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3【第1異世界人’s】

 「おーい」

 人の声がした。

 森から人影が三人ほど出てきた。

「あーごめんごめん。怪我はない?」

 俺と同じぐらいの年の女の人が声をかけてきた。アニメで見たような軽鎧を着ている。

 手には抜身の剣を持っていて。

 めっちゃ上手にできてる衣装のコスプレーヤー?汚れ加工もリアル?じゃないのか?

 やっぱり異世界人なのか。

「ギョンがこっちに来たでしょ?ってあれか。君が倒したの?」

「はい。とっさに、びっくりして。すみません」

 動物を痛めつけたことに謝ってみる。まさかこの人たちのペット・・・ではなさそうだ。

 あれ、ギョンって言うのか。そういえばキョンって動物園で見たような。

「謝らなくてもいいよ。むしろこっちが取り逃しちゃって。

 あいつ弱いくせに凶暴だから。

 ところで、怪我はない?」

 もう一度聞かれた。

「大丈夫です」

 ぺこりとしてから見上げると、女の人の後ろに、背の高い男と、めっちゃマッスルなおっさんというかお兄さん?がいた。

「あたしはアリサ。この人は兄のウリサ、このゴツいのは従兄のゴダよ。ご覧の通り、3人でパーティーを組んで冒険者をしてるんだ」

 そういって首から下げているドッグタグのようなものを見せてくれる。

 ご覧の通りと言われても実物は見たことないんですけど。

「自分は駿介です」

 第一異世界人と遭遇だな。テンプレな展開にかえって安心した。

 アリサと名乗った女の人はよく見たら高3の俺と同じぐらい。女の人というより少女?かわいい感じの美人さん。スレンダーというよりほんのちょっとだけむっちりしている。

 自分が縮んだので、あいまいだけど、背は低め?でも今の俺より長身だけどな!

 肌は黄色みがかった褐色で、目は黒い。赤茶色の髪をポニーテールにしていて、太ももとか二の腕とか出てる。手袋と膝上からのブーツを履いている。

 ファッションはともかく、アジアで見るような普通の人で少し安心感がある。

 ほかの二人も、アジアの時代劇に出てきそうな感じだ。装備は洋風だけど。

「シュンスケ?」

 アリサが俺の名前を復唱する。

 はっ!耳とんがってて緑っぽい俺のほうが変かもしれない。

 とっさにフードを両手で抑えて、頷きながらアリサを見る。

「はい」

 俺と目が合ったありさは、満面の笑みになって

「うわ、かわいい~!」

 と叫びながら抱きついてきた。

「ちょ、アリサさん」

 俺にしたらお姉さんじゃなくて同級生ぐらいの感覚なんだから。焦るっ。あっちこっち柔らかい。

「こら、ガキが困ってるぞ」

 兄のウリサがアリサをたしなめてくれる。

「やだ、ごめんね」

「俺、かわいいですか?」

「めっちゃ可愛い!」

 俺にしたらあなたのほうが可愛いですけど!

 コスプレした子供って確かにかわいいけどね。俺がそう思われるのはちょっと。

「可愛いのに、一人称が 俺 ってのもギャップよね」

「何言ってんだアリサ。ガキの一人称なんてなんでもいいだろ。それより早く町に戻ろうぜ。腹減った」

 ゴダが革鎧の上から腹をさすってる。アリサより革鎧の面積はかなり広いが、筋肉質の二の腕が露わになっている。盾とハルバード?斧みたいな槍を持っている。身長はアリサとウリサの間ぐらい。スキンヘッドの頭がおっさんっぽさを感じる。

 ちなみにウリサは顔と手以外は布に包まれている。開襟のシャツに簡単な革鎧、その上にラフなベスト、チノパンか色ジーンズ風のボトムにショートブーツというスタイルが長身に似合っている。スリムな体形にでっかい剣を背負っている。細マッチョかな。アリサと顔は少し似ていて、でもイケメンだ。カッコいな!こういう兄ちゃんになりたいぜ。

 三人とも装備や服がかなり汚れたり擦り切れたりしている。


 それより町が近いのか。

「町まで一緒に行ってもいいですか?」

「もちろんいいけど、シュンスケはひとり?お母さんとかは?」

「母とは別の街で逸れてしまって」あっちの世界の街とは言わないよ。

「そう、ずっとひとりで来てるの?」

「はい」


「おい、ガキ。なんか企んでいないのか?」

 ウリサがアリサの前に出る。

「ちょっと兄さん」

「こんな小綺麗なガキがひとりでいるなんて、罠かもしれんだろ!」

 なるほど。ガキひとりにも注意がいるような世界と。しかし

「罠?どんな?」思いつかなくてウリサを見上げる。

「うっ。

 たとえば、俺たちを誘拐犯に仕立てて、見逃してやるから逆に金よこせとか」

「なるほど」

 ガキ相手の警戒ってそういう。後ろに大人がいるかもと。

「兄さん!」

 アリサがウリサの腕を引っ張りながら咎めるように叫ぶ。

「さすがですね。常に警戒するってすごいです。俺は平和なところで育ったから、ちょっと思いつかなかったです。

 でも、本当に母とはぐれていて、ここが何処かもわかってないのです。よかったら町まででいいので一緒に行ってくれますか?」

 相手の機嫌を損ねないように丁寧に話す。

 今の俺は第一異世界人のこの人たちに頼むしかない。

 ぐぅーうぅ

 ゴダの腹が大きくなった。手には俺が倒したギョンの後ろ足をつかんでぶら下げるように持ってきていた。

「腹減った。取りあえずこいつ血抜きしねえ?」

「そうだな。処理したら町へ行こう。シュンスケもな」

「ありがとうございます」

「よかったね。シュンスケ。干し肉食べる?」

「いえ、俺はさっき食べたので」チキンとケーキを。

「そっか」

「おい、腹減ってるのは俺だ」

「ゴダは、保存食も全部食べてしまうから、こういう時困るんでしょ?いい加減覚えなさいよね」

 ん?ゴダよりアリサのほうが立場が上?歳とか?

 この世界も見た目と年齢は違うのか。後で聞いたら。やっぱりアリサは十七歳。ウリサは二十歳。ゴダはなんと十五歳!中三ぐらい?こんなにおっさんポイ中三って・・・いたかも、日本にも。だが坊主頭はいたけど、スキンヘッドはないな。ゴダは禿ではないらしい。洗髪がめんどくさいので、ひげと一緒に剃ってるらしい。

 閑話休題

 ウリサが生々しい音をさせながら、ギョンの喉を切り、ゴダが少し掘り起こした穴に血を流しているのを意識しないようにしながら、ウエストポーチをまさぐる。ストラップを触らずにチャックのつまみを開けると、リップとか元のポーチの中身が手に当たる。

 飴があったか。

 飴を四つ出して、一つを剥いて口にいれる。

 森とかあるけど日本より乾燥しているのかな。少しいがらっぽい喉にカモミール入りキャンディはうまい。

「飴しかないですけど、どうですか?」

 残りの三つの飴のせて手のひらを広げる。

「まあ、きれい」

 まだ未開封だけど、あ、個包装がきれいなのか?カモミールのハーブの花の絵が印刷されている。

「甘くておいしいですよ」

 皮手袋じゃ開けにくいかと一つ開けて

「アリサさん、はい」

 口に入れてあげる。

 俺の初めての あーん体験は異世界だ。

「ほんと、甘ーい。こんなに甘いのは蜂蜜を舐めた時以来かも!」

 両手でほっぺたを押さえる仕草が可愛いです。

 続いて ゴダくんにも あーんする。

 二番目の あーん体験はスキンヘッド・・・。

「うまい。そして香りもいいな」

「噛まずに舐めていると、腹の虫が少し落ち着くんです」

「そうか?ありがとな」

「ウリサさんも」

 同じように剥いてあげようとすると、

「ありがとう、さっきは疑ってすまん。俺は自分で開ける」

「でも、手に少しギョンの血がついてますよ」

「そうだな、じゃあ」

 三番目の あーんは・・・


 四人して、口に飴を入れながら、話しながら歩く。

 とりあえず会話が出来ることに安堵している自分だった。


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