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156【新たなパーティー】

今日も一日雨でしたね。雨の日の読書にどうぞ

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 二十歳の楽しい誕生会の翌日、俺はまたトルネキ王国の港町ラオポルテの冒険者ギルドに飛ぶ。今回もアヌビリが「暇だから」の一言で付き合ってくれる。


「結局ガキのサイズのままかよ」

「気が済んだから」


 大人になってみたかった。ズバリそれだけだったのかも。


 今朝、久しぶりに城で目覚めて、大人サイズのパジャマが開襟衿がずれて脱げ落ち(上の方留めてなかった)、トイレに行こうと立ち上がったら下半身はゆるゆるになったボクサーパンイチになってしまった(トランクスなら脱げてたかもしれん)

 これでは、大人になったところで女の子をアレする(なにかは察して!)とか無理だし。


 気になってた、はしゃいで飲みすぎたワインやエールの二日酔いがなくてよかった。

 一度くらい体験してみたかったとは思ってるけどさ。素でうっすら光ってしまう体質が、自分自身の状態異常を消してしまうのかな。この光って光魔法みたいなもので、聖属性魔法の下位互換で一般的な治療魔法に使われているものに近いらしい。光っている俺のそばに近寄るだけで、擦り傷が治った人もいたことがある。


 それでも、小さいときはそれなりに風邪をひいて寝込んだり、食べ物にあたってお腹を壊したりしたんだけどな。転んで膝やひじをすりむいたりとかさ。あの時はちゃんと人間だったはず。

 でも、あの体験があるから、今も怪我や病気の人が俺が子供のころに体験したような、あるいはそれ以上のようなひどい症状なら、想像もできない痛さや辛さだろうなって思うから、何とかしてあげたいって思うんだ。


 大人になることへの渇望は昨日の一日ですっかり治まったかもしれない。

 種族は違うけど、ほぼ年齢不詳の両親の話を色んな人から聞いていると大人になってからの時間はいやというほどありそうだから、開き直って子供として生きていくのを楽しんじゃえ。ってやっと考えることが出来た。

 まあ、無理にワザと可愛い子ぶるのはできないけどな。考えただけで鳥肌も出るし。


 さて、ラオポルテの冒険者ギルドに意識も戻ろう。

 改めてギルドの図書室にお邪魔して、俺が今調査している地竜や魔物だらけの木の河の資料を読ませてもらう。


 今更だが、改めてこの河の名前は〈グリーンサーペント〉まんま緑色の大蛇だ。支流が流れ込み、緑が生えてくるまでの範囲の河の名前だ。その向こうはまた違う名前らしい。


「ふーん、昔はもっと水もあって、そこから人家や畑に持ってきていたんだな」

「うん、いまは水量が少なすぎて、雨水をためたりして凌いでると」

「ここら辺は雨は降るからな」

「雨季とかはないの?」

「俺の爺さんの時代ぐらいまではあったらしいが、だんだんなくなって、五日も雨天が続けば多いほうかな」

 金狼族は北のほうの種族らしいが、曾祖母が極度の寒がりで、暖かい地域を目指してこちらに移住したらしい。代々冒険者をしていたらしいが、ご両親はもう引退していて、結局北寄りのトラ人族の王国で酪農を過ごしているらしい。


「雨季の時期はいつぐらい?」

「まさしく今のはずだ」


 二人して図書室の窓を見る。

「雨季の空色じゃないね」

 砂漠で見たような晴天だ。

「だな、今年も水不足でギャーギャー言いそうだな」

「ということは、この町も河は増水したほうがいいよね」

「そうだ」

「今年中は無理かもしれないけどな。ぱっとやるべきものでもないしな」


 森林と化してる河原で生息している生物のリストから、保護すべきものと討伐すべきものを分けて書き出していく。


「植物はどうだろう」

「見るとほぼ平地の向こうの森林とかぶっているな。固有種はないだろう」

「トレント?こういうのもあるけど」

「それは、魔木だから根絶やしにしていい。素材としてはいい稼ぎになるだろうが、普通は収納ができないから、せいぜい魔法袋に枝を入れていくぐらいだな」


 俺が肉食地竜の買取のために用意した冒険者ギルドの袋も、容量はあっても、大きさの制限があって、解体しないと入らなかったのだ。

 森の木を一本丸ごと入れるのは無理で、木材としての規格サイズにすれば入れられる魔法袋や箱はある。

 カルピン木材店や、サリオの商隊が運んでいた袋や箱などだ。


 でも、丸ごとをカルピン木材店にもっていって加工したりそのまま彼女に売ってもいいよね。そして、もともと産地であるこのトルネキ王国に売上税を払えばいいそうだ。


 場合によっては根っこごと買い取ってアナザーワールドに植えても良いよな。


 そんな諸々のレポートをもって、一度王宮に転移する。


「帰りは一瞬なんだな」

「ははは、一度行ったところは転移できるんだよ」

「距離も関係ないんだよな。ユグドラシル様までは結構あったし、いや、セイレンヌアイランドも相当あるよな」

「そうだね」


 どんなに距離があっても行けそうだけど、世界の違う地球には行けないんだけどね。

 何度かチャレンジはしたんだよね。


 少し大きなことをするには、必ずその国の長の断わりや相談をしなくちゃいけない。

 責任ってそういうことだよね。


 俺が今日お伺いすることは、朝ラオポルテの冒険者ギルドがら魔道具でお知らせしてもらった。

「お帰り、シュバイツ王子」


 そうそう、今日は変身はなしで、緑銀色の髪に尖った耳と翅も出している。

「ただいま、アントニオ王太子殿下」俺の家じゃないんだけど。


「今日は宮殿に滞在するだろう?」

「そうですね、お言葉に甘えさせてもらっても?」

「もちろん、アヌビリも部屋を用意しているよ」

「ありがとうございます」

 殿下の前ではちゃんと敬語を使うアヌビリ。


「じゃあ、夕食に呼ぶからそれまで休憩していて、殿下の部屋は前と同じところ」

「わかりました」


 豊かな水をたたえている噴水の周りの花壇もすっかり緑が復活して、精霊ちゃんがちょこちょこと遊んでいる。


 “おうじおかえり”

 “俺の家じゃないけどな(二回目)”

 “おうじのいえは、どこでもおうじのいえ”

 “どういうこと?”

 “せいれいのいるところは、おうじのいえ”

 “それはちょっと・・・気を使わないところが俺の家であってほしい”


 ロードランダの王城の超広い俺の部屋でさえ数えるほどしか寝泊まりしていない。むしろギルドの狭い宿のほうが落ち着くんだけどな。


 もしかして、精霊ちゃんサイズになって、葉っぱとかに寝るほうが落ち着くのか・・・?

 まだ、そこまで精霊ちゃんをしたことはない。


 さて、王様も一緒になるといわれている夕食のための着替えに、以前マツと借りた部屋に一人でたどり着くと、侍女長のベージュさんがドアを開けてくれた。


「何か御用がありましたら、テーブルのベルを鳴らしてくださいませ」

「ありがとうございます。今は大丈夫です」


 シャワーを借りて、晩餐向けの服装に着替える。

 ええ、母さんが入れてくれている七五三用のスーツがまだ入ります。

 昨日は二十歳の誕生日会だったのに、しくしく。


 廊下に出るとアヌビリが来ていた、今日は彼も晩餐の客なので、インフォーマルだけど動きやすそうな服装だ。

 アヌビリの隣には騎兵隊長のレオラ。


「こんばんはシュバイツ殿下」

「こんばんは」

「今夜は、自分は殿下の護衛に当たらせていだだきます」

「そうなんですね」

「形は大事ってことだな」

 アヌビリが言う。


 晩餐の会場に行くと、俺がシュトラ王の隣で、反対側はローナ王女殿下だった。

「こんばんはローナ フォン トルネキ王女殿下」

 彼女の右手を取って指先にキスを。俺がするのはなかなかないのだ・・・。


「シュバイツ殿下、昨日は二十歳のお誕生日おめでとうございます。ギルドで聞きましたよ、人間族の二十歳の殿下の教会でのお姿は素晴らしい青年だったと。私も二十歳の殿下にお会いしたいですわ」

「ははは、あれは変身魔法で無理やりでしたので。本来はこっちなんですよ」

「そうですか?今でも六才児とは思えない身のこなしでしてよ」

「ありがとうございます」


 そして、アントニオ殿下とプローモ殿下もテーブルについていた。


 食事が終わり、テーブルが会議仕様に整えられた後、シュトラ王が口を開く。


「さて、グリーンサーペント河を本来の水の流れる河に戻すという計画だが、ぜひ実現させたいと思う。今年はラオポルテでさえ雨が少ないというからな、湖が復活したとはいえ王都から東はさらに深刻だ。こちらの川も将来的には復活させたいものだ」


 その言葉に皆が頷いている。


「とはいえ、河の中の森には凶悪な肉食地竜と、凶悪ではないが大きいだけで脅威なとなる草食地竜、そのほかの面倒な魔物や猛獣、そして、魔木をはじめとする大量な樹木があります。それらをそのままに、水だけを流すと、それらが溢れて岸の上の街道や街、農場などに甚大な被害をもたらすかもしれません。最悪水もあふれて洪水となるでしょう」

 俺が事前に伝えていたレポートを見ていたアントニオ殿下が続く。

「そこで、それらを討伐して伐採して、きれいにしてから水を流すということですね」

 ローナ王女が黒のメッシュが入った豊かな金髪を煌めかせて話す。


「そうだ、シュバイツ殿下が協力してくれる今しかできないことだと思う」

「王国の許可が出れば、最大限に頑張りますよ!」

 グリーンサーペント河が復活してほしいという王国の意向が聞けたなら、遠慮はいらないよな。


「かといって、シュバイツ殿下だけにお願いするのは無責任すぎると思うので、今回は王国の代表としてローナにも参加してほしいと思っている」


「わかりました」

「ローナ王女、よろしくお願いします」

「シュバイツ殿下、作戦中は冒険者として動くので、ローナと呼び捨てでお願いしますね」

「わかりました。おれは駿介と呼んでください」

「シュンスケねわかったわ」

 そして、ローナ殿下の護衛もかねてレオラが今回は騎兵隊長の任を外れて、参加する。

 もともとローナとレオラとアヌビリは冒険活動で同行することもあるらしいので、完全な即席パーティーよりは信頼関係がありそうでいいよな。


 情報を追加すると、ローナ王女は二十一歳で、日本の感覚でいうと俺の同級生に当たる。そのうえなんと冒険者でAランクの実力をお持ちだそうだ。

 それにしたら、種族なのか立場なのかすごく大人っぽくてしっかりした女性なのだ。

 冒険者になりたての頃は、アヌビリとも依頼をこなしていたみたいだ。その時からアヌビリは同じ年でBランクのレオラと護衛ポジションもやっていたのかもしれないな。王族や高位貴族の冒険者はたいていパーティーに従者や護衛がいるもんな。カーリンにもいたしね。


 それでもAランクとは、位の高い冒険者にしてはトップクラスだろう。

「あら、シュバイツ殿下こそ、冒険者になって半年足らずでクラーケンを討伐したってお聞きしましたけど?」

 あ。確かに。

「あれはたまたま運よく討伐できたので・・・」

「運よく一人でクラーケンを討伐したなんて、他の冒険者に言ってはいけませんよ。

 アヌビリにもいつも言ってるんですけどね」

「そういえば、まだ十九歳のアヌビリが十六歳の時にAランクになったいきさつを聞いてないな」

「俺もたまたまAランクの魔物に出くわして、一人で討伐しただけだ」


 晩餐とミーティングが終わって、新たに組むパーティーメンバー四人が宮殿の回廊を歩きながら話している。


「Aランクの魔物って何?」

「ミノタウロスぐらいの大きさのスナギツネだ」

「あれってAランクだったんだ!」

「知らないのか?」

「帝都のダンジョンで大量に出てさ」

「帝都の遠足のダンジョン?」

「そうそう」

「私も帝都の留学してた時に、ダンジョンにチャレンジしたことがあったわ。時間切れで十五階層までしか行ってないけど」

 おや、ローナ王女は先輩なんだ。


「あそこ三十一階層から砂漠で・・・冒険者ライセンス持ちは同じライセンスの人としか潜れなくて」

「そうだったわ、あの時私はCランクで二人ほど一緒に潜ったわ」

「俺の時は同じランクはほかにいなかったから、一人で潜ったんだ。三十一階から下の砂漠は、スナギツネばっかり出て、最初のうちは討伐していたんけどだけど、めんどくさくなって途中からハロルドで飛び越えて階層ボスだけ倒してたりしたんだよ」

「階層ボスのスナギツネ・・・」


「アヌビリはスナギツネをどんな手で倒したんだ?」

 やっとアヌビリにため口が言えるようになった。


「あいつらは、電気に弱いんだ。だから雷撃の魔道具で。しかし雷撃の魔道具は自分の魔力がある程度必要だし、一メートルほど近づかないとダメなんだ」

「電気かー、それを知ってたら苦労しなかったのに!

 それで、一メートルも近づけたんだ」

「あの時は不意打ちで視線を逸らすことができたんだよ」

「なるほど、すごいな」

「シュンスケはダンジョンでどうやって討伐したんだ」

「それは大量の水魔法で、それはそれは離れたところからじゃーっと」

「なるほど、たしかにシュンスケならではだな」

「リンドラーク湖の嵩の水を運べるんですものね」

 はい、今もそれの五杯分ぐらいの水をサードボックスに入れてます。


「それで、そのダンジョンのどこまで潜ったんだ?」

「五十階が最下層で」

「そうだったんだ」

「ダンジョンボスがスフィンクスだったんだ」

「なっ!」

 びっくりするアヌビリが珍しかったらしく、

「どうしたんだ?アヌビリ?」

 レオラが聞く。


「スフィンクス様は、シュンスケのアナザーワールドやセイレンヌアイランドで侍従とか執事のようなことをしている高位精霊で、強いというよりすごい方なんだよ」

「へえ、お会いしたいわ」

「グリーンサーペント河での活動の途中で彼に会うこともあるでしょう。その時に紹介しますよ」

「だな」

「たのしみ!」

「彼の料理はうまいんだぜ」

「高位精霊の料理・・・想像がつかない」

「本当だよな」


「ところで、シュンスケはダンジョンボスのスフィンクス様にどうやって勝ったんだ?」

「なぞなぞで」

「へ?」

「俺の生まれ故郷ではスフィンクスの伝説があってさ、なぞなぞで挑んでくるって有名だったんだ」

「へえ」

「だから、全然戦ってないよ」

「さすが、シュバイツ殿下だわ」

「何がさすがなの?」

 わからない。

「物理的に強いことだけが強いってわけじゃないってことよ」

「だな。俺もシュンスケと行動してよくわかるぜ」

「信頼してくれる存在が多いほうが、力の頂点にいるより上の存在になるのさ」

「?」

 よくわからない。


「シュンスケの場合は、お前のためなら女神さまたちや元精霊王だって動くだろう?」

 それは、親とか親戚とかそういう枠だから・・・。

「そんなこと、精霊王自身だったロードランダ王以外の国のトップにはありえないからな」

「そうそう」

 アヌビリのセリフにほかの二人もうなずいている。


 確かに俺も、いろいろチートだよな。

 そのチートを自分の私利私欲に使わなければいいと思うけどね。


 そして、見た目が一番ちびっこの俺がリーダーのほぼ同世代の四人パーティーが組まれた。

 アヌビリが盾、ローナが槍、レオラが弓、俺が魔法という組み合わせだ。


「パーティー名は?」

「ローダサム(風の女神の息子)よ」

「えー」

「明日朝冒険者ギルドで登録するわよ」

「・・・はい」


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