215【古くて新しいところへのお誘い】
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アーリマン改めマナザダンと妖精王・もと精霊王がそれぞれ帰っていった。
つぎは、ケティー家だな。
ほとんど間取りの同じガスマニアの海の家と、アナザーワールドの湖の家を繋ぐ。
「おうじぃ」
黄色ちゃんにお知らせされていたので、マツが飛びついてきた。
「マツ!お父さんと会えてよかったね」
「うん!おとうさんってやさしいんだね」
「優しいマツのお父さんだからだよ」
猫耳をもふるように頭をなでる。
お父さんの前だけど子供同士だから許してね!
「えへへ」
「この度は、本当にありがとうございました」
シルバーの鎧姿から、セバスチャンが用意していた貴族の平服姿になった猫人族の公爵は、長期の戦いで培ったのか、平服越しでも良い体格なのが分かる。それでいてしなやかなのが品を感じる。
「いえいえ、まだ終わってないですから」
「しかし、家族を助けていただいて。このご恩はどうすればいいのか」
「それについてはこれから話しましょう」
シェドー君は、入学済みの四つ下のティキと同じ学年のガスマニア帝国学園に編入するべく準備を始めたそうだ。
お母さんのシルエラさんもその面倒を見るために海の家にいる。
「ねえ、おうじ、ちりゅうたちとあそんでいい?」
「いいけど……あいつらでかいから危ないしなぁ」
「俺が見ているよ」
「頼むよウリサ」
「やたっ……ぷぅーぽぉー」
たたたたと駆けていく猫むすめとそれを追いかけるウリサ。
それを見守るアルバートン公はすっかりお父さんの表情だったけど、すぐに顔つきが変わって此方を向き直した。
「では、此方にどうぞ。カラコルム殿下とギルマスのラシアンがいますので」
食堂から一階の応接に話し合いの場を変えていた。
「アルバートン、元気そうで良かった!」
「カラコルム殿下、それにラシアンも」
「久しぶりです」
「ラシアンはずっと物資を送ってくれていて」
「前線でガオケレナ様を守って戦っているあなたを手伝うのは当然ですよ」
猫人族達がひとしきり話したあと、俺が先の本物だったアーリマンの事情と改名した話をした。
「それはご苦労様でした」
「俺は場所を提供しただけだよ」
「でも、ここはシュバイツ殿下の空間なんでしょう」
「まあね。悪魔なんて何処に耳や目があるかわかんないからさ」
「はい」
「さて、これからのことだけど。俺はほとんど部外者ではあるから、あくまでも提案として聞いてほしいし、カラコルム殿下に一度持ち帰って、パンサー国王陛下と協議してほしいんだけど」
「何でしょうか」
「プリネイ国に残っている一般国民全部と、ペルジャーに避難しているケティー公国民の希望者を、砂漠のド真ん中に復活させたアンシェジャミン国に一時でいいから来ないかなーと思って」
「アンジェシャミンですと!」
カラコルム殿下が立ち上がった。
アルバートン公が落ち着いたところなのに
「うん」
「ふむ?」
「ケティー公国の人たちはもともとアンジェシャミンの人だったそうですね」
「ええ、ケット・シーからの血筋を得た猫人族ですので」
「新しいアンシェジャミンには、今そのケット・シーのパリ コルベがいたでしょ」
「いらっしゃいました。今シュバイツ殿下のお力で、私が率いていた兵士たちをそちらで療養させていただいているんです」
「なんと、パリ様が!」
「うん。彼女もタローマティによって捉えられていたのを、今は新しくなったアンシェジャミンに保護したんだ」
「そこに、アンジェシャミン出身の子孫の一人でもある、シャンツ フォン コルベもいる」
「シャンツは幼いころに世話になった覚えがあります。」
アルバートン公はシャンツをおぼえているんだね。
「父の元にはシャンツの弟のタイ―ラ フォン コルベが侍従として仕えています」
王太子も知ってたのね。
「俺はね」
と言いながらアルバートンの前で二度目、ほかの人は初めて三日月刀を取り出す。
「そ……それは」
「今俺が持っているこの〈ルハカマリィ:月の精の宝刀〉を正当な持ち主に返したくて」
「ああ、シュバイツ殿下」
「なるほどな」
「それで、とりあえずアンジェシャミンのエマイルモンド湖を手っ取り早く復活するために手持ちのダンジョンコアを利用してダンジョンにしているんだけどね。これまでのダンジョンとはちがって、俺の聖属性魔法に特化した安心安全なダンジョンなんだ」
「なるほど」
「そこは、温泉やリゾートに特化した、健康という宝を得るための観光地として開発中なんだ」
「素晴らしいですな」
「とはいえ、今はロードランダから引退した元農業従事者や、俺が使役しているホブゴブリンとかで手入れしているだけ。周りの元王都だった中の島の部分は手つかずだし、住民を絶賛募集中なんだ」
「なんと」
「素晴らしいですね。ペルジャー王国民ももともとアンジェシャミンから逃れてきた一族の末裔で、ケティー家が最後までアンジェシャミンを守っていたのですが、国民をみな非難させてからガオケレナの麓にやってきたんです」
「なるほどそう言うことだったんですね」
放牧の民が、あの一帯を砂漠化させながら勢力を広げていたとか。
砂漠化させたのは、もともと草地だった地域に大量のヤギなどの家畜を育てていたからだそうだ。そのうえで、農耕をしないから、食いつくした大地を捨てて次の草原に移動しては砂漠を広げていくという……。
確かに雨が少なすぎると、農業は難しいよね。
「プリネイ王国ですが、酪農がメインの国なので、国民よりは牛の方が多いです」
アルバートン公が教えてくれる。
「なるほど!たしかペルジャー共和国はチーズが特産とか」
「ええ、ロードランダと同じですけど、チーズの種類が変わります」
「ふむ」
「よりハードで日持ちのする種類で」
「かつては河で海まで運んでいたとか」
「そうです」
「まずは街道の復活ですね」
「しかし、砂漠の魔物が跋扈する地域なので」
「そこは、俺と白龍のミグマーリが何往復かすればその跡が砂漠化を解消できます。それと、ミルクブールバード河の上流の復活ですね」
「ですが、あの河は干上がっていますし」
「確かにそうでしたが、トルネ気王国の国境のボールモンド湖までは復活しています」
「なんと」
「それにもう少しガオケレナ様が元気になれば希望は見えて来るでしょう」
「おおおっ」
その後は、王太子のターン。
「シュバイツ殿下がこの事業をしていただくにあたって、ペルジャーではシュバイツ殿下と殿下のお連れ様は何処に滞在していただいても、一番の部屋に案内して料金は取らないように共和国中に通達いたします。理由は大悪魔討伐ではなくて、精霊王であったロードランダ王の息子殿下に経緯を払うと言う内容で申し訳ないですが。もちろんお食事も出させて頂きますよ」
「そ……そんな、報酬もご用意いただくとおっしゃっていたのに、それはあまりにも破格すぎないですか」
思わず顔の前で両手をフリフリする。
「そんなことはありませんよ。シュバイツ殿下に泊まっていただきたい宿屋は多いと思います」
たしかに、そういう宿が一つあるのは知っている。結局居心地がよくてよく利用しているし。
「分かりました、お言葉に甘えます」
「はい」
「もちろんベルアベルのギルドのスイートルームも開けておくぜ」
「ラシアンまで……」
「その部屋はいま私が滞在していますがなかなか良いですよ」
「それは楽しみです。旅は好きですからね」
「そしてそろそろ私たちは王都に帰ります」
「おかげで兵士たちの傷や疲労もかなり癒えたからな」
「なるほど、ではベルアベルから一気に送りましょうか」
「いえ、王都までの道中も気になりますので、先ずはそこの整備や警備をしながら皆で行きますよ」
「そうですか分かりました」
「シュバイツ殿下」
「アルバートン公」
「暫くはその三日月刀をシュバイツ殿下がお持ちいただけませんか」
「なぜ?」
「まだ、ケティー公国の方にも国民がゼロというわけではないのです。あちらの国民も無事に脱出することが出来たら改めて相談させて頂きたい」
「そうですか」
「それに自分の子供達はまだまだガスマニア帝国に住む必要がありますしね」
「ティキは学園の一年生だし、他の子はこれからですもんね」
そのうちアンジェシャミンが栄えて自国の教育設備ができるだろうけど、アルバートン公の子供たちは待つことはできない。すぐに成長しちゃうからさ。エルフじゃないしね。
「それには何時までも海の家にお邪魔するわけにもいかないので、ガスマニアの帝都に、賃貸でいいので家を探すこともしなくてはいけないです。が、それは、妻に言ってありますから」
「別にあの家に住んでいただくのは構いませんけど、わかりました」
「では、アルバートン公も一緒にペルジャーに戻るか?」
「王太子殿下、そうですね。シュバイツ殿下お願いできますか?」
「ええ、でもマツが戻ってくるまで……って戻ってきた」
「ただいまかえりましたー」
「お帰り、それは?」
「すふぃんくすさまがくれたの、ともろこし」
「これはりっぱだな」
「ここは年中色々な季節の野菜が収穫できますからね」
「ガスマニアではもう冬野菜だがな」
トウモロコシを含めた籠いっぱいの野菜を魔法の袋に詰めてウリサとスフィンクスがラシアンに渡している。
「砂漠では、フレッシュな野菜は貴重でしょうから、どうぞ皆さんにふるまってください」
「ありがとうございます。仕入れで困ってた厨房の連中が喜びます」
「マツ、お父さんはここから直接一人でペルジャーに帰るんだって」
「え?そうなの?」
思わずお父さんの服の裾をつかんで見つめている。
「マツ、お母さんやお兄ちゃんお姉ちゃんと仲良くするんだよ」
「もちろん!せっかく会えた家族だもん」
「そうだな」
「それから、おとうさんのことは、せいれいちゃんにきけるもん」
「精霊?」
「マツは精霊魔法が使えるんですよ」
「それは自慢の娘だな」
アルバートンが優しいまなざしを向けながら猫むすめの頭をなでる。
「へへへ。でもねおとうさん」
「うん?」
「むりしちゃだめだよ」
「ああ、分かってる。やるべきことを終えたら皆を迎えに行くから」
「うん!待ってる!」
「では、シュンスケ」
「お願いします」
「はいこちらからどうぞ」
応接の扉を、ベルアベルのギルマスの部屋に繋げる。
「おお!これは楽だなぁ」
「ははは本当に便利」
「さすがです」
「では、また後日お伺いします」
「お待ちしております」
パタン
左手にはマツの手。
後ろにウリサ
そして、テーブルを片付けているスフィンクス。
「ふう、ミーティングって体を動かさないのに疲れるのはなんでだろう」
「緊張が持続するのは疲れるぜ」
「じっとしているのにつかれるの?」
「ああ、マツ。たとえば森で獲物に気配を悟られないように、じっとするのも疲れるんだよ」
「そうなんだ」
「確かにそれもあるし、今日のメンバーは大物が揃ってたからね」
「まあな」
「じゃあ、二かいのおふろに入ってきたら?」
「お、マツいいアイデアじゃねえか」
「フフーン。あたしはスフィンクスさまと、あかいろくんと、ともろこしをやいてるから」
「それは楽しみだ」
「お腹もすいたしね」
浴室ではキュアが先に湯船に浸かってた。
一応二階は男湯なんだけど。
でも青色ちゃんに手をひっぱられながら、回復魔法を煌めかせて泳いていた。
入浴剤代わりの魔法。ありがとう。
ウリサに背中を流してもらう。
「シュンスケほんのちょっとだけど背が伸びてねぇ?」
「ほんと?」
「ほんのちょっとだけどな」
「そうか来年は人間族で言ったら七才になるんだよね。六才と七才の差なんて確かにほんのちょっとだけどさ。やっと!」
「三年もかかるのはきついな」
「だよね。アマビリータぐらいの身長で止まるならいいけどさ」
「そうか?しかしあの方はあの姿で何千年もいらっしゃるんだろう?」
「まあ、妖精なんて成長とか老化なんて概念がないかもしれないけどね。そもそも父さんと同じぐらいなんだから、子供とか大人とかも関係ないんだろうな」
「人間の俺が考えるだけ失礼かもしれないな」
「ははは、そんなことはないだろうけどね」
精霊王だった父さんはその時は結構孤独感を感じていたと言ってた。
周りに沢山の精霊ちゃんや、高位精霊がいてもね。
そんな中で妖精王は唯一の対等な存在だったんだろうな。
でも、神様によってハイエルフになって、立場が変わった父さんの周りには多くの人が集まった。アマビリータにはガオケレナはいるけど、ほかの妖精たちだけではちょっと寂しかったかもしれないよね。でも対等ではないかもしれないけど、アーリマン改めマナザダンは見た目は友達みたいなもんだから、お互いに良い話し相手なんかになればいいよな。
今度、ボードゲームとか送ろうかな。本でもいいだろうけどさ、この世界には娯楽が少ないからね。余計なお世話かな……
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