168【満月湖の再生 3】
いつもお読みいただきありがとうございます!
このページでゆっくりしていってください~♪
遡って、163【二千夜一夜物語・下巻】に地図を入れてみました!
良かったら見てください~
満月湖の工事事務所が目的の建物が完成した。
俺はもちろん!カルピンさんもお気に入りの、畳の部屋もちゃんと作った。
寒い時にここで鍋パーティをするのも楽しいけど、夏はここでゴロゴロするのがいいんだよね!
他にもセイレンヌアイランドのオフ島のギルド長の店でリゾートっぽい調度品や簾などの日よけも購入。
そして、屋根は赤いテラコッタふうの瓦葺。これもオフ島でお求めいたしました。
暑い国には暑い国の素材がいいらしいからね。サンゴ礁的な地域と沙漠は違うかもしれないけど、こっちももうすぐ湿度が上がるから!
そして、事務所の近くの湖の底には、護岸工事のための砂大理石のブロックを作る工房が、ドワーフ三兄弟によって作られている。まるで溶鉱炉のようなイメージだ。
地獄の閻魔様もびっくりの大きな窯がぶら下がるように取り付けられていて、その下にはには、児童公園の滑り台にあったような、ローラーが並べられたレールの上に、様々な形の大きな型がスタンバっている。
「じゃから、ここで砂を高温で溶かして。この型にどんどん流し込んで、表面を冷ますのは風ではなくて火魔法の逆発動でやるんじゃ」
「ふむふむ」
型で作るのは、ロの字型のブロック。これをまた土木のプロのドワーフをドワーフの国から呼んでいるから、その人の指導の下、護岸を整える。
「鉄筋コンクリートは?」
「なんでも、このブロックに、シュバイツ殿下の魔力をこめておけば、魔法でがっちりできるそうだ」
「へえ」
「俺の魔法は何処でこめるんだ?」
「もちろん炉の中で、殿下が火魔法で溶かせばいいんじゃ」
うっ・・・
「ということはあれですか?高さ百五十メートル、長さ三百キロ以上の岸を固める素材は俺が作ると」
「そういう事じゃ」
えー、幾ら俺の魔力が無尽蔵にあるってばれてても、酷くない?
「儂ら普通の者の魔力じゃ何十年もかかりかかりそうじゃからの」
「ああ、緑化なんて何時になることやら」
・・・そうだね。言い出しっぺが頑張るよ。
「わかった」
“みんなも助けてね~”
“しょうがないわねぇ”
“おれは、どんなみずうみになるのか、たのしみだから、てつだう”
ありがとう赤色くん・
“もちろん、おうじとがんばる!”
“がんばろな”
“おう!”
“うん♪”
ブロックの工房がなぜ湖の底にあるかというと、集めた砂を持ち上げるのよりは、落とす方が楽だからだ。
ブロック工房の底は巨大なソリのようになっていて、魔法陣を描いた湖の底に置かれている。
つまり、湖底の工事の時は動かせるようになっているのだ。
護岸の外側には十人のホブゴブリンが作業着と帽子を被り、安全靴を履いて固まって動いている。
アナザーワールドで繁殖を抑えて、作業をさせていると、人数は増えずに進化を遂げた。
初めは六才児の俺と同じサイズだったのに、今では百七十近く身長がある。
そんな奴が十人もいたら、戦力にするよネ。
二人が取っ手の所に青いぽっちを仕込んだ、永遠に水が出てくる如雨露をもって、砂漠の魔物予防に水を撒いて、その後ろから残りの八人が野球のグランドを整備するときに使うトンボのような道具で砂をかき集めてきては、ブロック工房のそばに持ってきている。
その向こうには、地竜も全部連れてきて、同じような作業をさせている。
いつもと違うことをするのが楽しいみたい。プウとポウも機嫌よく作業をしてくれている。グリーンサーペント河で保護したやつらもいるよ。
皆俺がテイムしてるわけだけど、大きいから、作業を手伝いに来た冒険者やドワーフたちと事故らないように、地竜やホブゴブリン達は精霊ちゃん達と組んでもらっている。
そして、その大量のスタッフを指揮するのはもちろん。
『ほほほ!、砂をもってくるのはこっちですよ!』
蜜蜂とクインビー達。
彼女たちが滞在しやすいように、大急ぎで、事務所の周りにグリーンサーペント河で採ってきた土を敷き、低木を移植し。魔法で広大な花畑をつくって、巣箱を設置した。
そこら辺だけ、砂漠ではない風景だ。
「よし、シュバイツ殿下、砂が溜まったぜ」
窯の上に設置している台からドワンゴさんが叫ぶ。
「わかりました。赤色くんと黄色ちゃんも頑張ろう」
“おう!”
“おー”
俺も魔力を使いやすいように変身を外して集中だ。
窯の中は、より熱が出るようにと、摩擦熱も期待してぐるぐると混ぜながら過熱を開始。
そのうえで、俺は窯の上に第五のアイテムボックスを発動!
何を入れるかというと、窯の上に無駄に発生している、熱エネルギーをそこに入れていくことができたんだよ!熱エネルギーボックス!この世界は魔法が主体だからさ、電気は不要だけどさ。熱エネルギーがこんなに発生するなら、タービンを回して発電にって地球育ちなら思っちゃうよね。いつか、何かに利用できるかもしれないから、もったいないから、収納出来るならする。
「シュバイツ殿下、お前さんの火魔法は効率がいいのか?作業中も熱くなくていいな」
ほら、いいよね。
「熱は有効活用するんだよ」
「どうやって?」
「たとえば、風呂を沸かしたり、料理をしたり、あとは雲を作って雨を降らせたりね」
第五のアイテムボックスがどうなってるか、覗くことはできないけど、イメージとしては小さい太陽を裏返して持ってるみたいな・・・・。
ある種出口のないブラックホールというか・・・。
「なるほどな。俺の故郷のドワーフの国なんかは、大小いろいろな金属の工房があって、そこから発生する熱を国中に張り巡らせてあるんじゃ。なんせ、ロードランダの隣だから、冬は寒いし、夏だって水は冷たいからな。暖房や給湯に使えるようにしているんじゃ。街には無料で食い物を茹でたり蒸したり燻したりする施設があるんだ」
「なんてエコな国なの!」
九州の、温泉卵つくるやつぅ!
あー早く行きたい!ドワーフの国!
「それでも活用しきれずにあふれた熱がポイコローザ公国の地竜の育成に役立っとるらしい」
「それは聞いたことあります!」公爵の嫡男のエスカーザに。
“じゃすとたいみんー”
“どろどろよー”
精霊ちゃんからオッケーの合図。
「砂が良い感じに溶けましたよ」
「よし、じゃあ、窯を傾けるぜ」
でっかい窯には小さな注ぎ口が。
傾けるとそこから砂漠の砂が黄金の滝になって落ちていく。
「きをつけろよ」
「はい!」
とはいえ、魔法で遠隔操作なんで、やけどはしない。
窯を傾けるのはドワンゴさん。その下で俺が魔力でブロック型を移動させていく。
空気穴が無いように、魔力ですこしこんこん叩いたりして。
ブロック型は、一つの型に十個のブロックが繋がって出来るようになっている。
冷めた後に、風魔法で切り離すのだ。
そうして、どんどん流れ作業的に、ブロックの作成を続ける。
「ふー、みんなお疲れさんだったな」
「お疲れ様です」
今日はホブゴブリン達も、アナザーワールドではなく、建設事務所で風呂に入って一息つく。この世界のゴブリンも不潔と言われているけれど、それは単に風呂に入る習慣がないだけで、俺のテリトリーに入れてからは、清潔を心がけることと、身だしなみを徹底している。そのうえ、ホブゴブリンに進化してからは、会話も流暢で、まあいわば、魔物より人にちかい。テイムしたままだから、魔物なんだろうけど。人扱いは無理っぽい。でも、本も読めるようになったし、俺の話し相手にはなる。
「砂集めどうだった」
「ガスマニアやアジャー島の砂とはまた感触が違いますね」
「さらさらしすぎていて、水をまかないと舞いますね」
「だよね」
地竜たちは、水辺が恋しいのかアナザーワールドに帰ってる。
「うろこが、かわくと、チリチリする」
「そうか、わるかったなぁ」
「でも、あしたもよんで!」
「え?いいのか?」
「ぼくたちも、おうじのおやくにたちたいの」
「だらだら、あそんでるばっかはねえ」
「そんな事気にしなくていいのに」
「はたらくの、たのしい」
「たのしい」
「楽しいと思ってくれるのなら、手伝ってもらおうか。でもそうか、鱗な・・・ちょっと考えるよ」
「うん!」
俺とアヌビリは〈本の虫亭〉に帰る。
夜、寝床で爬虫類のペットの鱗のケアを検索した。
・・・ワセリンですね。
了解です。ありますよ。母さんが大量に入れてくれてます。
でも、入れてくれた本人もまさか地竜に使うとは思ってなかったでしょうね。
次の日。
「これを塗りあいっこしてみろよ」
地竜たちにワセリンに、パレットナイフを突っ込んで、それで掬って、プウとポウの掌になすりつける。
俺も、自分の手に取って、両手に広げてプウの背中に塗ってみる。
「少し気持ち悪いかもしれないけど」
「たいじょうぶ」
「ちょっとぬるぬるするけど」
「どろであそぶよりへいき」
お前ら、泥を塗りあってたな。
他の地竜たちの手にも乗せる。
「背中とか頭は、お前ら手が短いから、塗りあいっこじゃないと無理だな」
地竜はどちらかというと腕が短い。だから痒いところに手は届かない。すぐに砂地に寝っ転がって暴れる。不便な体だぜ。
「えへへ、ぬりぬり」
「きゅあー、ぬるぬる」
・・・なんかさ、カップルが海岸でオイルを塗りあってるのを連想するぜ。キャーキャー言ってるのは地竜なのにさ。
海水浴行きたいぜ。今は夏なんだぜ。
目の前にあるのは砂だけで海は無いけどさ。はやく湖水浴できるようにしたいな。
というわけで、今日も頑張りましょうか。
熱をアイテムボックスに入れるとは言え、灼熱作業には変わりない。
粉のスポーツドリンクの素を水筒に入れて、魔法で水を入れてついでに氷もガラガラ入れて、振っておく。
熱中症に注意だよね。梅風味の塩飴も用意。
ある程度マーブルブロックができたら、今度は湖岸に積んでいく。ちょっとすり鉢状に、上に向かって広がるように。
ドワーフに車輪の無い台車を大量に作ってもらって、その下にすこし摩擦や重力と反発する力を付与。
それにブロックを積んで、するすると必要な護岸に運んでいく。
そして、それをまた積んでいく。
そんな俺に、嬉しい応援が二人!
「ウリサ兄さん!」
「おう。頑張ってるな」
「シュンスケー!会いたかった!」
「アリサ姉ちゃん。俺も会えてうれしいです」
アリサも飛んで抱き着いてきた。ちょ、俺中身大人だって先日見たでしょう!
でも変わらない距離感に嬉しくなる。
ゴダは帝都で漁業に精を出している。
気が付けば、王都内外から、Cランク以下の冒険者も集まってきていて、護岸工事を手伝ってくれている。その中にウリアゴの二人もいたのだ。
「わー本当に大きな魔法陣ね」
「でしょー」
「スゲーな鏡みたいに光ってるじゃん」
あれから、砂と風で磨きを掛けましたから。
工事事務所の周りには、冒険者が自前で持ってきたテントも広がってきた。
「ここまでどうやってきたのですか?」
「王都までは乗合馬車とか歩いたりで、そこからもギルドが馬車を出してくれたんだ」
「大きなプロジェクトだからね、前金ももらえたわ」
「それはすごいですね」
「こんな環境に来ようと思ったら準備が居るからな」
「なるほど」
俺は、ブロックを作りながら、湖底のガラス化も真ん中から進めていく。
冷めて落ち着いたシュバイツマーブルの上にアリサ姉ちゃんが建つ。
下に少し写ってるけど、たとえばスカートの中まではっきり見えちゃうほどではない。よかった。アリサ姉ちゃんは短パンだから関係ないけどね。
ミニスカートの中が下着だけの冒険者はいないよ。男が多いからね、ちゃんと防御しているのさ。スカートの方も短パン履いてらっしゃいますよ。って何の解説してるんだ俺は。
塩湖とはまた違った美しさだな。水で満たされる前にと、アリサ姉ちゃんをパチリ。
グッドボタンお願いします♪
お星さまありがとうございます。
ブックマークして頂くと励みになります!
それからそれから、感想とかって もらえると嬉しいです。