193【十一夜月】
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剥き出しの岩壁には鉱脈のような黄色い筋が横に走っていた。
「これは何でしょうか、王国の遺跡にしては唯の洞穴というか」
『うむ、魔素も感じられぬし』
「うーむ」
皆は多少違いがあるけど少々残念な様子。でも俺には思い当たる風景と似ている。
「リリュー教授、王都の学園の図書室の最下層に入れないと言ってらっしゃいましたが、どういうところかもご存知じゃないですか?」
「たしか閲覧室は洞窟のようで、床に木の板が敷き詰められていて・・・・って、閲覧室の記述の様じゃなたしかに」
「そうですね。そしてあの地下に居たのはガオケレナの子どもでした」
「おまえさんがそう報告してくれてたよな」
「はい」
もしかして鉱脈に見えているこの筋は・・・。
俺はぱたぱたと岩肌の方に飛んで行って、黄色っぽい筋を触りながら鑑定する。
〈ガオケレナの根だったもの〉
根だったものはここで回復魔法をかければ復活するかもしれないな。それに木ならあの人だ。
俺は地下に走っている木の道に椅子をひとつ出す。
そして、ミニギターも。
さっき自己紹介で精霊状態に戻ったままだったから、このままでいいよな。
そして静かに大地の女神、アティママ神の歌を歌い始める。
~~母なる大地よ~~慈愛の恵みよ~~
~~草木萌ゆる命の~ありがたさよ~
~~豊かな~実りの~~
根だったものが動き出す。すこし伸びている?
ただ、葉っぱとかないからわからないなぁ、このまま俺の魔力が世界樹迄届けばいいなと。どうぞ吸い上げてみてくださいよ。
続いて、水の女神 ウンディーナ神の歌を歌う。
~~碧く~~澄んだ~~
~~清らかな~流れよ~
~~天からの恵みの水よ~
すると、岩肌を水が伝い流れ始めると、まだ地震がこれから起こるような細かい振動が足下から感じる。
「いま、外にいる奴は?」
“だれもいなーい、みんなあなざーわーるど”
「ならいい」
俺が歌い終わっても、振動が続くどころかさらにはっきり揺れ出す。
すると、ウッドデッキのような道と思っているものの両側がせりあがって、石畳の道がウッドデッキに沿って伸びていく。
「うわっ、まぶし!」
同時に天井にまっすぐ一本の光が走る。
振動は続いていて、地震を体験したことが無いのかウリサは若干青ざめていて、リリュー教授やシャンツは四つん這いになっている。パリは浮いているから平気そう。逆にうきうきと嬉しそうだ。
天井の光の線が広がっていって、だんだんと水色に変わっていく。
「空が見える」
『ああ、宮殿が!』
石畳の道を跨いで、教会と同じエンタシスの柱が並んだ乳白色の宮殿が姿を現す。
ポリゴンでもそうだが、三階建ての高さがあるが、目の前の宮殿は天井は高そうだが平屋である。
あれ?でも柱の向こうが透けて空が見える。
ああ、このせりあがったのは外廊下かも。
俺は皆とそのまま宮殿に向かって歩いていく。真正面には五十段ぐらいの面倒くさい階段があってその向こうに立派な門がある。門扉は無いけどね、かつて取り付けられていたであろう跡はある。
門扉が無いのでそのまま外廊下に入って、中へ入ると、広い広い敷地が広がっていて、その中にいくつかの建物があった。
そして、奥に三階建ての石造りの建物が。そして三階建ての向こうに六階建てぐらいの・・・塔かな?陸屋根っぽいけど細長いものも建っている。
・・・建物は確かにあるけど。
「このままじゃ住めないね」
「雨風はある程度凌げるでしょうけど」
建物は石造りの部分だけあって、建具が無かった。窓もまだガラスが無い事態なのか、四角い穴だ。
それにいたるところに水路のようなものや花壇のようなものが作られているけど、水が無い。砂漠だからねぇ。
さっき岩肌に流れた水はなにだったのだろう。宮殿を取り出すための燃料だったとか。
「なあ、パリ、この近くに河以外で満月湖のような池のようなものは無かったのか?」
『ありましたよ、この城はミルクブールバード河の北側に位置しています。其のさらに北に檸檬のシルエットのようにゃ形の湖がありまして、ミルクブールバードの上流の方で枝分かれしてまた合流する細い川があるのですがその支流が流れ込んで本流に流れていく途中に湖がありました。
アンシェジャミン王国の王都は河と川に挟まれた地域に広がる緑豊かな町だったのです』
・・・中の島的な地域かな。
「ということは窪み位残ってるのでは?満月湖の様に」
『さあ最近の様子は分かりかねますが。にゃにしろ千年以上捕らえられていましたから』
「うううっパリ様おいたわしや」
シャンツがうなる。
「んじゃ、ちょっくら見に行ってこようかな。
でも、その前にみんなを今日のお宿にご招待しようか」
「やど?」
「とりあえずワゴンの所に行くか」
ウリサが来た道を振り返る。
「俺はどうなってるか見て来るから。先に戻ってて」
そう言って、入ってきた螺旋階段は無視して、青空へ飛ぶ。
ひゃーやり直しだな。
ドルジを捕らえた跡が、池の予定の穴だったのに、その形も中途半端につぶすように、神殿風の教会が立っている。
その東側に並ぶように宮殿があって、俺たちはいつの間にか地上に出ていたのだ。
教会のすぐそばにはワゴンとそれにもたれるようにして立てかけられた板チョコ扉。
だけど俺は好奇心いっぱいの子供ちゃんだから。そのままパリが言ってた、北の湖跡を探しに行く。
“うりさから、でんごん。ちらっとみたらもどってこい!だって”
「わかってるよ黄色ちゃん」
それにしてもウリサにばれてた。
アンシェジャミン王国の王都も檸檬の形をしている。なるほどあっちが支流でそこに・・・。
はたして、湖の跡がありました。
結構広い。満月湖と三日月湖の間というより満月湖に近い・・・ちょっとひずんだ檸檬のカタチ。
鑑定すると、〈エマイルモンド湖跡、十一夜月の形の人口湖〉
またお月さまの湖ですね。エマイルモンド湖は、プールのようないかにも人口の縁取りがある。真っ白な。だがボロボロと欠けていて、三割ほどしか残って無いんじゃないかな。
俺は全体が見渡せる高さに飛んでスマホでパシャリ・・・寒っ。
そして、白い縁取りが触れるぐらいまで近寄ってパシャリ。
満月湖は再生するのに、トルネキ王国の予算も使わせて頂きましたが、ここはなぁ・・・どうしようかなぁ。ドワーフの土木技術がいるよな。砂は河の南にいっぱいあるから、またブロックとかを作るのは出来ると思うけど・・・。
二つの檸檬じゃなくって十一夜月どうしようかな。まあ王都は人がいないとどうもならないからまずは湖だよね。
色々考えながらワゴンへ戻る。
皆は元来た道を戻ってきたみたい。
扉の前で待ってくれていた。
「詳しくは、ご飯の後に言うね」
「ああ、とりあえず風呂だ」
「そうだね」
アナザーワールドに戻ると、今日はスフィンクスがいた。
『いまは、小島が留守の状態です』
「なるほど」
『しかし、モササ殿が時々外周を見て下さっています』
「なら安心だ」
今日はゴダにもらった、金目っぽさかなや海老、貝などが入ったブイヤベース風の具だくさんスープと少し硬めのパン、マッシュされたポテトのサラダだ。
「シュンスケどうだった?」
「大きな湖の跡があったよ」
「そうでしたか」
「エマイルモンド湖だって」
「そうじゃ、私が昔読んだ文献では、エナメルのような磁器のような白くて美しい縁取りの人口の湖だったと書かれていた」
さすがリリュー教授。
「その縁取りだったであろう物がこれ」
そう言って崩れ落ちてた石ころのようなものを見せる。一部にエナメルと称えられていた磁器のようなつるつるした部分が残っている。
「おお、伝記は本当じゃったな」
『そうですよ。しかし今では砂漠ににゃってしまっているわ』
パリは俺が渡したかけらを大事に抱く。
「すぐには無理だけど、いつか復興しよう。満月湖も復活できたんだから。今は満月砦も再建築中なんだよ」
『おお、にゃんと王子。ありがとうございます。
長い長い失われた日々を過ごしてきましたが、これで少し希望が見えてきました』
すこし、明るい表情を見せるパリに、こちらも笑顔で頷く。
「俺には優先順位が一応あるからね、あそこを最低住めるようにだけ整えたら、暫くは待っていてほしい」
『もちろんです』
俺はデザートのショートケーキをつつきながらパリに聞いてみる。
「ところで、パリはガオケレナ様を見たことがありますか?」
『遥か昔、お会いした事がありました。四千年ほど昔、まだハイエルフ王が精霊王だった時に、妖精王の計らいで、高位の妖精たちと精霊王とガオケレナ様で集まって、大魔王アーリマン率いる悪魔軍への対処について話し合ったことがありました』
「その時、人の参加は?」
『人は多少魔法は使いますが、我々妖精や精霊にとって大事な自然を荒らすものとして、別な角度で好ましくありませんでしたから、話し合いのテーブルには呼ばれなかったようです、しかしその時の精霊王は今はハイエルフの王ですからな、のちの人代表ですな』
「そっか」
夜、皆が寝静まった後、ウリサだけを連れて、再びエマイルモンド湖跡にやってきた。
「どうするんだ?」
「俺ね、一か所にしか使えないアイテムを持っているのを思い出してさ」
「うん?」
「これなんだけど・・・」
そういって、カウバンド子爵領で出に入れていた、ボーリングぐらいの光るスライム入りボールじゃなくて、ダンジョンコアを取り出した。
「へえ、きれいだなぁ、キラキラしていてキュアの魔法みたい」
「あたり、これは聖属性魔法が詰まってるんだ。まあ俺の魔力なんだけど」
「で、これは?」
「これはダンジョンコア。これで、人々が生活するまではダンジョンとして、この王宮周辺を管理しようかと。そのほうがお金も要らなそうだし、すぐに出来そうでしょ?」
「聖属性特化のダンジョンなんて、無害そうだな」
「でしょ、しかも俺がマスターするんだ」
とりあえず鑑定をじっくり使って取扱注意は熟読した。
「シュンスケ。やりすぎは注意だぜ、怪我人や死人を出しかねない」
「わかってるって」
おれは、スマホをいろいろ検索して、聖属性魔法というか癒しに特化したダンジョンのイメージを固め始めた。
「ま、楽しみだけどな。あのアナザーワールドを持っているシュンスケがマスターのダンジョンなんて」
“あたしたちがおせわするー”
「お、緑色やる気だな」
“もちろん、わたしも”
「青色も大変だぞー、砂漠だからな」
“おれもがんばるぜ” “おれも”
「シュンスケを手伝ってやってくれ」
“あたちもがんばるの”
「キュアはひとりだからなぁ」
“だけどがんばる”
「みんな頼もしいな」
そういうウリサもみんなと同じ表情だ。
「ふふふ、期待に添えたいねぇ」
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