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172【一番乗りの商売人】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 「ところで、塩湖も見てこられました?」

 俺は、駱駝に乗るサリオさんに話しかける。

 ちなみに俺自身は地上一メートルの高さで飛んでいる。

 駱駝は馬より揺れるので、まだまだ軟弱なお尻ではつらい。

 ハロルドは今は俺の中で休憩中だ。

 俺は黒目黒髪の人間族の冒険者スタイルに野球帽だ。眩しいからね。翅だけ出してます。


 「かなり、幻想的な風景でしたな」

 「そうそう!真っ白でびっくりしたわ。あの塩湖を作ったのもシュンスケだって?」

 「そうなんですよ。隣の三日月湖の水がかなり少なくなってたでしょ?」

 「汚染もされてたらしいしな。水や光の魔法使いが割に合わない仕事だとぼやいていたぜ」

 水魔法使いが水不足の王都でできることは、真水を作り出すこと。その水は主に王都民の飲料用に利用されていた。王宮や学園には魔道具も魔法使いもいるからね。水が高価すぎると命にかかわるので、安価な依頼だったのだ。それでも、水魔法使いが招集されて、毎日水を作り出していたそうだ。


 光魔法使いは、汚染されていた湖の水を浄化していた。その水は主に洗濯や食器の洗浄に使われていたらしい。

 それなら、直接洗濯物を浄化したほうが早いということなんだけど、浄化魔法では流しきれない汚れってあるんだよね。

 除菌のソープより昔ながらの石鹸のほうが落ちる汚れがあったように。石鹸があってもさらに洗濯板も必要な時があるように。

 でも、光魔法使いはもっと大事な怪我人の治療という仕事もあるし、水属性の人より人数が少ないからね。その人たちが浄化した水を洗濯に使って流しちゃうのも勿体ないのは確か。


 サリオさんだけ駱駝に乗り、歩いているアラビカたちと話す。


 「それで、セイレンヌアイランドあたりの海から水を持ってきて、王都に水を、残った塩をもう一つの枯れている方の三日月湖に入れたら、塩湖になっちゃって」


 本来は、海水の中には塩以外のものもあってその成分もほぼ地球と同じ感じ。にがりってやつだね。それをほんのちょっと塩に混ぜて、残りのにがりは俺のアナザーワールドのなかのさらに購入したマジックバッグに入ってる。これで今度お豆腐を作ろかなって、スフィンクスと計画中。まあ、にがりが多すぎるけどね!前に父さんが炬燵の鍋パーティー用にお城のシェフに作ってもらってたのにも、海からにがりを錬金術で作ったんだよね。


 「ええ、塩の味もかなり好評で、すでに流通は王国主体で始まるそうですよ」

 「あの塩で、肉を焼いたらめちゃくちゃ美味しくてね!」

 「へえ」

 アラビカパーティーの末っ子のコナ君が教えてくれる。

 手持ちの塩もあるから今度やってみよう!


 「そして塩湖の名前も決まったようですよ」

 「なんていうんですか?サリオさん」

 「クレセントオパールですって。あの幻想的な湖に相応しい名前です」


 クロワッサンミルク。クロワッサン食べたいな。さすがに俺にはクロワッサンを作る技術は無い。ネットの動画を見たことはあって、いつかチャレンジしたいんだけどな。とにかく、美味しそうな名前!あ、そういえば冷凍パイシートがあるんだよ!それでなにかつくっちゃおうかな。クロワッサンとは違うけど手持ちで近いのはそれだ。

 「なかなか、美味しそうな名前ですね」

 「美味しそう?」

 「オパールって魔石の名前だぜ」

 「宝石じゃないんですか?」

 「宝石みたいに地中から見つかる魔石さ」

 「へえ」

 他の人や獣がいない沙漠の中をにぎやかに歩く。


 「そういえば話変わるんだけど、サリオさん。魔石と言えば最近俺、龍玉を手に入れてさ、これってどの位価値があるの?」

 そう言って、さっき貰ったミグマーリの脱皮した鱗がたくさん入っている袋の中の玉を、アイテムボックス越しに出す。

 ジャーン

 まるで新しく買ってもらったサッカーボールを自慢するみたいにね。


 「こ、これは・・・!」

 サリオさんがびっくりしてる。ですよね。

 「これは。五百年に一度出る出ないかと言われる幻のアイテムですよ。これがあれば魔道フェリーが空を飛べるとドワーフの国で聞きかじったことがあります。飛ぶための色々を付け足す必要があるそうですが」

 サリオさんの情報は正確だな!彼女も五百年ぶりの脱皮だと言ってたもんね。

 「へえ!それが実現すれば流通とか劇的に変わりますね!」

 「ですよ!」

 やっぱり、はやくドワーフの国に行きたいな。


 しばらく行くと、緑のミグマーリが作った短いヤシの木の林が見えてきた。

 「え?あれ。木がいっぱいありますね」

 「それね、さっき俺が白龍のミグマーリと魔法で作っちゃって。だから、早く維持するためにこの河の水の嵩をあげなくちゃって思ってるんだけどね。とりあえず、河沿いの砂漠はそこで終わりですよ。沙漠が無くなれば、Aランクのあの砂の魔物は出ないんですよね?」

 「凄いな」

 「このずっと行った先に三日月湖より何倍も大きな満月湖が復活していて、そこの砦も復活させようと、ロードランダのリーニング領のカルピンさん達が現場事務所にいらっしゃいます」

 

 俺は出来たばかりの林に、こっそり水をやりながら東へ進む。水だけではすぐに枯れるかもしれないから、聖属性魔法を少し混ぜながら。


 ああ、地下水脈も枯れているんだな。歩きながら理解する。ミグマーリのスキルを得たからわかる事実。この水脈がきっと王都のガオケレナの子のバウまでつながるんだろう。もう少し河の水が安定すれば浸み込んでいくのかな。まずは魔素だけでも。


 「この河えっとミルクブールバード河の南のほうには、まだ少し日干し煉瓦の集落があって、そこの家を雨に耐えられる住宅に変えてほしいと思っているんです」

 「ほうほう」

 「そうすれば、雨が振っても安心ですよね」

 「なるほど」

 「日干し煉瓦は、耐水性じゃないもんね」

 「そうなんですよ」

 「っていうか雨なんて・・・降らせるものなのか」

 「・・・一応・・・」

 キリのあきれた雰囲気の視線を感じながら歩く。


 「でも、それには、先に街道なんですよね」

 「そうですな」


 「でも、人海戦術でやればもっと早くなるんじゃね?」

 キリがいうけど、

 「予算に限りがあるでしょ?まだ何も生み出してないこの領地には金銭的な蓄えが無いから依頼が出せないからさ。それでも今は細々と作物を作れるようにしたり、砂漠の砂を利用したものと考えたりしたから、誰かが入植すれば何とかなるとは思うんだけどね」

 「ほうほう、じゃあこの先にできたって噂の湖の周りに人が定着すれば、街道はまた後でもいいですなぁ」

 「そうです」

 「でも、前と違って細くても水が流れているから、まだましだろう」

 「そうだな、砂の魔物もさっきはいきなり出てきたけど、そこまで出なかったんですよ」

 「僕たちも色々と水を出す道具を用意していたんだよ」

 「そうなんだ」

 

 さすが、魔法の世界。


 「サリオさんそろそろちょっと駱駝を休ませましょう」

 キリが冒険者用の身分証で時間を見て声をかける。

 「そうですな」


 林が途切れて草地になったのが見える。

 「風景が変わったわ」

 「ここまでは別の魔法で草地になっちゃって」

 「これもシュンスケ君の仕業?」

 「仕業って・・・ミグマーリが飛んだんだよ」

 「そういえばさっきスナギツネをやっつけてくれてたわね」

 「そうそう」


 アイテムボックスから屋外用のベンチとテーブルを出す。

 いつも学園の温室で出し入れしていたやつ。今じゃ三セット置きっぱなしになっているけどね。今日はパラソルつき。

 そして練乳と蜂蜜をかけたかき氷をふるまう。


 「それにしても暑いな。シュンスケのかき氷が格別にうまいぜ」

 「林の中は涼しかったわね」

 「この地域で木陰はありがたかったよね」

 「そうでしたね」

 「もちろんこのパラソルもありがたいけどな」

 街道代わりに並木を先に作るのもいいかもしれないな。


 サリオさんとアラビカパーティーの会話にそう思う。

 でも並木を作っちゃったら定期的に水やりが必要だ。まだ、この地域は。

 俺の魔法でできる緑化には少し土も生まれる。土魔法も混ざってるんだよね。でも、根っこの周りだけの薄っぺらい土の層だ。だから保水力が少ないんだ。

 それには、新しいスキルで雨を降らせたいんだけど。どうせなら人が住んでいるところにも水を出したいよね。それには先に日干し煉瓦の家を何とかするべきだ。


 「でも河が流れているから、ちょっと風があるわよ」

 「河からのそよ風がなければきついだろうな」

 「砂漠の太陽に熱せられた砂が混じった風はもう最悪なんだよ」

 風で飛んできた砂なんて素肌にあたるだけで嫌なのに、熱い砂とかそれだけで攻撃力ありそうだ・・・。 だから砂の魔物はランクが高いんだよね。


 「サリオさん。前にお会いしたときはリーニング領の木の家の材料を積んでたと思うんですけど、石で出来た家の材料などもあるんですか?」

 「うーむ、石の家はあまり見かけませんな。石材というのは昔は大陸の南のほうにあったらしいですが、流通していないです。木材より流通していないと思いますよ。土魔法で立ち上げて表面を薄い石で貼ってる感じです」

 「なるほど」

 それは雨には耐えられても地震は・・・この地域に地震はないのか。まだこの地域に来て丸二年半だけど地震に会ったことは無いなぁ。そりゃそうか。そこを気にするのは日本で生まれ育った俺ならではかな。

 でも、将来に備えて耐震性は欲しいよな。カルピンさんに相談してみようかな。


 ガスマニアの帝都の海の家も石造りの家だと思ってたけど、表面の石の下は木

だったんだよね。まああの家も元はカルピンさんの設計だそうだからね。


 だけど、この乾いた地域にはやはり石材のほうがいいのではないだろうか。

 でも、石材って、あったとしても有限だもんな。トルネキの王宮の庭園に敷き詰められていた大理石のような石は何処から来たんだろう・・・

 また満月湖で、ドワンゴさん達に相談すればいいか。もう考えてくれているかもしれないしな。


 “おうじ、さばくのたびをたのしむつもりなんだろうけど”

 「うん。あ、火の精霊の赤色くん」

 今日も、ガスマニアの皇族より鮮やかな赤い髪と赤い目。赤いオーバーオールの男の子が俺の膝から腕を組んで見上げる。

 “いんてるたちどわーふきょうだいが、おうじをよんでるぜ”

 「はーい」


 俺は駱駝たちに回復魔法を掛けて、サリオさん達に声をかける。


 「すみません、俺、ドワーフ三兄弟に呼ばれてて、すぐに満月湖に戻らなくちゃいけないんです」

 「あの、うわさの満月湖(ボールモンド)ですな」

 「ええ、この河の上流の」

 「僕たちの目的地もそこなんだけど」


 満月湖の護岸工事には沢山の冒険者が来ていたけど、そのあとは皆引き上げた。ウリアゴも。そして、満月湖の完成式典には一般の人は来てなかったからなぁ。ほとんど俺が空間魔法で連れて来たから。あ、父さんは自分で来たけどね。

 街道が出来るまでは危険だから積極的に公開する予定は無かったって、トルネキ王家も言ってたんだけど、しょうがないよね。


 「お連れしましょうね。あちらの湖の周辺はもう砂漠は少ないから安全です」

 このままじゃまだ不安だしね。

 「そうなんですか?」

 「はい、大地の女神と水の女神の恵みが届いております。では、皆さん、駱駝に乗ってください」

 「わかりました」

 駱駝六頭のうちの四頭に皆が乗る。駱駝たちはもともとロープでつながっている。


 「じゃあ行きますよ〈転移〉」

 普通は詠唱しないんだけど、ここはあえてね。


 そして、現場事務所にしている建物に皆を飛ばす。


 目の前には、まだ汚れていなくて水の女神の魔法陣がはっきり(とは言え大きいから手前しか見えてないけど)見えている湖に虹色の淡水魚(塩焼きが美味いやつ)が少し群れになって泳ぐ。この魚たちのための水草はちょこちょこ生え始めているよ。そして、この周辺では唯一寝泊まりのできる建物〈現場事務所〉

 並びに建築中の住宅三つ。並んでいる建物の外側に、将来街道に繋がる予定の石畳の道。馬車が一車線で行き来出来て両側に歩道付きの立派な幹線道路だ。石を持ってくるのが大変なので砂大理石(シュバイツマーブル)舗装しています。

 湖底にあった砂大理石のブロック工房は、街道の向かい側に俺が転移で移動してさらにドワーフ兄弟たちによってさらに大きな建物になっている。


 「おう、シュンスケ!丁度良かった」

 「ドワンゴさん」

 「「「ドワンゴさん!」」」

 「あれ、商売人のサリオとアラビカパーティーも一緒かい」

 「そう!砂漠から来ててさ、スナギツネにやられるところだったんだ」

 「まだ、砂漠越えは危険だぜぇ」

 「ですよね」


 「しかし、早く見に来たかったのです。本当に素晴らしいですね」

 「じゃろ!わしは今ほとんどこっちにいてて、カルピンが時々来ている状態だ」

 「そうなんですね」


 「え?時々来るって、リーニング領からどうやって」

 「「「あ」」」

 「ああ、シュンスケ様のさっきの瞬間移動?伝説の空間魔法・・・にしてはリーニング領からここって直線にしたっていくつ国を超えているんですか!」

 「サリオさん、そもそもあのだだっ広いアナザーワールドでさえ規格外なんだせ、考えるだけ無駄さ」

 「そう言えばそうでした」

 「ははは」

 こっちは瞬間移動じゃなくてユグドラシルのドアなんだよね。だから俺が居なくても自由に行き来できる。


 「コホン。そんな事よりシュンスケ、あれが作れるようになったぜ」

 「本当ですか!」

 「早く来いよ」

 「わかりました。その前にサリオさん達はそこの現場事務所にしている建物へ」

 「これはどこかで見たような・・・・でもこちらの方が美しい石材で貼っているんですね」

 「ははは、俺のアナザーワールドの建物と同じ間取なんですよ。外壁は砂大理石にしたんですけどね」


 現場事務所の中では一人侍女が派遣されている。俺の方からはスフィンクスが一人長期出張中だ。

 「まだ、宿の建築は考えていないらしいんですけどね、とりあえず荷物を置いて、そうですね、お風呂どうですか?」

 「有難うございます」

 「こんな、砂漠の中でお風呂なんて贅沢ー。テント暮らしを覚悟してたからね。

 シュンスケ、アナザーワールドのお屋敷と同じで女子は三階にしているの?」

 「そうですよ」

 「じゃあ、あたしは三階に行ってくる」

 「どうぞこちらへ」

 侍女さんの案内で、アラビカパーティーのモカさんが上がっていった。

  

 「それよりシュンスケこっち」

 「はいはい」


 子供が大型スーパーの売り場でほしいものへ親をひっぱっていくように、ドワーフに手をひっぱられる。ドワーフは六才児サイズの俺と身長はほぼ同じだが、幅が違うので力がすごい。そのまま、砂大理石(シュバイツマーブル)工房へ。

 そこにあったのは、


 「これ!できたんですか!」

 砂大理石(シュバイツマーブル)で出来た、大きなブロック!。標準的なブロックは、上から見たら五十センチと二十五センチの長方形。高さは三十五センチある。そして上に突起が八つ。底にはその突起が刺さるくぼみ。

 今までは木材で形成されていたブロックがとうとう石材として完成していたのだ!ちょうど相談したいと思っていたのに、ドワーフに先を越されたよ!さすがだ!


 足元には、材料を流し込む素焼きの型が沢山転がっていた!メインの基本のブロックはもちろん、上から見たら真四角の半分サイズの突起が四つのブロックと、さらにそれが半分になった細長い突起が二つのブロック。玩具でもこの三種類が基本だよね。


 「ということは、木造と同じプランで組み立てられるんですか!」

 「ああ、今のところ外壁だけにして、天井や床、屋根は木材を持ってこようと思っとる。あとは断熱に何が良いのかわからねえから、魔法付与でやろうかと。現場事務所と同じ」

 「そうですね。隙間を開けて二枚重ねにして間を真空にするといいですよお」

 立ち上げてから、熱で溶解接着していけば隙間が無くなると思うんだよね。木と違ってさ。魔法瓶効果だよね。

 「お、その手もあるか」

 「はい」


 「丁度サリオ達も来とるから、これの戸建てセットを作って運んで、日干し煉瓦の住宅を建て替えていくようにと段取りして、間に王族を誰か挟むのにシュンスケに頼みたいんだけどな」


 「分かった任せて!」

 もともとそういう話だったもんね。

 「さすがシュンスケ。いやシュバイツ殿下」

 「やめてくださいよキリ」

 「ははは」


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