表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
175/245

157【緑の河の復路】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 「新しいパーティの申請をお願いします」

 パーティ申請の手続きをトルネキ王国の港町、ラオポルテでする。

 今回のパーティー編成の書類は、トルネキ王の勅命印の依頼書と二枚セットになっている特別なもの。俺たちは、もちろんVIPなローナ王女と彼女を合わせて三人もAランクが居るのでギルマスの執務室で提出した。

 俺は、ステータスに入れられているウリアゴパーティーと重なって登録された。


「この、パーティー名の〈ローダサム〉はローナ殿下から取ったのですか?」

 ラオポルテのギルド長はハーフエルフの元Sランク冒険者だ。


「何言ってんの、風の女神さまの息子(ローダサム)はこの子でしょ!ロードランダの王子!ギルマスは一応ハーフエルフなんでしよ?」

「なるほど、失礼しました。シュバイツ殿下、先日沢山の肉食地竜を売ってくださった方ですね」

「はあ。まあ、冒険者としては駿介のほうで名乗らせてください」

「わかりました。では、申請を受理しました」

「あ、追加の魔法の袋を、地竜用(時間停止付き)と、木材用と売ってください」

「分かりました。きみ、用意を」

 ギルマスが彼の後ろに立っていた、秘書の女性に取りに行かせた。


 大量に買うし大金を払うから、受付でなくここで買ってしまおう。


 王宮で晩御飯を食べた次の朝、冒険者の装束になった俺たち四人は噴水の中庭に集合した。昨日のエキゾチックなドレス姿と打って変わって、アリサねえちゃんの装備を数ランク高価にしたような扮装でローナ殿下は現れた。黒メッシュが入った金髪は後ろで一つに括っている。つまり、肩も腕も太ももも谷間もむき出しだった。防御って知ってる?俺達三人の目の保養にはいいんだけどさ。三人ともそういうのにはドライだからなぁ。

 そして、シンプルで使い勝手がよさそうだけど秘めた高級感いっぱいの槍をお持ちだ。


 レオラは騎兵隊時よりは軽装だけど、メタリックなプレートで要所をカバーしている。

 自分はともかく、一緒のパーティーがしっかり防護していると安心するよね。そして背中に俺が以前ラーズベルトのインテルさんのところで作った無限に矢が撃てる靭を貸し出した。弓って矢が尽きるとどうしようもないもんね。


 だけど、アヌビリが肩と胸にしか防護していない。その下はただのシャツだ。

「アヌビリ、もうすこし体を覆った方がいいんじゃない?」

「俺は今回盾だからな、こんなごっつい盾を持ってるだけで重量があるんだから、体を纏うのは軽いに越したことはない」

「えーそうなの?」

 日本人の常識(ゲームの経験)がここでは通じないのか・・・。

 そして、アヌビリは背中に大剣も持っている。初めて会った時にウリサ兄さんが背負ってたような奴だ。

 さすが金狼はパワーが違うぜ。


「そういうシュンスケは軽装過ぎないか?」

 レオラの台詞に

「ふふーん、俺は最強の防具なんだ!なんといってもモササの鱗で、ラーズベルトのインテルさんに作ってもらった皮鎧を着こんでいるからな」

 とTシャツの下をペロッとめくった。

「うわ、光っとる」

「でしょ?上に着ると光りすぎるのがちょっとね。だからいつもインナーにしているんだよ」

「お前の体格だと、モササの鱗二枚ぐらいで足りたんじゃないのか」

「そうだけどな。

 んじゃ、その扉をラオポルテの冒険者ギルドにつなげるよ」

「分かったわ」

「たのむ」

「やた、直行なんだ」


 俺が借りていた部屋の扉を開けて、あっちの冒険者ギルドに入る。


「あら、アヌビリ様にシュンスケ様お帰りなさい、それからローナ姫とレオラ様、なんかすごい四人組ですね」

「ローナ姫というVIPが居ますので、ギルマスに対応していただきたいのですが」

 俺がリーダーだと言われていたから、自分でお願いする。

「ちょっと、あんたの方がVIPなんだからね。シュバイツ殿下」


「聞いております、こちらへどうぞ」

 くすくす可愛らしく笑いながら受付嬢が案内に動く。


 というわけで俺たちは、パーティー申請をして、国王陛下勅命の依頼をこなすべく冒険を開始した。


 まずは河口から。


 ここはいろいろな物が堆積していて、三角州のような砂地になっている。そのおかげで海水が逆流していないんだね。だけど、ガスマニアの王都に比べたら漁獲量が少ないそうだ。川からの栄養って海の魚にも影響あるって聞いたことあるもんな。

 でも、河口の掘り起こしは最後だな。水を流す直前だ。


「じゃあ、始めよう!」


 まずは、話の分かる地竜だ。家族が居れば家族単位、いなければ単独で、アナザーワールドに新しく作ったエリアにご招待。

 一番下流に居た一家に今回それ用に作ったゲートを通ってもらう。


「どう?」

 “おいしそうな、おはながいっぱい”

 “え?このくだものも、たべちゃってもいいの?”

「良いぞ」


 こいつらは花や木の実を好んで食べる。もちろん普通に草や木の葉も。先住のプウやポウと同じ種族だと思う。

 好みの植物が生えてるエリアの隣には巣になる洞窟のある崖も用意している。

 今回、地竜の家族の数だけ洞窟を作ってある。


「気に入ったならよし」

 

 次は話の出来る肉食地竜だ。ちょっと小型。とはいえ頭までの高さは二メートルは超えているし尻尾までの体長は四メートル以上ある。

 さっきの草食地竜よりは少し小さいと言え、人々からすれば脅威だ。


 “自分たちも保護してくれるので?”

「ああ、こちらが用意した食事で良かったら構わない」

 “助かります。自分たち、狩りは下手で不器用だからぐちゃぐちゃにしてしまうんですよ”

「それは強すぎるからかもしれないなぁ」

 でも会話は知性的だ。


「とりあえずこっちにお願いするね」

 “わかりました”

 ゲートを、いつもの湖のある所から数キロは離れた森の中に開ける。

 ここならちょっとした鳥や繁殖の早い動物なども放しているので、スフィンクスが忙しくて来れなくても自分で刈れるだろう。


 『私が誘導します』

「頼んだよスフィンクス」


 地竜を保護しては伐採をしていく。

「みなさん、ここら辺はもう大丈夫です」

「おう!」

 他の三人は他の魔物を討伐していく。

 牙の生えた豹の魔物も普通なら災害級なので、Aランクのパーティー皆で倒す獲物だが、ローナ姫はひょいとジャンプすると、脳天に槍を一撃だ。

 すると最高級の毛皮になるそうだ。俺もそうするけどね。


 サルの魔物は屑魔石しかないので、遠慮なくレオラが弓で射っている。

「シュンスケ、この靭良いなあ」

「でしょ」

「無限に射れるのってすごい。騎兵隊で装備として導入したいな」

「ほんとうね」

「ははは、そうですね。武器の商売は、悪用されないような何かが必要とは思いますけどね」

「そうだな、これを持ったままトンずらした奴が、盗賊とか戦争の敵国とかに行かれたらやばいか」

「でしょ」


 ドスーン

 なんだなんだ


 衝撃が来て、周りの木々が震えている。

「アヌビリよ」

 見ればアヌビリがでっかいイノシシの魔物顔を大きな盾でぶっ叩いている。

「ちっ、盾で攻撃するのは効率が悪いな」

 でしょうね。

 みると腰のマジックポーチに盾を仕舞って背中の大剣を構えている。

 彼の視線の先には次のイノシシの魔物。

「ぅらあっ」


 アヌビリの攻撃を始めてみるけど、完全な力業だな。

 大剣だってまるで盾の様に重量を利用した攻撃だ。

 均整の取れた体格だが、そんなにマッチョには見えなかったんだがなー。


 『シュンスケ、上!よ』

 今回、索敵担当はもちろん蜜蜂と精霊ちゃん達。

 クインビー隊は木の上の方を担当してもらっている。


「飛んできます!」

「気をつけろよ」


 人間族状態に精霊の翅だけ出して木の上に上がる。

「飛竜か」

 『あの子たちが岸に上がるとまずいわよ』

「まかせて。あの子の友達とは話したことあるんだ」


「おーい!君たちに話があるんだけど」

 “あんたがおうじね”

「引越しない?」

 “草食の地竜に聞いたわ”

「俺の空間にも地竜が一匹いてさ、友達を欲しがっているんだよ」

 “まあ、仲良くなれるかしら”

「気に入らなければ、違う地域で住めばいいさ。俺の空間はかなり広いんだ」

 “この河より?”

「この河より」

 “じゃあ行ってみるわ”

「どうぞこっちだよ」

 そうして空間に丸いゲートを開ける。


 “まあーなんて気持ちのいいマナにあふれているんでしょう”

「気に入ってくれた?」

 “もちろんよ、これなら他の飛竜も気に入るはずよ”

「じゃあ、きみ、河の飛竜たちをお誘いしてくれる?」

 “いいわよ。結構いるけど大丈夫?”

「広かったでしょ?」

 “確かに”

「じゃあこのゲートを開けておくから、みんながくぐり終わったら蜜蜂に言ってくれる?」

 “わかったわ、蜜蜂さん達もてつだって”

 『ほほほ、了解よ、みんな行っておいで!』

 ぶーんん


 飛竜はこれで解決だな。

 ゲートを開けていると、飛竜以外の野鳥なんかも潜り込んでいる。

 ああ、黄色ちゃん達も誘導してくれているんだね。


 “こっちよこっち!”

 “こっちのほうが、くうきも、おみずも、おいしいわよ”

 “いかした、すばこもあるぜ”

 “ここより、あつくないぜ”


 そういえば、ポリゴンの孤児院の大きめの男の子たちに巣箱を工作してもらってたんだ。


 “おうじ、あぬびりがよんでる”

「りょうかい」


 アヌビリの近くに降りていこうとすると、彼の視線の先に一頭の鹿が、そばにもう一頭。番かな?

 メスの方に豹の魔物が狙いをつけている。

 “豹を上からやって鹿をアナザーワールドに連れていくよってアヌビリに伝えて赤色くん”

 “おっけー”

 アヌビリが頷くのを確認して、


 プシュっ

 いつものように脳天に風と水のビームを一撃で。


 倒れこむヒョウをサブボックスに静かに入れる。

 そして、鹿のカップルに話しかけてみる。


 『君達、魔物の少ない所に行かないかい?』

 『どこ?』

 『おれの空間だけどな』

 『子供たちがあっちの方にいるのだ』

 “鹿の子供さがして”

 “にひきいる”


 『子供をつれてくるよ』

 『お願いする』


 黄色ちゃんに教わった地点に行くと、生まれたてって感じのバンビが二匹いた。さっきの豹から離すために、夫婦で頑張っていたのだろう。

 俺は子供の鹿を親の元へ連れては、アナザーワールドへの扉を開く。


 さっきの肉食地竜もいるかもしれないけど、今回の扉は結構離れているはずだ。まあ、屋敷から見えていないところは基本普通の自然だから、弱肉強食状態だろう。

 俺たちが川を河に変えるような理不尽な被害さえなければいいということで、どんどん動物たちを保護していく。


 そうやって、一つの所に固まるのではなくアナザーワールドのあちらこちらに河の生き物を放していく。


 河口に近いスタート地点から十キロ地点までの生き物を討伐及び保護した。

 河とは言え、森の日暮れは早い。

「そろそろ、今日は終わりましょうか」

「そうですね、昼間の生き物はこれでいいでしょう」


 そうして、河原から上がって河岸でみんなが休憩しつつ今日の整理を。


「こっちの袋にもう豹が十頭は入ってるわ」

「ローナ姫、Aランクって嘘でしょう」

「そういうシュンスケこそ、凶悪な肉食地竜を何頭刈ったのよ」

「えーっと俺も十かな。アヌビリは?」

「俺は順当に、イノシシばかり三十だな」


「河口から十キロでこれって多くない?」

「多いと思うわ。こいつらが溢れると思うとぞっとするわ」


「思ったよりサルは少なかったな」

「あいつらは頭がいいから、俺らが入ってきたところで別のところに移動したんだろう」

「うーん、河の中で移動するならいいけど、岸に上がられたらいやだね」

「そうだな、精霊たちにも見てもらっているけど、今回は無さそうだったけど」

「あ?アヌビリいつから精霊魔法使えるようになってるんだ?」

「ああ、シュンスケと行動していると使えるようになる奴いるみたいだぜ」

「なんですって!さすがだわ」

「ふふふ」

「ねえ、シュンスケ、あたしにも精霊を紹介して?」

「では、今夜はアナザーワールドで休みましょうか。そうすれば中の精霊ちゃんに会えますよ」

「ほんと?」


「やった、俺あそこの風呂が楽しみなんだ」

 珍しくアヌビリが子供っぽくはしゃいでいる。

「それは何よりだよアヌビリ」

「へえお風呂もあるんだ」


「では、繋げましょうかね」

 街道に扉を出すと目立つので、もう一度河原に行って、堤防に扉をくっつける。

「ではどうぞ」

 いきなり屋敷の玄関ホールに繋げる。

「ふわわ、すごーい」

 『皆様お疲れ様です』

「悪いねスフィンクス」

 『いえいえ、大丈夫ですよ』


 “ろーなはこっち”

「え?あ。精霊ちゃん!可愛いわ~」

 “じょしのおふろは、あたしたちがあんないするの”

「おねがいします!」


「皆頼んだよ!」

 “まかせて!”


 そうして、河原掃除の一日目が終わった。


グッドボタンお願いします♪

お星さまありがとうございます。

ブックマークして頂くと励みになります!

それからそれから、感想とかって もらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ