表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/247

27【地下室で秘密の読書】

 あれから、俺の肩には常に黄色(仮)ちゃんがいる。他の子は基本温室で会う。でも黄色ちゃんに頼んで呼んでもらうこともできる。

 俺以外には見えてないようだ。

 呼びにくいから名前を聞いたら名前はないんだって。じゃあ、とりあえずの呼び方でこれに落ち着いている。

 “いまはまだ、だめなの”

 それから、俺に駿介って呼んでくれって頼んだのに、これも

 “それは、だめなの”

 だってさ、〈おうじ〉は落ち着かないんだけど、他の人には聞こえてないらしいので、しばらくはそれで行く。


 さて、話は戻って、図書館で課題をする授業だ。

 火属性専門の図書館棟に向かった殿下を見送った俺は、教授に促されて、地下への階段を下りる。後ろから教授も付いてきた。

 一階層分ほど階段を降りたところには、八帖ぐらいのホールになっていて、その前には二枚並んだ扉があった。ポリゴン町の教会というか神殿でみたような、複雑な模様と文字が彫り込まれた立派なドアだ。高さはないけどね。三メートルぐらいかな?

 今なら、この文字が読めますよ。


 〈このドアのカギはそなたに。有るのであれば開くことができる〉

 読めたけど、理解はできないね。普通の鍵ではないってことね。何が選別の基準なんだろう

「シュンスケ、おぬしなら開けられるじゃろう。扉に手を当ててみなさい」

「わかりました」って答えたのに

 “あたしが あけたげる〜”って肩から黄色い子が飛んで行って、ドアの前で消えた!

 今日の黄色ちゃんは、ツーピースのスカート姿。お腹が見えてます!


 そして、ドアの模様が美しく光りながら、自動扉のように俺に向かって扉が開いていくのだ。重厚なドアなのに、音もなく開く。

 そして、ドアの内側に黄色ちゃんが張り付いていた。

 “おうじ どうぞー”

 ちっちゃい手で どうぞーってポーズがまた可愛いぞ。


「ふぉっふぉっふぉ、さすがじゃな。手を触れずとも開けるとは」

 教授には自動で観音開きしたように見えたのか?

「じゃ、しっかり課題をしてきなさい。」

 「わかりました」


 図書館の地下は、実はすごい蔵書量のこれまた図書室で、属性を混ぜて用いる魔法とか、属性のない魔法とか、珍しいスキル系の魔法の魔導書や研究をまとめた書物がぎっしり保管されている。

 書物だけではなくて、立体的なイメージを表した模型のようなものもある。


 広さは地上六棟分の面積で、全部で地下四階まであるのだ。

 むしろこっちがメインの施設ではなかろうか。だが、入口で該当する条件又は、まだこの世に認められていないスキルがあるかどうかを自動的に検知されて、通れるようになるそうだ。

 その認められるスキルの中に精霊魔法もあるそうだ。良かった。


 観音開きの扉の向こうには今度は螺旋階段がある。それを下りながら、時々出てくる入り口に入り、書棚や他の展示物を見て回る。まだ、何も取り出さない。

 そうして、地下三階から最下層に出る手前に、とある本があった。


 こ、これは!魔法とは全然関係なさそうで、一番俺に必要なタイトルだ。タイムリーってやつだな。

 〈お猿でもわかる整理整頓術〉


 その本をもって、最下層に移動する。

 黄色ちゃんが、“いちばんふかいかいが ほんを よむとこなの”って言ってくれていたから。


 そこには、よくある閲覧室のような、読書机や椅子などはなく、だだっ広い空間だった。

 入り口に〈土足厳禁〉と書かれていて、おれは喜んで靴を脱ぐ。ついでに靴下も脱いで靴に突っ込む。そして、一段高い床が広がっている。馴染みのある感じ。


 裸足で踏み入れると、床が足を包み込むようにへこむ。ああ、ちょっとクッションのあるマットみたいなところだ。大型のショッピングセンターで乳幼児がはしゃぐエリアというかあんな感じ。ふわふわしていて、俺みたいなちびっ子が転んでも絶対怪我をしない床。表面もビニールというか太鼓の皮の様な感触。


 そして、そのクッション地の床の周りは森だった。天井には青空が見える。きた扉を振り返ると、そこだけ扉と、俺が靴脱いだ日本家屋の玄関の土間みたいになっている。光源が何処かわからないけど、読書に丁度良さそうな明るさ。日向ぼっこ出来そうな明るい場所もある。

 ここそのものが空間魔法で拡張されているのかもしれない。


 真ん中を目指してぺちぺち歩く。両手に靴下を突っ込んだ靴。脇に本1冊。

 足の裏が気持ちいい。砂浜とはまた違う感触。

「ここは、天国か?」

 “えつらんしつだよ”

「そっか、早く読まないと課題ができないな」


 ここで、本を読むなら、やっぱりうつ伏せで寝転んで読むべきでしょう!

 本を持ち上げて、仰向けでもいい。

 とにかく寝転ぶ!

 靴は、底を上にして傍らに置く。

 さっき外歩いていた靴を母さんのポーチにそのまま入れたくないよね。


 まず仰向けで寝転んで目をつぶる。

 俺の内側に渦巻くように、昨日一気に取り込んだものを感じる。温室でぶっ倒れた時よりは少し馴染んだかもしれない。


 俺は昨日、五色の五人の精霊に一気に魔法の内容を日本人の俺風に言うと、インプットというか、ダウンロードされた。

 いわば、何でも入っているパソコンを買ったばかりっていう感じだ。

 これから、チュートリアルをへて、使いこなしていくってことだな。

 で、それ以外にも俺にもともと入れられていたものもあるのだ。


 うん、パソコンに例えるといいかも。


 俺はうつぶせに寝返って、〈お猿でも・・・〉シリーズの本を開く。

 教授に借りていた本でもあったけど、このシリーズは図解が豊富で見やすいのだ。タイトルのネーミングセンスはちょっと読者を小馬鹿にしたようであれだけど。


 うつ伏せで本を読みながら、裸足の足の裏を膝から曲げて天井というか空?に向けてブラブラ。

 なになに、ふんふんふん・・・


 結論、知ってる。


 つまり、フォルダ分けしてー、よく使うやつを上の方のフォルダにしてー。

 さらに、どれがどこら辺にあるのかのリストも作っとく。目次や索引みたいな役割だな。

 検索機能が作れたらいいんだけど。あ、作れるのね。


 うん、母さんのウエストポーチで普段やってる整頓だな。


 そのまま、目をつぶって俺の内なるものと向き合う。

 集中。集中・・・・

 あ、使わなそうなものを圧縮できる。大量殺戮方法?ゴミ箱じゃ!


 あ、目を開けてても見えてる。ウエストポーチの画面みたいって思ったら〈ウエストポーチ〉ってアイコンが付いてた。

 うぉ、切り替えれるし並べられる。スゲ。やりやすーい。考えながら指で移動できる方がやりやすいかも。スマホとかパッドみたいだし。


 まあ、魔法はイメージらしいし、俺がやりやすいようにパソコンに例えてやれば良いってことだな。

 スマホのアラームがポケットで震える、授業中はマナーモードなのだ。

 残り五分で授業終わりの鐘が鳴る。そのタイミングでセットしていたのだ。


「なあ、黄色ちゃん、ここから抜け出したら、戸締りはどうなるの?」

 “きにしなくていいよ、わるいひとは はいれないから”

「そうだね、じゃあ」


 俺にもともと実装されていた空間スキルから、やってみたいものを選ぶ。

 胡坐をかいて座り、足の間に靴も置く。

「黄色ちゃん、地上に飛ぶよ」

 “わかった!” そう言って靴の中に彼女も入る。

「そこ、臭くない?」

 “おうじは くさくない”

 そ、ならいいか。

「んじゃ行くよ」

 目をつぶって空間魔法を発動する。


 “おうじ、でてこれたよー”

 風の匂いが変わる。やった。地下四階から地上まで、階段使わずに戻ってこれた!


 目を開けると、俺は裸足で地下への穴の前に座っていた。

「ふぉっふぉっふぉっ。うまくいったようじゃの」

 教授が出迎える。

「はい!」

 夢の瞬間移動!

 今朝の浮いて滑走するのと合わせて、俺は素早く移動できる手段を二つ手に入れた。

 あとは、距離とか、応用とかだな。


「シュンスケ、何をレポートにしたんだ?

 私はこれ、〈火魔法の可能性について〉」

 殿下が俺の前でしゃがむ。小さい俺が胡坐で座っているとそうなりますよね。


 図書室で閲覧した内容をまとめる、それが課題だった。

「いや、閲覧が精一杯で、宿題ですね」

 手に何かを持ったままなのを思い出す。お猿の本だ!

「あちゃー、やっちゃった。返してこなくては」

「もう時間がないぞ」殿下の言葉に冷や汗を流しながら頷く。

 四階に駆け降りるのは正直面倒くさい。でも、他の生徒も側にいる。

 そんな時、救いの天使いや精霊ちゃんが!


 “おうじ、あたしが もっていって あげる!”

 黄色ちゃんは素晴らしい友達だ!


 左手の上に本を乗せる


 声に出さずに念じる

 “合図したらお願い♪”

 “まかせて” 

 魔法を発動したかのような思わせぶりなしぐさで右手の指を鳴らす。


 パチン


「お、本が消えたぞ!どうしたんだ!」

 殿下が俺に問い詰める。

「俺がさっき覚えた魔法です」

「物の瞬間移動か?」

「まあ、そんなところです」

 瞬間移動もだけど、精霊にお願いするのも覚えました。


 “ただいま。おいてきたよ”

 “さんきゅ”


「たとえば、こういう」

 と言いながら、手のひらの上にクッキーが五枚入った袋を乗せる。

 “皆におやつ”

 “わーい!ありがと”ってタイミングで

 パチン


「消えた」

「魔法っていうより、手品っぽいでしょ?」

「まあ、強い攻撃には見えんな」

「ふふっ、殿下のレポートも後で見せてくださいね」

 提出は明日だ。

「そうだな、書き方とかちょっと見てほしいしな」

「わかりました。後でカフェに行きましょう」


 今日の授業が終わり、殿下とお茶をすることになった。


 俺のレポート?空間魔法ではないよ。

 読んだ本は〈お猿でもわかる整理整頓術〉だからな。整理整頓おかたづけの内容だ。


 地下の本はうっかり表には出せないタイトルも多かったから。


駿介の心の中

“地下三階にあった本のタイトルで。

 〈世界征服に使える魔法についての考察〉なんて、背表紙だけでも鳥肌が!

あれを活用したがるような人は扉を潜れませんようにお願いします。”

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

お星さまありがとうございます。もっと頂けたら♪

ブックマークして頂くと励みになります!

それからそれから、感想とかって もらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ