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173【旅商人一家のジョブチェンジ】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 俺は、サリオさんとアラビカ三人を連れて、王宮に出向いた。瞬間移動で。

 もちろん黄色ちゃんに予告をお願いしたよ。

 “ぷろーも、あたしたちのおうじとおはなしできる?”

 って。

 “・・・いま、がっこうからかえってきたからだいじょぶだってさ。さいきんはおうきゅうにいるのよ”

 てなぐあいにね。


 「本当に一瞬ですな」

 「まあ瞬間の移動なので」

 「羨ましいよな」

 「ええ。この能力を利用した商売が色々考えつきます」

 「「「ははは」」」


 一応正面入り口まえに転移したら、門番さんより外側にプローモが待ってくれていた。

 「シュバイツ殿下!」

 「プローモ殿下!」

 この地域は二度目からの挨拶はハグなんだよ。


 「・・・殿下同士の挨拶シーンって、あたしが同席しても良いの?」

 「何言ってんですか、モカさん」


 「こちらへどうぞ、あいにく父は外せない会議中ですが、兄ももうすぐきますので」

 「はい」

 「プローモ殿下のお兄さんって・・・」

 「アントニオ王太子殿下ですよ」

 「ですよねぇ」

 「緊張しちゃう」

 「気さくな方ですよ、肩の力抜いてね」

 そう言ったのに、だんだん緊張していらっしゃる。


 俺たちは一階の庭園に面した応接に案内される。

 以前滞在していた部屋の反対側だ。


 俺が座ったソファーの後ろに、キリが立って、モカを俺の隣に引っ張って座ってもらう。

 「え?あたし・・・」

 「いいからいいから!」

 モカはアラビカパーティーではウリアゴのアリサと同じ立ち位置。アリサはむちっと可愛い系で、モカはすらっとした美人さんだ。侍女長が居てるとは言え他は男ばっかりなんだもん。モカさんには添える華の係。


 俺たちのソファの隣の一人掛けのソファにはサリオさん。その後ろにコナ君が立つ。


 「シュバイツ殿下どうぞ」

 ライオン獣人の侍女長のベージュさんがアイスティーを配ってくれる。ミントのようなリーフが浮いて爽やかで良き。


 後ろに立ってる者にはスタンドタイプのテーブルが近くにあるのでそこに飲み物を置いてある。護衛(暫定だけど)にも飲み物を出せるのっていいよね。


 コンコンコン

 「失礼するよ。シュバイツ殿下、進級おめでとう!」

 颯爽と黒ライオン族のアントニオ王太子殿下が入室する。

 「はは、全然通学できてませんけど、ありがとうごさいます」

 立ち上がってアントニオともハグ。

 「僕は四年生になったんだけどな」プローモ殿下は一つ上。

 「そうでした!お互い頑張りましょうね、とは言え俺は通信教育に近いんですけどね」

 「通信教育?」

 「ええ、時々登園して課題を出したりね」

 「なるほど。もともとの成績がいいからついて行けるんですね」


 こう言われたら、洋画の俳優なら眉をくいっと動かしてニヤリとするんだろうな・・・出来るか!


 「さて改めてご紹介します。旅商人のサリオさん。主に住宅のセットなどを運んでいらっしゃいます。それと冒険者の兄弟パーティーのアラビカ。長男のキリと、俺の隣に座っているのかモカさん、サリオの後ろにいるのがコナ君です」


 「「「「宜しくお願いします」」」」

 「これはこれは、よく来てくださいました。其方がサリオですね。それにアラビカたち宜しく」

 サリオは人間族だけど、アラビカはシェパード系の犬人族。黒ライオンとシェパードの握手。すごいよ。


 「それでね、シュバイツ殿下、領地の名前が決まったんだよ!」

 将来が決まってやる気を見せるプローモ殿下が話す。

 「塩湖(クレセントオパール)だけじゃなくて?」

 「うん、満月湖の名前そのまま使おうって」

 「んじゃ、ボールモンド領だな」

 「そう」

 「なかなかいいじゃん」

 「でしょ」

 すごく雰囲気もしっかりしてすごい。〈男子、三日合わざれば刮目して見よ〉ってこれ?三日どころか数週間ぶりだったんだけどね。俺も頑張らなくちゃね。


 「プローモがやる気になって、領地経営の勉強のために、学生寮を引き払って、四年生から城から通っているんだよ」

 お兄ちゃんの顔で王太子は弟のことを話す。

 「一から興し直す領地なんてやりがいもあるでしょうけど大変ですね」

 「だろうな。シュバイツ殿下ならどうやる?」

 そう投げてくるアントニオに、プローモもこちらを見つめる。

 「・・・まずは大雑把な都市計画だけ作っておいて、幹線道路とライフライン、中心部を整えて・・・って感じですかね」

 すでに満月湖の周りは地中に上下水道用の管だけは整えている。

 「そうだ、私達もその方向で考えている。とりあえず、設計に入ってる砦の一階の南側を商業ビルド、北側を冒険者ギルドに開けておこうと思って」

 それは、ガスマニアのブラズィード教授に聞いた二千年前と同じ。


 「それで、そこの商業ギルド長に、サリオがついてくれないかと、実は前々から考えていたんだ」

 「わっ私ですか!」

 「ああ。帝都やラオポルテの商業ギルドでも其方の評判を聞いている。長年大陸中を渡ってきて色々な事をご存知の其方に、ぜひ新しい街で腰を据えて、弟を助けてほしいのだ」

 穏やかに、諭すように、アントニオは父王より見た目年上のサリオに語る。


 地域の商業ギルド長というポストは、一定期間以上の実績と経歴のある会員の中から、商業ギルドから依頼されて派遣される場合と、地域の長からの推薦で決まる場合がある。今回は後者にあたる。期間限定から無期限で世襲する場合もある。無期限の場合は成績によっては期限が定められることもあるそうな。なかなかに厳しそうだけどね。自分の商売を畳んでも十分な給金をもらえるほか、商売を続けながらギルド長をすることもできる。セイレンヌアイランドのオフ島の畳屋さんとかもそうだった。店番は奥さんがしてたけどね。

 

 「新しい領地に新しく商業ギルドを誘致しようと思っていたけど、まだまだ街としては住人ゼロなんだが、シュバイツ殿下の協力もあって、限りない可能性を秘めた地域になりそうだからな」

 「うーむ」

 少し考えこむサリオに皆が注目する。

 「確かに、あの風景を見ると心が躍るとともに、私も年齢的にそろそろ一か所に落ち着いた方がいいとも思ってはいたのです」

 「じゃあ、丁度いいですね!」

 「落ち着くとは言え、新しい領地なのだから色々物入りなんだ。まずは日干し煉瓦の戸建ての建て替えからなんだ。商業ギルドは忙しくなるぞ」

 「ですよね」


 「取り合えず、家族と相談させてもらってからお答えしても良いですか」

 すっかりやる気の笑顔でサリオが言う。

 「もちろんですよ」

 「んじゃ、このまま俺が古書街にお連れしましょうかね」

 「お願いします。たすかります」

 「あと、アラビカは・・・」

 「俺らはこの王都の冒険者ギルドでサリオさん達を待ちますよ」

 「分かりました。それに満月湖に行く前にあそこで買い物が必要でしょう」

 「そうだな」


 とりあえず、建築中の住宅を一つサリオ一家に賃貸するように手続きを。まだ国営なので、家主は王様ってことだ。家賃は商業ギルドの寮という扱いなので、商業ギルドの組合が負担するだろう。それも二年は家賃免除の好待遇にするそうだ。太っ腹だな。


 「んじゃ、完成したらそこに住んでもらうとして。完成までは現場事務所に住んでもらいましょう」

 「そうですな。ついでに商業ギルドエリアのプランニングにも参加してもらって・・・」


 日干し煉瓦の家も、大理石の家に国のお金で建て替えるんだって。太っ腹だよね。って思ってたら、

 「そこは国から新しい領地が借りる借金なんです・・・」って領主になる予定の第二王子のプローモ殿下が言う。

 まだ新しい領地はなにも生産していないからだってさ。でも人が増えたら、お金が回るよ!頑張れ!

 「でも、早く進めたかったので、サリオに期待します!」って王子殿下達に再び握手を求められて、サリオさんが嬉しそうに握り返していた。


 王宮を出た俺達だが、アラビカパーティーはそのまま徒歩で王都ギルドに行くそうだ。駱駝を満月湖に置いたままだったからね。お世話は現場事務所の人たちがしてくれるそうだからいいんだけど。

 「では、サリオさんはこちらから行きましょう」

 そう言って、王宮の大きな門の陰にチョコレート色の扉をアイテムボックスから出して、古書街の商業ギルドに繋げる。


 「こういう方法もあるんですね」

 「ええ。これだと手を繋がなくても、俺が一緒にあちらに行かなくても行き来してもらえるんで。荷物を持っていたりするときに便利です」

 「なるほど。やはり素晴らしいですな」

 「ありがとうございます」


 「で、奥さんと娘さんはどちらでご滞在されているのですか?商業ギルドですか?」

 「それが〈本の虫亭〉という、読書宿です」

 ・・・ほかに、読書宿は無いのか!いや、先に滞在先を聞いて繋げればよかった。ていうか俺が他の宿を開拓したい!でもあの宿には〈S様(おれ)専用部屋〉があるしなぁ。

 「分かりました行きましょう」


 漫画喫茶いや漫画は無い、読書喫茶に風呂付の部屋が完備されて、本棚がいたるところに設置された〈本の虫亭〉は商業ギルドからすぐだ。


 「こんにちわぁ」

 「おや、シュバ・・」

 「しっ」

 亭主の山羊人族のログホーンさんが満面の笑みで出迎えてくれる。

 このホールにも静かに本を読んでる人がいるんだから、聞こえちゃんじゃん。

 「と、サリオ様。お二人は知り合いだったのですか」

 「冒険者ギルドのご縁がありましてね。

 うちのがお世話になっとります」

 「いえいえ。ですがお二人はまだ古本市に出かけていてまだお戻りじゃないですよ」

 「それまで待ちますか」

 「そうですね」

 「では、例の部屋に軽食と飲み物を持ってきてもらえますか?今日は宿泊したとしても一泊です」

 「かしこまりました」


 そういって、〈S様専用〉部屋にサリオさんと上がろうとしたら、ふっとフロントカウンターの向かいにあった本棚に置かれている新しい本に目が行った。


 〈ボールモンド湖物語 第一巻〉

 ・・・だから早いって。誰なんだよ!俺のネタを流す奴は!


 読むのは確認のためですよと心の中で言い訳をしながらその本を持って部屋に行く。

 自分自身の浅いけど黒歴史を楽しむ趣味は無いよ。


 「S様専用ってどういうことかと思ったら、シュバイツ殿下のことだったんですね」

 そうなんだよ、Sな趣味の人の部屋じゃないよ。

 「ほら、俺って駿介とも名乗るでしょ。どっちにしてもSだからね」

 「なるほどなるほど」


 「サリオさん、お風呂入ります?お先にどうぞ」

 「お借りしても良いですか?」

 「もちろん、せっかくですしね」

 「では、先に失礼して」

 「どうぞどうぞ」


 奥さんと娘さんは同じ三階にある二人部屋、そこに二人が帰ってきてから追加のベッドを頼むようだ。

 いきなりお父さんが出て来たらびっくりするからね。でもこっちの広い部屋に前にアヌビリが泊まったようにベッドを置いてもいいけどなぁ。


 「お先でした」

 「さっぱりされましたか?」

 「ええ、体中を布で包んでおりましたが、やはり沙漠の砂は細かいのか、髪の中まで入り込みますなぁ」

 「そうですよね、んじゃ、俺も」


 久しぶりに窓のない風呂に入る。

 でも、壁に四角い空間魔法を展開して、満月湖の真ん中の上空の風景に繋げる。いくつもに増えた俺の拠点の風呂たちはすべて素晴らしいパノラマな眺めなんだよな。贅沢と言われても、一坪の風呂で壁だけしか無いとシャワーだけに近い烏の行水になっちゃうよな。


 四角い枠に展開される風景に外から青色ちゃんが入ってきた。

 “あら、おうじ、こっちは ほんのむしてい?”

 「そ、青色ちゃんも入る?」

 “はいる”

 っていいながら彼女がチカチカっと光るとあら不思議、青いワンピースだった彼女が裸で入ってきた。

 「おい」冗談だったのに

 ってか、マツみたいに完全な幼女でたすかったぜ。

 「いつも、ワンピースで水に入ってるのに」

 “おふろは、はだかのつきあいなのよ”

 「そうだけどさ、青色ちゃんでも緊張しちゃう。俺男の子だからさ」

 “ふふふ、じゃあ、あかいろもどう?”

 “おれはもうはいってるぜ”

 そう、赤色くんは初めから裸でお風呂に入ってます。とはいえ、二人とも風呂が深いので、浴槽に浮かべた洗面器のお湯の中。翅も出たまま。こいつらは俺と違って常に翅は出ている。混浴洗面器。


 “おうじ、よなかになったら、まんげつのみずうみにちょっときて”

 同じくいつの間にかすっぽんぽんで洗面器に浸かっている紫色ちゃんがいう。服を脱いでいたら頭と瞳の色しかこいつらの違いは無いんだよね。

 「?わかったよ」


 風呂の縁では、男女に分かれて精霊ちゃん達が洗いっこしていた。

 “きゃーあわあわー”

 “いいにおい~”

 “せなかあらってー”

 “まかせて”


 一人のお風呂だったのににぎやかである。


 風呂から出ると、軽食が来ていたテーブルにサリオの奥さんと娘さんも揃っていた。

 「シュンスケ様、この度はありがとうございました」

 「聞けば父を砂の魔物から救っていただいたとか」

 「いえいえ。討伐したのは白龍ですよ」

 テーブルには二人分の軽食も追加されて、軽い夕食が始まる。


 「満月湖に定住するのはそうしたいという事になったんですけど、何分準備が必要です」

 「そうですよね。とりあえず俺も明日王都の冒険者ギルドのあの大きな商業施設にいって発注したいものがあるので、一緒に行きますか」

 「「「ぜひ」」」

 「そうと決まれば、今から買い物のリストをこしらえなければいけないです」

 「もともと、お持ちのものもあるでしょう?」

 「あれはキャラバン用の荷物なので、定住するとなると、衣類さえ変わってしまいますよ」

 「たしかに」


 「あたし定住するなんて生まれて初めてで、ちょっと楽しみです」

 娘さんが言うけど、何もない所で定住ってきっと大変だよ。俺なら毎日スマホゲームしそう。スマホがあるからだけどさ。


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