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異世界転移したら尖った耳が生えたので、ちびっこライフを頑張ります。  作者: 前野羊子
第四章 ~王子の旅・天空路~

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209【あっちこっちに】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 ウリサと俺の部屋でご飯を食べた後、隣の海の家の居住スペースに滞在しているキャッツアイズの三人を訪問する。


 「くつろいでいるところ悪いな」

 「いえ!」

 「公爵を救っていただいたとか」

 「今、隣で皆で感動タイムだ」

 「それはそれは」


 「それで、明後日またアルバートン公とその他の連中たちと聞きたいことがあって、またペルジャー王国に戻ってほしいんだけど、そのときはキャッツアイズの三人も付いてきてくれないかな」

 「もちろんです!」

 「我々は、アルバートン公の配下ですから」

 「よし。んじゃ明後日朝十時にロビーに集合だよ!」

 「「「分かりました」」」


 「ウリサ、悪いんだけど……」

 「次はベルアベルか?」

 「うん」


 二人で、そこいらのドアからベルアベル町の冒険者ギルドに戻る。


 「シュンスケ、それにウリサも!」

 受付で若返ったままのギルマスのラシアンが待ち構えていた。もうすっかり夜なんだけどさ。


 「こんばんは」

 「お疲れ様です」

 「王太子様は?」

 「休まれてますよ。お前たちもずっと動いているんだろ?」

 「まあね」

 「茶でも入れよう」


 そのまま、ギルマスの部屋に本人の案内で連れて行かれてしまう。


 「ふう、チャイが旨い」

 「ああ」

 「ガオケレナ様に出してもらったものも旨かったけど」

 「そうなんだ」


 「シュンスケ、ガオケレナ様にお会いできたんだな」

 「はい、かなり衰弱しておられて危険だったのですが、いまはある程度回復しています」

 「悪魔の手下にぶっ掛けられていた、黒い液体もかなり洗えたのじゃないかな」


 「そうか、それは良かった」


 「あとはケティー軍とアルバートン公の保護も完了した」

 「そうか。本当にありがとうシュバイツ殿下」

 「今、アルバートン公はガスマニアで家族水入らずで過ごされている」

 「本当に良かった」

 「子供達も念願のお父さんだったんだ」

 「そうか」


 あれは尊かったよネ。


 「ところで、俺が一番気にかかってることがあるんだ」

 「なんだ?」

 「アーリマンのことだ」

 「ふむ?大魔王だな」

 

 「皆が口をそろえて、大悪魔のアーリマンを旗印に悪魔たちが動いていて、猫人族たちもそれに対して戦っていたじゃないか」

 「そうだ」

 「でもね、アーリマンは父さんが封印してからずっとガオケレナの中に閉じ込められていたんだよ」

 「そう言ってたな」

 「ねえ千五百年も」

 「ということは」


 「大悪魔アーリマンを語る悪魔とかっているんじゃない?と思って」

 「それは気になるな」

 「そもそも、魔素を集めるために自然を破壊したりしていたそうだよ」

 「ああ、ひどい話だ」


 集めた魔素はどうしているんだろう。


 学園で学習したものでは、自然の魔素は循環していて、たとえばポイコローザで集められた魔素は、ドワーフの国で消費されるけれど、それは空中に霧散して、やがて森や湖、海などに帰っていく。

 だからよっぽど無茶な使い方をしない限り砂漠になるほど魔素が無くなることはないはずだ。


 「今、ケティー公国とプリネイ王国が悪魔に乗っ取られているんだよね」

 「そうだ」

 「他の国は?っていうか、ペルジャー共和国って全部でいくつの国があるの?」

 「全部で五ある」

 「そのうちの二国の城を落とされているのか」

 「この国もだったぜ」

 「そうだね。だけどこの国の城の王座に座ってたのは、自国を悪魔に売ったプリネイの王だ。あれはもう悪魔じゃないし」

 「悪魔じゃない?」

 「完全に浄化して、俺の空間魔法に入れてるんだ。干からびているよ」

 「ヤマネコ人族のくせに、千五百年も生きようとするからだ」

 「長寿を目指すなら他のやり方があるのに」

 「他の?」

 「知らねえのかウリサ、レベルが上がれば寿命が上がるんだぜ」

 ギルマスが教えてくれる。

 「ちょっとしたレベルでは無理だろう?」

 「そうだな、人間族なら三桁超えたら長生きでいるだろう」

 その台詞に、ウリサがこっちを向く。


 「確かお前のレベルって四桁…」

 「今ギルマスは人間族ならって言ったでしょ!」

 「そうだった」

 “シュンスケの寿命は無限大・・・”

 “もう”念話で言わないでよ。

 

 「そう言えば、人間族で元Aランクのドミニク卿は初めに会った時はレベル六十だったのに、結婚してからはレベル八十を超えていたんだよ。愛のパワーだよね」

 「はぁ?二十も一気に増えるか?」

 「たった三年ほどいや三年も経ってないよね」

 「シュンスケそれはエリクサーも関係してるんじゃねえか?」

 「あれが?」

 「麻痺が治ってからゲールと訓練再開していたみたいだしな」

 「なるほど」

 「へえ、俺もエリクサーでレベル上がったかなぁ」

 「訓練とセットじゃねえか?」

 「エリクサーの効果それに関しては〈個人差があります〉きっと」

 「違いねえ」


 「まあ、爺になってから長生きしてもなぁ」

 「だな」

 「その台詞をプリネイの王様に行ってやって」

 「おう」

 「俺が言っても効果なさそうだし」

 「まあな、お前に寿命はあるかどうかも謎だし」

 「我ながら怖いけど」

 「ははは」


 「それで、明後日皆を集めてミーティングしようと思って、出来たら悪魔に入れないところがいいと思っているんだ。場所は俺が提供するけど、ラシアンと王太子と、出来たらペルジャーの王様もいたら有難いなぁ」


 「わかった、国王陛下には通信の魔道具でお伺いしてみよう」


 「このギルドは王太子の軍の人たちでいっぱいだろうし・・・今夜はロードランダで寝るか」

 「わかった」


 あっちこっち、転移しまくって、最後には冬を迎えるグローベスエルフェンス城の広い広い自室で寝ることにした。ここなら隣にウリサの部屋もあるからね。

 黄色ちゃんに予告してもらってから行ったら暖炉の火が入っていた。

 ベルアベルからロードランダ迄の伝言早くなってんじゃん。

 「さすが皆!」

 “きゃはは!えんきょりだいじょぶになった!”

 “ひはおれがつけておいた”

 「さんきゅ」



 「おはようございます、シュバイツ殿下」

 「おはようございますプランツさん」

 「食堂に陛下ももういらっしゃってますよ」

 「わかりました」


 翌朝、顔を洗ってプランツさんに髪を一つに括ってもらう。ま、自分でも出来るんだけどさ。


 コンコンコン

 「はーい。どうぞ」

 「おはよう、もう起きてるか?」

 となりの部屋からウリサが来た。

 「うん、さすがに今日はアラームを止めて二度寝しちゃったよ」

 「ははは、俺もすこし寝坊したぜ」


 「お二人はいつも目覚めが良い方ですがお疲れだったのですね」

 「そうですね。特に殿下は転移と回復で」

 「きのうはかなり頑張ったんですよ」

 変身もしまくったしね。


 今日のお城の朝ごはんは完全な日本の朝ごはんだった。

 白いご飯、魚の干物を焼いたもの、豆腐のみそ汁、そして青菜のお浸し、根菜の漬物。

 「ほっこりする」

 「そうだな。俺もこういうものが好きだな」

 「父さんも日本のご飯好きなんだな」

 「うん、初めは母さんと旅館?ってところで食べたんだ。おいしかったよネ」

 「旅館の朝食は良いよね」

 「そのあと、マンションで暮らすようになっても週の半分は和食だったな」

 「ふうん」

 「洋食は、こっちと似ているだろう?だから和食は珍しいし美味しいし」

 「うん」


 父さんはお箸も上手。ウリサも最近は箸を上手に使えるんだよね。はじめはスフィンクスに教わったらしいけど。


 「じゃあ、いまからアナザーワールドに行くね」

 「僕も一緒に行くよ」

 「父さんも来てくれるの?」

 「ああ、アーリマンに会いたいからさ」

 「わかった」



 アナザーワールドの、湖のあるお屋敷から一番遠い所に転移する。

 ここは、新たな世界樹を育てるべく、大きな樫の木にリンドラークで拾ったかつてはユグドラシルの梢だったエメラルドグリーンの葡萄を巻き付けて植えている。

 その周りは草原になっていて、絵にかいたようなお花畑になっている。

 それらをお世話してくれているのはもちろん蜜蜂たちだ。

 シュバイツ印の主商品の蜂蜜になるんだ。


 ここなら、何があっても被害が最小限だろうということだ。

 傍らには、かつて精霊王だったブランネージュ父さん、ウリサ、スフィンクス、そして俺。

 そこに、真っ白な屋外用のテーブルセットを出す。椅子は四つ。そのうち四阿位立てておいても良いよね。


 「じゃあ、まずはアーリマンを出すよ」

 「うん」

 「わかった」


 アーリマンの独房のようなアナザールームをスモールワールドから引き寄せてきた。


 コンコンコン


 「アーリマン、起きてる?ちょっと出てこれる?」

 「あん?オマエはシュバイツ?」

 「うん。ちょっと聞きたいことがあってさ」


 ガチャリ。


 ふわぁ


 そこから出てきたのは、派手ではないけどちょっとピエロのような衣装の少年だった。


 三角のようで先が二つに分かれて狭まっている帽子をだらりと被り、その帽子から見えている癖のある少し緑がかった金髪に緑色の瞳、青白い肌。耳は尖っている。

パジャマっぽい上下に、つま先が上を向いた柔らかそうな素材のブーツ。

 けっこう可愛いのでは?あのおっさんに比べると。


 見た目は中学生ぐらい?昨日のアマビリータぐらいだな。


 全然悪魔じゃないじゃん。


 「改めまして、俺は駿介」

 「お前がシュンスケか。思ったよりガキじゃん。俺様がお前の空間からも出られないなんてね」

 「昨日は眠れた?」

 「ああ。久しぶりに薄暗い所でぐっすり眠れたぜ」

 「そりゃよかった。まあ、座って座って」

 椅子をすすめる。

 「朝ごはんはまだだよね」

 「長い間ものを食べていない」

 「そっか、じゃあ、スープからどうかな」

 顆粒のものにお湯を注いでスプーンでかき混ぜてアーリマンの前に置く。

 そういえば、パリにもこれをあげたよな。


 「このスープうまい」

 「ゆっくり飲んで」

 しばらく彼がスープに夢中になっている間に、スフィンクスが皆に紅茶を配って、テーブルの真ん中にミルクが入ったピッチャーとスプーンを置いたので、俺は蜂蜜の瓶をその隣に置く。


 「駿介、この子がアーリマンなのかい?」

 「うん、違う?確かに一昨日アマビリータから預かったんだよ」

 「こういう感じだったっけ?」

 「シュンスケ?このエルフは誰?」

 「俺の父さん」

 「アーリマンご無沙汰してます。ブランネージュだよ」


 ガタン!


 「ぶ…ブランネージュだと!」 


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