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異世界転移したら尖った耳が生えたので、ちびっこライフを頑張ります。  作者: 前野羊子
第四章 ~王子の旅・天空路~

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224【二人の姫に挨拶してお別れ】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 「何じゃここはー!!」

 ガンガンガンガン

 「出せー」

 ガンガンガンガン

 「タローマティ様ー」

 ガンガンガンガン


 思わずこめかみを揉む。


 『王子?』

 『どうした?』

 「なんでもない、大丈夫だよ。ハロルド、アマビリータ」


 大悪魔たちを排除して、冬の元旦だというのに緑萌える生き生きとした風景を取り戻したプリネイ王国の王城の上空で、俺は精霊王のアマビリータと共にハロルドに乗って話していた。

 そんな時に、偽アーリマンが閉じ込めているアナザールームで暴れはじめた。


 もう煩いなぁ。


 俺は思わずその空間の魔力の密度を増やす。


 「ぎゃー。くっ苦しい!」

 色々なものを癒す俺の魔力で苦しむなんて。どういう事だろう……静かになったからいいか。とりあえず伯母様たちへの相談案件だな。


 “こんやから、もさとうにきなさいって”

 緑色ちゃんがつぶやく。

 “モサ島?”

 “あそこなら、おしょうがつも、ゆっくりできるでしょって。ふたりのめがみさまが”

 確かに。

 “わかった、行くよ”


 「ふう」

 『どうしたシュンスケ?』

 アマビリータに聞かれる。

 俺が今、挙動不審だったんだろうね。

 「伯母さんたちに正月の過ごし方を提案されて」

 『おばさん?』

 『王子の伯母さんって、大地の女神さまと水の女神さまだよぉ』

 『それはすごいね』

 「すごいのは女神様たちだよ」


 『そっかそうだな。神様って本当にいるんだよね』

 「うん。妖精王だって本当にいるんだもん」

 『僕は長い間妖精王らしいことは出来ていない』

 「でも、アマビリータが頑張ったから、自然がこんなに残っているんだよ」

 『そうかな?』

 「父さんは忙しいけど。俺で良ければいつでも話し相手になるから」

 『うん、ありがと』

 「じゃあ、ガオケレナの所に戻ろうか」

 『いや、僕はシュンスケが作った緑色の道をたどって、バオを尋ねに行こうかなって思ってるんだ』

 「まさか一人で?」

 『いや、マナザダンと、他の三角帽の妖精達も引き連れてね』

 「どうして?」

 『ゆっくりだけど、僕も妖精王なんだ。この世界の自然を取り戻すために動くよ』

 「わかった。ねえ、精霊ちゃんもついて行くと思うけどいいかな」

 『もちろんいいよ』

 “みどりのみちと、おあしすにはもう、あたしたちがいつもいるの”

 “だよな”

 “なにかあっても、おうじに、おしらせできるし”

 “みんなたのむよ”

 “まかせて”


 「よし、わかった、くれぐれも緑色の道からあまり離れないように動いてね」

 『もちろん』


 城門前にハロルドと降り立った時にはもう、白い角に凭れるようにくつろいでいたマナザダンと俺の後ろにいたアマビリータは居なくなっていた。


 『ウリサ乗って乗って』

 そのかわりに、ペガコーンは俺の護衛を後ろに乗せる。

 「ベルアベルに行くのか?」

 “がなっしゅひめは、きょうはぺるじゃーのおうとにいるよ”

 「元旦だもんね。さすがに家族といるっしょ。王女なんだし」

 「お前は王子なんだが」

 「ふふ、俺は先日父さんに会ったからいいの」

 十八年も会えなかったのに、最近はしょっちゅう会えてる。父さんとは。

 「まあな」


 『んじゃ、ペルジャーの王都に寄ってからモサ島?』

 「モサ島は転移で行くよ」

 『わかった。じゃあペルジャーだね』

 「うん」


 「お待ちください。シュンスケ、いやシュバイツ殿下」

 人ごみをかき分けて、ネヴァたちが城門から近寄ってきた。

 「ああ、お騒がせしちゃいましたね」

 「何をおっしゃいます!私はまだ、貴方に食材の代金の一部しかお渡ししてないですよ」

 「そんな、あれらは俺の不良在庫みたいなものなんですから、お気になさらずに」

 「そう言うわけにはいきません」

 「まあ、これきりここへ来ないというわけではないので、次に来た時にお話ししましょう」

 「まあ、ネヴァ殿下、ギルドから送金できますから」

 ラッシュがネヴァに話す。


 「そうか、そうだな」

 確かにギルドのあっせんで料理人として入ったんだけど。

 「本当に一日だけで御免なさい」

 「何をおっしゃるやら」

 「そうですよ、次に来られる時はきちんと来賓として迎え入れられるように、この国も城も整えておきますので」

 俺のためというより、この国のためにね。

 「はい。では皆さんお元気で」

 「ウリサも、また来てくださいね」

 「ありがとうございます」


 『じゃあ、出発するよ。僕の前の人よけてー』


 ハロルドの掛け声で、兵士の服装のヤマネコ人族たちが人ごみを整理してくれる。

 何とか無事に老化を食い止められた最高齢で二千歳を超える人たちがきびきびと動いている。見た目は三十から四十代ぐらいかな。


 まだ、雑草が隙間から生えている石畳を、軽やかに助走してから真っ白な羽を広げてペガコーンが飛ぶ。


 喧騒を背に、冬空へ。


 『三十分で目的地に着くから、しっかり捕まってね』

 「三十分?」

 「それは早い」

 『だって、はやく女神さまに会いたいもん』

 「うわあ」

 ウリサが珍しく情けない声を上げる。

 「来ますかね」

 『来るよ!絶対。モサ島に。もしかしたら待ってるかもしれないよ』

 「そうだね。急ごう」


 ガオケレナのてっぺんの緑がちらりと見えるほどの高さまで行くと、そのまま羽を広げたまま一気にペルジャーの王都に向かって滑空する。

 「ウリサ、そろそろマントの認識疎外を」

 「お…おう」

 そして俺たちも透けるように空に溶ける。

 『青い紅葉の湖がきれい!』

 「一応五芒星らしいよ」

 『えーそれにしては歪んでる』

 「あの国の人には言うなよ」

 『もちろん』


 とりあえず冒険者ギルドの前におりてもらう。

 地上に着けば姿を見せる。

 ハロルドは普通の白馬でね。


 「冒険者ギルドは年中無休なんだね」

 「しかも定休日がないんだぜ」

 「すごいよね」

 お店もちょっと開いているんだよ。コンビニハローワークってか?

 

 カランカラン

 ここも実はウエスタンドア。

 それを開けると、

 「あれ?バステトしかいないの?」

 しかも、ちょっと良い晴れ着を着ている。

 「あら、シュバイツ殿下。おめでとうございます」

 「バステト姫。その恰好で受付なんすか?」

 「さっき、父上に年始の挨拶だけ済ませて、こっちに来たの」

 「その恰好で?」

 「しょうがないわ、皆も正月休みだもの。最小限のスタッフだけでやりくりするのよ」

 「そうなんだ。でも、ドレス似合ってるねぇ」

 「な…なによ。シュバイツ殿下もいつも良いローブを着てるんじゃない」

 「わかる?これ、伯父さんに貰ったんだ!」

 「そう。それでギルドに何か御用?今日はこっちで泊まるの?プリネイ王国の件片付けてくれたんでしょう。ありがとうね」

 「ガナッシュ姫殿下もこっちにいるって風のうわさで聞いて」

 「妹?ああ、まだ王城にいるけど、もうすぐこっちに来るわ」


 カランカラン

 「ほら」

 「ほんとだ」


 「あら、シュバイツ殿下。おめでとうございます」

 「ガナッシュ殿下、明けましておめでとうございます。

 それで、これを返しに来て」

 「まあ、そんなのいつでもいいのに」

 「でも一応、目的は達成できたから」

 「兄上に聞いているわ」

 「ご苦労様でした」

 「で、タローマティやアーリマンはどうなったの?ったの?」

 朝から物騒な単語を。バステト姫は。


 「ってないよ!捕まえただけ!」

 「ふうん」


 「じゃあ、これを」

 エンブレムを返す。

 「もう帰ってきちゃった」

 「残念ねガナッシュ」

 「本当よ」

 「何が残念なの?」

 「王族の男女でエンブレムを交換するのは、将来の約束の時も含まれるのよ」

 「そ……」

 ちょっとそんな予感もしたけどさ。

 「俺が、ガナッシュ姫に釣り合いの取れる大人になるにはあと五十年かかるから」

 「だよねえ」

 「さすがに猫人族はそこ迄待てないわ。先日十五歳を超えてたんだもの」


 ほっ。


 そして、俺のエンブレムが帰ってきた。

 「んじゃ、エンブレムの代わりにお守りを一つずつ」

 例の俺の髪の毛とハロルドの尻尾で出来たタッセルのストラップを。

 「風邪予防になるそうなんだ」

 「まあ、冬にはありがたいわね」

 「でしょ」

 「それから、これも置いていくね」

 と、ラップされた干物を幾つか置く。

 「まあお魚!」

 お魚を見て喜ぶ猫人族の姫たちが可愛い。

 「氷室で保存して、生魚よりは長持ちするよ。焼いて食べてね!」

 「わかったわ!ありがとう」

 「じゃあ!王様たちに宜しく!」

 「「ええ」」


 そうして、元旦早々、ペルジャー共和国のギルドの扉を開けて南の島のモサ島入りする。


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