158【シフォンケーキとバームクーヘン】
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グリーンサーペント河の魔物や動物の討伐と移動が河口付近から十キロ地点まで終わった。
今日はこの地帯の木を伐採していくのである。
雑木林と言ってもよいジャングルだが。六割を占める一つの木の種類が〈サーペントウリン〉
大蛇の鱗の様に硬くて木材として意外と優れているのだ。
木材と言えば寒い所の方が密になっていて強いってイメージだけど、常夏で四季の変化が少ないので、年輪がないのである。だから、ほどよく乾燥させてしまえば、年輪のある木材と違ってどこを切っても均一な板ができるそうだ。旨く行けばロスの少ない素材ということだな。
年輪がないので、円周を図ってその太さでどの位の樹齢かをみるそうだ。
目の前にあるサーペントウリンの木は、大体は六から七メートル越え。直径にしたら二メートル以上だ。
そりゃあ、一本ずつ運ぶのは骨だよね。
俺は、冒険者ギルドの要請で派遣されてきた、林業のプロの指導を受けて木材として使えるように大事に伐採していく。
きこりのおっちゃん達が、サーペントウリンとその他の木を種類ごとに色分けした紐で括っていく。
木材として育てているわけじゃないから、下の方から枝が沢山ある。それを鉈や鋸、そしてこの世界ならではの風や水の魔法で枝を掃うんだ。
枝と言っても、下の方は一メートル違い太さがある。その枝の枝をまたあとで払っていくんだけどね。とりあえずメインの幹から離れた枝をサブボックスにどんどん入れていく。
すると、植林された林の様に、上の方だけ葉っぱが残って後は幹だけになっていく。
「んじゃ、ぼちぼち切っていきますかね」
木そのものを伐採していく。
「よし」
まずは倒れる方に切れ込みを入れて、反対から切る。すると切れ込みに向かって倒れていく。
真ん中を流れる川に向かって倒れるように切る。
まだ、立ってる木に引っかかったら面倒なことになるからね。
この切り方はローナ王女殿下たち。
スパッ。スパスパッ
「シュンスケなあにその反則的な剣は」
ブラックライオン族と言っても、金髪と金の瞳のローナ殿下は、ギルドで借りた鋸を、同じくブラックライオン族のレオラと一緒に使っている。鋸も魔法の鋸なので、アナログな鉄の道具より、するすると切れている。
「これ?」
俺の手にあるのは、おなじみ〈風の女神のミッドソード〉
「もらい物なんだよ」
一振りで五本は切れてしまう。
ただ、切れ味が良すぎるので、切り抜いたものは、まるで何もなかったようにバランスも崩さず立ってしまう。でも切り離されてはいるので、そのままサブボックスに入れてしまう。
すると、手品のように五本の木が消える。
きこりのおっちゃん達は、紐を付けに先に行っている。
アヌビリは十キロ地点のもっと先へ、魔獣を狩りに単独行動だ。とは言え、精霊ちゃん達も付いて行ってるから、心配はないよ。常に彼の様子が聞けるし彼ともやり取りができているしね。
おれは川の向かい側にひょいと移動する。
五本ずつって、まだるっこしいよね。
〈風の女神のミッドソード〉はすごく張り切っている。君が木を切ることに使っても頑張ってくれるとは知らなかったよ。
刀身が一メートル程しかない剣に、もともとまとわりついている風をさらに操作して、五メートルぐらい長さまで切れる部分が伸びている。
剣道や居合ではなく、まるで野球のバットの様に横に構えて走りながら切っていく。それはもうバターというよりもっと柔らかいスポンジのような手ごたえだ。
タタタタタタタッ
木を切った瞬間にサブボックスに収納していく
ススッススッススッ
もはや作業だな・・・飽きてきた。
子供って飽きっぽいんだよ。
東西に延びているグリーンサーペント河の、真ん中から南側を十キロにわたって伐採し終えると、俺は一つの大きな切り株をきれいに磨き、根っこの方を少しくりぬいて、テーブルにする。
サーペントウリンはこげ茶色で、適度につやのあるヤニが滲んでいるがこれはワックスのような感じだ。その上にレジンを塗り広げ、白色くんにお願いしてブラックライトで硬化する。
作業の途中で、切り株で遊びたいと言ってきたハロルドを出す。
『わーい、たのしい』
切り株をぴょんぴょん飛んで遊ぶ白馬が可愛くてたまらんぜ。
椅子はいつも使っている手持ちの白いガーデンセットのものを四つ出す。ふわふわのクッションも置く。
切り株のテーブルの真ん中に、二つのスリーティアーズを置いて、一番下にサンドイッチ。真ん中にスコーンが手持ちに無くて、シフォンケーキとバームクーヘン、一番上には葡萄のゼリー寄せ。
他には、唐揚げと肉団子など男子向けのものもスリーティアーズの下に展開する。もちろんサラダもね。
そして、ティーポットをはじめ茶器もセット。
すぅー
「ローダサムパーティーのみんな―、ランチだよー」
“おうじ、アヌビリがとおい”
「おっと、どうしようかな」
『ぼくが、むかえにいってくる』
「おねがいします」
角も羽も出して飛んでいくペガコーン。のびのびしているよ。
「わあ、完璧なティータイムね。このテーブルは切り株なの?」
「いいでしょ」
「後で下から切って頂戴!」
「いいよ」
ローナが座るのにレオラが椅子を引いたりしている。
「ありがと」
レオラが座ろうとすると、ハロルドに乗ったアヌビリが戻ってきた。
「おおっ、こっち半分がすごいな」
「そっちは、シュンスケ一人でやったのよ」
「ローナの方はまだ収納してないから捗ってないように見えるだけだよ」
「「そんなことはない」」
「ほんとにずるいわ」
「へへへ。とにかく食べようよ」
「ええ」
冒険者の格好をしてても育ちの良さが出る、テーブルでのローナ姫。
「このケーキはなあに?シンプルだけどおいしいわね」
「これはシフォンケーキ。スポンジケーキの仲間で、このホイップクリームを付けながら食べてね」
「美味しいわね」
「でしょ」
「紅茶に合うな」
「で、こっちの切り株みたいなのは?」
「こっちはバームクーヘン。棒に生地をまきつけながら焼いてを繰り返すんだよ。焼いた後がこういう模様になるんだ」
「なるほどねー、そういえば普通の切り株はこっちのバームクーヘンみたいになるけど、ここの河原の切り株はシフォンケーキみたいね」
「だよねー。俺もたまたま、ここにケーキを出してて思った。サーペントウリンって木材は面白そうだよな。こんどカルピン木材店でも教えてもらって、この木材の活用方法を勉強しようかと思ってるんだ。めちゃくちゃ沢山あるんだもん。全部売れたらいいけど、売れ残ったら俺が何か活用したいな」
「そうだな。その前に緑化した砂漠で住宅建設が始まるんじゃないのか?」
「なるほど!そうだ。アヌビリ!
そのためにもカルピンさんに仮設住宅を組んどいてもらおうかな」
「仮設住宅?」
「テラスハウスみたいなもので、大勢で住めるんだよ」
「わが国でも災害用に備蓄する設備にも用意しているぞ。レオラ。国の兵なら知っておいた方がいい。この任務がおわったら教えよう」
「お願いしますローナ殿下」
「はあ、お腹膨れたら眠くなるな」
「シュンスケはお子様だからなおさらだろ」
「むう、成長しないのに眠くなるのはどういうことなんだろうな」
「ははは」
「きっとあの無尽蔵な魔力を取り込んでいるのでは?」
「ならしょうがないな。
よし、作業を再開しよう」
「「「おお」」」
昼からは川の北半分の伐採をしては、ローナたちが切ったものと一緒にサブボックスに入れていく。
「シュンスケ!魔木がでたわ!」
「なに?トレント?」
「違うわこれは・・・フェイクパインよ」
偽物の松?
「あの、針金ヒヒより鋭い針のような葉っぱを飛ばしてくるの」
「そりゃ厄介だ」
「あれは、てっぺんの方に顔の付いたこぶがあって、それをそぎ落とすか根元から切り倒せば討伐できる」
「てっぺんの顔?」
「ああ、普通はフルメタルプレートの鎧を着て、根元を切り倒すのだ」
なるほど
「顔見に行ってくる」
「え?こら!」
俺はフェイクパインの上の方に飛んでいく。
最近翅を出すと、五十メートルぐらいまでは、まるで瞬間移動?ってぐらい高速で動くことができるようになっている。
フェイクパインが、俺に針の葉っぱを飛ばして来ようとするが、間に合っていないんだよな。
「へへーん遅いぜー」
フェイクパインは高さ約三十メートル。
その上から八メートルぐらいの枝の隙間に顔があった。
おれは、精霊ちゃんサイズに小さくなっていく。
枝の隙間をすり抜けるためにね。
そうして顔のそばに行く。
うーん、松の樹皮というより、梅干しのようなしわしわの顔だ。
「おまえ、けっこう爺さん?」
すると
むぅーん
あ、怒らせちゃった。
まあいいや、俺はフェイクパインの顔の眉間に、小さい妖精ちゃんのまま水と風をミックスしたビームを打ち込・・・めたじゃん。
すると、全身に生えていた針の葉っぱがばらばらと落ちて根元に積み重なっていく。
俺は、いつもの六才児サイズに戻りながら地上に降りていく。
「この針って使い道あるの?」
「乾燥すればよい着火剤になるぜ」
「えーそれだけ?」
「それだけだ」
裁縫に活用できる、ハリガネヒヒの毛の方が価値あるんだね。
風の女神のミッドソードを構える。
「皆少し離れてね」
「わかった」
バシッ
シュッ
「うわ、魔木でも一瞬だ」
「シュンスケ、貴方本当にAランク?」
「もちろん。
あ、こいつは根っこも抜いておいた方が良いよね」
「そうだな」
「んじゃこのままサブボックスに入れられるかな~」
魔木の切り株に触れて、根っこの先まで意識してサブボックスに入れる。
「よし入った」
「結構すごい穴が開いたわね」
「そうだな」
「さっき、払ったサーペントウリンの枝を突っ込んでおこうかな」
“おうちゃくだめ”
「すみません。じゃあ土魔法で」
緑色ちゃんに叱られたので、魔法で土を馴らして穴を埋める。
河にするんだから、しっかり固めて、水があまりしみこまないように・・・
そうして十キロにわたる河原がお目見えした。今日はここで終わり。
また、土手にドアを取り付けて、アナザーワールドで一泊する。
「シュンスケ」
「なに?」
「やっぱりテント不要だったんじゃねえか?」
王都のギルドで買ったやつでしょ?分かってるって。
キャンプ用品って、要らなくてもつい買っちゃうよね。
「まあ、いざという時に使うさ!」
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