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異世界転移したら尖った耳が生えたので、ちびっこライフを頑張ります。  作者: 前野羊子
第五章 ~王子のクラフツ留学~

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252【学校の連れを自宅に呼ぶ】

連休昼下がりの読書に、夜も一本更新します


いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 小学校の時、クラスの友達を鍵っ子だった俺が家に呼んだことがあった。

 たしか、みんなゲームが好きで、俺もいつもやってるゲームで一度は対戦とか数人モードでやってみたかったから誘ったんだ。


 だけど、三人来た連れには、行儀のいい奴もいたけど、あっちこっちウロウロする奴もいた。はじめは、汚い靴下のままリビングのソファの上でトランポリンのようにジャンプしたり、テーブルに出したスナック菓子を、床にこぼしながら食ったりして、家がだんだん荒らされていくのが気が気でゲームどころではなくなっていった。

 なにしろ、掃除機をかけるのは俺の仕事だったからだ。


 家に俺しか居ないからか、そいつは学校で見るよりも大暴れだった。


 その行儀の悪い奴はしまいに母さんの部屋で仕事の資料をキャビネットから引っ張り出したので、思わずかっとなって追い出した。

 「俺の家の中を荒らしに来たのなら帰れ」

 息子の俺でさえ入り込まなかった母さんのプライベートにずかずかと来られて無性に腹が立った。今でも何となく覚えているほどに。


 母さんは別に構わないと言ってたんだ

 「子供は暴れて冒険するものなのよ。むしろ駿ちゃんが良い子過ぎて母さんはちょっと心配」


 でも、それ以来、友達を家に連れて来ることはなくなった。

 もちろん、俺自身がクラスの友人の家に行くこともなかった。

 お互いに親友と認め合うやつとだって、ファストフードでだべる程度だ。


 そんな俺が、この世界ではウリアゴの住まいに入り込み、赤の他人の集まる孤児院になじみ、そして、今でも共同生活をしている。


 さて、冒険者ギルドで借りている3DKの部屋は北西角部屋でL字型にバルコニーがある。

 俺の部屋の北側のバルコニーは結構せり出していて広さがあるのだ。


 そこにプランタ類を並べて色々な野菜を植えている。

 「わあ、夏野菜が生ってるんだ」

 茄子、トマト、キュウリ、ピーマン。それらは艶々ピカピカに収穫を待っている。

 温暖だとは言え北国でまだ五月のヴァルカーンで夏野菜が生ってるのは不自然かもしれねえけど。

 「これは、土の精霊ちゃんと光の精霊ちゃん、それに水の精霊ちゃんが世話をしてくれているからね」

 「その属性全部必要なの?」

 パステルが聞いてくる。

 「足りなければ手を入れたらいいよ」

 「たとえば?」

 「光が無ければ、まだ寒いから屋内の窓際に置いたり、土が無ければ肥料をやったり、水が無ければ自分でやればいいからね。ほら」

 そう言って如雨露を指さす。ブリキの武骨なフォルムだ。それが野菜たちの植物の風景に不思議と合う。


 説明している隣で、俺はせっせと赤くなってるトマトを籠に入れる。

 「シュンスケ全部取っちゃうの?」

 「うん!だって一週間分だぜ。留守の間は面倒見れないし」

 「そうだけど」

 「遠慮なく全部取っていいぜ。ほら鋏。パステルがトマト採って。キュウリはとげがあるから俺が採るな」

 「うん」


 「クリス、この大きいけど可愛いプランターってもしかして」

 「ベビーバスだよラビィ」

 「誰かのお下がり?」

 「いやいや、ギルドの隣のホームセンターで買ったよ。このニンジンを収穫しよう」

 「うん、よいしょっと、まあ、ほんとうベビーバスって深いからこういうことが出来るんだね」

 「ね、すごい発想だよね。さすがシュンスケさん」

 「え?シュンスケがベビーバスを買うように提案したの?」

 「そうなんだよ、びっくりするよね」


 あとは、軒下にぶらさげている玉ねぎをいくつか。


 「何にするんだ?」

 「あ、トマトソースを作っておこうかと思って」

 「んじゃ、乾燥パスタを買うリストに入れるか」

 「うん。あとはサラダ用の葉野菜とフルーツを、ラビィそっちに葡萄が生ってるからいくつか採ってきて」

 「ぶどう!?わかったわ……ってわぁすごい!」

 「食べても良いよ」

 「いいの?」

 「もちろん」

 「甘ーい」

 まあな、ユグドラシル様の葡萄だぜ!

 「え?ずるーいラビィあたしも食べたい」

 「はい、あーん」

 「んんん!…甘い!美味しい!」


 女の子同士のアーンは眩しいっす。


 「収穫はこれぐらいか?」

 「見事にプランターが空っぽになっちゃったけどいいの?」

 「いいのいいの、たぶん合宿から帰ってきたら元通りに生えてるんだから」

 スフィンクスが手入れしてくれてさ。


 「ならいいんだけど。それにしても魔法ってすごいわね。私も使ってるつもりだけど、使いこなせてなかったわ」


 「あとは手持ちの芋もまだあるから、野菜はこれでおっけー。んじゃあとはギルドで買うものをクリスにリストアップしてもらうか」

 「わかりました」

 「その間に下ごしらえをしようかな」


 収穫した人参と玉ねぎ、そして在庫のあったニンニクひとかけを風魔法でみじん切りにして、乱切りしたトマトにオリーブオイルを加えて火魔法で炒める。煮込むから順番は適当。そこに顆粒の昆布だしを入れて塩コショウで味付け。

 ダイニングのテーブルの鍋敷きの上に置いた寸胴鍋の中で自分の魔法と精霊ちゃんの魔法で。

 ちょっと舐める。

 「あとは仕上げる時に調整しようかな」

 “しばらくにこむだろ”

 「たのむな赤色君」


 「わあ、いい匂い」

 「ほんと」

 「ねえ、それより、シュンスケの部屋のあれ」

 俺の部屋のドアから、ダイニングに向かってパステルが顔を出して聞いてくる。

 「あれ?」

 「あれってピアノでしょ?」

 「うん。よくわかったな」

 「ねえねえ、ちょっと聞きたいなぁ」

 俺より背があるのに上目遣いって器用過ぎない?


 「おい、パステル、厚かましいぞ」

 「大丈夫だよベゼット」

 パステルは良い子だ。勝手に触らなかったからね。

 「んじゃあ、まだ午前中だから、窓を閉めて」

 「うん」


 玉ねぎとニンニク臭くなった手をしっかり洗ってタオルで拭いて。


 「どうせ、今夜練習するつもりだったから」

 「練習しているの?」

 「うん、毎日三十分から一時間」

 「そんなに?」

 「だって、人前で弾くんだもん練習しなくちゃね」

 本職の方から見れば、全然足りないぐらいだと思うよ。


 「は?どういうこと?シュンスケ」

 「あれ?ラヴィは知らなかったんだっけ」

 「先日はこの子も教会に行ってたけどね」

 「教会?行ったわ、隣の国の王子様が沢山の神々の歌を歌って、前の列にいた人たちの怪我が治っていって。

 あのピアノも大きくてすごいいい音だった!」

 「だよな。俺も楽器の造作には興味あるけど、音楽の方なんて全然だった。

 けど、あれは良かったぜ。

 え?シュンスケピアノ弾くのか?」

 ベゼットも食いついてきた。

 「聞きたい?」

 「もちろん!」

 「まあ、朝は指が動きにくいんだけど、合宿前に弾いとかなきゃとは思ってたから」

 「楽器って、毎日練習した方がいいんでしょ」

 「よく知ってるね」


 「ウリサ、クリス、途中で悪い」

 「構わねえよ」

 「僕もシュンスケさんのピアノを聞きながら作業しますから」


 二人はタオルや部屋着など、合宿に持って行くものをそろえてくれている。


 「んじゃえーっと、合宿に向けてなら緑色ちゃん(大地の女神)の曲だな」

 “わーい”


 ~~母なる大地よ~

   ~慈愛の恵みよ~~

 ~~草木萌ゆる命の~


   ~ありがたさよ~



 ~~豊かな~実りの~~


 「はい、お粗末様」

 パチパチパチ

 「そんな事無いーよかった!見てよこれ」

 パステルが自分の目じりを指さす。

 あらら、涙が。


 「ほんとによかった!え?もしかしてシュンスケってまさか」

 「ラヴィ、それは口に出さない方がいい」

 「え?ベゼットどういうこと?」

 「ありがとうベゼット。

 ラヴィ、俺がここで教会で披露する曲や歌の練習をしていることは内緒ね」

 「う、うん。もちろんよ。すごく素敵だった」

 「サンキュ」


 「シュンスケさん、そろそろ行きますか?」

 「うん、ごめん、行こうか」


 「先にホームセンター行ってからマルシェに戻ってくるか」

 「ですね」


 当たり前だけど学生にとっては、校外学習ってとっても楽しみのひとつ。

 遠足、合宿、修学旅行などなど。そしてその準備のための買い物も結構楽しい。

 場合によってはこういうふうに連れと買い物に出たりさ。


 皆でホームセンターに向かって歩きながら、ベゼットが聞いてきた。

 「シュンスケ達は冒険者活動の時の装備があるだろうけど、俺たちは何を準備したらいいとおもう?」

 

 昔の炭鉱の人たちの写真のイメージはほとんど裸だったよなー、あれは掘る作業をしていて暑くて、風が来ないから?

 そんな内容は女の子もいるグループでは言えないし。

 

 「足元が悪いだろうから、転んでも良いように、脛あてや膝や肘あてぐらいで良いんじゃねえか?ダンジョンとかはそうするぜ」

 ウリサが先輩冒険者らしく教えてくれる。

 

 「そうだね、それをオーバーオールやトップスの上から着けるんだよ」

 「なるほど、ワイもそろそろ冒険者登録しよかな」

 十五歳なら、仮免じゃなくていきなり本当碌だろうね。


 「ベゼットが?たしかに武術も良い成績だけど、クラフトマンになるんでしょ?」

 「ほら、素材採取とかするときに、持ってたら、自分に不要なものは売れるやん」

 「まあな」

 「それに、パーティー組んで採収に行った方が良いときありそうだし、何より割引が羨ましい」

 「なるほど」

 学生割引もあるんだけど、冒険者割引と重ねられるんだよな。

 だから、冒険者じゃない三人の分の装備も俺かウリサ、クリスが会計をして、後でそいつら分のお金を貰うことになっている。


 ホームセンターの中のアウトドアコーナーに行く。

 男性用はもちろん、一時流行った森ガールほど華やかではないけれど、女の子にも着れるような衣類が展開されている。

 もちろんリュックサックもあるんだけど、

 “ハイキングの装備で手ぶらも変じゃない?”

 “何を今さら、いつも手ぶらのくせに”

 “だよね”


 アイテムボックスの容量がありすぎるのも楽しく無いなぁ。まあ、この世界に落ちてきたときのリュックで良いか。今の俺にはちょっとでかいけどな。わざわざ買い足す必要はない。


 量産型の靴下やTシャツを買い足してホームセンターを出る。


 「ホームセンターはやばいな」

 「やばい?」

 「いらないものを買ってしまいそうや」

 「ベゼットの意見に同意します」

 クリスが頷きながら答える。

 「洋服も、可愛くないけどすごく安く見えたら買ってしまうわ。脛齧りは小遣いが決まってるのに」

 ラヴィのつぶやきに皆頷く。

 「それも分かる。裁縫のスキルがあっても何もかも自作も結局ダサいもんね」

 「そうなの?」

 「そうなのよ」


 「大きな商業施設に行くときは、買い物メモをつくるか、その店で使うお金だけを入れた財布を別に持つのよ」

 「なるほど!」

 パステルはしっかりものだな。

 「だけど、さっき余分にフリル買ってたやん」

 「ベゼット。あ、あれは、必要なものなの」

 「そうかなー」


 「パステル、今度の合宿に持って行くカバンにフリルを付けちゃだめだよ」

 「どうして?シュンスケ」

 「汚れるからね」

 鉱山の採掘合宿なんだから。

 「あ…うん、そうね、今度はあきらめる」

 フリフリにするつもりだったんだな。


 冒険者ギルドに戻ってきた。次に買うのはいつもの併設しているマルシェの方だ。

 「キノコ類に、トリ肉とブル系とオーク系の合挽肉と、塊肉と……こんなものか」

 「だけど、肉料理はあっちの食堂でも出るんじゃねえか」

 「だよね。でも乾パスタを買い足さなくちゃ」

 「だな。あとは干物を貰ってきておくよ」

 「そうだね!出来たら米も」

 「コメはおにぎりにしてもらったやつにしよう」

 「わかった。あと、城で厚揚げを!」

 豆腐系の商品はロードランダの城の名物なのだ。売り上げが料理長の小遣いになっている。ベジタリアンに人気なのだ。

 「了解」


 “一週間の合宿前にゴダやアリサの顔を見ておいた方が良いしね”

 “なら、厚揚げはお前が貰ってこい”

 “あ……んじゃ三人で行こうか”


 夕方、晩御飯を食べたグローベスエルフェンス城の料理長から父さん経由で色々貰いました。

 木綿豆腐、厚揚げ、絹揚げ、そしてキノコが入ったがんもどき、などなど。


 そして三人でユグドラシルの露天風呂へ。



 「気を付けて行ってくるんだよ」

 「うん」

 「「ありがとうございます」」

 父さんが俺の部屋から送り出してくれる。


 夜はヴァルカーンのギルドの部屋に戻って寝る


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