額に手を当てる。

「熱っちー。まえの時より酷いじゃん」

 シトに触れたまま鑑定する。

 状態異常:インフルエンザウイルス MAX感染

 やっぱりかー。

 赤外線体温計を出して図ってみる。うぉ三九度。やばいじゃん。

 掌にうっすらと氷を出さないように氷魔法を発動してライの首筋に触れる。

「うん、あ、シュン スケ。きて くれた。また、たすけてくれるの?」

「うん、もうちょっと辛抱してね」

「ふふ、がんばる」

 掌の氷魔法を聖属性魔法に切り替える。キラキラとホロラメのような光が俺の手のひらから出て、シトを包んでいく。

「シュンスケ、これは?」

「きれいでしょう。最近使えるようになったんですよ。でも・・・」

 もう一度鑑定するも、あまり変わっていない。

 うーん、病気は魔法を振りかけるじゃだめか。もうちょっとイメージを固めるか。

 スマホを出して検索する。インフルエンザウイルスってどんなだ。電子顕微鏡の写真が色々掲載されている。大きさも〇,〇八マイクロメートル。うん、小さすぎだな。小さいのに人様を襲うとは、異世界にまでいて!どっちに先にいたのか知らないが、そのウイルスをターゲットに、やっつけるイメージを固めて、もう一度聖属性魔法を発動する。

 キラキラはきれいだけどねー。

 どうだ?鑑定:インフルエンザウイルス 弱感染

 やった、マシになった。

 もう一回!

 今度は成功 鑑定:少し衰弱

 インフルエンザの文字が消えたぜ!

「しゅんすけ、らくになったよ!あれ、へんなのつけてる。かおが はんぶんしか みれない」

「これはマスク・・・あ、こら、まだ座っちゃダメ!」

 これだから子供は、楽になっただけで治ったと勘違いするから!

「ライ先生、水差しとコップない?」

「ここにありますよ」

「中のお水を一度、捨てますね」

 水差しとコップに光魔法で作った紫外線で殺菌する。

 窓際の棚の上で帝都で買い込んでいたレモンみたいな柑橘をナイフでくし形に切って果汁を水差しに絞り入れ、お砂糖と塩を足して、魔法で生ぬるいお湯を半分満たしすと、ぐるぐる大きめのスプーンで混ぜる。お砂糖と塩が解けたら今度は水だけを足して、よし、手作りのスポーツドリンク完成だな。混ぜてたスプーンから自分の舌に落として味見。うん水よりは美味しい。

「ライ先生、今、作り方見てた?」

「はい」

「味見もしておいてね」とスプーンに乗せたドリンクを舐めてもらう。

「なるほど?」

「塩をね、入れるのが大事なんですけど、甘くしないと飲みにくいので」

「へえー、帝都の学園で勉強したんですねー」

 いや、騎士科の同級生に教えたのは俺。


 水差しからコップに入れたドリンクをシトに持って行って飲ませる。

 もう、ベッドで座って待ってた。

「まえにもくれたやつ?」

「うん」

「なるほど、以前もシトにこの飲み物を飲ませたから治ったんですね?」

「いえ、薬は入ってないし、これで治したわけじゃないですよ。汗だくだったから」

「しゅんすけ、きょうのほうが すっぱくてあまくて おいし」

 お、市販のやつよりお気に召したか!やったぜ。

「前に飲んだ味覚えてたのか?それはすごい。」

「うん」

 座っている間に、光魔法でシトの敷布団やまくらを殺菌する。そして、掛布団も。

 “白色くん、今の皆のに出来る?あとこの部屋全体で”

 “まかせろ!”

 白色くんはボーイッシュな光の精霊。ブラックライト的な殺菌はお手の物だね。


「明日まで寝といてね。俺もここで泊まるから、明日一緒に朝ごはん食べよう」

 もう一度横になったシトの上掛けをポンポンする。

「うん。ふふ シュンスケ ひさしぶりでうれしいな」


「じゃあ、次の子、あ、まっちゃん行きます。ライ先生はキッチンでさっきのドリンクもうちょっと作ってて下さい。はい、材料。水は湯冷ましでも大丈夫。」

 小さい子ほど体力ないしな。急がなくちゃ。


 初めて女の子たちの部屋に入る。

「シスター。シュンスケです。入っていいですか?」

「あら、シュンスケくん。ダメよ」

「大丈夫、おれ、さっきシトを治せたから。まっちゃんとか、小さい子から診ていいですか?」

「わかったわ。お願いね。」


 そうして俺は孤児院の子を一人ずつ見て回った。熱が出てなかった子も、これからって感じに感染していて。とにかく全部の子に聖属性魔法をかけた。あ、ライ先生とシスターたちにも念のため。


 皆の病気が治って安心した俺は、久しぶりの孤児院のベッドの中。

 屋敷の天蓋付きのベッドもいいけど、広すぎて寂しいもんな。子供たちの存在感とか、皆といるって感じでいいよな。

 なんてぐっすり寝ていたら、

 ちょ、だれ?おも。いや、顎にモフモフがあたる。

「うにゃー」

 自分の上掛けをそうっとめくる。

「ちょっと、まっちゃん」

「うんん」

 俺の腹の上でさらに丸くなる猫人族のマツ。

 相変わらず可愛いけどね。俺もちびだから重い。

「こら、ここ男の子の部屋」

 ポンポンしながらモフモフもする。

「ほら、朝ごはん行かないとなくなっちゃうよ」

「あさごはん」

 ぱっちり

 ふふ。起きたね。

 お互い低いお鼻をスリスリ。

「えへへ」

「もー起きてたんでしょ!降りるよ」

 二段ベッドの上。元気になったマツはするんと降りる。梯子要らず。

 さすが子猫の身体能力!


 それより!今日は、俺の冒険者デビューだ!害獣や魔物を狩るぜ!

 仮免許ももらったしな!張り切っちゃうぜ。

 元気になった子供達みんなで朝ごはんを食べた後、俺は意気揚々と冒険者ギルドに行く。


「シュンスケ!」

「アリサねえちゃん、ゴダ、ウリサ兄ちゃんも。おはようございます」

「おはよう」

「おー、昨日はお疲れ、孤児院大変だったんだって?」

 ウリサ兄さんは情報をゲットするのが速いね。

「うん。でももう大丈夫!さ、今日は討伐だね。」

「それなんだが、シュンスケの初仕事は違う」

「なになに?」

「施療院で病気の治療だ」

 ウリサが指名依頼書をパラり。

 ガーン

「せっかく冒険者デビュー・・・しかも仮免冒険者に指名依頼って」

「元気出せ、魔物も怖いけど、病気も怖いんだからな」

「ウリサ兄さん」

「おいらがかわりに肉を取ってきてやるよ。最近帝都で魚ばっかりだったしな。肉も食べないと、顎が弱るぜ」

 そうだよゴダ。肉食べたいよ。

「昨日の様子だと、施療院も午前中で終わるでしょ?昼また戻ってくるから、午後から一緒に行こう!」

「うん!アリサねえちゃん!俺がんばる」


 そうして俺は、朝は施療院、昼は初討伐と一日中働いた!


「Dランクの仕事より、治療費のほうが収入がいいのね。すごいわシュンスケ」

 報酬をもらったギルドの受付の前で、アリサ姉ちゃんが言う。

「そりゃな、病気を治せる奴なんてなかなか貴重だからな。軽傷を治してくれる魔法使いは冒険者にもいるけど、また、違うらしい」

 ウリサ兄さんも言う

「シュンスケは怪我も治せるし、この四人パーティはもっとランク上るぜ」

「そうだな!まだまだ頑張ろう」

「「「おー」」」


 そうして、また俺たちは帝都に馬ごと屋敷のビーチ側に瞬間移動()んで(冬だから人いないから)帰ってきた。

 肉料理をお屋敷の侍女のミアさんと一緒に料理して、冒険者デビューのお祝いのご馳走を楽しんだ。

 やっと冒険者!仮免だけど。

 忙しかったけど、この世界に来てもうすぐ十カ月になろうとしていた。


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