155【俺だけ二十歳のつどい】
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田中駿介、東京で生まれて今日で二十歳になりました。
二か月半ぐらい前、俺がカウベルドで悪魔のミノタウロスを捕まえてゴブリン達を保護したり大量の子供を助けた後に、東京の中学の友人からメッセージが入ってて、≪二十歳の集い行かないのか?≫ってあったけど、≪海外留学中で欠席だ≫と返した。
それに、早生まれって集まったところでこっそり飲んじゃう人もいるかもしれないけど、本当は俺たちはアルコール禁止だもんな。いまいち取り残された感ありそうだし、なんて、みんなにも会いたい気持ちもあるけど、それよりこっちの世界が忙しいからさ。〈二十歳の集い〉そのものへの未練は無かった。正直。
さて、ゼポロ神のこの世界では七月に入ったところ。
携帯の異世界時間で日本は現在三月某日。
朝から、某サイトやメッセージアプリにお祝いのアイコンやGIFマークがあった。
そして、母さんからもケーキのスタンプが!
俺のことを忘れてないならそれでいいよなってプレゼントが別にありました!
ウエストポーチには大きな四角いバースデーケーキが入っていた!俺が以前メッセージに添付していた、ウユニ湖の様な塩湖でハロルドとタイマーで撮った写真がプリントされている、どちらの世界にもなさそうなすごいケーキだ。それに真っ白な生クリームと、日本の美味しい真っ赤なイチゴもぐるりと囲んでいる。
さすが風の女神様。というか、いろいろセンスのいいひとだ。
芸能人が祝ってもらってるケーキみたいだよ。
ケーキは城に着いて一番に厨房に立ち寄って渡しました。
王子っぽい衣装を着て、世界樹のユグドラシルをエスコートして城の会場にたどり着く。
大広間ではなくて、食堂だな。
城に到着したときに入り口で出迎えてくれてたメンバーのほかには、ガスマニア帝国のセイラード第三皇子や護衛のブリドとラス。それにカーリンも来てくれていた。クリスに頼んで招待状を出してもらいました。
二年生修了して夏休みだもんな。それでもありがたい。
父さんとユグドラシルに挟まれて席に着く。
そこへ、エメラルド色の葡萄でつくられた色鮮やかなスパークリングワインが配られる。
もちろんマツやアイラ達子供にはジュースか微炭酸のジュースだろう。
「それでは、皆さんの前のグラスをお取りください」
司会進行はクリス。彼のグラスもノンアルである。
父さんこと、ブランネージュ フォン ロードランダが立ち上がるのに合わせてみんなが立つ。
「では、シュバイツではなく、本日はタナカシュンスケの二十歳の誕生日を祝して、カンパーイ」
「「「カンパーイ」」」
「「「カンパーイ」」」
ぱちぱちぱちぱち
初めて飲むワイン。旨し。
「皆さんありがとうございます!」
まずは、食事会からスタートだ。
本日の前菜はフリルフリルマッシュルームを使ったもの。ロードランダの牛乳たっぷりのクリームスープ、ゴダが獲ってきてくれたマグロのチーズ焼き。ユグドラシルのシャーベット。メインは、スフィンクスがスパイスを擦りこんで下ごしらえした、肉食地竜のステーキ。そして俺がレシピを渡しておいた、イタリアンスパゲティ。
結構お腹が膨れて、テーブルが一度片付けられた。次がデザートかケーキだな、なんて思ってたら、部屋が暗くなってしまった。
そしてクリスが部屋の一角の壁に立つのを、何かの光魔法で照らされる。
「皆様、ここに、シュンスケさんのこれまでの映像が、彼の母親である風の女神、ローダ様などから届いているので、皆さんで楽しみましょう!」
クリスがその横飾りも何もない真っ白な壁を指差す。
「こちらをご覧ください」
「へ?」
そこには緑銀色の耳の尖った赤ん坊がふぎゃふぎゃと泣いている動画が映し出されていた。
緩やかなBGMも付けられている。
「「キャー可愛い!」」
カーリンとアリサが同時に同じセリフを言う。
『あらあら大変』
母さんの声と横顔が画面に入ってきて、赤ん坊のおでこにすかさずキスをすると、黒目黒髪の日本人に変身した。
「おお、まさしくローダ神様」
「なんと美しい母君様なのだ」
母さんの横顔にため息が聞こえる。
それからは、写真で見た覚えのある黒髪の父さんに抱っこされてあやされていたり、お座りして、おもちゃで遊んでいる様子、よちよちと歩き出す様子などが切り替わって映し出されている。
そんな動画を撮られていた記憶なんかないけど、普通に日本人の家庭のようにホームビデオを撮ってくれていたんだな。
歩き出したあとは、父さんも母さんも画面の中には映らなくなっちゃったけど、俺は、ビニールプールで遊んだり、近所の公園に出かけたり・・・ってその俺の手を取っているのは母さんじゃなくて、水の女神様じゃん!カメラマンが母さんなんだな。
保育園の体操服を着て、園の門の前で歩いてる写真はあっさり過ぎて、小学校の制服を着た入学式の動画。あ、あのズボンは、この世界に来た時に履き替えたやつ。
そこらへんは、今の普段の俺だな。
習ってたピアノの発表会で一曲弾いてお辞儀をする場面、剣道を習いだして、真剣に素振りに取り組んでいる様子も撮ってくれていた。
運動会のかけっこで、転びそうになりながらなんとか一着でゴールしたのは三年生ぐらいか。
母さんと二人で家族旅行として出かけた写真や動画も入っている。
そして、小学校の卒業式。もはや普段の俺よりは成長している。
中学校は古い学校だったから今どき珍しくなった学ランの制服だった。その入学式。一緒に映った母さんのワンピースは、こちらの教会にあるローダ神の衣装だ。
だんだん、成長するとともに少なくなる動画。それでも俺がちょくちょく母さんに送ってた写メをうまく編集して、静止画像に展開されていく。高校の入学式。また叔母様たちが入ってる!
学校の行事で海や山に行った時の画像やテーマパークで遊んだスナップ画像。
「ほんとにシュンスケは大きかったんだな」
「そうだな、だが今よりは緊張感のない顔だ」
黄色ちゃんが届けてくれた、アヌビリとウリサ兄さんのつぶやきに少し言い訳を考える。
そりゃね、魔物のない平和な日本で、バイト程度の労働をして平凡に過ごしていたんだもんな。
そして地球での映像が終わり、俺がこちらでちょくちょく撮ってはは母さんに送ってたスマホの画像が展開されていく。
ウリアゴのみんなと過ごしている写真、孤児院の可愛い子供たちの写真、海の家のお風呂の写真。大事な所はもちろん写さないっすよ。
水平線に沈んでいく夕焼けとか。
ガスマニア帝国国立学園に入学して、みんなと撮った写真。セイラードやカーリンも入ってます。
「まあ!」
「私もいれてくれているのだな」
そして、去年の学芸会の画像、これはひょっとして教授からプランツさんに渡ったのだろうか。
学園の画像以外には、ゴダやヴィーチャたちとセイレンヌアイランド行きの魔道フェリーに乗っている写真や、タイナロン様と巨大なクラーケンを裁いているところ、クラーケン焼きを焼いたり頬張ったりしているところ。
画面が切り替わって、ポリゴンのリンゴの木を桜に見立てて開催したお花見。
クリスに出会って、リーニング一家と撮った写真。
それから、ラーズベルト辺境伯で、美しいペガコーンのハロルドに会って、その背中に乗りながら撮ったシュバイツ湖のきらきらした水面の動画、こんなのは地球では無理。
パジャー子爵領で、子供たちと楽しんだ芋ほり。
そして、この城に王子として迎えてもらい、みんなにお披露目した場面。
ハロルドや、ユグドラシル、それにムーさんが浮かんでいる。これも、ファンタジーなゼポロ神の世界でしかありえない。
あれ?ここら辺の画像は俺のスマホじゃねえな。だって俺はハロルドに乗っているんだもん。
もしかして父さんはこの時からスマホをお持ち?
で、年が変わる瞬間に、隣の教会で父さんとミサをしたところ。ほらねきっとプランツさんあたりが父さんのスマホで撮ってるんだよ。
それから、アナザーワールドで地竜やゴブリンと六才児の俺が遊んでいる写真。
次は、本当に誰が撮ったのか!レオナルド公爵領で、女神様に扮すべく大人の女性になって舞台に立ったり歌ったりした映像。
そして場面がかわって、トルネキ王国の王都の三日月湖で白龍のミグマーリと出会い、湖の上で彼女とムーさんとハロルドという奇跡の風景が映し出される。
「おおおおっこれもなかなか貴重なシーンですな」
プランツさん?貴方が押さえたのではないの?
“このあたりのがぞうは、おれさまが、おうさまにたのまれていたのさ”
まさかの、白色くんの仕業でした。
ちなみに、壁に画像を映し出してるのも他の白色くん。BGMは黄色ちゃんの担当である。
最後に、ウユニ湖のように鏡面になった塩湖でハロルドと撮った写真で動画が終わる。
・・・長かった!
「「「「わーすごいー」」」」
「「「「きれー」」」」
「「何処だこれ」」
アントニオ殿下たち。あの湖は観光名所に出来そうですよ。
部屋が明るくなると、さっきの映像のラストシーンが使われたバースデーケーキが登場した。
こちらの文字で20の数字をかたどったろうそくが刺さっている。そして赤色くんが点火!
「では、私が歌いますので、皆さん手拍子をお願いします」
去年と同じように父さんがギターを抱えて、誕生日の歌を歌ってくれる。
~ハッピーバースデイ トゥ 駿介~
このイケボを去年はカーリンに聞かせたかったと思ったけど、今年は聞けたね。
そう思ってカーリンを見ると、父さんじゃなくて、彼女の視線が俺に向いていた。
「うん?」
「な、何でもないわ」
とりあえず、ろうそくの火を吹き消さなきゃ。
二本しか立ってないからすぐだけどね。
ふーっ
ぱちぱちぱちぱちぱち
わーおめでとー
そして、バースデーケーキを切り分けてもらう。
俺とハロルドの顔の部分は、マツに差し上げる。
「えー、こんなのたべられないよー」
「んじゃ、俺が。ほらあーん」
スプーンを差し出すと観念する。
「あーん」
うん、安定の可愛さだ。
「どう?」
「おいしーっ」
「だろう!そしてこの、イチゴをどうぞ。あーん」
「あーん」
猫耳がイチゴを食べるのは最高に可愛いのでないか?
むぐむぐむぐ
「おいしー」
「まつ、ケティー家のこと、もう少し待ってな」
「うん。ダイジョブ。いまは、おねえちゃんも、ていとにきてるから!おうじがむりしちゃだめだよ」
「さんきゅ。でも、きちんと見て来るからな」
「うん」
「けっきょくシュンスケって、体が大きくなってても可愛いってどういうこと?」
「カーリンさんもそう思います?」
「そう。たしかにウリサさんやアヌビリさんと三人で並んでたら、すっごく素敵なんだけど」
「猫耳とじゃれてるといつもと一緒ね」
「ねえ」
「大人になった彼にドキドキしちゃったらどうしようって思ったけど」
「ほんと、大人の色気ってのはまだないわね」
なぬ!
頭をポンポンされて振り返る。
だから、俺は今、人間族の二十歳のサイズなんだけど!って長身のアヌビリさん。
「大人の男は一日にしてならずだ」
「むう、しょうがないな。本当にこのサイズになるのは四十年後だもんな。さすがにその時は貫禄ついているよね」
「さあ、それを俺に確かめるのを約束してくれるなよ」
「うっ」
その後、みんなにプレゼントをもらうことになる。
七割ぐらいは六才児サイズの俺用の洋服や帽子、そして学生なので、文房具などだった。
ありがたくもらうけどさ。
そうして、サプライズいっぱいの二十歳の誕生日が終わった。
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