208【ケティー家】
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『ごめんねガオケレナ、心配かけて。そんな事より王子、大丈夫なの?アーリマンは今どこなの?』
「アナザーワールドみたいなもので、妖精たちを預かっている空間があるんだよ。そこに。アーリマンはともかく、いつか妖精たちをアマビリータに返したいんだけど」
『そうだね、王子に負担かけてるよネ』
「負担とはおもってないよ?」
可愛くないとは思うけど。見た目だけ。
『僕はまだ妖精王としては完全じゃないから』
「うん、アーリマンを封印するのに大変だったんだよね」
『う……うん。僕には普通の空間魔法しかないからさ。
あの時、不死のはずのブランネージュが死にそうになりながらも、アーリマンを全力で封印してくれたんだ。たぶん、精霊王としてのスキルも殆ど失ってたかもしれない、それでアーリマンを封印した魔石を僕の拠点でもある、このガオケレナの根っこの先に地下室があるんだけどね、そこに皆で置いたんだよ』
『そこは異世界の悪魔には見つからんやろうおもってね』
「続きの話を聞きたいけど、ちょっと、まだ外で頑張ってる連れがいるから、また明後日来るよ。明後日迄二人は大丈夫かな・・・」
『あたしはすっかり元気!王子は砂漠の真ん中にも魔力だまりを作ってくれているでしょ?あれが届いてるで、そこの湖ももちろん』
「そりゃよかった」
『うん!ハロルドもいるんでしょ?』
「いるよ。連れてくるからちょっと待っててね。それから他の人たちも呼んでいいかな、俺が気になっていることを皆で話しあいたいからさ」
『わかった』
俺は世界樹のてっぺんの西側を意識して転移する。
そこには、すっかり青い生き生きとした葉を茂らせている大きな木があった。それはもう木というより山だよ。空気も結構薄いほどの標高だし。急激にここに来れば軽い高山病になっちゃうとおもう。ユグドラシルもそうなんだけどさ。
よく見ると、異なる種類の葉っぱも混在しているな。
ユグドラシルとは全然違うのは、さっき麓で見た太い幹だ。一周がポリゴンの町の二倍ほどありそうなほどの太さ。それが二千メートル以上の高さに伸びていて、その上にブロッコリーじゃなくて葉の生い茂る部分がある。それはもちろん幹より広がっていて……バオバブの木ってこういうのじゃなかったっけ。
でも、上の方では沢山の種類の葉や花が混在しているんだよね。
視線の先にはシュメル山脈のせいでもう陽が落ちていて、真っ暗になっているけど、光るハロルドとそれに乗ったウリサが見える。その周りもチラチラと精霊ちゃんも光ってる。
「おーい、もう今日は終わるよー」
「おー」
『はーい』
俺は休まずに戦い続けているアルバートン公に近づいていく。
さっきの龍の姿になりながら。
『お疲れ様ですアルバートン公。今日はもうお休みになりませんか?』
「ご助力ありがとうございます。あなたは、ミグマーリ様ですか?」
『いいえ、俺は彼女の友人です』
そう言いながら龍化を解きながらスピリッツゴッドに戻っていく。
「龍が……」
「天使だったのか?」
地上に立った俺に駆け寄って、アルバートンが跪く。
「改めまして、シュバイツ殿下。アルバートン フォン ケティーでございます」
そうして、俺の右手をおでこに持って行く。
アルバートンは俺のことを知ってたんだな。
「シュバイツ フォン ロードランダです。ふだんは田中駿介と名乗ってまして、駿介と呼んでください」
「シュンスケ?」
「はい」
アルバートンたちを見回すと、二百人ぐらいはいる。
「ケティ公国は大丈夫なんですか?」
「わが国は今、悪魔に占拠されておりまして、一般市民は皆ペルジャー王国に住んでおります、そして、悪魔を撃退したのちに帰国する予定にはしているのですが、なかなか数が減らず」
「そうなんですか、じゃあ、公国の民の心配はひっ迫しているわけじゃないのですね」
「はい」
「俺はもう少しあなたと話したいことがありますので、兵士の皆さんを安全な所にお連れしてから、別な場所であなたとお話ししたいのですけど、何分彼らは人数が多いですしねぇ」
「野営の道具は持ち込んでおりますよ?」
「野営では疲れが回復しないでしょう、とりあえず、砂漠の真ん中につくった新しく広いオアシスがあるので、そこに皆さんをお連れしましょう」
「お願いします」
ミルクチョコレート色のドアを出して、新生アンシェジャミン王国のエマイルモンド湖の北側に作った宿泊施設の通路の既存のドアに繋げる。
すると、ケット・シーのパリ・コルベと、猫人族のシャンツ フォン コルベがなにやらミーティングをしているらしいと黄色ちゃんが言うので、ノックする。
「ミーティング中ごめんね、駿介ですぅ」
「はーいどうぞ!」
『王子ー』
「ちょっと、猫人族の兵士を二百人ぐらい預かってほしいんだ」
「いいよ」
「んじゃ、アルバートンさんこっちに」
「はい…ってあなたはまさか」
「わかっちゃった?このこは、ケット・シーのパリ コルベと、この人はシャンツ フォン コルベ。
ここはね、俺が暫定的にダンジョンとして復活させたアンシェジャミン王国の一角なんだ」
「パリ様?まさかご無事だったとは!」
アルバートンがパリの右手もおでこに持って行った。
彼女はやっぱり猫人族たちには特別なんだな。
「シャンツも久しぶりだな」
「アルバートンも無事でよかった」
「それよりアンシェジャミン王国ですと!」
「そ、ほら」
といって金の三日月刀を見せる。
「まさか」
『コホン』
「失礼しました、取り乱してしまって」
『よいよい、私も王子の前では取り乱しっぱなしにゃ。
君がケティー家の今は当主なんだにゃ』
「はい、不覚にも領地は悪魔に占拠されておりますが」
『みなが敬ってくれている私がそもそも捕まっていたからな、しょうがない』
「明後日、主だった人みんなでこれからのことを話し合おうと思っているんだ。それまで、ケティーの兵士をこちらで預かってほしいんだけど」
『構わないにゃ、こんなにだだっ広いんだし』
「長く、悪魔と戦ってた人たちだから、しばらく療養してもらいたいんだよね」
「そうだな、一応怪我や病気は治ったとはいえ消耗しているからな」
ウリサが俺の台詞を補足してくれる。
「宜しくお願いします。元気になったものから、こき使ってくれていいですから!」
「アルバートン公、ひどいなぁ」
「戦じゃない労働ならやってくれますよ」
「そりゃそうだ」
「たしかに、今は何人増えても大丈夫です。今はダンジョンのそとの地上のライフラインも整え始めていて」
シャンツも笑顔で言ってくれる。
「そうか!そうしたら、そこを暫定的にケティーの人たちを呼んで住んでもらっても良いしね」
『そもそも、ケティー家がアンシェジャミン王国の末裔なのじゃから』
「まじですか」
「はい、我々はケテイー家より先に逃れたものの一族でした。先にシュメル山脈に逃れて、アンシェジャミン王を迎え入れたと」
シャンツも言う。
この世界にきて二日目にマツに出会ったのが奇跡だったのかもしれない。
「んじゃ兵士たちを誘導しよう」
「はい!」
『王子農場へ』
「りょうかい。あそこなら居住用の建物があるよな」
「はい!」
たった一枚の扉で約二百人の移動って時間かかるかもって思ってたけど、訓練された人たちだったから、すぐに完了した。
「シュバイツ殿下、パリ様、これがケティ家の将軍でアモーミ フォン ケティー。私の従弟だ」
「宜しくお願いします」
「アモーミ、皆を纏めておいてくれ、パリ様が整えている国だからな」
「はっアルバートン様、かしこまりました」
「では、ごゆっくりしてくださいね」
「ありがとうございます」
「じゃあ、アルバートンさん行こう、まずは、みんなの所に!」
「皆の所?」
「ケティ一家の所だよ!」
「まさか……」
そうして俺は海の家にアルバートンを連れて行く。
「ここは?」
「ここはガスマニアの帝都ですよ。今は俺の家になってます」
「潮の香りがするな」
「ええ」
ロビーの向こうから早歩きにやってくるシルエラさんと、その後ろにシェドー君。
「サプライズのつもりだったんだけど」
「ああ」
“あたしが、おしらせしたの!それをまつが、おしらせしたの”
黄色ちゃんでした。
“だめだった?”
「いや、よくやった」
褒めるのはウリサ。
“きゃー!”
「あなた!」
「父上!」
「シルエラそれにシェドー?」
「それだけじゃないわほら、ティキ、マツ、いらっしゃい!」
「お母さま?あの」
先日の感動の抱擁再びだ。しかも一人増えて全員そろった!
「マ……マチューラ?まさか……テクロッテ?」
「お父様?」
「おとさん?このひとが?」
マツはほとんど初めましてだもんなぁ。緊張しているのかいつも以上に舌足らずになってんじゃん。
シルエラさんやシェドー君のときのようにびっくりしているよ。
「そうだよ、僕たちの父上だよ」
「シェドーお兄ちゃん」
「お兄様」
すっかりお兄ちゃんとは仲良しになってて良き。
「ほら!二人とも!」
「おとうさん!」
「お父様」
「「うわーん」」
うんうん、感動的だな。
傍らにいたセバスチャンも、もらい泣きしている。
「感動的です。本当にようございました」
「みんなが落ち着いたら、シェドー君にアルバートンを風呂に案内させて」
“わかったウリサ!まかせろ”
うりさが赤色君に頼んでた!
「とりあえず父上、お疲れでしょうからお風呂に行きませんか?」
「風呂だと?」
「はい、シュンスケ様のお屋敷のお風呂は素晴らしいですよ。僕がお背中をお流ししましょう」
「それは楽しみだ」
「お願いね!シェドー」
「はい!」
「よかったな」
「うん」
精霊君に言われるまでもなく、誘ってたね。
俺達も男湯にお邪魔しよう。
「うっこれは…」
アルバートン公の体も傷だらけだったのだ。
「アルバートンさん、その脇腹の傷、結構最近ですよね」
「はい、シルエラ達を逃がすときに、ミノタウロスに不覚をとってしまって。彼女も怪我をして…そう言えば頬の傷が無くなっていたな」
「ええ、父上、母上の背中の矢傷もシュンスケ様が治療してくださったんですよ、護衛の怪我も一気に」
「俺は、治療が得意なんでね。アルバートンさんも治しましょう」
「これは素晴らしいですな」
「ありがとうございます」
「いや、礼を言うのは私の方ですよ」
「ふふふ」
「さてと、長風呂も良いですが、アルバートンさんは最近お湯に浸かることはないでしょうから、そろそろ出ましょう。慣れぬとのぼせてかえって危険ですからね」
「そうですね」
風呂から出て、楽な服装になった猫人族の親子の水入らずの晩御飯風景をチラリとみて、俺とウリサはそこから離れた。
“良かったねマツ!”
“ありがとおうじ!”
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