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異世界転移したら尖った耳が生えたので、ちびっこライフを頑張ります。  作者: 前野羊子
第四章 ~王子の旅・天空路~

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229【最後の悪魔たちを綺麗に!】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 コン…ココン……ココココ……ガラガラガラーッ


 ケティー公国東の砦の地下の広い広い広間の床に硬いものが落ちる音が一斉にする。


 ホエザル族の頭に乗ってた二本の水牛のような黒い角だ。


 だが、黒い角は床にたどり着くと一瞬黒い液体のようになったかと思うと、直ぐにキラキラと輝きながら蒸発するように消えていく。


 “じょうかしてから、しぜんのまそにもどっていくのかな”

 “おうじの、まりょくにふれたらきらきら!”


 精霊ちゃんにも分からないみたいだけど。あの沢山の角にもしかしてこの地域の魔素が集められていたのかな。


 世界樹ガオケレナの次男?のキマが戻ってきた。他には俺が塔から降りるときに見かけた数人の黒いホエザル族も伴って。


 「ナンだ?ナンだ?」

 「オレたちは、ナニをしてたんだ?」

 「ヒツジはドコだ?」


 彼らの頭にはもう角は無くて、部屋に入ると、黒さも和らいでいく。


 「羊ってなんだ?」

 ウリサがキョロキョロしているホエザル族の一人に声をかけている。

 「俺は、沢山の羊を纏めていたはずなのに」

 「おいらの牛たちはどこだろう」


 放牧の民だって言ってたっけ。


 「説明するから、先にこの水を飲もうな」

 「水?」

 「たしかに喉が湧いているよ」


 だんだん、カタコトというかおかしな話し方だった彼らの会話が普通になっていく。


 俺はホエザル族のメンバーを鑑定していく。


 こいつらは、二千歳ぐらいだ。


 ホエザル族の寿命は人間族より少し短くて、七十を超えられたら良いとこらしい。

 この世界の寿命は魔力量なんかとも関係しているから、魔力がないこの人たちは寿命が短いそうだ。


 俺は皆に説明しやすいように、すこし大人の人間族の姿になる。


 「あなた方は、エシャーラの民ですね」

 皆はおとなしく俺の方をむき頷く。


 「あなた達は、魔界から来た魔族たちによって、操られ、あなた方が放牧していた羊や牛で草原を食い尽くし、砂漠とし、それと抵抗していたアンジェシャミン王国と戦を繰り広げていました」


 「……朧気ながら覚えているような気がします」

 「移動のための馬も沢山おりました」


 

 年末に、アナザーワールドでプリネイ王族のラッシュやセグレタたちに聞いていた。


 かつてプリネイ地方にはもっと沢山の悪魔にされた人たちがいて、その一部にはホエザル族もいたそうな。だが、悪魔にされたとたんホエザル族はそれまでの家畜の世話を忘れ、育てていた羊や牛を殺し、ひたすらに暴れてはガオケレナのすそ野も荒らしていたそうだ。


 それでも、その行為は魔素を集める作業でもあるので良かったのだが、同じ悪魔にされた元ヤマネコ人族と揉めだしたそうだ。


 悪魔同士で二千年も争いながら、どちらも暴れる衝動を抑えることが出来ず、プリネイの王城でも暴れていたらしい。


 あまりにも煩いが、悪魔化した故の本能だからと放置していた魔界の魔族たちだが、


 ある日タローマティが偽アーリマンに


 「実践訓練にちょうどいいんじゃない?真剣や魔法で命がけの訓練をして、数を減らしてもいいでしょう」

 「だな、あいつらの命も良い魔素集めになるよな」

 「それはもう」


 などと、自分達で変化させたゼポロ神の世界の者たちだった悪魔同士で争わせ、その命を減らしていたのだ。


 そして、十年前、偽アーリマンが少なくなってしまったホエザル族に言ったそうだ。


 「お前たちは元は遊牧民。ここに留まらなくてもいいぜ」

 「我々は、この国を出てもいいのだな」

 「俺たちも動きたい」

 ヤマネコ人族も外に出るホエザル族に追随する。

 「ああ。そうして暴れてこい」

 「おう!」


 ラッシュは城内の面倒を見るためにそのまま残っていたが、外へ出ていく悪魔達をとどめることは出来なかった。


 角の生えた真っ黒な悪魔達は、シュメル山を斜めに上って、ガオケレナを汚染し、さらに南東のケティー公国へ浸食して行ったらしい。


 「そうして、それまで国の兵や冒険者に魔物と同じように悪魔の討伐を依頼していたが、あの者たちはそこらの魔物とは違って、A以上のランクで、なかなか追いやることが出来なかった。

 ガオケレナを救いに私自身が兵を率いて出直した時に、公国の中心地迄やってきたサル共が逆に城に侵入してきたのだ」


 アルバートン公がその時のことを語る。


 「私は急ぎ城に取って返し、生まれたばかりのマチューラと、やっと話すことが出来るようになったティクロッテを乳母や侍女たちと共にAランクの冒険者パーティーに託して遠くに逃がし、妻や息子はケティー公国の郊外に匿った後、再びガオケレナを守るため戦に出たのだ」


 「本当に申し訳ない」


 ラッシュが頭を下げる、が


 「いや、貴方も悪魔にされて、呪縛されていたのだ。仕方がない」


 アルバートン公にそう言われても、身に覚えのない罪悪感がラッシュを悩ませるだろう。


 アルバートン達ケティー公国の戦いは、同じく城を乗っ取られて苦しめられていたペルジャー共和国や冒険者ギルドの援助もあって、なんとか長く戦い続けることが出来たのだが、なかなか終わらなかったそうだ。


 「あの砦にはもう、悪魔しかいない。プリネイの王城のようなものだろう」

 「アルバートン公」


 「だが、悪魔化されたものだけで、魔界の悪魔はいないと思う。だが我々普通の猫人族にとってはどちらも脅威なのだ」


 「そうですね」


 「シュバイツ殿下。我々は、アンジェシャミンの故郷もあるのだから、あなた自身がケティー公国に行って危険な目にあうことは無い」

 「だけど、アルバートン公。そのままにしては置けないよ。魔族がいなくても、悪魔がいたら、また自然がやられるんだろう?」

 「……そうかもしれない」

 「それに、操られたままの奴らをラッシュのようにもとに戻してやりたい」


 「……精霊の王子はお父上ににて優しいのだな」

 たしかに父さんは優しい。それは俺が息子だからだけではないんだね。

 「そんな事は無いよ。俺は心置きなく遊ぶために、知ってしまった憂いを何とかしたい唯の子供だ」

 そんな俺を後ろに立ってたウリサが頭をポンポンしてくる。マツたちのお父さんの前でやめてよね。嫌じゃないけどね。


 

 そんなアナザーワールドでお茶をしながら聞いた話を思い出しながら、ホエザル族に、魔族から来た奴らに自分達が悪魔に変えられて操られていたことを話す。


 そして、それは、二千年も昔だったことも。


 「二千年……」

 「たしかに、長く戦っていたと感じていたが」

 「長すぎるな」


 「貴方たちはこれからどうする?」

 とりあえずやりたいことがあるのか聞いてみる。


 「我々は、ガオケレナ様を傷つけた罰を受けるのではないのか?」

 「罰?誰が罰を決めるのだ?」


 「?神様とか?」

 「神々は我らを罰しない」

 「しかしそれでは」


 「では、これからは、悪魔であったときに壊した自然を元に戻す活動をしてくれ」

 「元に戻す?」


 「シュメル山の渓谷から、かつてあった川を復活させる。その工事を手伝ってほしい」

 「ああ」


 「工事が始まるのがいつになるのか分からないけど。招集するまでは冒険者をすればいい、今からここの冒険者ギルドに行くと良い」

 「「「「分かりました」」」」


 そうして俺は、地下の大広間の扉を、アルバートン公が待つケティー公国の冒険者ギルドの一階につないで開く。


 「シュンスケ殿!」

 「アルバートン公。うまく行ったよ!みんな元のホエザル族にした」

 「ありがとうございます」


 アルバートン公の隣には東洋人のような人間族の女性がいた。

 「シュバイツ殿下。私はこのペルジャー公国冒険者ギルドのギルドマスターをしております」

 「これは、初めまして。普段は駿介と名乗って冒険者活動をしております。後ろにいるのはウリサ。二人ともAランクです」

 「はい、公爵にお聞きしております」


 「いまから、ケティーの砦にいたホエザル人族たちをこちらに連れてきます。

 何分大勢いますので、宜しくお願いします」

 「はい」

 「私も手伝おう」


 冒険者登録の受付の書類を書く場所を、レストランのテーブルも使ってこなしていく。


 二千年の間に名前さえ忘れたやつがいたので、それは俺の鑑定で伝える。

 「お前の名前は、ウーリーだ」

 「……そういえば、そのような名前だった気がする」

 「君はプルスって名前みたいだ」

 「そうだ、思い出した!ありがとう」


 そうして、最小限の世話だけした俺とウリサは、ギルドを離れ、ケティー公国からガオケレナの麓に切れ込んでいる峡谷を行ってみることにした。


 ギルドの前に出ると、ハロルドがいた。

 「おかえり。どうだった?」

 『ガオケレナのはっぱが増えてた!冬なのに!』

 「そっか!よかった」

 『それから、これ!貰った』

 よくみるとハロルドは首から長ーいショルダーバッグのようなものを下げていた。

 「なあに?」


 首からバッグを外すときには角を引っ込めてくれたハロルドの頬をなでてからバッグの中を見ると、


 「林檎だ!しかも金色!」

 赤みがかった金色に光る林檎が沢山入っている。しかもこのリンゴは鏡面仕上げの金のように、俺の顔が面白く歪んで映っている。

 「すげえな、これ、食えるのか?」


 『おいしいんだって。食べようよ!』


 「このキラキラの皮は向かない方がいいのか?」

 『うん!』


 光っているけど、いちおう少し服でこすってみると、さらに輝く。

 「んじゃ、遠慮なく」


 サクリ じゅわ


 「すげ、めっちゃ甘くて程よい酸味。ウリサも一つ」

 「一口でいいけど。こんな貴重なものもったいねえ」

 『そういわずに!』

 「んじゃ……すげ。これ林檎か?林檎だけどなんか濃厚だな」

 「だな。ハロルドも」

 『わーい。本当だ美味しいね!』


 「これが樹に生っているところを見に今から行こうかな」

 『うん。林檎のほかにも色々あるんだって』

 「よし。じゃあハロルド様、鞍を付けても良いかな」

 『オッケーウリサ』

 ハロルドの真っ白な馬体にミグマーリの鱗でできたまっ白な馬具と緑銀色の手綱を付ける。


 「じゃあ、渓谷に行こう」

 「よし」

 『飛ばないの?』

 「今はこの道を行くんだよ」

 『分かったー』

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