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15【馬車移動自習室の旅】

 俺は今、この世界で初めて、豪華馬車の旅を送らせてもらっている。


 四頭立ての馬車一台と、二頭立ての馬車二台の計三台の馬車もあったら、俺にしたらパレードだ。そこへ、単騎の馬に乗った護衛の冒険者も二人いる。

 一つの二頭立ての馬車には、ウリアゴの冒険者パーティがこれも護衛任務として三人が交代で馭者をしながら行く。ウリアゴの馬車には幌をかぶせるための骨は渡されているが、周りが見れるようにとオープンになっている。そっちの方が景色が見れていいよな。日焼けしそうだけど。

 アリサねえちゃんの日焼け対策はもうばっちりです。

 そして行列全体の速度を調整しながら、前方の安全確認をする、重要な任務だ。そして、三人用の長期滞在の荷物も積んでいる。

 後ろの馬車も二頭立てで、主人ドミニクさんね)の侍従と侍女と、その人たちの荷物が積まれている。


 その二台の馬車に挟まれて 四頭立ての馬車が一台走る。そこにはもちろん、この旅のメインで一番偉い方、ドミニク フォン マルガン様がおひとり乗車されている。

 で、この真ん中の馬車は十人も乗れるのに、ドミニク卿と、俺こと田中駿介だけが乗っている。なぜだ。

 その上、見た目五歳の俺がいつでも昼寝できるように、ふわっふわの布団を座席に敷いていただいている。なので、よく聞く長時間の馬車移動中にお尻が痛くなるなんて事も体験できずにいる。

 それでも、ふとした振動で吹っ飛ばされそうにはなる(鍛えても体が小さいままだからなー)ので、即席のシートベルトを取り付けさせていただいている。その上に、体が安定するようにフワフワのでっかい縫いぐるみを抱っこさせられている。そんな俺をみてアリサが「見てるだけで癒されるわ」とか意味不明なつぶやきをしていた。

 この縫いぐるみ、孤児院のまっちゃんみたいだな。俺が昼寝をしていたら、こんな感じで腹の上に乗ってきて丸くなって寝ているときがある。かわいいけど、いくら三歳でも五歳のガキにはちょっと重い。この縫いぐるみと違うところは、マツは猫耳をモフれるところだな。


 俺がこの贅沢で豪華な馬車の中で何をしているかというと、帝都の帝国立学園の入学試験の過去問集に取り組んでいたのだ。まだ、冒険者ではないので、護衛は出来ないからな。最初は完全に付録と思ってたのに、この行列のメインの一人が俺という事らしい。


 なんでも、せっかく俺に輝かしい魔法使いの才能が潜在しているにもかかわらず、ポリゴンの町やマルガン辺境伯領には魔法を正しく効率的に学習が出来る機関がないそうで、出世払いで返せば良いから、学園に入学しなさいと、ギルマス直々に言われたのだ。


 まあ、俺もいつかはそういうことをしようと思って、たった三か月だけど、ちょこちょこ働いて、コツコツ貯めていた。なんのために貯めていたのかばれていたなんて。ギルマスのスキルって何なんだろう。


 帝都に海水浴に行くって聞いてたのに!


 まあ、入試は八月半ばで、入学はそのあとすぐの九月らしい。だから、ちょっとはチャンスがあるだろう。


 学園は、本来十歳から入学して五年通う。基本的な教養と、魔法か、その他の専門的な知識を得ることが出来るそうで、卒業するときに成人になるってことだな。

 ただ、親でない貴族の推薦があって、学力があれば早期入学、そして、在学中の成績ではスキップして早く卒業することもできるそうだ。


 学校は、勉強も大事だけど、友達を作るとか、チームワークを育んだり、そういうことも大事だから、あまりにも年齢差がばらついたり、スキップしたりしていたら、学友ってのが出来ないのじゃないのか?

 あ、学友なんて大事じゃないんですね。信頼していて裏切られた時が怖いから?

 ギルマス、若いときはどんな目に遭ったんですか。


「シュンスケ、お前は全属性持ちだ。最初の二年で基本的な教養などを学んで、大人になるまでに各属性をそれぞれ学ばなければならない。わかるか?属性の数を考えれば十五歳までかかってしまうだろう」

「なるほど、わかりました」

「余裕が出てきたら、今みたいに学校に行きながら何か働けばいいし、見た目が成長していなくても、ステータス上で八歳になれば冒険者になれる。それより前に冒険者になりたかったら、ゲールのお墨付きをもらっておいて、登録テストを受けるといい。

 働きながら学べば、借金することなく卒業できるだろう」

「そうですね。わかりました。頑張ります」


 ただ、クッションを敷いてるとはいえ、馬車で文字を読んでたら酔う。

 なので、過去問をするときは、馬が水飲み休憩するときや、途中の宿場町でホテルで泊まるときに取り組む。

 ま、小学校二年生程度の学力があれば入れるので、文字は常用漢字程度、計算は九九?ぐらいまで分かってたら大丈夫そうな。だからって舐めているとたまにひっかけみたいな問題があって凡ミスを誘うらしい。

 俺は、この世界の人目をはばかることなく、とは言えこの行列の人たちの前だけだけど、T大生が開発した大学ノートと、シャープペンシルと、ラインマーカーなどを出して勉強する。ついでに、基本教養のところも予習しておく。すぐに上に上がれるようにね。


 俺、大学受験は推薦で通って、受験勉強はもう無かったはずなんだけどな。


 そうして、五日ほどの馬車の旅を得て、俺たちは帝都入りを果たした。

 普段はドミニクさんは、右手右足が不自由なのに、単騎で二日で行くそうだ。

「ちんたら移動していると、ポリゴンの仕事が溜まっていくのだ」

 なんか俺のためにすみません。

「しかし、今回は秘書のセレにあれこれ仕事を振ってきたからな、ちょっとはマシだろ。私もたまにはゆっくりさせてもらいたいしな」そりゃそうでしょうけど、

「えー、セレさんもいつも忙しそうじゃないですか」

「夏季休業を取る冒険者もいるから、勉強会はないしな。ギルドの仕事も夏は緊急の討伐以外依頼を控えている。だから大丈夫なんだ。

 それに貴族は夏に帝都で全体領地会議とかあるのだ」

「お役人さんって忙しいんですね」

「そうやって無理やりに移動させて、地域で金を使えってことだろう」

「なるほど、経済を回すためでもあるんですね」

 何も深く考えずにそう答えると、ギルマスは

「やっぱりお前」

「?」

「五歳のガキが“経済”って単語を会話に出さないのは知ってるか?」

「うぐっ」

 ギルマスはどこまで察しているのだろう。

 俺の知らない俺のことも知っているようだし。


 力になろうとしてくれるのはすごく感じる。

 だから、感謝しかない。


 俺は将来、ギルマスをはじめ、ポリゴンの人たちの役に立てるようになりたい。もっともっと。


 そう決意も新たに、過去問に取り組むのだった。


ドミニク卿 「ショタコンてなんだ?」

ウリサアリサ 「「さあ」」

ゴダ 「チョコレートにそんな名前ありそう」


・・・高級ショコラ ショタコン

ないでしょうか。


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