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178【三つめの建物】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 次の朝、満月湖に戻ると、現場事務所の道を挟んで北側に二つの住宅が出来ていた。

 北側にあると言うことは南向きの家だ。

 カルピンさんの所のスタッフがサリオ一家のために大急ぎで仕上げたみたい。

 収納がほとんどの4SLDK+1LDK。一階の1LDKは雇われる人用かな。雇われる人が早く街道からやってこれたらいいなぁ。

 挿絵(By みてみん)

 そしてもう一つは三階建てのあれ?これ・・・

 「やあシュバイツ殿下おはよう」

 現場事務所からグラサン姿のエルフ姐さんが出てきた。相変わらずかっこいいです。


 「おはようございますカルピンさん、もう二棟完成したんですね」

 「そうそう、サリオ一家が定住するって聞いた時はこっちもびっくりしたけど、いつもお世話になってるからね大急ぎで完成したよ。もう一つは冒険者用。当面はアラビカが使うかな。こっちは、殿下のアナザーワールドのゴブリンのコソッのプランをそのまま使ったんだ」

 「それでなんだか見覚えがあるんですね」

 「そう、理想的な集合住宅だよね。もう一つ隣は同じような建物で三階も居室のタイプにして、渡り廊下でつなげる予定」

 「なるほどなるほど」


 まだまだ沙漠の砂が多いから、基本室内は上下足に分けたんだって。寝室にすこしでも砂が入らないようにね。ポリゴンの家を作った時に俺が上下足に分けるメリットを滾々とカルピンさんに言ったら、それから積極的に採用になったそうで。


 「それにしても、こっちは相変わらず暑いねぇ」

 「ですよね、俺も今朝はロードランダの城から来て」

 「そりゃうちの店より寒かったろう。ユグドラシル様の真ん中は標高もあるから」

 「まだ寒いって程ではないですけど、普通の人なら体調崩すかもしれないですね」

 「特に私ら年寄なんて気を付けなきゃ」

 「何言ってるんですか!」

 まだ人間族でいえば二十代にしか見えないのに。


 サリオさんの新居では一階の倉庫で家族がひたすら荷解きをしていた。

 そして家のさらに隣には駱駝や馬のための牧場が作られていた。


 「サリオさんお馬さんたちを牧場に開放しますね」

 「お願いします」


 常春のアナザーワールドに預かってた馬の背中に、空調効果のあるゼッケンをみんな付けて、新しい牧場に連れてくる。スフィンクスが。


 “わあ、きてた!”

 “おっ、プラムじゃん”

 久しぶりに会ったのにすぐに俺になついていたことを思い出す牝馬。可愛い奴だぜ。

 今日もハムハムしてくる。俺の腕を。

 びちゃびちゃになるんだけど・・・。


 「ちょっとハロルドの貸してね」

 『いいよお』俺の中でオッケーが出たのでブラシを出して、解放した馬たちをブラッシングしていく。

 “頭下げてくれる?”

 “うん”

 “暑くない?”

 “ちょっとおすながあつい”

 “おっと、こっちの草の方においで”

 鬣を撫でながら誘導する。

 “うん、あ、あつくない”


 蹄鉄を履いているとはいえ熱が伝わっちゃうよね。

 ここの牧場は草地にしておかなくちゃ。


 俺は広範囲に水魔法を発動して、牧場全体をミストで湿らせる。・・・もうちょっと濡らそうかな。途中から聖属性魔法を混ぜると草が生えてくる。


 “わぁすごい”

 “食べていい?”

 “いいよ”

 “なにこのくさ、おいしー”


 今回も十頭の馬を預かっていた。牧場に馬が沢山解放されると一気に風景が変わるなぁ。

 さらに北には大きな厩舎が出来ていた。夜は寒いからね。

 厩舎の外壁には、新しく地中に通している上水道からの立水栓が作られている。

 満月湖の湧き水から取水されて、蛇口のあたりに浄化魔法が仕込まれている水栓なので、俺にも飲める。


 蛇口はいくつかあって、そのうちの三つは牧場の水やりのスプリンクラーに繋がっている。これが無いとまだ草地を保てないよな。


 スプリンクラーは出来るだけ広範囲に散水できるように、二メートルほど立ち上がった柱の上に付けられている。


 だから本当はさっきみたいに俺が水やりする必要は無かったんだよね。でも、隙間なく草を生やしたかったからさ。

 生やした草はシロツメ草。まあクローバーってやつだよね。四葉あるかな。

 思わずしゃがんで葉っぱをさがす。

 あ、葉っぱの間から緑色ちゃんが。


 “おうじ、なにしてるの?”

 「四葉のクローバー探してるんだよ」

 “さがしてあげようか?”

 「うん、みんなで探そう」

 “わたしもさがすぅ”

 黄色ちゃんも参加。

 “じゃあおれも”

 “みんなでさがせばすぐよね”


 わらわらと精霊ちゃん達が草地を飛び回りだした。


 「何してんだシュンスケ」

 「あ、キリ。へへ、この牧草ってほとんど三つ葉なんだけどね、四つになってるやつを見つけるとラッキーっていう、俺の生まれ故郷の遊びがあってさ」

 「ふーん・・・あ、こういうのか?」

 「え?はやっ」

 「こんなの、シュンスケの存在に比べたら希少でも何でもないぜ」

 「うっ」


 そのうち、あちらこちらで白い丸い花が咲き出した。

 花そのものが華やかな形状じゃないけど、摘みたくなるよな、女子じゃなくてもさ。

 俺は幾つか摘んで繋げていく。

 「おー器用じゃねえか。モカが小さいときによくそういうの作ってたな」

 「そうか、こっちの人たちもこういう遊びをするんだね」


 直径二十センチぐらいの花冠が出来た。あ、人にはちょっと大きかった。


 「はろるどー」

 『なに?』

 

 相棒のペガコーンに出てきてもらう。


 「これどうぞ」

 『なになに』

 「お、ハロルド様似合うじゃん」

 『そう?』


 角から耳に引っ掛けて花冠を付けてもらう。


 「うん、可愛いよ!」

 『えへへへ』

 まじ可愛い。

 思わずパシャリ。


 角があるから、草を食べてても落とさない。

 『あ、ほんとだプラムが言ってた通りだね。この草美味しい』

 いくつかの白詰草の花を旨そうに食いながら言うペガコーン。

 『ねえ、こんなにお花が咲いてたらさぁ』

 「そっか!蜜蜂の巣!やるじゃんハロルド」


 野生の蜂は馬の耳に潜っちゃったりしてトラブルって聞くけど、うちの子は女王様が管理しているもんな。

 早速アナザーワールドから巣箱を三つほど取ってくる。いつの間にか巣箱も、スフィンクスが大量に作っててさ、俺の空間内で蜂蜜がどんどん量産されている。

 『蜂蜜は料理にもお菓子にも使えますからね』

 「くれぐれも乳児には使うなよ」

 『もちろんです』


 「何処に置こうかな」

 そんなに重くないけど、台車に乗せて持ってきた。すでにちょこっと巣ができ始めている分。働き蜂ちゃん達も一緒に運ぶ。働き蜂ちゃんって皆女の子なんだってさ。びっくりだよね。

 途中で砂大理石の半端なブロックも貰ってきた。


 牧場の北側には、ホブゴブリンが丹精込めて育てている小粒のエメラルド葡萄畑が広がっている。こっちにも蜜蜂は必要だよな。受粉のためにさ。


 てなわけで葡萄棚の下に幾つか置く。日陰の方がいいもんね。


 「ここらへんでいい?クインビー」

 『ええ、良いわよ』

 んじゃ、下にブロック出入り口の隙間を。


 ホブゴブリンは基本週二でここに通ってきている。十人のうちの五人ずつ。交代でね。

 

 「あ、シュンスケさん!ご苦労様です」

 「おう、お疲れ」当番制で今日リーダーの奴が挨拶してくる。

 俺が外そうとした、従魔の首輪をみんな付けたままにしている。俺の所有と分かってた方が他の人間から自分自身を守れるらしい。それにお揃いで作ったライトグリーンのポロシャツの胸にはシュバイツ印のワッペンを付けてあって、従業員らしさをかもしている。ホブゴブリンだけどね。ボトムはクリーム色のハーフパンツにキャンパス布地の靴。そして背中には麦わら帽子。葡萄棚の中では要らないけど外に出たら日差しがね。


 「クインビー様の巣ですか?」

 「うん、すっかり忘れてたよ。受粉してくれるんだからこっちにももっと早く置くべきだったね」

 「手伝います。わあ綺麗なブロック」

 「だろ、湖の底に敷いているのと同じやつだぜ」

 「シュンスケ様の瞳の色に似ています」

 「そ、そうか?」

 青っぽい緑色だな。


 「シュンスケ―」

 「あ、モカ。どうだった?部屋」

 一人しかいない女の子冒険者のモカは当然一人部屋。

 「よかった!バルコニーからの湖の風景が最高よ!」

 「風呂小さくてごめんね」

 冒険者の宿舎は大浴場は男用しかつけてない。なんせゴブリンのプランのままなんだから。

 だからモカには部屋に作り付けの小さなお風呂。

 「いいのいいの!あまり自分ちが素晴らしいと、他に行ったときにつまんないでしょ」

 うっわかる。

 「清潔ならいいのよ!新しい部屋なんてほんと初めて。それだけでテンション上がるわ!」

 そりゃよかった。

 「それに、現場事務所の三階のお風呂は借りれるから」

 あっちは大きいよね。同じ大きさの風呂いっつも俺は海の家でアリサに連れ込まれてました。


 蜂の巣箱を設置し終えて戻ると、ハロルドの背中が緑色になっていた。

 「どうしたの?」

 『全部四葉だって』

 忘れてた。

 「よし、これでラッキーグッズを作るぜ」

 「やれやれ、また仕事を増やして」

 「ほんと、シュバイツ殿下は働き者なんだから」

 いや、働いてるのか遊んでるのか線引きが難しいよネ。楽しいんだもん。


 砂漠の新しいオアシスでのんびりの日々を過ごす。


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