184【乗り換え準備】
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塩湖の上で白鯨のムーと別れた。
やはり彼はここら辺までが限界の様だ。
俺はウリサとハロルドに乗って、まずはトルネキ王宮に挨拶に行く。
すると、今日はアントニオとプローモの二王子殿下の前に、外務大臣のビストルが飛び出てきた。
「シュバイツ殿下、この度は息子に素晴らしい提案と資金を賜ったとか」
そう言いながら跪いて俺の右手をおでこに持って行かれる。
ああ、ビスクはビストルの息子だったんだ。外務大臣さんの家名までは覚えてないよね。
伯爵で外務大臣ともなれば個人で通信の魔道具持ってるんだ。情報が早い!
「いえいえ、資金は貸しですよ!いつか事業が旨く行けば返してくださいね」
「もちろんです。出資者の列にシュバイツ殿下の名前を必ず入れますとも。そして、返済ではなくて、売り上げから殿下に振込していきましょう」
…………失敗した。そういうつもりじゃないんだよ。はずみで出したお金なんだけど。
「でかしたビストル。これで、精霊王子を我が国に繋ぎとめることができたな」
アントニオ王子殿下の言葉に。
「はい!」
忠臣らしく良いお返事の黒ライオン。
「いやいや、アントニオ殿下、俺はもう貴方やプローモ殿下と友人だと思ってるのですが」
「ふふふ、分かってますよ」
「シュバイツ殿下。ここで一泊してください」
「ありがとうプローモ殿下」
「姉も待っています」
「ローナ姫が?」
「はい!今日来られると聞いていたから、それはもう朝からソワソワしてましてね」
「?」
ソワソワされるような事は無いと思うけど。
ちなみに宮殿の敷地に入った瞬間からウリサは俺の護衛ポジで後ろを歩いている。会話には加わってくれていない。
「では、一旦お部屋にご案内いたします」
「ありがとうフロアさん」
侍従長と言うより爺やな白髪のブラックライオンが案内してくれる。
俺にしたら勝手知ったるっぽくなってきたけどね。
「すげえな、この宮殿」
ウリサがちょっとお上りさんっぽくキョロキョロしている。珍し。
「ね、彫刻が素晴らしいよね」
「何かの物語かな」
「フロアさん。この外や中の彫刻は何かの物語でも記しているのでしょうか」
「これは、トルネキ王の先祖がこの地に来るまでの物語を記してあると言われています」
「へえ」
「ほら、あそこに、お一人のエルフが描かれているでしょう?」
「たしかに」
エルフが植木鉢のようなものを持っている。
横顔でどこかで見たことがあるような…。
「あの方はブランネージュ様ですよ」
「げっ」
確かに、高額貨幣と同じような顔。
父さんはこの国の建国に加わっていると……さすがです。
「書物にされていないのですか?」
「ありますよ。一冊差し上げましょう」
「良いのですか?ありがとうございます」
「大したことはありませんよ。この国の子供が歴史の導入として読む教科書なんで、多く出版されているのです」
「なるほどなるほど。それは楽しみです」
教科書って、勉強のためじゃなかったら読みたくなるってあるあるだよね。
小三位の時に友人の兄ちゃんが持ってた日本史の教科書を見せてもらって興奮したもん。でも自分の教科書になったとたんそれほど興味なくてさ。
中庭に面したいつもの部屋に通される。
「ウリサ、シャワーはそっち」
「先でいいか」
「もちろん」
俺も交代でシャワーを浴びて、晩餐むけにプランツさんに揃えてもらってるジャケットスーツを着る……膝出てるけどさ。
ウリサもネクタイのカッコイイスーツだ。
「着方これで合ってるか?」
俺の方がすっかりフォーマル慣れしてしまっているのをウリサは知っている。
「大丈夫。姫を紹介するね」
「ちょ、なにを言うんだ!」
「彼女も冒険者だからね」
「なんだびっくりした」
丁度いいころ合いに今度は侍女長のベージュさんが呼びに来た。
「ご準備はよろしいですか?」
「はい!」
ガチャリ
「シュバイツ殿下とウリサ殿をお連れしました」
「シュバイツ殿下ー」
ガバッ
ローズ色のドレスが飛びついてきた。
「ローナ姫」
もう、ウリサの前でちゃんとカッコ良く挨拶したかったのにさ。
クンクンされている。
「うーん相変わらず良い匂い」
あんたはハロルドか!
心の中で突っ込みながら、
「ローナ姫お元気そうで」
“プローモ助けて”
精霊魔法が身についているプローモに念話でヘルプを!
「ちょっと、姉上、シュバイツ殿下が困っていらっしゃいます!」
「あら、つい。で、お連れの方を紹介してくれますか」
「はい、俺のまあ兄貴的なポジションの人で、ウリサ。Aランクの冒険者で、俺が所属しているウリアゴパーティーのリーダーです」
「まあ、私もAランクなの。先日もシュンスケと臨時パーティーの風の女神の息子で一緒に活動したのよ。ご縁があったら一緒に活動したいわ」
「光栄です。宜しくお願いします」
「よしじゃあ、風の女神の息子再結成ね」
「へ?」
どういうこと?
「シュバイツ王子、世界樹に行くんでしょ?」
「はあ、まあ」
「私も連れて行ってほしいわ」
「え?」
「かなり過酷ですよ」
「でも、トルネキの王族として、元来の水源がどうなってるか調べるのに、全部他人任せはだめだと思うのよ」
「それは分りますけど……」
「アヌビリは抜けたままだけど、代わりにウリサが入ってくれたら、十分じゃない?」
「ということは、レオラさんは入ってくれるんでしょうか」
「もちろん!あいつは断らないでしょ」
そりゃあ、王女に誘われたら行くよネ。
少し離れた所に何名かいる今日は近衛兵の制服で、護衛の中に紛れているレオラを見る。
「黄色ちゃん、レオラさんを呼んできて」
“おっけー”
レオラはすぐにやってきた。
「お呼びですかシュバイツ殿下」
「レオラは、ガオケレナ様に会いに行く安全で最短なルートはどれか知ってますか」
「存じませんし、そのようなものがあれば交流もあるでしょう」
「ですよね」
「過去、この首都の冒険者が何組もチャレンジしていますが、その後消息が途切れているばかりです。そもそも、あの満月湖までたどり着けたかもわからないですよ」
「砂漠の魔物は厄介ですものね」
「分かってるわ。私だってAランクですもの。
でも、同じAランクのシュバイツ殿下が挑戦するこの機会を逃せないじゃない?」
ライオン姉兄弟の中で一番アクティブなのはローナ姫かもしれない。
「姉上、貴女を連れて行くのは殿下の負担になるのではないですか?」
アントニオ殿下、もっと言ってやってください。
「負担というわけではなくて、王族の安全を確保するのが保証できないです」
「あら、私も冒険者なのよ。自分のことは自分で責任を持つわ」
「…………シュバイツ殿下」
俺たちの会話を静かに聞いていた王がおもむろに口を開く。
「たしかに、トルネキ王国として国境の向こうの様子を調査するのは必要なことなのです。それに王族が参加することも。できれば専門のリリューも加えて行ってやってほしいです。
世界樹迄いかなくても良いですからな」
リリュー教授は地質学者だ。確かに砂漠にも詳しいだろう。強さは全然ないけどね。
それにアヌビリがいなくて大丈夫か?
「レオラはリリュー教授とは交流ありますか?」
「多少は……俺も騎士学部でしたからね、学生の時はアヌビリみたいに使いっ走りさせられたぐらいですよ」
「それに、奥さんと赤ちゃんを置いていったら大変では?」
「それについては、義理の母達や祖母もいますから大丈夫です」
「なるほど」
今回は空の旅の予定なんだけどな。
白龍で行くか?彼女なら大勢でも大丈夫だけど、ハロルドと違ってどうやって乗るかね。
うーん
「ちょっと考えさせてください」
「もちろんです」
気球みたいな籠を彼女にぶら下げてもらって飛べば一番安全かな。
でも、その籠はどこから調達すればいいだろう。
晩餐が終わったけど、夜型のトルネキ王国はまだ動いている。
「ウリサ、ちょっと王都の冒険者ギルドに行かない?」
「今からか?」
「ここの冒険者ギルドのお店がすごいんだ、広くてさ」
それに、グアンデに相談したいしね。
「いいぞ」
そうと決まればまた着替え。
「おや、殿下お出かけですか?」
フロア侍従長に見つかっちゃった。
「今から冒険者ギルドに行ってきます。ちゃんと帰ってきますので」
「わかりました」
「そんなわけで、白龍からぶら下げる何かいい旅客運搬方法ないかな」
傷だらけのテーブルに案内されてグアンデと思案する。
ウリサの紹介はまたしてもハロルドだった。
「あ!あれはどうだ?」
「あれ?」
「ほら、ロードランダにトナカイ車ってのあるだろ」
「乗ったことありますよ。車輪とそりを付け替えられるの。あ、砂漠だからそりが良いかもしれませんね」
「そりの材質に砂に耐えられるものに変える必要があるけどな」
「海竜や白龍の鱗を張り付けるのは?」
「十分だ。まあ車輪やソリじゃなくて籠の部分だけ独立して使えば良いんじゃねえか」
「ロードランダに売ってるかな」
「ここにもあるぜ」
へ?
「馬の生産地だからな、俺は馬車もよく作る。馬車やそれの足元ぐらいの部材はそろっているぜ」
わー!
「あとは、馬車の籠をぶら下げるロープを見に行くか」
「はい!」
そうして、グアンデの案内で、ホームセンターコーナーに行く。
ロープ類が専門の場所があったんだ。懐かしくも綱引きに使いそうなものや、樹脂のもの、ワイヤーが仕込まれたもの等いろいろ。
それぞれが太さに合わせて色々巻いた状態で並べてあって、メートル単位でキリ売りもしてくれるらしい。
その横にはロープで出来たネットなどや、ロープの先に引っ掛けるフックなどの部材なども展開されている。
「こういうのがいいんじゃろ」
「これは少々小さいですが理想ですね」
「え?これって?」
でっかいけど、これってあれだよまるで、サッカーボールとかスイカとかを入れて持ち運ぶ。ネットじゃん。
「初めて見るのかシュンスケ。
ちょっと大きな獲物を討伐したらこのネットに入れて棒でぶら下げて二人で担ぐんだ」
「なるほど」
「魔法袋を用意できないときはこれか荷車で運ぶとかするんだよ」
「へえ」
ゴダは引きずってたよ?
「特に毛皮に価値のあるやつとかな」
フォレストボアの毛皮は引きずっても大丈夫だっけ。
「でもこれなら作れそう」
「じゃろ、しかし急ぐんなら俺が作っといてやる。太さはこれかな。おーい」
「はいはい、グアンデさん」
「このロープを俺の工房に持って行っといてくれ」
太めのロープ一巻を台車に乗せて、ほかのスタッフに運んでもらっている。
「お願いします」
「あとは馬車の籠部分と足だな」
「はい」
工房の隣にある少し広い目の場所に連れてもらう。
その隣のキャビネットにはいろいろな巾着があった。
「……ここら辺なら気取ってないけど、まあ内装が高級だから長距離でも疲れないだろう。龍にぶら下げられたらどうなるのかわからんがな」
そうしてとある巾着から出してくれたのは、六人乗りの馬車の籠だった。
車輪などはつけてないから本当に籠なだけ。
軽自動車と普通車の間のワゴンって感じだ。
「わあ、いいですね。あ、シートがリクライニングするんですね、しかも三段階に。フットレストもある!」
「おうよ。そんでもってここからテントが伸びてひさしができるんだぜ」
と屋根の端っこに巻き取られていた幌が伸びる。
キャンプにもってこいじゃないですか!
「それで、車輪を付けるときは、こいつでジャッキアップしてこうやって取り付けるんだ」
それ用のジャッキと、車輪セットのつけ方を教えてもらう。
「え?籠と車輪の部分が引っ付いてたら揺れるのでは?」
ウリサが普通の馬車との違いに気づいて言う。
「今回はぶら下げるから関係ないけどねぇ」
「サスペンションの効果を付与してあるから揺れないぜ」
さすが魔法の世界です。
「じゃあ、ロープを編んだら連絡するぜ。そうだな明日の昼過ぎにはセットできるだろ」
「え?そんなに早く?」
「ああ、期待しておけ!三日月湖の土手で組み立てよう」
「わかりました!んじゃ先に会計を」
「じゃあ…………これで……いけるか?」
内訳を描いた紙を渡される。
「十分ですよ!」
金貨二枚…………二百万円。今の俺には十分さ。
「あ、領収書くださいね」
経費でつけるから!
「おう」
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