248【鷹匠じゃなくて飛竜匠】
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裸馬状態のハロルドに、級友のドワーフ少年ベゼットとタンデムして飛んでいるとすぐに学園が見えてきた。
「もう一コマ目終わってるよね」
「もうすぐ終わるとこじゃねぇ?それにしても流石に早いな」
「あ、学園長室のテラスから入ってって風の精霊ちゃん経由で言われてる」
俺が簡単に色で呼んでいるけど、普通は属性で呼ぶらしい。だから学園で精霊魔法使いたちと話すときはそうしている。
「え?学園長室ってまさか」
「王様の部屋だね」
「うわ」
「王宮の王様の部屋じゃないからまだましじゃない?」
ものづくりの国の王様の部屋に興味あります。
「そんな問題じゃねえような気がするけど」
「このままみんなが居てるところに、ハロルドに乗って空から降りるともっと目立つからさ」
「わかった。ハロルド様たのみます」
『あそこだね』
学園長室は最上階のド真ん中の裏側にある。
あ、やっぱり学園長(王様)いるんじゃん。大きいからわかりやすいけど。
ハロルドは弧を描きながら、言われたテラスに降り立つ。
「おお、ハロルド様。お会いしたかったです」
『ヴォルグラム、おはよう』
「おはようございます。シュ…ンスケとそっちはベゼットだな。精霊たちから連絡を受けているぞ」
シュバイツと言いそうになったのをシュンスケに変えてくれた。セーフです。
「「おはようございます」」
「ベゼットが無事でよかった。冒険者ギルド経由でも通信が来ていたんだ」
「有難うございます学園長」
「うむ。では教室に戻……うわぉ、ハロルド様が消えた?」
「クスクスクス、すみません」
でっかい学園長がびっくりするリアクションが面白かった。
「ほんと消えた。シュンスケ、ハロルド様はどこに行ったの?」
「何処だろうね。それより教室に行くよ」
「う、うん」
“ガゼット、こうぼうにかえってきた”
赤色君から二人に分かるようにお知らせきた。
「そ、よかった!」
「良かったよー」
“あるいてる”
「うん」
「夕方煙突見に行くから待っててって言って」
“それはきいろがつたえてた”
「さんきゅ」
お昼休み、ガゼット&ベゼット親子の家にある鍛冶工房煙突の不調の原因を、白色くんに見てもらっていた。
「……これは、鳥の巣?」
“たぶんちがう、とりにしてはまんまるのたまごよ”
現地の緑色ちゃんから中継です。
煙突の上には沢山のハリガネが絡まって、鳥の巣のようになっていた。
カラスの巣で針金ハンガーなどで作っていて、木から外せなくなってるニュースを見たことがあるんだけど、あんな感じ?針金ハンガーみたいにカラフルじゃないけどさ。
その真ん中に真ん丸の卵のようなものが二つ。黄色と赤のまだら模様がある。
「もしや、煙突の熱が必要だったのかな」
“かもしれないなぁ。でもこのすがつまっていて、けむりがでてこないみたい”
「それは工房の方が危ないね。まだ、火をつけないでって言って。それと赤色君、その卵をあたためられる?」
“どのぐらいのおんどがいいかな”
“せめて、鳥や哺乳類の体温ぐらい”
“おっけー”
白色君越しの映像じゃあの卵の具体的な大きさも分からない。鑑定も無理だったしね。
それらをベゼットに伝える。
「卵?巣?」
「うん」
「魔物じゃないとええねんけど」
「は?地底都市って魔物出るの?」
凶悪な魔物なら温めない方が良いかも?
「出るぞ。元はダンジョンだったらしいからな。でも外の国よりは少ないけどさ」
「なるほど」
数日前からベゼットもお弁当を持ってきていた。
今日お邪魔した鍛冶工房は男の人ばっかりだけど、ベゼットのお母さんは、パステルの親がやっている服飾工房のお針子さんで、朝早くからそっちに出勤したらしい。
俺の弁当の話をベゼットから聞いたお母さんは、昼ごはん代を渡すより良いわとベゼットも弁当になったらしい。弁当箱はもちろん手作りのドカ弁だ。
それでウリサやクリスに加わって四人で弁当を食っている。
俺もやってるんだけど、弁当のおかずから、冷たいまま食べたいものを蓋の上に乗っけて、その避けた隙間に何時もより小さくなった赤色君が潜ってあたためてくれる。この学園には赤色君が比較的多い。だから金属製の弁当箱でもあたためが出来るんだよ!電子レンジと違ってね。そして、温めながらだし巻き卵を楽しんでくれています。
“うめえ”
そういえば金属製の弁当って携帯コンロとか達磨ストーブにのっけて温められるとかは聞いたことあるけどね。
「じゃあ、帰ったらそっちに行くんだな」
「うん」
「一緒に行くか?」
「いや、高い所だから俺だけで」
「わかった。クリスは?」
「僕は教会に行って明後日の打ち合わせを聞いておきます」
「頼んだよ」
「任せて下さい」
「シュンスケ悪いな」
「いいのいいの。卵のある巣なんて興味あるじゃん」
「ならええけどよ」
それぞれが別の授業に出るからと、ウリアゴはここで解散だ。
「んじゃ、俺たちも実習だな」
「おう」
放課後、俺はまたベゼットと二人で学園長先生の部屋にお邪魔した。
ハロルドを出すためにね。
でも、その前にお茶をいただいていた。入学したての一年生が学園長先生の部屋でお茶を貰うってなかなかないと思うとベゼットが言ってた。
「あ、あそこにシュンスケが作ったハロルド様の木版画が飾ってあるやん」
学園長室の応接コーナーには他にも模型やタペストリーなども飾られている。
「木工の先生が、学園長に渡したらしい」
「スゲー額に入れているな」
「あの額は先生の作品じゃね?」
「なるほど。あれ?サインがシュ…?」
ガチャリ
「おう、またせたな」
学園長先生、ナイスタイミングです!
テラスにはすでにハロルドを出している。手綱や真っ白な鞍を装着してくれたのはナルキス フォン マリーベル先生。
「ハロルド様の装備をこの手でセットできるなんて。それにこの鞍も普通ではない素材ですよね」
なんて。
俺は、白色くんに見てもらった卵の画像を紙に転写して相談する。
「これなんですけど、学園長先生」
「うーん、大きい爬虫類の卵に似ているな」
「地竜ですか?」
「ああ、こんなところに産み付けるなら飛竜かもしれませんぞ」
「ポイコローザ公国からの迷子かな」
「確かに。儂からも聞いておきましょう」
「お願いします」
俺はテラスに出るとアナザーワールドにいる飛竜のひゅうを呼び出す。
「あら、どうしたの?」
「ちょっと、爬虫類の卵っぽいものを見に行くんだけど、手伝って」
「分かったわ」
ひゅうは鷹の様に俺の腕に乗っている。鷹よりちょっと大きいし、俺がちっこいからめちゃ大きく見えるけど、羽を畳んでいたらそうでもないね。
「この飛竜は?」
ナルキス先生に聞かれる。
「これは俺の従魔のひゅう。もともとポイコローザで飼育されていたのを譲っていただいたんです」
「王子の所に来てよかったの!沢山の本を読ませてくれるのよ!」
エルフが恐る恐るって感じでひゅうの頭をなでている。
「飛竜が文字を読むのですか?」
「この子はすごく頭がいいんですよ」
「それはそれは」
「赤色君、ひゅうに先に案内して」
“りょうかい!ひゅうこっち”
「わかった、先に行くわね」
「おう」
「じゃあ、ベゼット行こう」
「ああ」
「ベゼット、シュンスケ関係でいろいろ見聞きすることがあるだろうが、許可がある迄他に言うなよ」
学園長先生がベゼットに言っている。
「はい」
助かるね。
「では、ありがとうございました!」
「失礼します」
「シュンスケ、ベゼット、気を付けて」
エルフ先生も見送る。
“ひゅうかられんらく”
黄色ちゃんからの連絡だ。
“やっぱり、ひりゅうのたまごだって”
「よし」
「どうして飛竜がうちの工房の煙突に?」
「なんでだろうね、あ、見えてきた!」
ひゅうが飛んできた。
「王子!大変!うまれそう」
「なんだって?」
“あたためすぎちゃった?”
不安そうな赤色くん。
「いや、生まれるならいいんだよ。生きているんだからね。上手に温められたんじゃないか?」
“ならよかったけど”
ハロルドで煙突に近寄るけど、このままじゃ上手くてっぺんには降りれない。
ペガコーンの足場には難しいのだ。
「ベゼット、ハロルドが風魔法で支えるけど、この手綱をしっかり持ってね」
俺は後ろに乗ってる奴に手綱を渡す。
「ああ、ってえ?」
「俺も飛ぶから」
「え?シュンスケも飛べるの?」
「うん」
人間族の姿のまま翅だけ出す。
空中でホバリング状態のハロルドから飛び立って煙突のてっぺんに移動する。
針金で作られた巣の中には二つの卵。割と小さいな、野球の硬球ぐらい。
一つはもう割れて、何かが飛び出ている。手のような羽のような。そして、もう一つの卵にもひびが。そしてどっちもちょこちょこと揺れている。
「がんばれ!」
“がんばれがんばれ”
赤色君が温めながら励ましている卵たちに、ひゅうや俺も声をかける。
「がんばれがんばれ!」
“今この国に飛竜は他に居ない?”
“いない”
“ポイコローザのちかくにひとりいる”
「それが親?」
“わかんない”
「聞ける?」
“ひゅうみたいには、おはなしできない”
「たぶん、その飛竜じゃないわ」
「心当たりあるのか?」
「ええ。けど、精霊と話せないのならどっちにしてもこの卵の親の飛竜ではないわ」
「飛竜にも種類があるんだね」
「勿論よ」
「エスカーザの近くにはどの精霊ちゃんがいる?」
“いまはおれとみどりいろ”
赤色君と緑色ちゃんか。
精霊ちゃん達とやり取りしながら、皆で卵を見守る。
パリパリ、カシャッカシャッ。
あ、一匹目がでてきた。
少し遅れてもう一匹も無事に出てきた。
飛竜なのに、羽毛のようなものが生えていて、全体に濡れている。
俺は古いTシャツを切ったウエスで二匹を優しく拭う。
「よしよし、がんばったな」
みゃあみゃあみゃあ
「なんだか猫みたいな鳴き声だな」
猫みたいと思うとめちゃくちゃ可愛く感じるのはなぜだろ。
暫くして、濡れていた羽毛が渇くと、二本の足でしっかり立つ、そしてぱっちりと目が開く。
ふおおお可愛い!
一匹はピンク色の瞳。もう一匹は黄色の瞳。
羽毛がフワフワしているけれど腕というか翼になる部分は爬虫類っぽい細かい鱗模様の皮で、イグアナみたいな尻尾がある。クチバシだって、鳥とは違う。ちょっとやわらかそうな触感だ。
「よしよし、腹減ってるよな。ひゅう、赤ちゃんの時は何食べてた?」
「えー流石に自分のときは忘れているけど、エスカーザたちは、細かい生肉をやってたわ」
「え?もう生肉?」
「ええ」
「ひゅうは魚も食べるよな」
「そうね」
「んじゃ、こっちの方が」
マグロっぽい食感の白身の生魚の身を解してやる。味も付いていないしね。
最初は恐る恐るだったのが、もう夢中で食べる。
みゃあ……みゃあ…。
落ち着いたかな。赤ん坊は腹いっぱいになったらすぐにおねむだ。
「じゃあ一旦アナザーワールドに入れようかな」
「ええ、しばらくは私が面倒を見るわ」
って、ひゅうが近寄ったとたん、赤ちゃん飛竜たちは目をパッチリさせて後ずさる。
みみみみゃあみゃあ
寝かけていたのに、びっくりしたかな。
「まあ、しつれいしちゃう。でもしょうがないわね」
「どういうこと?」
「初めて見たのが王子だったから、王子を親と思っちゃったのでは?」
はっ!そのルールは飛竜にも当てはまるのか!
“あたちの、おとうとと、いもうと♡”
“キュアちゃん、気が早いっす”
「うう、俺が育てなきゃダメ?」
嫌じゃないけどさ、忙しいんだもん。
「エスカーザに相談ね」
「そうだな」
しょうがないから、以前お花見で大勢のお弁当を入れるのにつかったバスケットの一つに、針金の巣じゃあんまりだから、タオルを入れて、そこに二匹を入れる。
爬虫類は体温がないけど、寒いのが平気ってわけじゃあない。
「赤色君暫く一緒に居て」
“おっけー、きょうもおれさまいそがし”
二匹にはまだ赤色君は見えてないというか認識していないというか。必死に俺の方を見ようとする。
みゃあみゃあ
「晩飯ご馳走にするから」
“がんばる!”
そして、卵が無くなった巣を見る。針金の巣の中にはスチールウールのようなものが敷き詰めてあった。一応やわらかいものを敷いたんだね。
それらを丸ごとサブボックスに入れる。
“おっけー、おうじ。えんとつのなかはだいじょうぶ!”
闇の中を検査するなら紫色ちゃんだよね。
“かぜもちゃんととおる”
「了解」
籠をぶら下げて、そのままハロルドと並んで地上に降りる。
「シュンスケ君」
「ガゼットさん。もう煙突は大丈夫ですよ!」
「助かりました。おう!昨日今日の分取り戻すぞ!火を入れろ」
「おー」
「え?でも明日お休みじゃ」
しかももう夕方に近い。
「客を待たせているからな」
「そうなんですよ、この規模の鉄工所は沢山あるから、さぼれないんですよ」
朝にやり取りした他のドワーフも話しかけてくれる。
「この子たちの巣があったんやな」
みゃあみゃあ
バスケットの中をベゼットが覗いている。
「うん、このままポイコローザに聞きに行ってくるよ」
「へ?これから?隣の国とは言え随分遠いで」
「でも、俺明日も明後日も予定あってさ。飛んでいけばすぐだし」
「そっか。じゃあしょうがないか」
「そう、こいつらを置いておくところなんてギルドに無いしさ」
「じゃあ、ベゼット、またな!」
「ああ、シュンスケ本当にありがとう」
「残念じゃ、これからゆっくり晩飯でも食べてもらおうと思っていたのに」
「お気遣いなく!では」
俺は再びハロルドに乗り、空を駆けてもらう。
二匹の赤ちゃん飛竜が乗った籠を抱えて、ひゅうと一緒に。
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