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185【快適すぎる砂漠の旅】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 「え?これに乗っていくの?」

 「うん!砂漠は地上に比べて上空は全然安全だからね。だから防寒の上着持ってきた?」

 「ええ!」

 空調の付与もしてるけれど、この先の気候のほうがわかんない。


 三日月湖の土手には、半日で組んでくれたボールネットならぬ、馬車ネットを広げてもらって、その上にそりを履いたワゴンと呼ぶことにした乗り物を載せている。


 『頑張るわ』

 ミグマーリもめっちゃやる気!


 「シュバイツ殿下、これにな、風属性魔法を流し込んでみろ。手ごたえが感じるまでな。それがスイッチになる。解除するときは流し込んだ風魔法を吸い取るんじゃ」

 とグアンデがロープの先を持ち上げて俺に渡す。そこには透明な魔石が仕込まれているけど、風魔法の魔石なんだな。面白い。

 「わかった」

 

 

 透明な魔石が鮮やかな黄色になった。するとロープが生き物のように立ち上がり、ワゴンを包んで上のほうに大きな大きな持ち手が出来上がる。ちゃんと扉の所は干渉しないように編まれている。

 持ち手とは言ったが手じゃなくてミグマーリの首が入るんだけどね。

  

 「こんなものは初めて作ったが、だからこそ、シュバイツ殿下が必ず同行してくれよ」

 「もちろん!」


 「では、満月湖まで試運転後トルネキ国外に出ます」

 「うむ。気をつけてな」

 土手には、王と二人の王子もそろっている。

 「シュバイツ殿下!僕が同行したかったです!」

 「プローモはすることがあるだろう」

 「はい、兄上」

 「私も一緒に行きたいのはやまやまだがな」

 「ごめんねぇ二人とも!私もお嫁に行く前の最後の公務と思って頑張ってくるわね」

 「姉上、先日のグリーンサーペントの魔物の討伐の時もそう言ってたじゃないですか」

 「そうだっけ?」

 あ、舌出してる。

 「くれぐれも、気を付けるのだぞ」

 「はい、お父様」


 「では先に三人乗ってください」

 「「「はい」」」

 ウリサが一番に乗り込んで、ローナ姫の手を引っ張っている。そしてレオラ。

 「んじゃ閉めますよ」

 空へ飛ぶんだからね。ドアはキッチリがっちり閉めますよ。


 そしてさっき試したようにロープに風魔法を入れて、立ち上げる。

 

 「ミグマーリ」

 『ええ』


 ロープをミグマーリの首にかける、位置がずれない様に角にも引っかけていく。パタパタと飛びながらロープを抱えて。これが俺にしかできないからね。

 「グアンデ、これで大丈夫かな」

 「いいぞ、持ち上げてみてくだされ」

 『はい』

 するとおっかなびっくりって感じで白龍がワゴンを持ち上げる。

 「どう?ミグマーリ」

 『もっと重いと思ったんだけど全然軽いわ』

 「よかった。一応軽量になる付与をしたんだよね」

 要は、ワゴンの中は魔法の袋状態。何人乗っても大丈夫。今回は定員六人にして、四人で行くんだけどね。そのうちの一人は子供おれだし。でも風であおられないようにもしている。さすがは魔法の世界だぜ。

 「では、まずは満月湖に行ってきます!」

 「「「行ってらっしゃい」」」

 「気を付けて」

 危険なので窓は開けられない仕様です。

 乗った人たちは窓越しに手を振っている。

 『じゃあいくよ!』

 ハロルドが、わかりきっているルートだけど、先導する。

 『行くわ』


 白龍は湖の真上に浮かびさらに空へ高く。そしてハロルドに引っ張られるように飛んでいく。

 「では、まずは満月湖についたらご連絡します」

 「シュバイツ殿下もお気をつけて」

 「いってきまーす」

 みんなに手を振って、俺は自力で飛びあがる。


 ワゴンをぶら下げた白龍はペガコーンの先導で東へ進む。

 “どう?ウリサ”

 “問題ない、ハロルド様の馬車のように地面からの衝撃がないからな”

 “なるほど、じゃあ俺もそっちに行くよ”


 「まあ、クレセントオパール。塩湖が新しい名前の通りあんなに輝いて空が映って」

 「ほんと、きれいだよな」

 「わ、シュバイツ殿下いつの間に」

 「今」

 一度小さくなって、後ろの通気口から入りローナ姫の隣に着席した。

 「ちっちゃい殿下がさらにちっちゃいの可愛いっすよ」

 「え?どういうこと?レオラ」

 「こんな大きさでそこの隙間から入ってきて」

 と親指と人差し指でさっきの俺の身長を表現される。

 「えー私も見たい!」

 「見たいですか?見せたことなかったっけ?」

  もーわがまま姫はしょうがないなぁ。


 ぱっと小さくなって、ローナ姫の手に乗ってみる。

 「はい。どう?」


 「きゃあかわいい!」

 「小さくなるの、ぱっとできるようになったんだな」

 変身の魔法に初めのうちは気合が必要だったのをウリサが知っている。

 「魔法はイメージが大事だからね。何度かやってイメージが固まったから」

 「なるほど」


 俺が小さくなると決まって隣に緑色ちゃんが並ぶ。

 「うわシュンスケそうやってると姉弟みたいだぜ」

 「でしょ!」

 “あたしがおねえさん!”


 「え?どういうこと?」

 「兄弟って?」

 「ああ、お二人にはまだ見えないですかね、そのうち見えるようになると思うんですけど、シュンスケの横に土の精霊がいてて、同じ色の組み合わせの女の子なので姉弟みたいで」

 「まあ、そのうち見えるようになるの?」

 “ローナどうかなぁ”

 「どうかなぁ」

 「えー見たい!」


 しょうがないな。

 元のサイズに戻ってスマホを出す。


 前に撮ったツーショットをローナ姫に見せる。


 「すてき。かわいい!」


 なんだろう、今まで一緒に活動した女冒険者で一番年上なのに、一番きゃぴきゃぴしてない?

 “こういうおんなのひとはね、ひとりいるだけで、あかるくなるのよ”

 俺の心を読んだのか紫色ちゃんが教えてくれる。 

 “そうだけどね”


 それでもローナ姫の口をふさぐためにチョコレートを出す。

 「まあ、なにこれ?可愛いわ。それになんて美味しいの♪」でもその後は無言で味わっている。


 そのセリフを無視して、ワゴンの窓から外を見る。こちらからは南側だ。

 「あ、あんなところに家がいくつか建築中なんだ」

 「あのあたり一帯は泥レンガの集落でしたからね」

 「そうなんだ」

 ムーで雨を降らせた範囲には泥レンガの家が無いと聞いたからできたけど、続きは建て替え待ち。

 

 「水の魔道具で砂の魔物に警戒しながら建てていくようです」

 レオラさんが説明してくれる。

 「そうなんですね」

 「集落なら、一度に沢山で行って工事できますからね」

 「なるほど。少数で砂漠に行くのは危ないですよね」

 「そうなんですよ。それでもあそこならまだ王都に近いですからね」

 

 「そういえば、沙漠の魔物に対応する水の魔道具ってどういうものですか?」

 「これですよ」

 レオラが懐から出したのは拳銃のようなものだった。しかも先が蛇腹風に折りたたまれていて、猟銃の様に伸びる。


 「この中に、水属性の魔石と風属性の魔石、それといくつかの魔法陣が仕込んであって、ある程度の魔力があるものが扱うと、水属性の魔法が扱えなくても砂漠の魔物に対抗できるのです。我々砂漠の国の兵士が対魔物に最近支給され始めました。魔力の無いものはそれ用の魔石もセットで」

 魔法の水鉄砲って事ね。

 「最近ですか」

 「ええ、今まで、過酷な砂漠の向こうに行こうとしなかったですからね。必要は無かったのです。しかし、シュバイツ殿下が満月湖を再生していただいて、街道が完成するまではこういうものが必要だろうと、配備されました」


 ・・・俺のせいでなんだかすみません、余計な予算を使わせちゃって。


 「でもね、国境を守りに行くのは国として当然のことなのよ。それを再び出来るようになったのはシュバイツ殿下のお蔭だわ」

 「そうです。今ではミルクブールバード河に水を汲みに行けますしね」

 「満月湖も徐々にバルブを開放して、海まで河が繋がったのよ。念願の河の復活に我が国は大喜びなのよ。

 それにね、水流のすぐそばを歩いて行けば砂の魔物は出てこないしね。それはもう報告が上がってるの」


 休河川(きゅうかせん)がアクティブになればそんなに変わるんだね。

 確かに河の中の河原を歩いている冒険者がちらほらいたんだ。何かを運ぶ依頼のようだったよ。その人たちはハロルドや白龍を見つけたら下から手を振っていた。


 『そろそろ休憩場所かしら』

 ミグマーリから合図がある。

 「そうだね」

 俺はまた小さくなって通気口から出る。

 以前草原にしちゃった場所を、今回休憩のために一度降りる。

 ミグマーリは改めて俺がふわふわに生やしておいた草の上にそうっと着陸して、ゆっくりワゴンを降ろしていく。

 「ローナ姫、トイレ休憩ですよ」

 「はーい」

 とはいえ、サービスエリアではないのでアナザーワールドの扉を出す。

 「うーんっとぉ。楽だけど、時々は伸びをしないとね」

 「ね、座った姿勢のままだとそれはそれで危ないですからね」

 「危ない?」

 「ええ、狭い馬車で固まって移動して、到着して立ち上がったら死ぬ人とか聞いたことないですか?」

 エコノミー症候群をこっち風に表現すればそう言うことだろう。

 「冒険者ギルドの初心者向け講習でそういう話を聞いたことがあるわ。だから混雑した乗合馬車は短距離しか行かないのよ。長距離は定員数が少ないの」

 さすがです。

 

 男性は交代でトイレに行って顔を洗って、リビングでスフィンクスの茶菓子を食べてまったりする。

 揺れてないとはいえ、やっぱり移動って疲れるんだよね。何故なんだろうね。じっとするのも疲れるって、人の身体ってわがまま。


 再び馬車に乗った皆を確認して扉を閉め、ネットを動かしてもう一度ミグマーリの首にかけながら、彼女に回復魔法を。

 『ふふふ、気持ちいいわね。やっぱり緊張していたのかしら、楽になったことで凝ってたのを自覚したわ』

 「もう少し、休憩のスパンを短くする?」

 『大丈夫よ』

 「疲れたら言ってね」

 『分かってるわ』


 「じゃあまた出発します」

 手を振ると中から皆も手を振ってくれる。

 

 暫く白龍と並走ならぬ並飛行をしてから、また中に入る。

 

 気が付けば快適なワゴンの中でローナ姫が眠っていた。

 やば、酸素不足?・・・じゃない良かった。そこらへんも魔法で補助しているはずだもんね。

 「はしゃぎすぎて疲れたんだろ」

 「これがもうすぐ嫁に行くんですよ」

 「どんなお相手なのですか?」

 「他国の王子だと聞いていますが、詳しくは教えてくれないんですよ」

 「ふーん。

 じゃあ代わりにレオラの奥さんってどういう人なの?やっぱりライオン族の人?」

 「な、なぜ私のことを?」

 「だって、若くて結婚するって想像つかないんだもん」

 「そうだな」ウリサも頷く。


 「そうですか?」

 「奥さんはレオラより年下ですか?」

 「いや、私の妻は年上で、ローナ姫の学友だった人です。姫の紹介で出会ったんですよ」

 「へえ。さすが姫は見る目があるんですね」

 「見る目?」

 「レオラは結構出世頭じゃないですか。ウリサ、レオラはね、数か月前に初めて会った時は騎兵隊の一人で、そのあとすぐに騎兵隊長になって、今はえっと近衛の中将だっけ。そんな人を紹介するなんてね」

 「それは、たまたまアヌビリとの縁で、ローダサムに入れてもらったからですよ。運が良かっただけで。結婚も出世のためにと言われてしましてね。もう少し独身でもよかったんですけどね」

 「そんなに出世欲ありそうには見えねえけどな。面倒見がよさそうなのは分る」

 「そうでしょウリサ(ウリサの面倒見がいいのが俺が保証するけどね)きっとそういう人が本当に出世するんじゃないのかな」

 「なるほどな。出世のための活動は余計な仕事かもしれねえからな」

 「方々に胡麻を擦ってみたり?」

 「どこかのサブギルマスが、ギルマスになり損ねた時にそういう話を聞いたことがあるぜ」

 「へえ」

 「結局サブギルマスも落とされて要職から外れてしまったとか。国の中枢の兵隊と比べちゃ悪いとは思うけど」

 「・・・どこでも縦社会は似たようなもんですよ」

 「ギルマスに関しては、なってみたら激務だと思うんだけど」

 「確かに」

 「だから貰うものも多くなっちゃう。王様とかねトップって激務なんだよ。父さんはのんびりしてるように見えるんだけど・・・公務をしてるところはまともに見たことないや、ははは」

 


 “王子、満月湖が見えてきたよ”

 “分かった、あとどの位で着きそう?”

 “最初の予定通りよ”


 ミルクブールバード河は、馬車で端から端まで十日かかると言われるグリーンサーペント河よりもっと長い。それが昼に出発して夕方に着くなんて。空の移動ってすごいよね。

 

 「ハロルド様やミグマーリ様で運んでもらうって本当にずるいよな」

 「早いでしょ?」

 「シュンスケの瞬間移動には負けるけどな」

 「あれは一度行ったところしか無理だからなぁ。満月湖までなら本当は出来るけどね。今回は試運転みたいなものだから」

 「分かってるよ」


 さて、姫を起こすのは王子の役目だな。

 ちびっこ王子だけどさ。


 「ローナ姫起きて!到着するよ!」

 肩をゆさゆさ。


 起こし方はこんな感じだけどさ。


 「うーん・・・もう?」

 「もう!着くよ起きてね」


 「姫お水どうぞ」

 レオラが姫に水筒を渡している。

 「ありがとう」


 「んじゃ俺は着陸の誘導してくるから」

 

 今度は瞬間移動でワゴンの外に出て、予定の場所に行くから小さくならなくていいんだよ。


 地上には満月湖に接するように、俺がクローバーの草で描いた大きな丸で囲まれたMのマークのヘリポートならぬミグマーリポート。

 「ミグマーリ、あの緑色の丸の所に降りよう」

 『わかったわ』


 現場事務所からエルフのカルピンさん、ドワーフのドワンゴさん、そして向かいの建物からサリオも出てきていた。


 「危ないから離れてねー」

 「おう」


 そうして、初めての空の旅にて満月湖に到着した。


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