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161【砂の砦】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 砂に埋もれた北東を向いて建つ古城。そして大きな丸いくぼみは、三日月湖(リンドラーク)がスッポリ嵌りそうなぐらい大きい。


 あたり一面砂だったのと、晴天なので分からないけど、たぶん飛行機が雲を引くぐらいの高さから急降下してもらって、砂地の一メートル宙に浮いてもらったままのハロルドから足から飛び降りる。

 アヌビリには急降下による気圧の不調が無いように聖属性魔法で包んである。


 ぼすっ

「うわーっ」

「大丈夫かシュンスケ」


 まるで新雪を踏んだように、股位まで埋まってしまう。

 まあ、砂だからこのぐらいで済んだのかも。雪だともっと深いかも。

 アヌビリは膝上ぐらい。って足の長さね。埋まった深さは同じ・・・くそ。


「失敗失敗」

 長ズボン履いていてよかった。短パンだと下着の中まで砂まみれになるところだぜ。

 砂も結構熱いし。しょうがないから、浮き上がって城に近づく。

 今度はアヌビリが動きづらそうだが、何とか歩いている。冒険者用ブーツが熱せられた砂からも脛を守っているのだろう。


 目の前の城を見つめる〈鑑定:ボールモンドフェスタン(満月の砦)ボールモンド湖を背に国境を守る砦。元の素材、石、木、土、他、築約二千年〉


 築約二千年?そりゃあ朽ち果てるよね。

 でも二千年か。父さんはもうこの世にはとっくに居る。

 あ!ガスマニア帝国国立学園の魔法学部のブラズィード フォン ルマニア教授なら二千歳とちょっとって言ってたっけ。知ってるかなー。


 そんなことを考えながら、砂の材質なども鑑定する。

 うん、珪砂だね。ガラスの材料。たしかサハラとか砂漠の砂って粒が丸くてコンクリートに出来ないってネットで見たね。

 俺も、大きな虫眼鏡を取り出して足下から掬った砂を大きくしてみる。

 ・・・丸い。鱈子やトビッコみたいなぶつぶつだな。

 ということは、水を加えて土にするのではなく、熱でガラスにする・・・?

 地球の砂漠は鉄が多くて無理らしいけれど、ここら一面の砂は限りなくガラスの素材の成分だ。確かにほんのちょっと鉄はあるかもしれない。なら、魔法の高熱でガラス層を作れば、後に撒く水を地表にとどめて、緑化に繋げられるのではないのか。


 俺は、手持ちの空き樽を出して、そこに砂を詰める。いつか教授や、リフモル先生や、グローブ先生とも相談してみよう。砂漠の砂が素材になるのかとかさ。


 大きなくぼみは上空から見るとほぼ正円だった。城の前から見る。


「ねえ、ミグマーリ。この丸い所は湖だったの?」

 『そうよ、もっと北東から、ボールモンドフェスタン(満月の砦)の真ん中を通る川があってね、そこからこの真ん丸の湖に流れ込むの。そして、また湖から西へ真っすぐ海に向かって川になっていくのよ』

「なるほど」

 砦は、北東に伸びている川だった溝を跨ぐような構造になっているらしい。とは言え砂に埋もれているから、上の方に小さなトンネルが開いてるのしか分からない。


 俺は砦の半分ほどの高さまで堆積している砂を今度は新たにつくった四つ目のアイテムボックスに入れていく。フォースボックスと名付けておこうかな。


「おお、スゲーな」

 だんだんはっきりと姿を現していく砦にアヌビリも声を上げる。


「そうだね、二千年も前にこんなでっかい建物が建てられたなんて、すごいよね」

「ああ」

「父さんにも一度聞いてみたいな」

「あの方は三千年以上生きてらっしゃると言ってたな」

「他にも、父さんの下にいた人で二千歳を超えたエルフがガスマニアの教授に居るから、聞いてみようかなって。

 砂嵐ってシーズンとかあるかな?今取り除いた砂がすぐに埋まったらいやだなぁ」

「決まった時期は無かったと思うぞ」

「そうなんだ」

 南側を回って湖と反対側に出る。こっちの方が外向きの正面なので、精巧な彫刻などが施されていたのがある程度残っている。

 ただ、人物の像とかは無い。トルネキの王都の宮殿の壁のような彫刻だ。アラベスクって感じだな。

 川を跨ぐ部分の砂がきれいに取り除けた。

 すると、川を歩いて行けばまた大きな湖の方に出れる。

 こっちの方が近いよ。


 砦の前の丸いくぼみに少し溜まっている砂も退けていく。

 たぶん、ここの深さは三日月湖より深い。


 初めは、城壁に囲まれた町だったのではないかなとも思ったけど。砂が減っていっても建造物の痕跡はないな。


 広さは王都の三日月湖が真ん丸になったとしてもそれより大きい。

 かなりでっかい湖である。


 よく見ると、北西以外にも、真北から流れてきている川の跡の筋もある。こっちは少し細い。


 でも、ここの水をグリーンサーペントに流すには常にその二本の川からつねに流れてこないと無理だな。それに、もっと流れ込んでいる川が他にもあるはずだ。


 ある程度、砂が取り除けた。グリーンサーペント河の下流とは違って。岩盤はもっともっと深い。緑色ちゃんと紫色ちゃんが教えてくれた。グリーンサーペント河だって、河原のさらに下にあった岩盤だったけど、本来の河岸から考えたら結構深い。

 それでも、俺の手持ちの水はここを満たすことはできるけどね。

 鑑定って過去の堆積も出るんだね。枯れててもさ。


 俺は、自分の翅で飛び回りながら、砦の表と裏の外側の姿、湖跡をスマホで撮る。


「よし、そろそろ今日の調査は終了だな」

「そうなのか」

「日が暮れると寒くなるからな」

「あのテントの出番じゃねえのか」

「まあ、そうなんだけど、偉いさんや、賢所と相談してから動こうかなって」

「それは大事だ」


 頭の中でいろいろ考え事をしながら、ぼーっとしながら目の前の砂の風景を見ていると、


 ゴゴゴゴ、なにやら地鳴りがする。

「シュンスケ、気を付けろ!」

 枯れた湖の底の砂地が動き出す。地震とはまた違う響きだ。

 数か所が渦を巻いたりグニャグニャしだす。砂なのにまるで液体のような動きだ。


「うぉ今度はなんだ」

 俺はアヌビリを魔法で浮かせて、

「ハロルドお願い」

 『アヌビリ乗って!』

「おう」

 俺も浮き上がる。

 『シュンスケはあたしに乗って』

「わかった!」

 俺はミグマーリの後頭部に乗っかる。


 砂の湖底から出てきたのは帝都のダンジョンのグランドキャニオン風のエリアで見たスナギツネとサソリの魔物。

「しまった、俺は今雷撃の魔道具を持っていない。前の時に壊したままだった」

「大きいなあ」

 どれもこれも、砂の砦より一体一体が大きい。

「まあ、あのでかいのに近づくのは無理だよ」

「そりゃそうだけど」

 んじゃ雷の魔法試したことはないけどやってみようかな。

 電気が通りやすいように・・・

 『水は私がかけるわ!』

 そう言うとミグマーリが龍のブレスのごとく口を開けて水をピューっと一体のすなぎつねに水をかける。


 ギャー

「ほんとに苦しんでるんだ」

「ね、水に弱いんだよ」

「でも俺が討伐するには難しいな」

「大量に要るんだもんね」

 そして俺は指先から雷撃を打ち出す。


 バリバリバリ。

 スナギツネは息絶えた。

 ・・・ダンジョンじゃないから消えないじゃん。

「スナギツネの素材って何?」

「砂しかねえ。あとは魔石」

「魔石ね・・・」

 するとサラサラとスナギツネだった物は崩れていく。

 そして大人の拳骨ぐらいの魔石が光った。

「ちっちゃ!」

 砦位のでっかさだったのに!

 でもまあ、それしか無いから、空間魔法で引き寄せて手元へ。


「うーん水をかけてから雷撃もいいけど、この際ここに積乱雲を作っちゃおうかな」

 砂の魔物はまだたくさんいるのだ。


 そして俺は、手持ちの水を霧状に取り出す。そして火魔法も使ってその水を水蒸気にしていく。さらに湖の砂は昼間の太陽光で熱されているので、じつはゆらゆらと熱が立ち上っているのだ。

 『すばらしいわ王子!』

「天気を変えるってなかなかだぜ」

「とはいっても砂の熱も利用してるけどね」

 そうして、ボールモンド湖の真上に大きな積乱雲が成長しだす。

 『わわわ、王子、僕たちは逃げとくよ』

「そうしてくれ」

 俺だって自分が作った雷に当たりたくはない。ミグマーリと一緒に少し離れる。

 積乱雲の中で上空に達した水分が氷になって落ちていくのと、下からまだ蒸発して上に上がっていく水がぶつかり合って静電気が発生しだす。

 そうして、ゴロゴロ言いながら積乱雲が完成していく。


 だが、スナギツネとサソリたちは頭上の雲が何かわかってないようだ。見たことないかもしれないけど、突如現れた湿気を嫌がっているのはわかる。


 積乱雲の底がだんだん黒くなってくる。そうして、

 バリバリバリバリ

 ドシャーン

 ドシャーン


 うん、雷はね、背の高い所に落ちるんだよ。

 砂の魔物たちは皆標的さ。

 崩れ落ちた魔物から、魔法の遠隔操作で魔石を回収。

 しばらくすると、夕立が始まる。

 積乱雲でしたから。


「あっという間にあの沢山のでかいスナギツネやサソリを。どれもAランクの魔物を一瞬で・・・・シュンスケお前・・・」

「なに?」

「本当はSSクラス位なんじゃねえか?」

「俺はAクラスですよー」

 棒読み。

 なにしろSクラス以上は色々社会的にも動きにくいらしいからね。


 用が済んだ積乱雲は霧散し、夕空にくっきりはっきりとした虹。

「また虹を作っちゃった」

 『ふふふきれいだねぇ』

 『ほんとね』


 でも、一度の一瞬の夕立ぐらいじゃ、水は砂に吸い込まれていく。土っぽくもならないね。海岸の砂みたい。すぐに乾いてしまうだろう。

 『でも、こうやって湿ってるだけでもさっきの魔物は出てこないのよ』

「そうなのか。じゃあ、もしもここを通る商隊なんかも助かるな」

「最近はこのルートの商いは無いんじゃないか?」

「たしかに行き来するのは大変だよな」

 空から見渡す限り人影はなさそうだ。

 王都にあった街道の筋が見当たらない。

 『昔からこのあたりは街道は無くて、川で行き来していたのよ』

「たしかに、幅もあって深いから、大きめの船でも通れそうだな」

 『そうなの、上る船に風を受ける帆がついていて、下る船にはマストしかなかったのよ』

「へえすごい」


 鉄道も飛行機もない世界。ここの川が水路として復活したら素晴らしいだろう。


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