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171【スキル・ミグマーリ】

四章が始まりました。宜しくお願いします。

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 トルネキ王国の東の国境、満月湖(ボールモンド)に白龍のミグマーリと来ている。


 王国の文官や、ロードランダの売れっ子設計士でエルフのカルピンさん、カルピン木材店に在籍しているドワーフとその兄弟が、湖岸の工事事務所に詰めて、砦の設計に取り掛かっている。とはいってもカルピンさんは人気の建築士なので、もともとの予定も詰まっているから、週の前半はロードランダで仕事をして、後半は俺が連れてここで設計をしている。


 俺が設置した転移ドアでパッとやってきているとはいえ、北欧とアフリカほど気候が違うので、体に負担がかからないのか恐ろしく思うが、そこは寿命が長いエルフやドワーフならではのタフな部分が幸いしていた。


 さて、朝はまだカルピンさん達もいないし、以前からミグマーリに言われていた、俺のスキルに取り込むってやつのために湖の真ん中にいる。

 トルネキの王都の三日月湖では透けたりしていても、首都ですから、中には精霊のミグマーリが見れちゃう人がいるのでは?ということで、ここに来た。

 まだ、工事関係者以外は来てないからね。


 ミグマーリは真っ白な龍だ。ドラゴンというより東洋風のスリムで長ーいスタイルの龍で、女性?だけど、角と鬚がある。鬚は無し。手足は四つ、指は五本ずつ。


 『張り切って来たんだけど、ちょっと待ってくれない?』

「いいよ?どうしたの?また具合悪いの?」

 三日月湖の底で、呪われた大量の蔓植物に二百年以上の長い間閉じ込められていて、先日までムーさんに連れられいて、衰弱していたのを、シュバイツ湖で療養していたんだけど、戻ってくるの早かったのかな?なんかもじもじしてるようにも見える。


 『ちがうわ、恥ずかしいんだけど、脱皮しそう・・・。痒くて』

「うわ、ミグマーリも脱皮するの?」

 『私もって?ほかに脱皮ってする知り合いでもいるの?』

「海竜のモササも脱皮した時の鱗を俺にくれてさぁ~。大変ありがたいんだけどね」

 『あら?モササ?、ムーに聞いたことあるけど会ったことは無いのよね』

「そうなんだ、彼女は海中の竜だし、飛ばないけどね。マーメイドの姫とか友達がいるんだよ。ミグマーリも海中が平気だったら紹介したいな」

 『そうねぇ、シュンスケのスキルになったら海中も行けそうな気がするんだけど、塩水が苦手なのよ』

「そっか、そうだよね」

 『でも、友達は欲しいわ』

「じゃあ、今度紹介するね」

 『ええ、楽しみ。

 シュンスケ、じゃあ私の鱗ももらってよ』

「いいの?」

 『ええ、魔法の袋あるかしら』

「あるよ、はい」

 だけど、ミグマーリはモササより結構大きいと言うより長いよ!どうするのかな~

 『五百年ぶりの脱皮だからすんなりいくか分からないけど、ちょっと待ってね』


 そっか、精霊の龍の脱皮は五百年おきなんだ。


 満月湖の真ん中でミグマーリが自分自身でぐるぐると絡まりだした。ハロルドみたいにうっすらと光りながら。

 渡した魔法の袋がその上に浮いている。


 暫くすると彼女の周りに大きなラメが光り出した。俺やキュアが出す聖属性魔法と違って、もう少し物理的な光る物質だ・・・というよりあれが鱗だ!それが彼女の周りできらきらと光りながら漂っていたと思うと突然消えた。


「え?もう?」

 『ふう・・・終わったわ』


 一皮むけた?精霊でもある龍は、さらに真っ白に輝いていた。

 俺はブラシを出して、彼女の鬣をブラッシングしてスタイリング。でっかいから、俺は翅を出してパタパタ飛びながらつるつるサラサラした鬣の感触を楽しみながらブラッシング。

 ハロルド用のブラシでごめんね。


 『ふふふ、気持ちいいわね』

 『でしょ!僕もブラッシングしてもらうんだよ~』

 『あら、いいわねハロルド』

 傍らには真っ白な羽も角も出したペガコーンの精霊も湖の空中に浮かんでる。

 『うん、王子のグルーミングは最高だよ』

「そんな褒めても何も出な・・・後でブラッシングしてやるよ」

 『やた!』『ふふふ』

「・・・よしこれぐらいかな?

 ブラッシングしたら、鬣がつやつやになったよ」

 『ありがと。じゃあお礼にこれを』

 と言って右手の親指の爪の先っちょに引っかかってぶら下がっている魔法の袋。

「ありがとう」

 『ねえ王子、ミグマーリの鱗って僕の鞍に出来るんじゃない?』

「そう言えばそうだ!今度早速、トルネキ王都の馬具屋さんのドワーフに頼みにいかなくちゃ!それかグローブ先生」

 ハロルドが装着したまま俺に出入りできる素材は、精霊からの素材。だから手綱は俺の髪の毛とハロルド自身の尻尾の毛と、ハロルドの角で出来ている。

 鞍もそういう素材ならと、ハロルドをスキルに取り込んだ時に水の女神様に言われていたのだ。

 もちろん必要じゃないときは外しているんだけど、いざという時のためにね。

 今はハロルドのふわっふわの鬣でブラッシングしたときに抜けたのを大事に取っておいて。これはまるで糸になる前の羊毛とか綿の実のようだから糸に出来ると言われている。糸に出来るなら布になるでしょ?そうしたら新しいゼッケンにしてもらうんだ。


 『やったー良かったね』

「うん!」


 手元にきた袋の中に手を突っ込んで一枚出してみる。

「ふわわおっきくてきれい」

 モササの鱗は、竹ひごの団扇位の大きさで鏡面仕上げの車のボンネットみたいなつるつるなんだけど、ミグマーリの鱗は一回り大きい。体の大きさも一回り大きいんだけどね。それが虹色のパールの様にマットな感じで光っている。


 これでレジンの魔法で鞍が作れるかな~。


 あれ?それとは別にでっかい真ん丸の玉がたくさん入ってる。


「ミグマーリこの丸い綺麗な玉は?」

 『それは龍玉って言われているわ。精霊や妖精を保護したりするときも使えるらしいの。あたしの魔力の塊みたいなものね。魔石みたいなものよ』

 ふむふむ。

 ひとつ出してみる。これも、真珠のような真っ白な輝きの綺麗な玉。でもサッカーボールぐらいあるな、大きいぜ。中はミグマーリの澄んだ魔力がたっぷり凝縮されている。

 あれ?そういえば俺、魔石に入った赤いドラゴン持ってたな。

 今はアナザールームに入れているんだけど。そこも俺の魔力を感じるからいいみたい。


 『それより、私は落ち着いたからお願いしてもいいかしら』

 そうだった、俺の新しいスキル〈ミグマーリ〉だ。


「いくよ」

 パタパタ飛んで、ミグマーリの珊瑚のような鹿のような左側の角にキスを。


 すると、またあたりが光ったと思ったら目の前から彼女が消えていた・・・。

 でもね、うん、俺の中にいるよ。


 しばらく目をつぶって新しいスキルを確認する。


 ミグマーリのスキルは、もちろんハロルドみたいに彼女自身が俺から出入りできるんだけど、あとは圧倒的にすごい水の魔法が使えるみたい。

 これは、トルネキからさらに東の砂漠を潤すのにいいかもしれない。でも凄すぎる水の魔法って災害の元になりかねないから、どこかで練習しなきゃね。


 “あら王子、変換って何かしら?”

 俺の中に入ったミグマーリにも新しいスキルが生まれたみたい。


「それってたぶん水属性寄りだった君が他にもなれるって事かも。俺は全属性だからね」あとは俺自身が龍になった時はそのまま全属性が使えるようだね。


 “まあ、一つ試しに何か変換したいわね”

「んじゃ、土属性いってみようか」

 “ええ”


 俺が土属性のミグマーリをイメージして出てきてもらう。


 すると目の前には、緑色の龍が出現した。

「うわぁ、白色もいいけど、緑色も似合うな」

 『まあ、本当緑色』

 満月湖の水面に映った自分の姿を見る緑色の龍。

 パステルカラーの緑色に、鬣は俺と同じ緑銀色。瞳も俺の目と同じだ。

 『王子の色と同じね』

「そうだな、面白い」

 “みどりいろとおなじ~”

 確かに緑色ちゃんとも同じ組み合わせ。緑色ちゃんの服も今のミグマーリの鱗の色だもんな。


 俺は緑色になったミグマーリの角の間に座って、満月湖からトルネキの王都に向かって伸びている河に沿って一緒に飛んでもらう。


 満月湖の周りはすっかり緑化が進んで、綿や葡萄、蕎麦など、水が少なめでも収穫できる作物の畑が広がっている。とはいえ、トルネキなどの人々はまだ入植していないので、お世話しているのは、俺の従魔らしい十人のゴブリンと、あの、カウバンドでとらえた三角帽子の妖精君たちにお願いしている。妖精たちは生えかけた雑草を取ったり、虫の駆除を頼んだりしている。


 土属性に変換したミグマーリは、今は透けている状態で空を飛んでいる。透けているということは、精霊魔法に長けた人しか見えないかもしれない。透けているミグマーリにくっついていると俺も透けているのが分かる。


「すごい」

 『どうしたの王子?』

「ちょっと通ってきた後方の下を見て」

 『え?あ、まあっ』

「今、魔力を出した?」

 『飛ぶための魔力はちょっと使ったけど、下に降りかかるほどではないと思うのよ』

「だよね」


 満月湖から離れると河の水は少しは流れるようになったけどまだまだ河岸は砂漠だ。それが、いつもは頑張って聖属性魔法を振りかけないと、緑の再生が始まらないのに、いまはなんかゆっくりだけど、河沿いに草が生えだしている。


 ミグマーリのスキルは俺の魔法の力強いブーストなのかもしれない。

「んじゃ次は聖属性に変換してみよう」

 『出来るかしら』

「俺のイメージしだいだからね」


 すると、淡い白に近い桜色で先日二人に増えた、でもまだたった二人しかいない精霊のキュアちゃんみたいなチラチラとラメの入った鱗の奇麗でちょっと派手なミグマーリになった。

 そして、飛んだままの変換だったから、林の様に木が何本も生え始めた。ヤシの木っぽい、南国の木だ。


「うわ、ストップだ」

 『どうして?』

「あそこに人が・・・あ、やばい」

 視線の先にはいくつか連なって、駱駝とそれに乗った人たちがいた。


 俺とその駱駝たちの間の砂地がうねりだした。

「ミグマーリ、いつもの白いのに戻るよ」

 『分かったわ』

 精霊ちゃん達の色と合わせると白なら光属性なんだけど、彼女の場合は本来の水属性だ。


 うねった砂から、スナギツネが三体ぬぅっと立ち上がってくる。

 『水のブレスかしら』

「頼んだ!」

 ミグマーリが口を開けて、スナギツネに狙いを定める。僕たちはまだ透けているから、相手には認識されていないけど、その向こうの駱駝に乗った人達には知らせる必要がある。

「ハロルド頼む。駱駝を止めて」

 『うん!あの人たちは僕お話したことあるもんね』

「だろ」

 『おーい』


 まだ、精霊ちゃん達を単独で認識したことのない人たちだったから、ハロルドに伝言をお願いする。それに、彼なら風魔法でガードもできるからね。


 “はろるどが、らくだとまったって”

 『「了解」よ』


 そこからはミグマーリの独壇場だった。

 ブワァ―ッ ジャーッ

 龍の口から出る水流は、消防士もびっくりかもしれない。

 まあ、俺だってこれぐらいは出来るけど、せっかくスキルになったんだからそっちにしてもらうのが良いよね。


 たったの十秒ほどで、象の三杯はありそうなスナギツネが三頭とも、濡れたただの砂の塊に代わる。

 『終わったわ』

「ご苦労さん、じゃあ三日月湖で待ってて」

 ミグマーリは、あそこの守護精霊でもあるんだから、俺が連れまわしてばっかりもだめだよね。一応、どこに居ても呼べるようになったけどね。


 『わかったわ。気を付けてね』

「うん!ありがとう」

 龍がゆっくりと消える。


 そうして俺はラクダの列の前に飛んで行った。

 翅は残して黒目黒髪状態で。

 沙漠の砂は照り返しもきついから、白っぽい精霊ちゃん状態は眩しすぎるんだよね。


「おーいサリオさん!」

「ああ、シュバイツ殿下!お久しぶりです!」

「そんなに久しぶりだっけ?」

「二か月ぶりぐらいかな」

「アラビカの皆も元気そうですね」

「ええ、シュンスケも相変わらずかわいいわ」

 シェパード系犬人族の三人パーティーのアラビカ達の紅一点のモカさんが頭をポンポンしてくる。

「そんなこと言って、こう見えて俺、アヌビリと同じ歳なんですよ」というか一個上。

「え?うそ!」

「成長に三倍かかるんです!そういう種族で」

「そっか、お父さんがハイエルフですもんね」

「はい」

「船に乗る前に、シュンスケの大人の姿見たじゃねえか」

「そうだよ、僕より背が高くてショックだったのに」

「あ、あのかっこいいエルフね!そういえばそうだった!あまりにも違うからぁ、ぴんと来ないわ」

「酷いよモカさん」

「「「ははははは」」」


「ところで、アラビカの三人は揃っているけど、サリオさんは?奥さんと娘さんは?」

「今回は古書街に置いてきました。馬車や馬も商業ギルドにね」

「なんと」

「なんでも、この河の上流に新しい街が出来そうだと聞いたので、どんな感じか見に行こうかと」

「え?そのためだけに来たんですか?」

「ええ。沙漠は危険ですからね。二人は置いてきたんですよ」

「でも、アラビカの三人が居ても危険ですよ!」

「そうなんだよ、初めは一人で行くって言ってたから、依頼されていなかったんだけど無理やり俺達の方がついてきたんですよ」

 リーダーのキリさんが困り顔で言ってくる。でも、あのスナギツネはAランクの魔物で、アラビカパーティーはまだCランク。荷が重いよね。でもサリオさんが心配でついてくるなんて優しい人たちだ。


 それにしてもサリオさん気が早いなー。たしかにこれからこの河沿いに人が住みだすだろうけどさ、さっきみたいにまだ砂地は魔物が出るからね。


 ここは、塩湖から馬でも丸一日はかかる距離だ。それを駱駝なんて。

 六頭の駱駝と四人の人。


 しょうがない、付いて行こうかな。


「じゃあ、俺が案内しましょう」

「本当ですか!」

「そういえば、シュンスケは河上から来たね」

「俺は空から来れるからね」

「なるほどなるほど」

「でも、もうちょっと街道が復活してからの方がいいのでは」

「そんなの待ってたら、私はよぼよぼの爺さんになってしまって、来れなくなっちゃいますからね。商売は早い者勝ちの部分もありますから」

 そりゃそうだろうけど。


 サリオさんは、商売人のふりをして本物の冒険者じゃなかろうか。 


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