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177【ユグドラシルに溶ける】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 ふいー。久しぶりの世界樹の大浴場。

 ここに浸かるだけでも溶けそうだけど?


 暫くお湯に浸かって温まってから、よし、やってみよう。


 夜だから真っ黒なシュバイツ湖が望める露天風呂に腰かけて、もちろんすっぽんぽんなので、このまま空気に溶ける。


「このまま、広がるイメージでね」

 父さんが近くでアドバイスしてくれる。


 すると、意識がすごくクリアになっていって、世界樹の全容が手に取るようにわかる。

 『あら、シュバイツ王子いらっしゃい』

 『ユグドラシルお邪魔してます』

 ユグドラシルの意識も感じる。うわ膨大な情報が入ってくる感じ。そのまましばらく新しい感覚になじむように・・・・。 


 いつも俺がエメラルドの葡萄の蔓がユグドラシルの一部だと思っていたけど、葡萄以外に、樫、杉、桧、楠、椎、白樺、そして林檎や桃なども・・・その種類は無数にあって色々な木の集合体だった。


 真ん中には太い太い幹があって、少しねじれてて、その周りに色々な種類の木もねじれながら絡まり合って伸びている。

 ちっこい俺が、富士山よりスケールの大きい、鳥や大小動物、害のなさそうな魔物・・・ユグドラシル全体を意識できる。確かに面白い。


 神様の像が揃っている教会の裏に大きな枝に囲まれた洞穴のようなところがあって、そこにきれいな水が湧きだしている。これが美味しい水のスタート地点だな。味も分かっちゃう不思議。水は湧き出して溢れるように教会と城の間を流れていく。あれがシュバイツ湖に行きつくんだ。


 今度はてっぺんを目指そう。そのうち飛んで見に行こうって思ってたんだけど、こうやって世界樹を全体に包み込むように空気に溶けていくと分かる。

 ああ、ほんとうだユグドラシルのてっぺんで木々が切られている。切り口は少し古くてそこからまた新しい枝が生えてたりするけどね。長い年月をかけて元の尖った梢になるかもしれないな。結構広い範囲かもしれない。でも葡萄以外の木も切られてるよな。真ん中の幹の切り口が凄い年輪を晒している。学校の音楽室でみた交響曲のLP盤の溝の様。この模様にこの地域の歴史が刻まれているのかな・・・。


 『なあ、三日月湖でミグマーリを助けた時に、白龍を押さえつけていた蔓が、ユグドラシルの葡萄の蔓だったんだ。ここのが切られて使われたんだな。

 ここにあったはずの蔓より少ないかもしれないけど。俺が拾ったのは葡萄だけだったし』

 『まあ、そんなところにあったのね』

 『切られた時の事を覚えている?』

 『それが、何だかぼんやりしていたのよ』

 『痛いとか苦しいとかは無いの?』

 『ええ、気がついたらなかったの』

 『なんだか瘴気にまみれていたから、浄化して、今は俺のアナザーワールドにあるんだけど・・・ここに戻す?』

 『王子のアナザーワールドに連れて行ってもらった時から、つながりが復活しているの。ここに戻さなくてもいいわ。あちらで新しい世界樹を育ててもらってもいいわよ』

 え?俺のアナザーワールドで世界樹を育てるの?

 『いいの?』

 『ええ。王子の魔法の助けになると思うわ』

 たしかに、あちらの葡萄からは沢山の魔素が出ているんだよね。

 ここの世界樹も大陸の西側一帯の魔素を作っているんだ。


 『じゃあそうさせてもらおうかな』

 『ええ、むしろお願いするわね』

 『うん』

 『王子のアナザーワールドの世界樹の蔓でも結界が作れると思うわ』

 『どうやるの?』

 『いまなら、やり方を教えやすいわね』


 世界樹に溶けている俺の意識にユグドラシルから何かがインストールされていく。精霊ちゃん達に魔法を教えてもらった時もこんな感じだったかも。

 『なるほど・・・わかったよ』

 今までもアナザーワールドの建物の周りに葡萄を植えていたけど、もっとド真ん中に本格的な世界樹を育てるのも良いな。彼女みたいに他の木も組み合わせてさ。


 『世界樹のスキルが王子を助けるといいわね』

 『そうだな。何度かチュートリアルお願いするかもしれないけど』

 『もちろん何でも聞いて』

 ユグドラシルは優しいお姉さんだな。

 初めはおばさん呼びを言わされかけたけど。絶対お姉さんだよ。


「しゅんすけ。そろそろでるよ」

 『王が心配しているわよ』

 『やっぱり目の前で消えたままじゃ困るか』

 『もちろんよ。王は王子を愛しているもの』

 『くすくす。そうか、心配してくれているか』

 自分で勧めておいて心配してるとかって笑える。

 『じゃあ、戻るよ。ありがとうユグドラシル』

 『おやすみなさい』


 溶けたままなのにおでこにキスをされるのが分かる不思議。


「ふう」

「お帰り駿介。楽しかった?」

「うん。俺のアナザーワールドで世界樹を育てていいんだって」

「へえそれはまたすごいね」

「ね」

「私はアナザーワールドとかはできないんだよ」

「へ?」

「容量の多いアイテムボックスと、長距離の瞬間移動までしか空間魔法は出来ないんだ」

「まじ?」

「駿介はゼポロ神の加護があるから出来るんだよ。孫だしね」

「そうだったんだ」

 けっこういろんな人を入れてるけど、伝説と言われているハイエルフの父さんにも使えない超レアスキルだったんだ・・・。


 でも使えるなら使うよ。出し惜しみして後悔するよりはね。


 風呂から出ると、神様にもらった服は畳まれて箱ごと脱衣所に置いてあった。キラキラの短剣もここに入れてくれてた。

 プランツさんかな。隣にはパジャマの入った籠。


「あの三日月の短剣は〈守り刀〉というものに似ているな」

「守り刀?」

「ブラズィードと満月の砦に行った後に滅びた砂漠の王国があってね」

「二千年前の?」

「うん。かつてそこの王は代替わりするときに引き継いでいた宝刀がそう言う感じだった。確か名前が・・・〈ルハカマリィ〉えっと月の精霊という意味の宝物だったけな。

 あの国では〈ルハカマリィ〉を持つものが王だったんだよ。そういう伝統というか歴史だね」


「え?そんな、だってだって・・・」

 あの刀の名前・・・


 あれは俺のものにするべき刀ではないのでは?

 脱衣所で慌てて箱を開けてもう一度鑑定を・・・・パンツ一丁で。


 オーマイガー!タナプス伯父さーん!


 〈ルハカマリィ:月の精の宝刀〉・・・・所有者、シュバイツになってた。


 俺は砂漠に国を興すつもりはないぜ!そんなの大変すぎる!

 もともとあった満月湖に水を復活するだけでも大騒ぎだったのに。


 三日月の宝剣は、カウベルドで手に入れて、アイテムボックスに眠っているダンジョンコアでダンジョンを作った時に、ラスボスを倒した後の宝箱にでも放り込もうかな。いいかな、伯父さん。



 風呂から出て俺の寝室に父さんも当然のようにいる。プランツさんとか他に沢山侍従がいるのに父さん自ら俺の髪を拭いてくれる。

 精霊ちゃんにドライヤー頼めるんだけどさ。父さんの髪を乾かしてくれている。


「駿介、全身を透明にしちゃうのは、あまり人前でしない方がいいよ」

「そうだね、びっくりしちゃうよね」

「出来るだけ、人がいなくて、ハロルドとか、クインビーとか、他の高位精霊の子と一緒にいる時にしなさい」

「うんわかった」

「絶対だよ」

「・・・うん」

 やけに念を押すなぁ

「・・・どうして?」

「なんだか、溶けてしまってどっかに行ってしまいそうだからね」

「どっかに行く?そんな事無いって」


「よし、乾いたよ。もう寝なさい」

「うん」

「明日また砂漠に行くんだろ?」

「うん」

「あのローブは着た方が良いね」

 透明になっちゃダメなのに?

「タナプス神様の付与がついてて、お前を守ってくれそうだしね」

 そうだ、あのローブって何かかすかに模様がいっぱい入ってるんだ。魔法陣みたいな。今度の登校日に教授にも聞いてみようかな。


 三日月の宝剣は仕舞いこんで、母さんのウエストポーチを付けることにしよう。透明になるわけじゃないからね。


 そうして、秋が深まっていく北の国で父さんと寝た。

 ちょっと寒くなってきたから人のぬくもりって良いね。



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