217【ベルアベルでご飯】
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ベルアベル町の一つ手前に作ったドーナツ湖オアシスを出発する。
前回、白骨化した死体などがあった集落は、建物はそのままだったが、悲しい人たちはもう埋葬されたのか無くなってた。
“よかったと言って良いか分からないけど”
“のざらしよりは、いいだろう”
“うん”
もう道のようなものはあるので、サバンナ状態を少し潤す程度の出力少ない回復魔法で龍型になって浮いているのは俺だけ。ミグマーリは人型になってウリサとハロルドにタンデムで乗って地上を駆けている。
美男美女に白馬だぜ。スマホで撮りてぇ!龍の手じゃでかすぎてシャッターの丸いアイコン押せない。
“しょうがねえなぁ、あとでデータにしてやるよ”
『ハイテクになった白色くん!ありがとう!』
“おうよ、おうじのたんじょうびパーティーのときにきたえたんだぜ”
あのサプライズのおれの生まれてから成長までも動画ですか。
不本意だけどさすがです。
そして、ベルアベル町の入り口あたりで俺が龍化を解き、黒髪黒目の人間族になって今度はウリサとハロルドに乗るのを交代して、ウリサはハロルドの手綱を軽く持ってそのままパカパカと歩いて冒険者ギルドを目指す。
「もしや、貴方はウリサ様ですか?」
「はあ、そうですけど様付けはやめてください」
女性パーティーらしい猫人族冒険者のうちの子供?が声をかけてきた。
「じ、じゃあこの真っ白なお馬さんはハロルド様?そしてシュバイツ殿下?あら?聞いていたお色と違うわね」
『こんにちは、ハロルドだよ、今は飛んでないけどね。君の名前は?』
「わわ、ハロルド様。あたしはミルキーっていうの」
『冒険者なんだ』
「ええ、カカって四人パーティーの末っ子なのよ」
「こら、ミルキーご迷惑よ!」
「いえ大丈夫ですよ」
「すみませんウリサさん」
「私がこの冒険者パーティーのリーダーをしているビターです」
ミルキーさんは、ペルジャーならぬペルシャって感じのフワフワもふもふのミルクティ―色の耳と髪の毛の猫人族の八才女の子。
ビターさんはこげ茶色の耳と髪の猫人族。年齢は十八だって。俺より年下なのに四人ものパーティーのリーダーをしてるなんてしっかりしてるよな。
馬上から失礼して、
「俺は、たしかにシュバイツだけど、普段はシュンスケと呼び捨ててね」
「シュンスケ?」
「うん」
八才のミルキーが歩いているのに俺が馬上なのが気まずくて降りる。
「そのお姉さんは?」
「この人はミグマーリだよ」
「ミグマーリってあの、白龍の…ミグマーリ様うそっ美じーん」
『くすくす、可愛らしいわね』
「ね。で、あと二人のお名前は?」
「私はプラリネ、ビターと同じ歳なの」
プラリネは、色々な種類が混ざったような不思議な女の子。
「あたしはガナッシュ。成人(十五歳)になったトコ」
ガナッシュはペルジャーの王族に近いのかなバステトみたいに真っ黒な髪でお顔は色白ちゃん。ちゃんって言っても今の俺より見た目は少し年上だ。ティキ位だね。でも大人っぽいティキよりさらにしっかりして見える。
「宜しくね。俺たちもあと二人パーティーメンバーがいるんだけど、今はガスマニアっていう西の果ての帝国にいるんだ」
「海のあるところね」
「うん」
「良いなぁ、海が近いとお魚が美味しいんだろうな」
「これ、ミルキーったら」
「ははは」
やっぱり、猫には魚かな。
冒険者パーティーカカの四人組だけど、今は冒険者活動よりギルドの食堂スタッフがメインらしい。前の時はギルマスが纏わりついてたから、分からなかったけどな。
「最近は戦争の補助ばっかりで、砂漠の魔物討伐にはあたしたちはまだDランクだし、王都への武器の運搬でさえランクが届かなくて」
「あーあれは嵩も運べないとだめだしな」
「そう、マジックバッグでも多いのよ」
しばらく、一般の冒険者の話を聞きながら歩いていくとようやくギルドが見えてきた。
「ハロルド様どうする?」
ギルド前のロータリーでハロルドの馬具を外しながらウリサが訪ねている。
『ちょっと、アナザーワールドで地竜たちとお風呂入ってから戻ってくる』
「わかった」
アナザーワールドにはゴブリン舎の隣に地竜達用のでっかい露天風呂があって、人間のゲスト以外はそこを使う。
俺のスキルでもあるからか、最近出入り自由きなったのに気づいたらしい。ミグマーリも出入り自由なんだって。
カランカラン
「あれ?人間族だ」
「こないだ王太子殿下といたやつジャン」
「ということはウリサとシュバイツ殿下?あの美女は誰だ」
「んじゃ、俺がチェックインしてくるよ」
「頼んだよウリサ」
さすがに女性のミグマーリはここには泊まらず、晩御飯だけ食べて、ハロルドと入れ替わりでアナザーワールドで休むらしい。あの湖の方が良いんだって。
「シュンスケこっちこっち!」
呼ばれて振り向けばミルキーが手招きしていた。
「ミルキー、俺は先にトイレ行ってるから、彼女を席に案内して」
「もちろん、ミグマーリ様どうぞ」
『ありがとうミルキーちゃん』
「シュバイツ殿下ですか?握手を」
「俺今からトイレだから戻ってからね」
「精霊王子もトイレ行かれるんですか?」
「な、おま何言ってんだ!」
「ははは、行くよもちろん!だって俺、子供の割にめちゃくちゃ食べるもん。あ、トイレの前で待ち構えないでね!引っ込んじゃうから」
「わははは」
冒険者たちとも他愛無いおしゃべり。
地域柄殆ど猫人族だけど、犬人族やハーフもいるよ。インパラもちょっと居るね。確かに人間族が少ないかな。
トイレから出てせっかく洗った手で数人の人と握手をしてからレストランフロアに、歩きながら手をキュアと白色くんが浄化してくれる。
“なんのためにてあらいにいったんだよ”
“出すため”
“キチャナイてとあくしゅしちゃ、めーなの”
“それは、無理だよね”
伝染病が流行っているならともかく。
レストランコーナーに行くとウリサとミグマーリが座っていて、その傍らには前回もいたヤマネコ人族のウエイターが立ってた。
「今日はテーブル代を払うのか?」
前回は、ギルマスのラシアンに手持ちのご飯をご馳走したけど、ここのチーズ料理が食べたいよね。
「今日は、ここのご飯を食べたい」
「そうだな」
「わかった」
「水だけなら手持ちを出しても良い?」
「良いよ」
「んじゃ、空のグラスを三つと、俺は果実ジュースと二人はワインとかする?」
「俺はエールでいい」
『わたしもウリサに合わせるわ』
「分かりました」
先に出てきた空のグラスに、水の女神のポットから水を注いでおく。
「はーいエールお待たせ!シュンスケがジュース?」
「うん」
ウエイトレスの服に着替えたミルキーがやってきた。
猫耳にフリフリのまっ白なエプロンが似合うのは異世界共通だな。
「これメニュー」
「さんきゅ。おすすめは何?」
「全部美味しいわよ。でもそば粉のパスタが色々あっておススメ。あとはチーズ焼きとかね」
「さっき焼きそばだったけどパスタ食べてみたいな」
「そうね」
「ミノタウロスのパスタってあるぜ」
「いや、俺はもうミノタウロスは食べない!」
「ははは、じゃあこのボアハムのパスタにするか」
「それにしよ!ミグマーリはどうする?」
『パスタも食べたいけど、チーズ焼きも気になるわ』
「そうなんだよね。じゃあシェアしよう」
『シェア?』
「半分ずつ交換するんだ」
『じゃあ両方食べられるのね!』
「うん」
「ははは、もっと色々頼んで取り分けようぜ」
「そうしようか、ミルキーいいかな」
「どれ?」
「これとこれとこれと……」
メニューには数字が振ってあってそれを言ってもいいんだって。
「この期間限定特別メニューって?」
手書きで書き込まれてる。
「ラシアンが貰ってきた野菜のサラダよ」
「ああ、スフィンクス様の野菜」
「なるほど、それを俺が食べるのもなんだかなだな」
『そうね』
「サラダだけ、自前のを置いていいかな。テーブル料足しといてよ」
「わかったわ一品だけなら、ちょっとよ」
「あとは取り皿を二枚ずつ貰おうかな」
「了解」
「じゃあ、カンパーイ」
「『カンパーイ』」
『まあ、このエールって冷たいのね。美味しいわ』
「それはこのテーブルだけですよ」
“つめたくしたほうがよいのみものは、たのまれなくてもひやすわ”
『さすが青色ちゃん。それでグラスにくっついてくれていたのね』
“そ”
「エールを冷やして飲むなんて、シュンスケに言われるまで考えなかったけどな」
「そう?俺はアルコールはほとんど飲まないけどさ、二十歳になってまだ浅いしね。母さんがいつもキンキンに冷やしたビールが美味しいって言ってたからさ」
「たしかに、もう生ぬるいエールは無理だ……習慣って怖い」
『ふふふ』
ガラガラガラ
「おまたせしました~」
ワゴンを押してやってきたのはガナッシュの方だった。
ワゴンの横には何やら大きな円盤が立てられていた。
「失礼しますねー」
そう言ってテーブルのグラスを脇に寄せて空いたところにその円盤をどーんと乗せた。
「こ……これって!」
そしてその上に、頼んだ料理の皿たちと、トング、調味料、取り皿やカトラリーを乗せていく。
中華料理のターンテーブル。まあ発祥は日本らしいけど。欲しい!何処で手に入るのだろう。大勢でテーブルを囲うときにいいじゃん!
どういう構造なんだろう。この世界にもベアリングはあるんだろうか。やっぱりドワーフの国かなぁ。
「シュンスケさんどうされました?」
ターンテーブルを見て固まってしまった俺にガナッシュが声をかけてくれた。
「い、いや、ターンテーブルって面白そうだなって」
「上に乗って遊んじゃ駄目ですよ」
「俺はそんなにちびっこじゃないです」
「くすくす、冗談ですって」
ガナッシュって真面目そうに見えてたけど面白い娘だな。バステト姫をつい思い出す。
「ガナッシュってさ、王都のギルマスに似てるって言われない?」
「!バス姉と会ったんですか?」
「うん。前にここからあっちのギルドに荷運びした時に彼女自ら対応してくれてね」
「ま……まあ、あのひとはそうしそうですね」
「で?」
「妹です」
「つまりガナッシュ姫殿下って事?」
まあ、そっくりと思った時に鑑定済みだけどね。
この方はガナッシュ フォン ペルジャー
バステト姫とカラコルム王太子殿下の妹姫だ。
「そうですシュバイツ王子殿下」
この世界の姫たちは皆アクティブだなぁ。
「ははは。ギルドではシュンスケでお願いしますよ」
「そういう別名があるといいですねぇ」
「でしょ」
「ではごゆっくりどうぞ。それからこれ……スイートルームの鍵です」コソッ
俺がどの部屋に滞在するのか周りに聞かれないよう気遣いしてくれる。
「んじゃ食べようか」
「シュンスケ……あのひとってやっぱり」
席に着いたらウリサが効いてきた。
「びっくりするよね」
「聞いててくれて助かった。たしかにバステト様と同じような色だったけどな」
「いつ公の場で合うかわかんないもんね」
「お前と行動していたらその危険があるよな」
「危険て……。
あ、ごめんミグマーリ、取り分けてあげるね」
『え?ええ、ありがとう』
取り皿をとって、見栄えよく取って、彼女の前においてあげる。
『ありがとう、いただきます……美味しい』
ずいぶん食べるのがきれいになってきた。
更に美人度が上がってる。
いつか、ユグドラシルとミグマーリで女子会なんて絵になるのでは?
“おうじもおんなのこで、さんかすればいいじゃない”
いや、見た目女の子になっても女の子の会話は無理。せめてクインビーを足してやって。
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