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異世界転移したら尖った耳が生えたので、ちびっこライフを頑張ります。  作者: 前野羊子
第四章 ~王子の旅・天空路~

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199【ペルジャー王国って?】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 ラシアンは秘書にお茶を入れさせたあと、出て行かせて、自ら部屋の鍵を内から掛ける。

 「で、ポリゴンから何しに来たんだ?」

 「もちろん冒険しに」

 「・・・なんだと?」

 「俺たちにとっちゃ、ここに来るだけでも大冒険だったさ」

 「ね、ウリサ兄ちゃん。砂漠を超えるの大変だったよ?」

 「え?さっき食った魚を焼いたの三日前って言ったじゃねえか。あの砂漠を三日で来れるわけないだろう」

 「あ。ごめんごめん。あの魚は二か月前の!」

 調理時期を正直に言ったら青ざめている。

 「だが、熱かったぜ」

 「アイテムボックスから出したからね」

 「そりゃいいスキルを持ってるんだな」

 「でしょ!だから商売も出来るんだよ」

 「羨ましいよな」


 「俺たちはこの先の砂漠で、ケティー親子を保護した」

 「無事だったんだな」

 「もしかして。このギルドから駱駝に乗ったの?」

 「ああ、ここが一番西寄りのギルドだ、で、こっちに連れ戻ってきたのか?シルエラ様の背中の矢傷はやばかったのだ。化膿しかけていて」

 「そうか。それなのになぜ砂漠に行くのを止めなかった・・・」

 「追われていたのさ、息子が。ここの冒険者の武器運びの依頼は、シルエラの夫のアルバートン公の軍を支援するためだ。息子を西へ逃がすために、追ってから護衛と共に逃げてきた彼女を一度保護したのだが、執拗な奴らで、追手を捕らえている間に、駱駝に乗り換えさせて送りだしたのだ」

 「その、アルバートン公はまだご無事なんですね」

 「ああ」


 よかった。


 俺らは、この地域のことをさらりと教わる。


 このペルジャー王国は王国と名乗ってはいるが幾つかの小国が集まった共和国だそうだ。セイレンヌアイランド共和国みたいなものだな。あれも四つの小国というか島の集まりだ。


 その小国の一つがアルバートン公率いるケティー公国らしい。


 「そして、そのケティーに敵対しているのが、プリネイという小国だ」

 「・・・プリネイ国のトップは、もしかしてボルリアってやつですか」

 「ああ、知ってるのか」

 「名前だけ。俺は始めボルリアってのはこっちのほうのどこかのギルマスだと思っていた」

 「どうしてそう思ったんだ?」

 「俺はヤマネコ人族の暗部の三人に会ったことがある。

 そいつらの身分証を偽造するのにボルリア フォン プリネイと言う名前が入っていたのだ。まあそれだけのことだけどね」

 「それだけって、お前・・・シュンスケ、お前見た目は幼いが本当は何者だ」


 「後で言うよ。それで、ケティーを応援しているということは、ギルマスもボルリアと敵対しているのですか」

 「そうだ。ギルドは、その国の政治にはかかわらない。だが、依頼があれば動く。しかし、積極的に動くかそうでないかは審査するよな」

 「はい」


 「ボルリアの先代は、良い人だったが、あいつは違う。ガオケレナ様を傷つけだしたのだ」

 「はい?世界樹を?」

 「しかも、悪魔とでも契約しているのか、ボルリアはガオケレナ様だけではなくあたり一帯を瘴気でまき散らしているのだ。だが本人は瘴気を帯びていても平気で。それにその後ろにいる悪魔がどうも相当やばい奴らしい」

 「なるほど・・・。悪魔は下っ端でも厄介なのに」

 「悪魔と戦ったことがあるのか?」

 「ああ、三人捕まえていて、その一人はまだ俺の空間魔法に閉じ込めている」

 「なに?空間魔法だと?」

 「そこには、ドルジって女の悪魔をとらえている。俺の空間魔法から勝手に逃げることはできないからな」

 「そうか・・・シュンスケお前はもしかして」

 「ところでギルマスは、ドミニクと同期の冒険者なのか?」

 ウリサがすこし話題を変える。

 「そうだ。俺も若い時は一時あいつのレベレッジっていうパーティーにいたぜ」

 「へえ。それにしてはあんたはドミニクよりかなりくたびれているな」

 「ぬかせ、冒険者をしていると怪我は付き物だろ。お前らも気を付けるんだな」

 「でもね、ドミニクは去年結婚して、来年二人目の赤ちゃんだって。ラブラブで幸せなんだよ」

 「なに?あいつももう四十五だろ!それに右半身が不自由だったじゃないか」

 「それはね。これで治したんだよ」

 ってエリクサーの小瓶を出す。

 「なんだそれ!」

 「ギルマスって、鑑定の道具持ってるでしょ?自分で見たら?」

 「あ、ああ。ちょっと待て」


 ラシアンは執務机にまわって、虫眼鏡のようなものをもってきた。

 それで、俺が持ってる小瓶を見て固まった。

 たぶん〈水の女神のエリクサー〉って出るはずだ。


 「まじか・・・」

 「ついでにこれを」

 そう言って俺のステータスを見せる。

 「え?ロードランダ?の王子?まさか元精霊王の?」

 「そ、こうすればわかる?」

 と変身を解いて精霊の姿を晒す。

 「息子は翅が生えているんだな」

 「父さんは今はハイエルフだけど元は精霊だからね、そっちを受け継いだみたい」

 「そうか」

 納得してもらったので、姿を人間族に戻すというか変える。


 「冒険者ギルドは通信の魔道具を共有していないのか?」

 “ギルマスにしては、知らなさすぎないか?”

 “紛争中でそれどころじゃなかったりして”

 「この地域の中では通信はできるが、砂漠では魔素がなくて超えることができない。ずいぶん長い間西側の情報とやり取りができていないのだ」

 魔素が電波になるんだね。だから、ドミニクもマツの親のことを知らなかったんだ。

 砂漠化の弊害が大きいね。


 「それより、今これを飲んでみない?」

 改めて小瓶を指さす。

 「人生やり直せるぜ、ドミニクみたいにな」

 「・・・そんなことを俺に言って、何か下心があるのか?」

 「まさか、俺は癒しにはお金を取らないのが信条だよ。それに戦争中のここに、これを寄付しておくよ」

 と、エリクサーが百個ぐらい入った袋をジャラリと置く。

 「だから、自分で飲んでみろよ。常備薬を試すのは責任者としては必要じゃねえか?」

 ウリサもこの痛々しい眼帯のギルマスにエリクサーを勧める。


 「じ・・・じゃあ」


 ゴクリ。


 すると、ラシアンの顔の傷や目のあたりに見覚えのある、ラメのようなチラチラした光の魔力がまとわりつく。襟ぐりのあたりも光っている。

 服に隠れた体の傷にも反応しているのかもしれない。


 “しゅばいちゅ、めはむりかも”

 キュアの言葉に、俺はラシアンの眼帯に手を伸ばす。

 「それ外して」

 「これは呪い封じだ。悪魔にやられた呪いを封じているのだ。外すわけにはいかない」

 「大丈夫だから」

 “あたしがはずしちゃう”

 黄色ちゃんが手伝ってくれる。

 「あ、どうして外れて・・・」


 眼帯が外れるとその眼球が入っているはずのところからどろりと見覚えのある黒い液体が垂れる。

 「おっと」

 俺は右の掌に濃密な聖属性魔法をキラキラと発動しながら近づけていくと、黒い液体が一度白くなって消えていく。

 そしてそのままラシアンの左目を覆う。

 ≪ディスペル≫

 そのまま手を置いてしばらくすると、眼球の存在を感じ始めたので、手を放す。右頬にあった傷はすでにエリクサーできれいに治っている。男前の猫人族になったな。


 「目を開いてみて。目玉が復活してるから」

 「え?ああ・・・左目が見える」

 「右目を右手でそっとふさいで、これ見て」

 赤い魔石を見せる。

 「ああ」

 「顔は動かさずにこれを見て」

 持った魔石を上下左右に大きく動かしてみると、視線がついてくる。

 「大丈夫そうだな」

 ウリサのセリフに俺が満足して頷く。

 「はい。確認して」

 A四ぐらいの鏡を出して見せる。

 「確かに・・・若返ったかもしれん。それに右目も最近老眼になってきていたのに、小さい文字が見えるぜ」

 傍らの紙を改めて見ていた。

 「そりゃよかったじゃないか」


 「これで、俺もアルバートンを手伝いに行ける」

 「ギルマスはここで支援を続けてほしい。今から俺たちが向かうから」

 「なあシュンスケ、いやシュバイツ殿下と呼んだほうがいいか?」

 「駿介と呼び捨てで!

 それで、持っていく武器はどこ?」

 「それなら一階に、まずは掲示板を見といてくれ」


  ラシアンは自分で部屋の鍵を開けて外に出ると、一階の掲示板に俺たちを案内してくれる。


 「え?ラシアンさん?」

 「ギルマス?嘘、さっき眼帯してたじゃん」

 「誰?あの男前な猫人族は、え?ラシアンさん?まじ?」


 「うん?騒がしいな」

 「そりゃ、ギルマスがいきなり若返ったら騒ぐだろ」

 「ね、ドミニクの時も大騒ぎだったんだよ」

 「そうだったな」

 「な・・・まさか」

 「さっき自分で鏡見てたじゃん」

 「そ・・・そんなことより、掲示板の依頼を見たら仕事を受けてくれ。今日はもう今から出ても遅いから出発は明日でもいいから。寝床を用意しておくぜ」


 「はーい」


 改めて、掲示板を見に行く。

 ふつうは下位ランクの仕事の荷運びがBランク以上の掲示板にも貼っている。上位ランクに近づくほど世界樹の中心近くが目的地だ。それを受けることができる人は少ないだろう。

 「武器以外にも水や食料、衣類、薬もあるな」

 「うん、一気に持っていこうかな」

 「お前なら簡単だな」

 「ただ、目的地までの環境がね」

 「それが難易度を挙げているんだろうな」

 「ね」


 Aランクの掲示板に貼ってある荷運びの依頼書はがっちり張り付いていて、それぞれに番号が振ってある。

 そしてその傍らには沢山のメモのような紙とクレパスが置いてあった。

 「ここにあの番号を書いて持っていくんだね」

 「常設ってことか」

 「んじゃ、A-①、A-②・・・」

 「荷運び全部って書きゃいいんじゃね?」

 「あ、そうか」

 

 メモをもって受付に行くと、ギルマス御自らカウンターに座っていた。その隣で、かわいい猫人族の女の子の受付がもじもじしながら座っている。


 「おう、決まったか」

 「はい!これを」

 Aランクの荷運びを全部書き込んだリストを渡す。

 「いいのか?かさばるぞ」

 「マジックバッグはないのか?」

 「ここにあったものは使い果たした」

 「そっか、でもま、関係ないよ」

 「ああ。俺もマジックバッグは持っているぜ」

 「そっちにはウリサ兄さん用の予備の武器を入れといてよ」

 と言って俺の手持ちの大きい剣を十本ぐらい渡す」

 「え?これ?」

 「俺には大きすぎて、鞘から抜くこともできないもん」

 「いや、ふつうシュンスケみたいに鞘を腰に残して抜くわけじゃないぜ」

 「知ってるけど、後で探すのめんどくさいじゃない」

 「たしかに・・・でもそういうもんだ」

 「俺はとっておきの剣があるから!」

 「そうだったな」


 「んじゃ倉庫を案内するぞ」

 「はーい」


 Aランクと書かれた扉から地下への階段を下りて倉庫に連れていかれる。そこに、さらに書き出した番号の扉があって。それぞれ箱や袋に入っていた。一塊がでかい。


 「ねえギルマス、この依頼を受ける人ってたくさんいる?残しておかなきゃいけないよね」

 「今、このギルドに出入りしているAランクはお前らしかいねえ」

 「じゃあ全部持って行ってもいいかな」

 「欲張るなシュンスケ、半分にしておけ」

 「わかったよ兄さん」


 「お前ら、いつまで兄弟ごっこを続けるんだ」

 「え?あははは」

 「ウリサはもしかしてオリサの息子か?」

 「そうだ。父を知ってるのか?」

 「誠実で腕の立つ冒険者だったからな。ドミニクたちとも活動していただろ」

 「はい」

 「奴らは残念だったが、息子が若くてAランクになって喜んでるんじゃねえか」

 「俺がAランクになれたのはシュンスケのおかげなんです」

 「そうか。でもおまえ自身も頑張ったんだろ?」

 「そうだよギルマス。ウリサはかっこいい兄ちゃんなんだ」

 「ちょ、シュンスケ、恥ずかしいからやめろ」

 「へへへー

 さてと」


 「明日朝出発するけど、もう荷物は預かっちゃうね」

 そういいながら次々とドアを開けながら荷物をアイテムボックスに入れていく。


 「すげえ容量だな」

 アイテムボックス持ちを色々見てきたはずのギルマスが驚いている。

 「ふつうはそういう反応だよな。俺は最近麻痺してきたぜ」

 「どういうことだウリサ」

 「シルエラ達は今、ガスマニアの帝都にいる。そこで彼女の娘二人と合流している」

 「な!そこに転移させたってことか?彼女たちを送り出したのは一昨日だぜ」

 「で、今朝そこを出発して今ここにいるんだ俺らは」

 「・・・確かにロードランダの王子様の空間魔法はすさまじいな。確かに親父さんも転移は得意だったが・・・」

 「ブランネージュ様もすごいが、さっきシュンスケのステータスの加護を見たか?」

 「そういえば・・・すべてそろっていた」

 「あの中の一人がこいつの母親だ」

 「まさかさっきのエリクサーの水の・・・?」

 「違うぜ、しっ・・・

 シュンスケ全部収まったな」

 「うん!」

 まあ、黄色のせいでウリサがギルマスに話した言葉はバレてる。


 「じゃあ、部屋の鍵はこれだ、ツインでいいだろ?」

 「もちろん」

 「明日馬も用意するか?まだ街道沿いに、ポルリアの息のかかった奴がいるからな。ちんたら歩いたら、シュンスケみたいなガキはあっという間に攫われちまうぜ」

 「大丈夫、ここまでも・・・そこの林までは歩かなかったし、馬は持ってるよ?」

 「どこに?」

 「今は休ませてるから、明日紹介するね」


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