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170【涼しい風は季節を運んで】第三章完結

第三章完結です

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 満月湖の北側、現場事務所のさらに北側に葡萄畑を広げている。ホブゴブリン達が。

 その東側には綿の畑と蕎麦の畑を。そうやって、スマホで探した、痩せて枯れた土地でも育ちそうな作物を植えて広げている。

 葡萄はともかく、綿と蕎麦はビミョーに名前が違うけど、同じものだそうだ。

 種や苗を大地の女神様に取り寄せていただいた。


 そのうち、南側に綿の織物の生産地と、蕎麦を粉にしたりする所が出来たらいいな。

 シュバイツマーブルの生産工房は、改めて北の方に移動した。今度は、砦の建設のために稼働している。 そしてその材料のために、表面から八十メートルの砂を、工房の横で大きな砂のプールを作って、貯めている。そして、砂を掻いた跡地を少しは畑っぽくしようと、グリーンサーペントで採取して、俺のアナザーワールドでぼた山になっていた土をこちらに持ってくる。


 水は、スプリンクラーのような魔道具を考案した。水属性と風属性の魔石を取り付けた樽がくるくると水を飛ばしながら回っている。あちらこちらで。


「これはすごいですね」

 俺の隣には、リーニングで祖父母孝行から帰ってきたクリスがいる。

「そう?簡単だよ」それこそ小学生の工作並みだよね・・・空き缶とストローで作るんだよ。

「でも、これで砂漠の魔物が防げて、安心して過ごせるのでは?」

 たしかに。それまで熱砂の砂漠の暑い風しかなかったところに、水がもたらす爽やかな風が吹き始めている。どちらも風だけど、さわやかさが違う。


 ぴーひょろひょろ・・・


「あ、小鳥の声が」

「あっちに森も出来てるもんな」


 そうやって、つばのひろい麦わら帽子と、ノースリーブのシャツ、ジーパンで、フィールドワークに精を出していると、黄色ちゃんが教授の伝言を持ってきた。


 “おうじ、くりす、あさって、しんきゅうしき”


「「あ」」


 “かならず、とうこうしなさいって”


「「はーい」」


 もう三年生だな。クリスは二年生。


 今年、ガスマニアの帝国国立学園には、トルネキ王国から、ブーカ フォン カウバンドが留学(にゅうがく)してくる。猫人族のマツの姉のティキも新入生だ。


「んじゃ、今日は帰ろうか」

「はい」

 そのあいだ俺の従魔でもあるホブゴブリン達を回収しないとな。


 魔法で一度無理やり完熟させて、綿になった実が、大量にアナザーワールドの倉庫に入っている。

 これを、糸にする前の作業をしてもらおうかな。綿の花(実)って種とか(がく)と絡まっていて、これを取り除く必要があるんだって。すると、お布団に入ってるようなふわふわな綿ができる。


「おーい、今日はアナザーワールドに帰るぞー」

「「「はーい」」」

「「「分かりましたー」」」


 アナザーワールドのゴブリン達の家も豪華になっているんだ。

 だから、嫌がらずに帰る。


 ゴブリンの家は三階建てで、一階は小型地竜の部屋と、土間作業用の空間。そして、外から帰ってきて、泥を落とす風呂。


 玄関から上の階は完全に土足厳禁。二階には全く同じ大きさで向きが違う六つの部屋が南向きに並べてあって、二つずつベッドを配置。いま十人のゴブリン達には一部屋余っているが、それはもしもの時の予備だ。


 三階はゴブリンには贅沢なとウリサ兄さんによく言われている大きな浴槽で大きな窓の風呂をはじめとする水回りとダイニングキッチン。ミーティングルーム、そして図書室。




 ちょっとした寮だな。


 たしかに、贅沢かもしれないけど、自分達で組み立てて、自分達で掃除などをして維持している。

 十人のゴブリン達は一週間ずつ交代でリーダーをやって、規律正しく清潔を心がけた生活を。

 そのためには、小型地竜も利用できる露天風呂も完備。

 俺も時々みんなと入るんだけどね。


「んじゃ、当面は、収穫した綿花を掃除して、ふわふわの綿にする作業だな。ついでに取り出した種を、一部はアナザーワールドにも植えてみようか」

「「「はい!」」」


 そのあと代表で二人、帝都の海の家で糸つむぎを学んでもらう。

 指導できそうな人を探すと、セバスチャンの義娘(息子の嫁)が繊維業のお家の出身なので教えてもらうことになった。

 ついでに、商業ギルドで織機も取り寄せ中。機織りも教えてもらえたらいいよね。


 ゴブリンは暇になると繁殖するらしいからな。繁殖を抑える薬も飲ませているけどさ。


 さて、満月湖(ボールモンド)も水が満たされたし、ミルクブールバード河もまだお試し水流だが、グリーンサーペント河に到達した。

 合流するところの街では大騒ぎだったみたい。

 不思議なのは、たしかに砂地だし、まだ水草などは無いから、白っぽい川が途端にくっきりと緑色に代わる。河の名前の境目が見た通りなんだ。面白いよね。そのうち、水草や藻が増えたら混ざるかな。


 仮の街道も、水気のある河沿いに沿って海の方から造成中だ。それが、満月湖まで届けば、いよいよ街づくりらしい。


 俺は、そういう一連の事柄を分厚いレポートにして、三年生の初日に臨む。

 午前中は、入学式だったから。昼からね。


 ブーカは、帝都に留学している学生のための、トルネキ王国が管理している建物があって、そこに下宿。

 残念ながらティキが妹のマツから離れたくないので、彼女は海の屋敷だ。


 まだ、夏の日差しが残るけど、式典はきっちり学生服を着こんで臨む。

「久しぶりに着ると暑苦しいな」

「シュンスケさんはずっと袖なしのシャツだったからなおさらでしょう」

「まあな」

 しかし、変身したり戻ったりしているからか。日焼けをしていない。

 俺のメラニン色素はどうなってるんだ。アリサに文句言われる。

「あたしはすぐに日焼けしちゃうのにー!」

 でも、この夏も、帽子に長袖日焼け止め、ビタミン接種と、対策していたから、初対面の時よりは、白くなってますよ。

 クリスは、リーニング領に避暑していたけど、ちょっとは焼けて健康的だ。


「おうじのせいふくひさしぶり!

 あさもねえ、おねえちゃんがおそろいだった。にあっててかっこよかったんだ!」

 マツがはしゃいでいる。


 ティキはブーカと同じ普通科に進学している。まだ将来何がしたいか分からないからだそうだ。

 それが普通だと思うよ。


 パカパカパカパカ・・・

 馬車の音か聞こえてきた。


「あ!おねえちゃんが、かえってきた!おかえりなさーい」

「お帰りティキ」

「おかえりなさい」

「ただいまー」

 猫耳娘同士の抱擁は尊いぜ。


「ただいまもどりました」

 父兄の代わりに入学式に出てくれたのはセバスチャンだった。

「おかえり、セバスチャンもお疲れさまです」

「なんのなんの、入学式なんて、息子以来ですよ。あまり変わってなくて、安心しました」

 もちろん、セバスチャンもOBだ。

「シュンスケ様が、昼ご飯を作ってくださいましたよ」

 メイドのミアがそう言いながら、ティキの部屋について上がった。


「おや、シュンスケ様、ありがとうございます」

「俺も料理が好きだからね」

「今日の昼ごはんは焼きそばだよ」

「ゴダにオクトパスヌーをもらったから、それを入れたんだ。われながら旨いよ」

「それは楽しみです」


 お嬢様のティキは明日から、クリスと馬車通学だ。

 でも今日は、もちろんハロルドで行くよ。


 すでに、馬小屋の前に出ていてもらっている。今日は、ゼッケンだけにした。仕舞いやすいようにね。

 そして、角も羽もない美しい白馬状態だ。


 『満月湖より涼しいねぇ』

「そうだな。もう秋になるかもしれないしな」

 『そうだね』

「空高いと涼しいけどな」

 『うん。でも今日は久しぶりに道を歩くんだね』

「たのむな」


 『君も一緒に行くんだね』

 『そうなの?がんばる』

 ウリサが護衛でお供をしてくれる。馬で。

 形が大事なんだって。


 アリサは今日はお花屋さんでバイト。

 オーナーのロベリアさんが別の街の孤児院長になっちゃったから、冒険者の依頼を受ける時以外は、こちらに通っている。

 危険を伴う冒険者より良いよね。

 って思ってたら居た!


「あ、シュンスケー」

「アリサねえちゃん」

 お花屋に囲まれているアリサねえちゃん素敵ですよ。


「おう、シュンスケ様じゃねえか」

 隣の果物屋さんが声をかけてきた。

「こんにちわ」


「ハロルド様よ」

「ほんと可愛いわ」

 『やあ!おねえさんたち!』

「きゃあ、ハロルド様が挨拶してくれたわ」

 歩道から女性たちが手を振っている。

 ハロルドも何処でも人気!


 『王子、カーリンだ』

 前を馬車が一台進んでいる。

「ほんとうだ、あれはラーズベルトの紋章だ」


 以前、ラーズベルト家の帝都に居た、犯罪者でもあったカーリンの叔父が、遠く離れた孤島に飛ばされると、丁寧に解体され。地下にあったワイン貯蔵庫もリフォームされ、今の貴族たちの趣味に合った、屋敷に建て直されていた。

 まあ、設計はカルピン木材店らしいけどね。


 それで、学生寮を引き払い、皇太子の従者で従妹のダンテと暮し、そこから馬車通学するようになった。

 馭者は、カーリンが所属する冒険者パーティーのフィストアタッカーのリーダーで従者のヘルターだ。


 ハロルドは俺と精神的にも繋がっているので、お願いせずとも馬車の横に付けに行く。


「やあ!カーリン」

「まあ、シュンスケ。それにクリスも!

 ハロルド様もこんにちわ」

 『こんにちわカーリン。夏はラーズベルトに行ってたの?』

「ええ、あちらの方が涼しいから」

 『そうだね。僕たちもちょっとだけラーズベルトのお城に行ったんだけどね。湖の近くは涼しいよね』

「ええ」


 カーリンの馬車の窓越しに俺より先に、休み明けの会話をしている・・・。


 今年度の俺は、満月湖の砦の再建築を見守りながら、さらに北東の世界樹を目指す予定。

 今日、学校に行ってその間のカリキュラムの段取りを。


 四日ほど前のこと、アヌビリは、演目が決まったロムドム団と合流して、別のルートへ出発した。

「お前を放置するのは怖いが・・・ロムドム団も移動するなら付いて行かないと、絡まれる奴が居るからな」

 きっと、カランさんとビャオさんとかだろうな・・・。


「まあ、何かあったら、精霊に頼んで連絡する」

「わかった」

「殿下、またいつか女優をしてください!」

「座長!ロムドム団の看板女優はタレンティーナさんでしょ!」

「いいのよ!シュンスケちゃんの歌をまた聞きたいわ」

 優しくて心も美しい魔女のタレンティーナさん。


「機会があったらね」


 ひとまずの別れを告げて、俺は新しい年度を迎える。


ここまで読んでいただいて~お疲れさまでした!

お話はまだまだ続きます!


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お星さまありがとうございます。

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