179【晩秋の登校日】
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「シュンスケっていうかシュンちゃん!かわいい!」
「カーリン!おはよ」
「おう、シュバイツ殿下、今日はいつにもましてかわいいじゃんどうした!」
どうしても発表しなければいけない実技の授業のために、久しぶりにガスマニア帝国国立学園に登園した。
「ちょっとね、後でいつものに戻るんだけどね」
「えー。今日一日女の子でいろよ」
「・・・セイラード殿下・・・」
「はい、皆席に着きなさい!」
温室ではなく久しぶりに広い魔法学部の教室に来た。実技の発表のために机が寄せられて、教壇から半分ぐらいが広げられている。
とはいえ、Sクラスは十人しかいないから机も十人分だよ、もともと。
「じゃあ、シュンスケからじゃな」
教授はいつも通りで良かった。隙あらば隠し撮りされるけどな。
「はい」
今日俺は部分的に透明になるあれやこれやを発表するのだ。全身は制服ではできないからね。とはいえ、覗き犯予備軍と思われないように、初めから女子生徒の格好で来た。
今朝、俺の頭をハーフアップにしてくれたのはクリスじゃなくてアリサねえちゃんだった。
「女の子のシュンスケさんのお世話はしにくいです!」って言われた。でもね今日は性別を変えただけ。人間族の六才女児は初めてだ。胸もつるーんだぜ?
そしてスカートはなんと猫人族のマツのお姉ちゃんのティキのを借りました。だって、ティキの方がちょっぴり俺よりお姉さん(九才)なんだもん。余裕で履けます。
するとなぜかやっぱり女の子だな。男がスカート履いてるのとは若干ちがうんだよ。なんだろ、膝とか肘とかの関節がちょっと小さくなるのかな。首もさらに細くなっちゃうし。
「じょゆうのおうじもきれいだったけど、こっちもかわいー」
ありがとまっちゃん。可愛いマツに可愛いと言われるのはまんざらでもないかも。
「もー猫耳に挟まれても可愛いってどういうこと?」
アリサが仁王立ちになって言うけどさぁ
「猫耳姉妹のほうが絶対可愛いだろ!」
「まあ、殿下ったら」ティキの笑い方は少し大人っぽい。まだ九才なのにな。
猫耳に挟まれてくっついてパシャリとしておきました。
ま、そんな感じで、ティキやクリスと一緒に登園したけどもちろん恥ずかしいから馬車で来た!
そして今回は新しいスキルをお披露目するのは腕だけにした。
ジャケットを脱いで、シャツの袖を肘より上までまくる。
「えーっと、一応俺の種族的なスキルなんで」
そうして腕だけ透ける。完全に見えなくすると、腕だけが無くなっちゃって気持ち悪すぎるので、半分に透けるぐらいで。
「おおー。本当にムー様みたいだな」
「でしょ」
「じゃあ、セイラード、シュンスケの手を触ってみなさい」
「はい・・・・あ、突き抜けてしまうな。残念、女の子シュンスケと握手したかったのに」
「ははは残念ねぇ」
「それで、これは以前俺の髪とハロルドの尻尾で作ったロープ。いつも使ってる手綱なんだけどね」
「おお、ロープごと透明になるんじゃな」
俺の手から垂れ下がっているロープごと透明になっちゃう。
「そうなんです・・・。ハロルドがそうなるのは皆も見てると思うんだけどね」
で、これを教授に発表しておいて、次の授業で、グローブ先生の教室に行く。昨日のうちにグアンデさんを連れてきているから、もうできちゃってたりして。ってのは甘いか。
授業はおまけで、俺にしたらトルネキの買い物の続きがメインだ。
アナザールームでさっさと男に戻ってズボンに履き替える。
“たしかに、ちょっとちがうのね”
緑色ちゃんに言われる。
「だろ」
小学校の同級生に男女の双子姉弟がいたんだ。そっくりだったんだけど、男女の違いってあったんだよな。あんな感じ?
まあ時々どっちかわかんない子も居るけどさ。小学生低学年まではね。でもやっぱり微妙に違ったんだよな。
「そんな事より、ミグマーリの鱗で作る鞍だ!」
俺は意気揚々と、グローブ先生の地下工房教室に行く。気合入ってる割にはクラスで最後だったけどさ。着替えてたから。
「よう、シュンスケ!先の授業はどうだった?」
鬚が無くてちょっと若く見えるドワーフ兄弟のお兄ちゃん先生に声を掛けられる。
「グローブ先生。さすがにブラズィード教授は、もと精霊王だった父さんに仕えていて話を聞いたことがあったからか、驚きませんでしたね」
「そうか」
「持ってきたぜー」グローブ先生の傍らにはトルネキ王国から扉一枚で連れてきた弟ドワーフのグアンデが、下げていたカバンから色々な羊皮紙が出てきた。
「だがな、やっぱりいくつものパーツが必要だ」
「そうだな。馬のためにな」
「はい!」
合成皮革というか、ポリエステルと塩化ビニルを組み合わせた、柔らかいもの。ミグマーリの鱗は結構固い。どちらかというと海竜のモササのほうが柔軟だ。だがモササは精霊じゃないから今回不採用。普段使いの皮鎧用だね。いつも着てるやつ。
「それのレジンの魔法陣はこれとかこれとかだ」
「はい!」
魔法陣は先生の方が出してくれる。
「それから詰め物用の疑似スライム」
「スライムぅ?」
あ、シリコンってやつだよね!あーびっくしりた。表現が異世界ファンタジーだよね。
でも、スライム枕の中身もこれでいいんじゃん?
ところが、合成の魔力を考えたら、スライムを飼育して加工する方が安いらしいです。
「疑似スライムでキルティングみたいな布にすると、温度調節しやすいゼッケンもできるぜ」
「ほうほう」ジェルマットみたいなものかな。
そうして、一つの素材から、色々な種類の材料を作っていく。ベルトとかも作れる。塩ビや合成皮革が作れるんだからそうだよね。今回着色塗料が用意できなかったのですべて真っ白な材料に仕上がっております。
「鞍一個分の材料を全部レジンの魔法で作ってしまう魔力量がおかしい」
グアンデがうなるように言う。
「そう?」こんなの俺にしたら何でもないけどね。
「グアンデ、シュンスケの魔力量はたぶんSSSクラスを超えているだろう」
グローブ先生に言われてしまう。
「・・・災害級」
失礼な!
さて、グアンテが持ってきたタンデム用の型紙にあわせて合成皮革の部分をカット、そして革を縫い合わせるのに、穴を開けていく。これは昔、中学の技術家庭の授業で革の財布を作った時は目打ちのような道具でコツコツと穴で開けた列を作っといて、そこに革ひもで縫い合わせて行っていた。
「グローブ先生、俺の手下を使ってもいいかな?」
「手下?」
「そろそろ、出来ると思うんだけどな」
「なんだかわからんが良いぞ」
では失礼して。
俺は、工房教室の机の上に小さな扉をあける。スマホサイズのとびらだ。
「おーい、えーっと20人ぐらいでいいか、器用で力のあるやつ出てきて」
すると、三角帽の小っちゃいおっさんがぞろぞろ出てきた。
≪オヨビデスカ≫ ≪ヤット出番デショウカ≫
カウバンドの教会の地下で捕まえた時のような醜悪さは消えてるけど、やっぱりおっさんにしか見えないから・・・可愛くない。
でも、あれから数ヶ月はたっているので、得意分野にチーム分けをして、アナザーワールドやボールモンドで農業の手伝いのできる奴、屋内で内職のできる奴、そのほか、ゴブリンではちょっと手の届かない細やかさが必要なところのフォローをさせたりしている。
「さて、前に練習してもらってた革細工の本番だ」
≪ハイ!≫ ≪ナニヲ作ルンデスカ≫
「こいつらは・・・妖精か。俺も初めて見た」
「手がちいせえから細工とか旨く行きそうだな」
「でしょ?」
小人のおっさんたちは、小さいけど力と魔力があった。革を風魔法で図面通りにカットする奴。闇魔法で小さい穴をあけてそれをズラリと線のように並べていくやつ、そして、革ひもでぐいぐい縫い留める奴。
「へえ、けっこう器用じゃん」
可愛くないと思ってたけど、一生懸命作ってる姿は可愛いかも・・・でもないか。
「しかし、やっぱり妖精(小人)と言えばクラフトだよな」
保育園の時に好んで読んでいた絵本。あの子たちは靴屋さんだったけどね。
普段使ってる地竜の革のタンデム鞍を見本に出して、グローブとグアンデの指導を小人のおっさんたちと受けながら、真っ白な新しい鞍を作っている。
チャイムが鳴る。
「ちょっと休憩にしないか」
「お昼ですねぇ」
「俺はすごく久しぶりにここの学食に行くぜ」
グアンデさんがあっという間に出て行った。ドワーフ兄弟はドワーフが治めている王国の出身で、この学園に留学したことがあるそうだ。戦争の合間にね。大変だったんだろうな。
「相変わらず自由な奴だ」
「ははは」
グローブ先生は愛妻弁当だって。羨ましいですね。教室の横にある先生の居室に引っ込んでいった。
「んじゃ、俺らもめしにするか」
ちっこい三角帽のおっちゃん達に声をかける。
≪≪≪≪ハイ!≫≫≫≫
俺はアイテムボックスから浅い深皿を一枚出し、シリアルみたいなオートミールも出す。ナッツやドライフルーツが色々入ってる。
ここに牛乳を駆けたいところだが、小人にはこのままドライなまま出す。
ぼりぼりぼりぼり。
「きゃぁ食べ方が面白い」
「これ、カーリン・・・確かに面白いけどね」
ちょっと、ハムスターが頬を膨らませて食ってるみたいだ。かわいい?うーん可愛くねえ。でも可愛くなくでも俺の手下なんだ。愛情?もって活用しなくちゃな。
≪美味シイッス≫
≪コレハ、色々入ッテテ楽シイデスネ≫
・・・味わって食えよ。
俺は虹色淡水魚のおにぎりを。旨い。あっさりした鮭のおにぎりって感じだよ。
近くには、優雅にサンドイッチを食べてるカーリン。
「シュンスケ、妖精さん達は上手く行ってる?」
「うーん。鍛えたらいろいろ出来そうだけどな」
「すごいじゃない。本当、奇麗に縫えてるわね」
「分かるのか?」
「ええ」
「カーリンの方は?」
カーリンは小さいナイフの鞘を普通の革で作っている。普通と言っても、ミノタウロスの革だけどな。
「魔石を埋め込んで縫い付けているんだけど。結構大変かも」
「魔石の奇麗な所を見せつつ、落とさないようにしないといけないもんな」
「でしょ」
ナイフの鞘と柄に埋め込まれているのは無属性の圧縮魔石が一つずつ。
「何の属性を入れるの?」
「シュンスケの、聖属性魔法を入れてほしいと思って」
「いいよ。冒険者活動に役立てばいいね」
「でしょ、傷つけるナイフじゃなくて、癒すナイフもいいと思わない」
「うん。よし・・・・」
俺はカーリンのナイフの鞘の魔石に触れて慎重に魔法を流す。
するとただのカットされただけのガラスのような魔石がキラキラと光り出す。うっすらとラメもまとわり出した・・・・オパールみたい。
ポンッ
“しゅばいちゅ?”
“あたちがふえた”
“ほんと、キュアじゃん”
わ、キュアがもう一人生まれちゃった。
俺はその子に呼び掛ける。
「新しい方のキュア」
うん?って感じですこしかしげながら俺を見る。
いつも俺の近くにいるキュアは他の精霊よりちょっと小さい。でもこの子はもっと小さいなぁ。
「君はこの鞘の魔石にいつもいてくれないかな?
カーリンの周りには他の精霊もいるから、キュアのサポートもしてくれると思うんだ」
“そう、かーりんはおれがまもるのさ”
相変わらず頼もしい赤色くん。
おにいちゃん精霊をみてにっこり笑いなら、新しいキュアは
“わかった♪”
しゅっ
「消えちゃったわ」
「いや、魔石が光ったままだろう?中にいるよ。それで、カーリン、この魔石に属性を・・・考えずに自分の体内の魔力をちょっとこっちに入れて。ほら魔法のカバンを登録するみたいにね。」
「分かったわ・・・できたわ、まあ、キュアちゃんとつながりが分かるわ」
“かーりん、よろちくね”
「よろしくね。本当に感動!キュアちゃんもう一度出てきて」
するとちょっとラメを散らしながら出てきた。
「まあ、カーリンもほら、精霊魔法使えるようになってるからできたんだと思うんだけどね」
「んじゃ・・・」
「え?ちょ、こら、カーリン」
気が付くとカーリンが別のナイフで自分の手を切ってた!
ぼとぼと落ちるカーリンの血。
“こら、かーりん”
お怒りの赤色くんと、
“めっだよぉ”
っていいながら、彼女の手にキラキラを振りかける新しい方のキュア。
「まあ、すごいわ」
すっかりきれいに治った怪我。
“しょーがねーなぁ”
と言いながらカーリンがこぼした血液をきれいにしていく白色ちゃん。
「素敵なナイフが出来たわ!シュンスケのお蔭よ!」
「喜んでくれて何よりだよ。お守りに持っておいてね」
「ええ!」
「そのナイフにさらにこのお守りを」
といつもの俺の髪の毛とハロルドのしっぽがタッセルになったストラップを付けてやる。
「やった!このナイフごと私のお守りね」
「だな」
「ふふふー」
ご機嫌なカーリンの笑顔を見てほっこりする。
もしかして、俺が最初から持たされている〈風の女神のミッドソード〉にもこういう仕掛けがあるのかも。シューシュー言ったり絶妙なタイミングで点滅するじゃん?
でもアイテムボックスに入れているんだよ?アイテムボックスには生き物は入れられないんだよ?・・・精霊ちゃん達って生き物?ちょっと違うよね。
今度出してゆっくりお話ししようかな。
「なんじゃそりゃー」
昼ごはんが終わって教室に入るなり叫んだグローブ先生に
「ふふーん、すごいでしょー」
カーリンが最近さらに立派になった胸を張る。
「へぇ、いいじゃん」
グアンデも称賛している。
「名付けて〈怪我が治る精霊王子のナイフ〉よ」
“いいなまえね”
ちょ、青色ちゃん。
“あたらしいきゅあがんばれ”
“がんばる”
「こりゃ、値の付けられない宝物になりそうだな」
「私の手作りだけど我が家の家宝ね」
鑑定したらカーリンの付けた名前で定着していた。
〈怪我が治る精霊王子のナイフ、ランク・デミゴッズ、所有者:カーリン フォン ラーズベルト〉
・・・デミゴッズかぁ、一瞬で出来ちゃったんだけど。
思わずカーリンに念話で伝える。
“そのナイフ、ランクがデミゴッズだから。冒険者ギルドで見せびらかさないようにね”
「ね?」
こくこくこく
ちょっと青ざめていた。なんかごめん。課題の作品なのにさ。
“でも、私、女神さまに貰ったポットもあるから!”
“!そうだな。珍しくないよな!”
“何言ってるの。希少すぎるでしょ!でもありがと”
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