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160【引っこ抜いた河底の養生】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 グリーンサーペント河にリリュー教授がやってきた。というか連れてきた。

 たった一週間で、六十キロの河幅の、積止めている海の方から二十キロにわたって、木を引っこ抜いたり切ったりした。


「でもね、長さが五百キロもあるんだから、河として水を流すまでまだまだかかるじゃないですか」

「そうだな」

「そのあいだ、ここをこのままにしていたら、今度はこっちが乾燥すると言うか最悪サバンナみたいになってしまうかもしれせんよね」


 初めは、単純に全部引っこ抜いてから上からジャーっと流せばいいじゃん、って思ったんだけど、日本人感覚では想像もつかない大河なので、それはそれは大変なプロジェクトなのだ。


「そのあいだ、この場所を養生しておこうと思うんですけど、何かいい方法ないですか?」


 大河の真ん中を流れている川の幅は最大七十メートル。深さは十メートル。

 以前、ガスマニアのスブルグって町の隣の、橋の再建工事でロープや縄梯子を渡した川はおおよそ五十メートル。だからあの川より一回り大きい川となる。


 この真ん中の川にはピラニアのような肉食の危険な魚もまあ、要るんだけど、食ったらうまいので、討伐するより普通に鋼鉄の笊のようなもでの仕掛け漁をして得るそうだ。ただし、今までは、地竜の森に囲まれていたから漁も出来なかったんだけどね。

 それで、チラホラと仕掛けを沈めている人もいる。


 立ち入らないでほしいんだけどね。


「シュンスケ、その川の底が岩盤だって知ってる?」

「いいえ?」

「だから、周りの土を河底の深さまで掘り起こしてくれたら水深十メートルの池をつくれるんじゃない?」


 ピラニア的な魚の周りの土を掘り起こす?ちょっと怖すぎるんだけど。


 でも、土を掘り起こすのなら、木を根っこごと移植出来たんじゃん。


 まあ、いいか、なにぶん初めての事業なんだから、方向転換もあるよね。


 きこりの人は、そろそろペースダウン。

 これ以上在庫要らんと言ってきている。

 んじゃ、残っている木は根っこの土ごと沙漠に持って行こうかね。


 俺は、もう一度海の方のスタート地点に戻る。そしてマルチタスク魔法を発動して、視界に入る切り株を根っこごとサブボックスに収納する。


「うわ、気持ち悪」

「ひええ」


 一面直径二から三メートルの穴がぼこぼこ開いた風景が出現した。

「危ないから、気を付けてねー。

 穴が開いてないところも脆くなってるからー」


 集合体恐怖症ってこういうやつが気持ち悪いってことなんだよね。さっさと崩していこう。


 魚とりの仕掛けを沈めている人に「悪いけど、一週間後に延期して」

 と言って回った。


 ぐるぐると動きながら切り株を収納していくと、穴がさらに無数にというかあたり一面にできる。



「次は土をどけますねー」


 根っこが無くなった後の土は、地中のミミズとか微生物とかが沢山いるので、サブボックスには入れられない。

 こっちはアナザーワールド行きだな。


 こんな大がかりな土魔法はアナザーワールド以外では初めてだ。川岸の土手は少し残しておいて、土を退けていく。

「おい、シュンスケ大丈夫か?」

「それがさ、大地の女神(おば)様の加護のお蔭か、全然疲れないよ」

「そりゃよかったじゃねえか」

 まるで、地下に吸い込まれていくかの様に簡単に土が消えていく。


 その一方で、アナザーワールドの中の、家のあるところから一番遠い地点にぼた山を作っていってるんだけどね。


 そうして、川の土手から河の岸まで大きく掘削が完了した。まあ、二日かかったけどね。


「んじゃ、水を入れていくね」

 俺は真ん中の川の流れはそのままに、その両側を四角い湖にしていく。水深十メートル、南北の幅は川と合わせて六十キロメートル。そして東西は二十キロ。

 広さは三日月湖よりめちゃくちゃ広いけど、深さ十メートルだからね。あっちは二百メートルもあるからね。

 つまり、手持ちの水は十分足りるはず。ただ、真ん中の川と混ぜると今泳いでいる魚の環境とは変わっちゃうと思うから土手を作って切り離している。


 サードボックスから、新しい湖の底へ水をそろそろと転移させる。ドバっと転移しているんだけど広いから、ちょっとずつに見えるんだけどね。


 中学の時に梅雨の合間に学校のプールを掃除して、新しい水を入れ始めた時の感動を思い出した。

 あれみたいな、タイルじゃないから初めは土交じりの茶色い水だ。


 リンドラークは三日月型だけどこっちはギリシャ文字の〈Φ〉というより漢字の〈中〉みたいな形だな。

 次に湖が東側に出来たら〈串〉の文字みたいになったりして。ははは。ただ、この世界の漢字とは違うから俺しか受けないんだけどな。


 しばらく増水しながらほんの少しの聖属性魔法を混ぜる。河底に水草でも生えたらいいななんて思いながら。すると、生えるじゃん!

 大型ショッピングモールのペットショップコーナーで、熱帯魚のエリアを思い出す。

 魚を飼わなくても、水草や流木、竜宮城のようなオーナメントを置いたりして楽しむ趣味があった。あれも面白そうだよネ。 


 魔法と水草の効果か、濁っていた水が透き通ってきた。空の色が映る。


 俺はこっそり自分だけのアナザールームを出してそこで、ささっと海パンに着替えて出てくる。


「ふっふっふっ。潜れそうなら潜るよね」


 水深十メートル。プールなんかに比べたら十分深い!


 つめて、もう少し太陽に晒してから潜るべきだったな。

 しかし我ながら奇麗な湖だ。


 もっと上流まで湖になったら、ちょっと白鯨のムーさんとか、白龍のミグマーリにも面倒見てもらおうかな。


「どうですか?リリュー教授」

 彼女もこの河に来て三日目になる。

 トルネキも学園は夏休みだから自由がきくんだね。


「シュバイツ殿下は、川の魚を気にして土手を作ったみたいだけどね、ほらあっちを見て」

「え?わっ飛び越えてる」

「湖に行きたがってるんじゃない?」

「どして」

「そりゃ、湖の方が殿下の魔力に満ちていて過ごしやすいんだろう」

「ならいいですけど、しばらく様子を見て、飛び越えた魚がなんともなければ土手を少し切って、湖の方にも流れるようにしておこうかな」

「それがいいだろう。それにしてもすごい光景だな。|三日月湖〈リンドラーク〉より広いんでないか?」

「面積は一、五倍ですね。水深はこっちのほうが全然浅いから、水量はこちらの方が少ないですよ」

「その水を、持ってたのか?」

「ええ、もちろん、河が復活するためにはもっと必要ですよ」


 そして、俺はいったん河を離れて、今度は引っこ抜いた木の移植先を求めてアヌビリとハロルドにまたがり、グリーンサーペント河の上流、乾いたミルクブールバード河のさらに東を目指して飛んでいく。ママチャリの速度の馬車だと十日かかる距離も、東京と大阪間の距離は、空から行くとまあ飛行機の速さだ。本気出したハロルドが。


 三日月湖と塩湖が見えてきた。

「早っ、もう緑色の河が途切れたぞ。空から見た方が、河の跡が分かるな」

「ほんとだ、間違えないよな。明らかに街道とは違う」

 『三日月湖に気配がある』

 ハロルドの言葉に、なるほど何か大きいものがいるのを感じる。

「なにが?」

「ミグマーリが戻っているのかも」

 『あ、そうかもしれない。どうする王子?会っとく?』

「もちろん。頼むよ。でもこっそりね」

 『了解』


 ハロルドは光魔法を駆使して、人から見えないよう目くらましをしながら三日月湖に向かって降り立つ。


「おーい、ミグマーリ」

 『おーい』

 『王子!やっと会えるの?』

「ちょっと透けて出てきてくれる?」

 『分かったわ』


 三日月形の少し東側が揺れると、中から水龍が出てきた。

 一部の人しか見えない透けた状態だ。


「透けているな」

 アヌビリが言う。

「俺と一緒なら見えるようになるみたい。特に精霊が見える人は見える。多分リリュー教授には見えないと思うよ」

「ふうん。なんかそれは嬉しいな。今になって新たな能力が出てさらに上がってるようで。これもシュンスケのお蔭だな」

「喜んでくれて何よりだよ」


 多分、今はハロルドの高位精霊の能力で、俺やアヌビリ含めてハロルドも透けているかもしれない。ここら辺は王都だから、見える人には見えてるかもしれないけどね。


 ミグマーリが顔を出している水の近くにハロルドが浮いた状態で留まる。


「いつ帰ってきたの?」

 『昨日よ!シュバイツ湖も楽しかったけどね』

 ミグマーリは呪いのようなもので傷だらけだったのを、白鯨のムーさんに連れられて、シュバイツ湖で療養していたんだよね

 『でしょー』

 シュバイツ湖の好きなハロルドも嬉しそうに相槌を打っている。

 『でもちょっと冷たかったわ』

「ああ、あっちは結構北国だもんな」

 『そうだね』


 『ところで王子はどこに行くの?』

「この北の河の跡のさらに上流にも湖を作って、その周りに植林しようと思って」

 『まあ、じゃあちょうどいい場所があるわ』

 『ミグマーリ案内してくれる?』

 『お安い御用よ』


 すると、ミグマーリも三日月湖から出てきて空に飛び出す。


 ミグマーリはハロルドと違ってすごく大きい。ムーさんよりは小さいけど、伝説の龍って感じの大きさだ。


 それでも、精霊だから、水面から飛び出ても大きな波を起こすわけでもなく静かなものだ。


 白龍と白いペガコーンがミルクブールバード河の上流を目指す。


 『見えてきたわ、あそこよ』


 そこには砂に半分埋もれた真っ白な城跡と、大きな大きなお盆のような真ん丸のくぼみがあった。


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