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181【道標との出会い】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 スブルグ辺境伯領の、冒険者ギルドの前を白馬のハロルドに少し歩いてもらって、人が減ってきたら空へ飛んでもらう。その時にウリサの認識疎外のマントをチャレンジ。そして俺達も半透明になって、普通の人には認識しにくいようになってね。

 

 “すごい、だれも気が付かないじゃん”

 “ほんとだな”

 認識疎外中だから声も出さずに、念話で会話。

 ウリサのマントは俺の鑑定では〈古代精霊魔道具〉と出てる。普通の魔道具ではないのな。そしてその鑑定結果はまだウリサには伝えていない。

 街道で五十メートル程をギャロップ状態で駆けていく、そして飛翔。


 でも今度の飛行はちょっとだけ。国境はきちんとくぐらなくちゃいけないんだよ。いくらフリーパスの冒険者と言えどもね。出入りのチェックが大事なんだって。一度でも怠るとスパイ容疑がかかるらしい。

 「間に合うかな?」

 「冬に近いから暗く感じるだけで、五時前だぜ」

 え?スマホを確認する。

 「ほんとうだ」

 「それに東の方だから日暮れが早いだけだ」

 「うんうん」

 一応時差ってのはあるらしいんだけど、基本ガスマニアの中だけでは統一の時間。俺の感覚では王都からこの国境まではニ時間はありそうだけどな。瞬間移動でボールモンドに行くとスマホが自動で調整してくれる。あ、冒険者のタグもちゃんと時間が変わるんだよ。ハイテク?でしょ。


 「名前はウリサ、若いのにAランクですか、すごいですね。時間も間に合いましたね。はいオッケーです」

 「ありがとうございます」

 「連れはシュンスケというとシュバイツ殿下ですね、いつも弟が仲良くしてくれていてありがとう」

 さすがに国境の門番となると当番制の冒険者じゃなくて、国の兵氏が派遣されていた。

 この人は、バリド フォン ブルームさん。

 ガスマニア帝国第三皇子のセイラード殿下のご友人にして護衛のブリドのお兄さんだった。年はブリドより十才も年上で、国境警備兵である。ブリドも大きいからしっかりして見えるんだけど、やっぱりお兄さんは大人だ。

 

 俺は今人間族に変身しているから、タグは〈田中駿介、六才、ランクA〉と表示されているのにシュバイツと分かったのは、ブリドの兄ちゃんだからだね。


 「いえ、俺こそいつも仲良くしていただいてますよ」

 「聞けば、以前学園の剣術大会で弟のブリドや、その連れのラスを打ち負かしてトップになったとか」

 「あれはたまたま運が良かっただけですよ」

 「腕とか細いのに・・・・」

 「ぐ・・・っ」

 「ま、まあ急ぎますのでこれで」

 「はっ、お気を付けください」


 友好的かどうかわからなかったな。


 国境の砦の出口にもう一度検問所がある。こんどはトルネキ王国側の検問だ。

 「はい、身分証・・・て、あ」

 「しっ」

 こっちの門番は立派な洞角のインパラ族の兄ちゃん。

 「ど、どうぞお通り下さい。お連れ様も」

 「ありがとう・・・なんだ?あいつ。門番なのに腰低すぎない?」

 「ま、まあ色々あってさ」

 ここはカウバンド子爵領の国境側の端っこ。領都からは結構距離あるんだけどさ。

 “このさきで、おうじがあばれたから”

 「暴れたって酷いよ黄色ちゃん」

 “こどもを、にひゃくよんじゅうにんも、ひとりでたすけるなんてふつうはむりよ”

 “でもそのなかには、てぃきもいるのよ”

 「へえ、そりゃすごい。マツの姉さん小さいのにしっかりしてるよな」

 「だよね」

 「まあシュンスケほどじゃないけど」

 「俺は中身は大人だからね」

 「そう言えばそうだった」


 「そんな事より、トルネキに入ったことだし、宿に行くよ」

 ハロルドの手綱を軽く持ってとことこ門の外を歩いていく。

 「ああ」

 『乗って乗って』


 カウバンドも気になるけど、ティキもブーカもガスマニアの帝都にいるもんな。今回はスルーだよ。そろそろ本当に夕方になってきた。


 ペガコーンが街道を外れて飛んでいく。

 古書街迄そんなに距離が無いから、低めに。

 『ウリサを隠して』

 “おっけー”

 “よし”

 「じゃあ俺も透けようかな」

 ウリサの新しいマントは、認識疎外してても、透明なハロルドに乗っていられるんだ。それは精霊魔法に特化した魔道具だからだって。スフィンクスはすごいものを手に入れてくれてたんだよな。ありがたい。ウリサも疑似精霊になってるって事かも。

 “ちょっとちがうよ”

 “せいれいのきょうりょくしゃの、ふるいどうぐ”

 〈精霊の協力者〉?

 「そんなのがあるんだ」

 “うん、さんぜんねんまえのまんとね”

 父さんがハイエルフになった時位かな?

 まだまだ謎の多い世界。やっぱり俺にはまだちょっと異世界だ。


 暗くなっていく街道から急に明るくなっている街が見えてきた。

 あれは古書街の夜店の明かりだ。


 『手前で降りる?』

 「うん!屋台の間を行きたいなぁ」

 『んじゃ着地するよ』

 「俺もここは三年ぶりかな」

 「そうなんだ」

 「シュンスケに会う前だな。思わず依頼を忘れて古書を買いあさってさ、アリサに滅茶苦茶叱られたよ」

 「ふふふ、アリサに叱られるウリサ?見たかったぜ」

 「あいつに、読書の素晴らしさは理解できないからな」

 「そりゃそうだ。でも最近ちょっと読んでるみたい」

 「へえ」

 「カーリンに勧められたんだってさ」

 「同世代なら、身分に差があっても通じる価値観もあるかもな」

 「だな。身分は違うけど冒険者同士だから」

 「そうだ」


 市場に入る前に、ハロルドの装備を全部外す。

 『え?外さなくても王子の中に入れるよ?』

 「もう寝るだろ。夜だからさ」

 『うん!・・・おやすみ』

 俺の頭を鼻先でかき混ぜてから消える。

 「もーくしゃくしゃ。どうしてするんだろう」

 「ははは、ただのスキンシップじゃねえの?」

 それは分るんだけどさ。


 提灯に似た明かりに照らされた石畳を歩いていく。明るいけど、古書街だからさ、日が暮れると割と静かだ。それでも時々屋台の中から静かな音楽に乗って唱が聞こえることもある。


 本の内容を吟遊するのかな。

 “おうじあれ!”

 紫色ちゃんがあるお店を示す。

 「あ!」

 こんなお店あったんだ。

 鮮やかな絵本・・・と思ったら刺繍で出来た表紙の本が並んでいた。

 かなり古い物が多い。

 「これは・・・見事だな」

 ウリサが手に取った本には三日月の宝刀の絵が刺繍されていた。


 「それ買う!」


 会計をしようと、店番の人に声をかける。

 「あの!これいくらですか?もし、この三日月の宝刀のお話の本が他にもあったらほしいです」


 「お前さん、この宝刀が何か知っているのか?」

 店番は猫人族のおじさんだった。細い布のターバンの隙間から猫耳が出ている。


 「あまり。ただ、砂漠にあった今は無き王国の王様のものだと・・・」

 「それを知っているのだな」

 「ええ、俺の父が物知りでね。教えてくれたんだ」

 「そうか。これはただの子供向けの絵本だが、こっちは文字ばっかりの大人向けだ」

 そう言って猫人族の叔父さんは自分の座ってるすぐ後ろから、少し分厚い本を出してきた。

 「骨董でボロボロだが、値が張るぜ」

 「・・・お金は持ってるんだけど・・・おじさんはこの宝刀の王国の出身?」

 「その国が滅びたのが何時だと思ってるんだ。千年以上昔だ。俺はまあ、ほんのちょっとはるかかなたのご先祖様に、そこ出身の人がいたかもしれねえがな」

 「おじさんの名前を教えて?」

 「儂のなまえ?儂はシャンツ。シャンツ フォン コルベ 」


 「ねえ、おじさん、ほかに砂漠の滅びた国の本ある?」

 「・・・何が知りたいんじゃ」

 「ただの興味だよ。砂漠の王国なんてロマンじゃん?ね?ウリサ」

 「そうだな。どこら辺にあったんだ?地図とかねえのか?」

 「・・・街道がすぐに砂に埋もれる国の地図をどうやって作るんだよ。空から見てスケッチするわけでもなし」

 「あ、そうだよね。でも、大体も分かんない?もともと砂漠ってトルネキの東の国境よりもっと向こうにしかなかったんでしょ?」

 「そこまで分かってるんなら十分だ。あの王国は丁度トルネキの国境にあった砦と世界樹のちょうど間にあったらしい。それを遊牧の国が破壊したと言われている」

 「ふむふむ」

 「この分厚い本にはその時の話もあるだろう。王族は、民を戦から逃すために金銀財宝を売り払って大勢の路銀を作ったと言う逸話がある。そうして国が滅んだと」


 「おじさん、結構詳しいね。また話を聞きに来ていいかな」

 「儂は、ここでじっと店を構えているわけではないぞ」

 「じゃあ見かけたときね。とりあえず絵本と分厚い本のお金ハイ」

 「本当に持ってやがる」

 「まあね」

 「まあ、いつでも来んさい」

 「うん」

 “黄色ちゃん、このおっさんについててくれ”

 “わかったーウリサ”


 猫人族の店を後にして宿に向かう。

 「シュンスケやけにあのおっさんに食いついていたじゃねえか」

 「まあね、理由は宿に着いたら言うよ。これからどうすればいいかちょっと手がかりも出来た気がするし」

 「そうなのか?」

 「うん」


 そうして、結局〈S様専用部屋〉のある読書宿にチェックインする。


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