165【はしゃぐドワーフたち】
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世界樹ガオケレナの子、バオから預かった、二千年前の平面図と地図を、すぐに三枚ずつ複写して、一組をトルネキの宮殿に渡し、もう一組を持って、ロードランダに向かう。どちらも、滞在している〈本の虫亭〉の部屋から、隣の部屋に行く感覚で。
夏休みに入ってるハーフエルフミックスで侍従見習いのクリスも、ロードランダのグローベスエルフェンス城にいた。
「シュンスケ様、面白そうなものを沢山持ってますね」
「だろ?」
北欧気候の涼しい自室で、ランチ。
さっきまで二人で、複写した平面図や地図、新しい砂で出来たものを見て話していた。
「満月の砦か、懐かしいな」
同じテーブルには父さんもいる。
侍従長のプランツさんが給仕を引き受けてくれている。
「教授に聞きましたよ。一緒にサミット的なものに行ったんでしょう?」
「ああそうだった。幾らなんでも二千年前のことは結構忘れているけど、駿介のスマホの写真やこの図面をみたら思い出すよ」
「わたしも、父の昔話で聞いたことありますね」
「教授に聞いてるときは横にアナラグさんもいたんだ」
「弟も?」
「うん」
「それにしても」と言いながら父さんがしみじみと話す。
「砂漠になっちゃうとこんなに悲しくなるんだね」
「木どころか草の一本も生えてないよ。Aランク以上の沙漠の魔物が出てくるぐらいでさ」
「ひーAランク」
クリスが引いている。
「クリスなら青色ちゃんとか黄色ちゃんに手伝ってもらったらすぐに討伐できるよ!」
「あとで教えてください」
「でも、緑色ちゃんは満月の砦を二千年前のまま再現したら、今の人には使いにくいだろうって」
「たしかにそうだな。まずあれにはトイレがないから、あの時代はそれが普通だったんだけど」
「うん?トイレがなくてどうしたんですか?」
「おまるってやつだよ。続きは食事の後にね」
「たしかにそうですね」
「とくにあの建物は、サミットのための迎賓が目的で、あと一階は出入国の役所の機能しかない。宿は別の所にあったからね」
「そうなんだ。じゃあ、平面図を練り直してもらわなくちゃいけないんだね」
「そうだな、平面図はカルピンに頼めばいいけど、湖の土木とかはあそこにいるドワーフに聞くと良い」
「ほんと?んじゃご飯の後早速。クリスはどうする?お祖父さん達に会っとく?」
「お願いできますか?」
「うん。帰りに迎えがいるかどうか黄色ちゃんに言えばいいしね」
「分かりました。そうだ、だったら干物をお土産に」
「そうだな、それがいいよ」
「それから黄色ちゃんに予告をお願い」
“りーにんぐはくしゃくに、まごのくりすがいくっていうのね”
「うん」
“よろこんでる、すぐでもいいって”
「よかったな」
「はい」
クリスがいったん自室に戻りそこからガスマニアの海の家に行く。
ゴダの方が作ってる干物をもらってくるんだろう。
先日、ホッケっぽい魚の干物を作ってて、ふっくらホロホロとした食感と海の旨味って感じがご飯に合ったんだよ。たぶんアルコールにも合うだろう。エールあたりかな。・・・まだわかんないけど。
「只今戻りました。やっぱり、あっちは暑いです~」
たった十五分で数千キロも離れた海の家から戻ってきたクリス。
こっちも、隣の部屋って感覚で行ってきたみたいだけどね。
「ちょうどゴダさんが居て、沢山持たせてくれました」
時間停止機能付きの魔法の袋を二つ持ってニコニコしている。
「いくつかは、湖のお城で食べてもらいましょう。それから、凶悪肉食地竜の肉も渡されましたよ。セバスチャンがスフィンクスに預かったらしいです」
「そっか、それを持ってくるのを忘れていた。半分ずつ両方に入れよう」
そして移し替える。一つの袋はここで使ってもらう。
「肉食地竜ですか、美味しいですよね」
「ギルドで売りすぎると経済に悪影響があるんだって」
「そうだな。この地竜は駿介が狩ったのか?すごいね沢山ありそうだ」
レジ袋位の大きさの、革の巾着袋の底をもって父さんが笑っている。
所有者を特定しない魔法の袋が誰が触っても内容が分かるようになっているんだよね。
「うん、それもあってこっそり配ってるんだ。プランツさん宜しくね」
「分かりました、こっちの料理人にも腕を振るってもらいますよ」
「よかった」
リーニング領にはハロルドで行こう。
城についてすぐに放したハロルドは、今はシュバイツ湖で遊んでる。
“おーい、リーニング領に行くよ!”
“はーい”
俺達がテラスに出ると、湖を背に戻ってきた。
「クリスこれを」
アイテムボックスからクリスの妹のアイラが作ってくれたゼッケンとトルネキの王都で買った二人乗りの鞍を出して付けてもらう。
「これは乗りやすそうですね」
「だろ?鐙をちょっと上にしておこうか」
ここだけの話、飛んでるハロルドなら、長時間でもお尻が痛くないんだよね。
「はい!」
ベルトを調節して・・・。
夏だけど二人とも魔法使いっぽいローブを着ている。
『乗ったね!んじゃいくよ』
「「はーい」」
俺の部屋のテラスから直接飛び立つ。
世界樹を飛び越えるか、東回りか悩むけど、距離は同じぐらいだよね。
西側はちょっと隣の国が食い込んでいるんだよね。
訪問してくれって言われているらしいから、通ってもいいんだけどさ、初めて訪ねる時は〈ついで〉じゃなくてきちんとね。
「東回りで行こう」
『りょうかい!』
ばさりばさり
とはいえ、ローブを着ていてよかった。
世界樹のてっぺんより低めだけど、雲が同じ高さでたなびいている。
「やっぱり上空は寒いな」
「ですね。夏なのに」
「赤道直下のトルネキでも寒かったもん。熱砂の砂漠の上だったのにさ」
「不思議です」
「百メートル上がるとに一度寒いんだって(地球の感覚だけど)。今は地上三千メートルかな?そりゃ寒いよね」
「へえ、すごいですぅ」
暫く飛んでもらっていると、これぞエルフの里って感じの、樹木の家が沢山見えてきた。
森の中なのに街という不思議な風景。
木々の間を引っ掛かることなく、ハロルドの白い大きな羽が一番大きな木の館に舞い降りる。
『ついたよー』
「早いです!有難うございます」
いかにもエルフって感じのお祖父さんと、クリスの母親のナティエさんにそっくりのお祖母さんとが手を振ってくれている。
二人とも若々しくてナティエさんの兄姉にしか見えないけどね。
俺はハロルドから降りることなく、
「上からごめんなさい伯爵夫妻」
「まあまあ殿下。お茶でも」
「そうじゃ、儂らは殿下にも会いたかったんじゃよ」
「俺はこのあと予定があって」
「そうだよお祖母様。シュンスケ様は忙しいんだ。引き留めてはいけないよ」
「なら、クリスお前は?」
「僕はまだ足手まといで・・・」
「そうだな、クリスはクリスの出来ることでお助けしなさい」
「はい」
そんな三人にちょっぴり浮いたままのハロルドの上から声をかける。
「ガスマニアは暑いですし、避暑をさせてやってください」
「ありがとうございます」
「クリス、何日滞在するか分からないけど、帰る前の日に連絡欲しい」
「分かりました!」
「では!」
「「「行ってらっしゃい」」」
そして、真っ白なペガコーンは、森の街の中を薄っすら光りながら向きを変える。
“はろるどこっち”
『はーい』
黄色ちゃんのナビで、迷わない。
すぐに、木材や木工の工房が立ち並ぶメルヘン世界の工業団地的な所に出る。
「あの看板だ」
『ほんとだ、カルピンって書いてる』
他の木の工房と違って、カルピン木材店は、キッチン用とは違う、太い煙突が突き出ているのだ。たぶん、以前ポリゴンの家を作った時に来てくれたドワーフたちが使う炉も設置しているのだろう。
あれで、砂のブロックも一気に作れないかな。
「よう、シュバイツ殿下、なんだか久しぶりだな」
「今回もお世話になりますカルピンさん!」
「なんだなんだ」
カルピンさんが先に出てきてくれた後ろをドワーフが出てきた。
三人。そのうち二人はラーズベルトの冒険者ギルドの隣の店の兄弟のゴードンさんとインテルさん。
「あれ?」
カルピンさんの所のドワーフはドワンゴさんという。
ドワーフの顔の違いはいまいちわかってないんだけど、よく見たら似ている。
「なんか、火の精霊がここに来るといいことあるって」
「風のうわさも聞いて」
「それで二人も兄貴が押しかけてしまって」
“えーっと、赤色くんと黄色ちゃん?”
“ひゅーひゅー”
こら、明後日を見るな。
“だって、どわーふたちが、おおいほうがいいんだよね”
“まあ、そうだけどさ”
兄弟だったんだね。
「でも、よかった。皆さんに相談したいことと、お力を借りたいことがありますので」
「何でも言って。私らは殿下のためなら何でもするから」
カルピンさんって忙しいのじゃないの?
「それに、抱えている仕事で急ぎは無いのさ。つねに待たせるのは売れっ子建築家ならではさ」
「そうじゃ、戦争じゃなければ、何でも手伝うぜ」
「おもしろそうだしな」
「がはは」
楽しいことは何をさておいても参加したい。
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