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異世界転移したら尖った耳が生えたので、ちびっこライフを頑張ります。  作者: 前野羊子
第四章 ~王子の旅・天空路~

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197【面影】

すみません、前の回ちょっと変更してます!


いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 生えたばかりのヤシの木の木陰にガーデンテーブルセットを出す。傍らには小さな池も即席で作った。そこではハロルドや駱駝が水を飲んでいる。

 『おいしいね』

 『こんなおいしいおみずははじめて』

 『ほんとうにおいしい』

 『王子が生やしたクローバーも美味しいんだよ!』

 『わあ、こんなにやわらかいはっぱはじめて!』

 ハロルドと駱駝たちの会話にほっこりする。ウリサも楽しそうにその様子を見ながら、椅子を並べるのを手伝ってくれる。


 七人座るには少々狭いのでテーブルは二つ。


 ウリサが手際よくお茶を入れてサーブする。その傍らで、俺はあの子が好きな、フルーツたっぷりのパウンドケーキを皿に入れて配る。

 「おしぼりどうぞ」

 「あ、ありがとう」

 真っ白なタオルから湯気の出る様子を見てほほ笑むシェドーに

 「似てるな」

 ウリサも言っちゃう。

 「でしょ!」


 「誰に似ているのでしょうか」

 「その前に、シルエラさんとその従者さん達、内紛をしていたと聞いていたのですが、どうなったのでしょうか。見たところ怪我もされているし、たいそうお疲れではないですか」


 「内紛ってどうしてそれを?西の海まで届いているのですか?」

 「まあ、冒険者ギルドで耳にしたんですけどね」

 って言うのははったりだけど。まあ、もと後見人でもあるギルマスからの情報だし。


 「ああ、そうですね。内紛というより、悪魔の軍勢が入り込んでいまして、それに付くものがいたのです。私たちはそれだけはいけないことだと抵抗しているのです」

 「悪魔はやばいな」

 「ああ」

 「では、早く加勢に行かなくては」

 「ただ、夫の言いつけで、私は息子を逃がしたいと思っているのです」

 「なるほど」

 「母上!僕は逃げたくないんだよ」


 「シルエラ様の代わりに俺が説明しましょう」

 人間族よりのハーフ猫人族の冒険者の一人で三人のリーダーが口を開く。


「わが主人はケット・シーを先祖に持つ、誇り高き戦士の猫人族です。この先、東の国で砂漠化に追われながら、なんとか集落を取りまとめていましたが、他の豪族に女悪魔が入り込み、篭絡されていったのです」

 悪魔に影響されやすいのは、妖精のおっさんみたいだな。

 「それでも、悪魔に屈することだけはしたくないと、我々は長い間抵抗しています」

 「なるほど。それは女の悪魔なんですね?俺は先日ドルジという奴を捕らえています」

 「なんですって!」

 「なんだと!」

 「その前にも、二人の悪魔を捕らえています。ですからそのシルエラさんのご主人のお力になれると思うのです」

 「ああ、なんと」

 「君は見た目はお小さいですけど・・・」

 シェドー君に言われる。まあそうだよね。

 「こう見えて、Aランクなんですよ。ウリサもそうです」

 と金色のタグを見せる。

 「確かにさっきの魔物もあっさり・・・」


 ウリサは黙って俺の後ろで見守ってくれている。

 

 「あと、俺の得意な魔法は空間魔法なんですよ。そして、シェドー君を安全な所に保護できます。彼を保護出来たら、俺をご主人の所にお連れ頂けますか?」

 「安全なところ?」

 「ガスマニアという海の見える家です。そこにはテクロッテとマチューラという、貴女にそっくりな女の子が住んでいるですよ」

 ガタリ

 「なんですって!」

 シルエラさんは激しく立ち上がり、両手で口元をふさぐ。

 「まさか・・・ティキとマツ?」

 シェドー君も愛称も覚えているんだね。

 「彼女たちは、健やかに過ごしていますよ。マツはお母さんの顔を知らないのです。ぜひ会ってやってほしい」

 「ええ、ええ、もちろんですとも」


 「ただ、そのままでは砂漠を超えるのはかなり厳しいですね」

 「そうですね、悪魔の軍勢は、一人一人は雑魚ですが、数が多いのですそれで、致命傷にはならないですが皆怪我が多くて」


 下っ端の下っ端ね。


 「命からがらでここまで来たのです」


 「でも、ここからは俺が魔法でお連れしますのでご安心ください。

 ですが、彼女たちに会わせる前に、彼女達の後見人をしてる人に先ず会ってくれますか?」

 「はい!」


 “黄色、ドミニクはどこにいる?”

 “どみにくは、いまはぽりごん!”

 “マツとティキの母親と兄をシュンスケが連れて行くって言ってくれ”

 “もちろん!うりさ”


 頬の傷が痛々しいけれど、治療は後で、先にポリゴンだな。


 俺は、板チョコドアを出して、ポリゴン町のギルマスの部屋につなぐ。

 

 コンコンコン

 “いいぞ”

 ガチャリ


 「ドミニク卿!とうとう見つけたよ!」

 「良かった、シュンスケ。その人たちか?」

 「うん」


 俺が少し横にずれると、後ろにいたウリサに押されるように、二人が前に出る。ウリサの後ろには三人の従者。駱駝達はアナザーワールドで預かり中。ハロルドの案内でね。


 「紹介するね、シルエラ フォン ケティさんと息子のシェドー君」

 「初めまして、娘たちがお世話になっております」

 「これはこれは・・・確かにそっくりだな!」

 「でしょ!」

 「とにかくお座りください」

 ドミニクは向かいのソファーを示す。

 「ですが私はこの通り、汚れていて、ボロボロで。この美しく高級な革を傷めてしまいますわ」

 「気にしなくていい」

 「シルエラさん。ここは冒険者ギルドで、ドミニク卿はギルマスなんだ。その人の部屋。冒険者なんてドロドロでここに来るんだよ」

 「そうだ、気にせず座って落ち着いて」

 ウリサもシェドー君を半ば力づくで座らせる。

 そこへ、秘書のセレがお茶をゆっくり配る。その間にすこしは落ちついたようだね。

  

 「シルエラさんのお国では長らく内戦が続いていると聞いています。ですが、二人のお嬢さんはそれぞれ孤児状態で育ち、最近そこのシュンスケの働きで出会い、今は帝都で暮らしているのです」


 応接のテーブルで改めて地図を広げる。

 「我々は今、ここに居ます」

 「え?こ・・・こんな西の端?」

 「ドアをくぐっただけなのに」

 「ええ、俺達があなたとあったのはここら辺」

 「そうですね」

 「なんという空間魔法」

 「帝都はここです」

 「まあそんなに近いんですね」

 いや、砂漠の東の方から見たら近いかもしれないけどね、馬車で数日かかるんだよ!

 でも、

 「今からお連れしても良いですかね?」

 「ああ、頼む。俺も行こう」


 そして、執務室から、海の家のロビーにつなぐ。


 ドミニクの部屋は暖炉に火が入っていたけど、海風が入ってきてちょっと寒いね。普通なら平気なんだろうけど、赤道からいきなり来たらから。


 でも、砂除けの布を巻き付けていたからちょっとましだな。


 「これは・・・潮の香りですか」

 「わかりますか? あちらに海があるんですよ」

 「わあ」

 「砂漠より北で寒いですから気を付けてくださいね。寒くないですか?」

 「暖炉が温かいので平気ですわ」


 「あ、母上あれ」

 シェドー君が先に見つけた。ロビー前の階段の陰から二人の小猫。


 「マツ!ティキ!」

 俺がブンブン手招きをする。

 「おうじ!おかえりなさい!」

 「シュンスケ様、ウリサさん、お帰りなさい!」


 おい、俺達の方に走ってくんな!お母さんはそっち!

 でも二人は俺にたどり着くと俺やウリサの背中に隠れて、そしてシルエラさんとシェドー君をちらちらと伺う。


 君達、人見知りあったっけ。


 「とりあえず応接に行きましょう」

 そのまま一階の応接に案内する。

 「さて、まずはお母さん、顔以外にも怪我はありますか?」

 「ええ、背中に矢傷が」

 「シェドー君は?」

 「僕はいつも守られているので、大丈夫でした」

 「わかりました、では、そこの三人も近寄って」

 そうして、三人の冒険者と護衛も近くに寄せる。

 そして、聖属性魔法でちゃっちゃと怪我を治す。

 「あ、お・・・俺の右手が」

 リーダーの右手も復活。


 「失礼します、お茶をどうぞ」

 お茶を入れてくれたミアを引き留める。

 「ミア、この二人の着替えあるかな」

 「うーん、坊ちゃんの着替えは前に子爵領の子を助けた時に買い込んだ服があります。その時にもう少し大きくおなりになったシュンスケ様の普段着用の服もあって。ですが、奥様の服は・・・」

 「それなら、古着で良ければ俺のところの服を持ってこよう」

 ドミニクが動いてくれる。

 「奥さんのを?」

 「ああ、あいつは虎人族だから少し大きいかもしれないけど、だからこそ入るだろう。それにまたしばらく普通の服は着ないしな」

 「え?どういうこと?」


 “どみにくは、ふたりめのぱぱになるよてい” 

 “なるほどそういうこと!めでたいじゃん”

 それに、ボロボロだったけど、シルエラさんは貴族だ。王族だったドミニクの奥さんの服なら大丈夫だろう。

 

 一度くっついたのに、応接に一緒に入ってこなくて、ドアのそとからちらちら覗いていた小猫に声をかける。

 「ティキ、マツ、お母さんをお風呂に連れてって」

 「はーい!」

 「お・・・おかさん?こっちよ」

 「マツ」

 「お母さん、ここのお風呂は素敵よ」

 「ティキ!」

 二人に手を繋がれて、シルエラさんは泣いていた。

 「良かった、二人とも無事で。それにこんなに素敵に大きくなって!」

 「お母さん?」

 「おかあさん、あーん」

 よかったな。

 せっかく歩き出した三人が動きを止めて抱きしめ合って泣く。

 マツ、よかったな。

 “マツ、お母さんの背中の傷が残ってないか見てきて”

 「ぐす・・・“わかったー”」


 「さてと、シェドーと三人は俺が連れて行くぜ」

 男湯を案内するのはウリサ。

 「お風呂って何ですか?」

 

 「砂漠で生まれ育ったら知らんか。まあこれから飯だと思うし、体を清めに行こう」

 「はい!」


 俺も男湯に参加。すると冒険者たちが情けなくも緩んだ顔で湯につかっている。


 「猫たちが溶けてる」

 「ははは」


 だけどお風呂が初体験の皆は長湯は厳禁だよな。さっさと出よう。


 風呂から出て、シェドーもケティ一家の団らんに加わって。親子水入らずで二階のダイニングでご飯にしてもらう。


 そして俺とウリサと護衛三人で、初めに入った一階の応接の暖炉の前でご飯。


 三人の護衛は、男ばかりの人間族で猫人族ミックスってパーティーだ

 「俺たちはキャッツアイズというBランクパーティーを組んでます」

 うーんその名前で三人組はいいけど男ばっかりはちょっと・・・口に出さないけど。


 手が生えたリーダーは、グドル、黒がメインで茶色のメッシュの髪が猫の名残だろうか。三十歳手前って感じだ。

 もう一人はソマリ。シルバーがメインで白いメッシュが入った男性、この人も二十代後半、最後にトイ。癖毛なのは名前を物語っているかもしれない。それにトイさんは小柄。年齢は俺たちと同じ二十歳ぐらい。


 「では、改めて自己紹介をしますね。俺は駿介と名乗って冒険者をしています、こっちは兄貴代わりのウリサ。それと俺は他にシュバイツ フォン ロードランダ という名前があります」

 とちょこっと耳だけとがらせる。それを見てグドルが目を見張る。


 「ロードランダ?それはまた遠い遠い国の名前ですね」

 「ふふふ、このガスマニア帝国からは北隣ですよ」

 「あ、そうだった!」


 「俺はケティー家のご主人も助けに行きたい。落ち着いたら手伝ってくれませんか?」

 「もちろんです!むしろ、良いのですか?」

 「ええ、初めからそのつもりですしね」

 「買い足す装備とかありますか?あそこから東に戻るなら馬の方がいいかな」

 「そうですね。ちょうど駱駝に切り替えた所だったのです」


 「俺は世界樹を目指していたんですけど、あなた達に会ったオアシスからどの位の距離がありますか?」

 「あそこからなら馬を取り換えながら単騎で走っても五日はかかります」

 「まだ結構あるな」

 

 「ですがそこが紛争の地域なのです」

 「なら、馬を取り換えるのは難しいのでは」

 「ええ、一度に四~五頭を取り換えるのは厳しいです」

 「だろうな」


 「とにかく戻らなきゃな。三人は二~三日この屋敷で療養していてもらえますか?」

 「なっ。そんな、我々はケティー家の当主を助けに行かなければなりません」

 「俺の空間魔法は一度行ったことが無いと、先ほどの様にドアで繋ぐことができないのです。出来るだけ紛争中心の場所に近づいて、あなた方のお力が必要になったら迎えに来ますので、それまでこっちのケティー家を護衛してください」

 「・・・シュンスケさんの方が強いのは分りますので、無理に付いて行っても足手まといかもしれませんね」

 「いや、そういうわけじゃないですけど」

 本音は当たってる。そもそもローナ姫たちを返した理由もそうだもんね。

 それにこの人たちはランクだけで見たら彼女より下だ。

 「大変申し訳ないですがどうかよろしくお願いします」


 「ウリサ、空いてる部屋あるかな」

 「海の家の二階も良いんじゃないか?あそこはもともと冒険者の宿泊用だ」

 何しろもう冬だもんね。海の家を営業してないし。

 「なるほど、セバスチャンに相談だな」

 「ああ」





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