176【透明人間じゃなくて透明な俺】
いつもお読みいただきありがとうございます!
このページでゆっくりしていってください~♪
「キリ、俺が透明になれるって誰にも言っちゃだめだよ」
「なんで?」
「特に、モカには言わないで。そんな趣味は無いけどね」
「!ああ、わかった、もちろんだよ。冒険者は口が堅いんだ」
て、にやにやしながら言うなよ!
俺は女の子のお風呂とかを覗く趣味は無い!
まあ、いつか一緒に女湯に入ってまったりしてみたいとは思うけど、もちろんその時は俺も女の子になってね。女の子同士でね。
食品売り場で買い物かごを下げながら歩く。カートを使うほど買うものは無い。
俺が主に欲しいのは、肉を焼く時の調味料。塩は山ほどあるからスパイスだな。ただ、スパイスもアジャー島のマーケットで手に入るんだよなぁ。
「お、これは?」
「それはぴりぴり辛い奴だ。いくつかブレンドして使うやつもいるぜ。麺料理にかけるのが多いかな」
「うん!つかうよね」
「寒いときは温まるためで、こっちの熱い国は汗をかいて涼むために使うらしいな」
「やっぱり」
アジャー島のスパイスはどっちかというと西アジアというかカレーの材料だ、それもあるんだけど、目の前に並んでいるのはわりと和風のスパイスだ。
唐辛子は似た感じだけど、俺の鑑定では日本人育ち向けに変換できている。
山椒・胡麻(はアジャー島にもあった)、ドライな荒い粉末の青紫蘇と赤紫蘇(これは塩とまぶしてご飯のふりかけにしたい)・・・・それらをかごに放り込み、そのまま干物を売っているところへも。あ、ドライ牛蒡!それに各種干しきのこ。乾燥わかめ。あ、棒寒天があるんじゃん!これはスイーツ用だ。いいねぇ。食材にもなる干物は大量に買う。
「そんなの買ってどうやって食うんだよ」
「うーん料理は作っておいて持って行くかな」
「そうなんだ、スフィンクス様が?」
「いや、ここら辺は俺の方がレシピが多いと思う」
「すげえなシュバイツ殿下は」
「ははは」
「俺が砂漠に定住するわけじゃないけど、さらに東に行く旅に備えてね」
以前スライム枕を買い損ねた時から、必要そうな物は買える時に買うようにしている。俺もお金持ちになってるからね。
あ、お酢も色々あるんだ。ワインで出来たの、林檎で出来たの、お米のも、これは俺には定番だな。よしここも沢山買う。・・・重。
「貸せ、持ってやる」
「大丈夫だよ一応鍛えてるんだよ」
「ガキの細腕だから、折れそうではらはらするんだよ」
「むう」
干物や液体はかさばるから結局籠いっぱいになっちゃった。
「相変わらず食い物メインになったぜ」
「育ち盛りなんだからこんなもんだろ」
「それが俺は全然育たないんだよ」
あと一年六才だもんな。三倍の成長してるのか!実感が全然ない。
「ははは、栄養が全部魔力になってるんじゃねえか?アナザーワールドとかさ」
「え?そうなの?」
「ああ。前にギルドで会った魔法使いが、魔法をたくさん使った後は腹が減るって言ってたぜ。だから栄養が魔法で放出されるんじゃねえか?細え癖に、タンク並に食ってたぜ」
「そうだったのか。俺の成長が遅いのは魔法を使いすぎ・・・」
「だからって今更アナザーワールドは閉じねえだろ」
「そりゃそうだけどさ」
「会計してくる。また必要になればパッと買いにくればいいしね」
「そうだよ、パッと来れるのになぜ買い込むんだ?」
「なんでだろう」
会計を終えてさっきのフードコートに行くと、サリオさん一家とモカとコナが待っていた。
「たくさん買ったそうですね」
「ええ、でも一番高かったのはたくさん買ったものを入れる魔法の袋です。とくに食品用に時間停止付きのものをいくつか買いましたからね」
「それは大事なことですよ」
「後は服よ!今までは旅装しかなかったから、はじめて可愛い洋服を買ったわ」
「へえ。冒険者ギルドなのに可愛い洋服も売ってるんですね」
「そう!たとえば・・・これなんか、どう?きっとシュンスケに似合うわよ」
と魔法袋からひとつ大人用のワンピースを出してきた。
「え?俺?」
「時々女の子になるんでしょ?」
「げ、なぜそれを」
「古書街のえ・・・っと、ヴェールドゥシュバイツ専門店のエルフが言ってた。それはそれは美しいと」
「・・・ちょっと青色ちゃん、アナラグさんの顔に水かけてきて!」
“きゃはは!いいの?”
「女の子?どういうこと緑色ちゃん」
キリが俺を見ながら肩に座ってる緑色ちゃんに聞く。
早速精霊ちゃんとコミュニケーションしてるぜ。
“びじんなのよ~”
「へえ。見たいな」
「これ、緑色ちゃん!俺の女の子は超レアなの!」
“まあね”
「なんだ、女になれるなら透明になることは秘密じゃなくても良いんじゃねえの?」
「わ、キリ!」
「透明?」
「なんか、シュンスケってほらお父さんが今はハイエルフだけど、もともと精霊王だろ?」
「あのお店にも売ってた、おとぎ話だとおもってたけど」
「まあね、なんせ三千年前の話だもんね」
「でもこいつは半分精霊なんだってさ」
「シュンスケが?確かに翅があるもんね」
「精霊って透明になれるんだよ」
「キリ!」
「なるほど。僕もムーさまが透明になっていくところ見た!」
「で、なぜそれが秘密なの」
不思議そうな顔で俺を見るモカ。
「だって、の・・・覗きとかできちゃうでしょ」
「なるほど!覗き犯人に疑われたくないと!」
「もちろんだよ!俺にはそんな趣味は無いからね」
「趣味は無くても、逆の被害があるかもしれませぬぞ」
顎を撫でながらこの中の一番年長者が言う。
「どういうことサリオさん?」
サリオさんの答えの前に女性陣から声が。
「ふふふ、シュンスケなら別にいいわよ、覗かれるどころか、お風呂は一緒に入ってもね。トイレは嫌だけど」
「そうねぇ、まだこんな小さい子供だしね」
頭を撫でられながら言われる。
「ほんと可愛い」
このテーブルには女性が三人おります。
「それに、女の子になったシュンスケとお風呂に入りたいわ」
逆にお誘いが!お父さんの前で!
「あたしは大人の男のシュンスケとお風呂でもいいわ。何なら既成事実を・・・・」
モカも、皆の前で何を言うの!
「ほら、女の本質は逞しいんだよ」
「ううう、本当ですね。女性へのイメージが変わっちゃいます」
「ちょっと、兄さん何を言うの!」
「だから、ロックオンした女は怖いって。シュンスケというかシュバイツ殿下は地位も高いし。・・・うそうそ!モカはそんなことないよね」
ぽかぽかと殴る仕草にキリが逃げる。
「今更遅い!」
「ま、そういうわけで、変な下心ある人には男性でも女性でも用心が必要ですよ」
流石。人生経験豊富で、旅行でいろいろ物知りな商人だ!
「ありがとうサリオさん。そこに気が付かなかったです。気を付けます」
確かに鑑定では前科は出ても下心までは分らないもんな。それは俺が相手を見て察しなくちゃいけないんだけど・・・人生経験も足りないぜ。
「僕も女(姉ちゃん)は怖いっていつも思ってるよ」コソッ
コナ君・・・ありがと。
「では行きましょうか。荷物はこれだけですか?」
魔法の袋や箱、カバンなどに圧縮してても、ホームセンターサイズのでっかいカート三十五台分(増えてるし)のものはこんもり積み重なってる。
「お願いします」
それを俺のアイテムボックスにシュっと入れて、皆をドア一つで、満月湖の現場事務所に送る。
そしてすぐに荷物を余っている部屋に開放する。
ドワーフは一階に住んでいるし、カルピンさん達は通いだからね。
その夜俺は、ロードランダの自室に行った。
父さんに、タナプス神に会ったことなどを報告にね。
久しぶりのお城で晩御飯。
「プランツさん、こっちは結構涼しくなりましたね」
アフリカのような所にいたから季節が変わってきているのを忘れていた。
今はもう十月なんだよ。
「風邪をひかれませぬよう」
「俺、風邪ひくのかな」
「くすくす、どうでしょうか・・・貴方はただお一人の種族ですものね」
「ね」
王子の部屋着に着替えてご飯。
「へえ、タナプス神様にお会いしたんだ」
「うん。なんか父さんに雰囲気にてるかもってちょっと思っちゃった」
こうして見てるとずいぶん違うけどね。やっぱり神様って、神力というか威圧感というか圧迫感というかそういうのがあるしね。
「そんな恐れ多い」
「ははは」
今日は虹色の淡水魚のムニエル。ロードランダ自慢のバターがたっぷり使われていて旨し。爽やかな香草もいいな。ちょっと・・・ローズマリーっぽい?トルネキで仕入れた青じその粉をこのお城のシェフにプレゼントしようかな。シュバイツ湖の魚は結構でかいな。鮭ぐらいありそう。満月湖の魚はまだ鮎ぐらいの大きさなのにな。大きく育つまで乱獲はだめ絶対。すでに二匹食った俺が言うのもなんだけど。
「それでね、ローブをもらってね」
食べ終わって父さんも一緒に部屋に来てもらった。
例の箱を出してリバーシブルなローブを出す。
「これ」
「へえ、着てみてよ」
「んじゃ白い方表にして」
「うん、可愛いよ」
「そう言えば、父さんが精霊王の時って透明になったりしてた?」
「透明?って表現があってるか分からないけど意識だけ残して体を空気に溶けさせるってかんじ?は良くしてた」
「その時は服はどうしてたの?」
「服?」
「そう」
「あの時はまだ原始的な時代だったから、適当さ。何千年も昔だよ。服じゃなくて布を巻き付ける感じ?実体化する前にその布をこう魔法で立ち上げといてね」
「・・・まじか」
まさかの裸か。
「多分この服は一緒に透明になってくれると思うんだよね。素材からしてさ」
「へえ、やってみてよ」
「うん」
そうして父さんの表現を借りて・・・体を空気に溶けさせる。ゆっくり。
「わあ、ほんと、ローブも透けていくけど・・・・」
ぼとっ
「わ、ローブ以外の服が脱げた!」
「ははは」
思わず実体化する。
「慌てて実体化したらすっぽんぽんだよ」
父さんに受けている。
「失敗」
ローブで体を隠す。
「えー、これじゃあ変態さんだよ」
「はははは」
「箱に入ってたのはローブだけ?」
「確か他に袋が・・・」
裸ローブのまま箱を探る。巾着袋の口のあたりを触る。
やっぱり魔法の袋だった!容量がありそうな割にそんなに入ってないけど。
「他に服が入ってた!」
下着まで!とういうことはこれを着れば完ぺきでは!
そして、なんかすごく美しいきれいなちょっと大きい短剣も入っていたんだ。全体的にカーブを描いていて、金色のキラキラのやつ。
部屋には今、父さんしかいないから失礼して、ローブを一度脱いで、巾着に入ってた服を着ていく。
おパンツと長めの靴下(これは二枚ずつあった)、そしてすごく楽そうなクリーム色のボトム、たて襟の真っ白な長袖のシャツ。功夫の服みたいに玉結びの紐で閉じていく。金色の幅広のベルト。これが地模様が入っててかっこいい。
そしてあの短剣をこのベルトに挟むんだな!
そして、ハイカットというか短いブーツが二足。黒と白。紐の色が反対で。これはローブの色に合わせて選ぶんだな。よし、今は白い方にしよう。紐は黒。後はどうするか分からない長ーいストールのような布。これも黒と白2本ある。
そうして部屋にある姿見の前に立つ。
「うお、我ながらかっこいいのでは」
この組み合わせならこのローブもいいけど頭にターバンでもいいよな。あ、長い布はターバンでは!
「可愛いよ。似合ってる」
父さんは可愛いしか知らないのか!まあ超高齢者ですから。
「んじゃこのまま透明になってみようかな」
鏡を見ながら空気に溶けていく。
今度は服全部が透明になるね。
「すごいね、今度はパンツも落ちてこない」
ははは。父さんも感心する?
そして実体化する。
「素晴らしいな」
「ね、じゃ後は大人サイズに」
だって大人っぽい組み合わせの服なんだもん。
久しぶりに見た目二十歳の俺様。
タナプス神様の服もローブごと大きくなってる。ただ短剣はサイズ変わりなく。
むしろ短剣は大人サイズの俺にしっくりくる。
刃が曲がった三日月みたいな短剣だ。金色で表面に一面に細かい魔石のようなものが張り付いている。
「このぶつぶつ取れないかな。使うの怖いな」
「大丈夫でしょう。じゃあ大人サイズのまま溶けてみて」
「うん」・・・大人になってもうまくいく。
「次は小さい精霊ちゃんサイズだな」
「よし」
大人サイズから緑色ちゃんサイズにパッと!
“ちいさくなるの、はやくなったんじゃない?”
「そう?確かに初めは恐々だったな」
父さんに会いにこの城に初めて来たとき。
“小っちゃくなる方が怖いんだ”
「そりゃそうさ。未知の世界だったんだもん」
「よし、じゃあ二人で溶けてみよう」
父さんの言葉に、緑色ちゃんと手をつないで空気に溶ける。
「あ、見え無くなったよ」父さんの合図。
でも、
“緑色ちゃんの手の感触がある”
“そうね。あたしも、おうじのふくにさわれるわ”
緑色ちゃんが俺の上着の玉結びボタンを一つ外したのが分かる。
“きゃー緑色ちゃんのエッチぃ”
“ふふふ”
透明同士の精霊は分るんだ。透明になってるのも分かるけど輪郭も分かる。
“はんげきー”
と緑色ちゃんにハグ。
“きゃーふふふ”
パッと二人で実体化する。
“ずるーい、おうじあたしも!”
黄色ちゃんとハグ!
“おれもしてやる”
赤色くんからハグされる
小さい精霊たちとハグのし合いっ子。俺自身が小さいからこそできる。
「あーたのし」
「ふふふ、楽しそう」
短剣も今度は小さくなってた。一寸法師の縫い針の剣よりかっこいいぜきっと。
パッといつもの六才児サイズになる。
「でもいつもこの服ってわけにもいかないよな」
「砂漠を歩くときに透明だといいよ」
ポン!思わず手を打つ。
「さすが父さん!」
「砂嵐とか関係ないからね」
「吹き飛ばされないんだね」
「もちろん。風が突き抜けちゃうし、砂の魔物も突き抜けるよ」
「すげー」
「懐かしいなぁ、今は私は妖精じゃないから空気に溶けるのは出来ないんだよな」
「そうなんだ」ハイエルフだもんな。
「一度、森とか・・・そうだユグドラシルでやってごらん。面白いよ」
「わかった。やってみる」
「今から大浴場でやってみようか」
「?うん」
肩を掴まれて気が付けば脱衣所だった。
一応さ、俺の部屋からここに来る転移用の扉があるんだよ。備え付けの洗面所の隣に。なのに父さんと一緒だと使うことが無いんだよね。
「もー」自由なんだから。
グッドボタンお願いします♪
お星さまありがとうございます。
ブックマークして頂くと励みになります!
それからそれから、感想とかって もらえると嬉しいです。