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14.5 挿話3【輝かしい帝都生活の予感】 

アリサねえちゃんの、おはなしがつづく。

 シュンスケに出会ってから二ヶ月ちょっとすぎて、あたしたち ウリアゴがギルマスの部屋に呼び出された。

 シュンスケは今は孤児院で小さい子とお昼寝中らしい。毎晩ギルドで働いているもんね。


「シュンスケを秋から帝都の学園に入学させる」

 というのよ!もうびっくり。


 帝都の学園は、お貴族様専用の教育機関で、五年も通わなくちゃいけないうえに、恐ろしく学費が高い。

 以前、ギルマスの息子さんも入学したらしく、学費が高すぎる!とあたしら平民なのにウリアゴの前で愚痴っていた。


「でも、学費とかどうされるんですか?」

 兄さんが問う。

「あいつ、もう結構貯めてるだろ。足りない分は働きながらとか奨学金制度もある」

 確かに、シュンスケ自身の髪の毛を売った時は、初めて見る大金貨を後でちょっと触らせてもらっちゃったわ。それに、家でちゃんと家事をしてくれるのに、ギルドでは夕方からレストランのお手伝いを立派にこなして、少ないながらお金もちゃんともらっている。


 それに、教会でチェンバロっていうの?楽器を堂々と演奏するところを見たら、キラキラしてて、天使かって思っちゃった。

 お祈りに来ているほかの人も思ったのか、めっちゃお布施をはずんでいた。

 もらったお布施の中の一定の割合が、演奏料になるらしい。だからお布施が多いとシュンスケもたくさん貰えるんだって。

 最近は、お祈りじゃなく、シュンスケのチェンバロを聞きに行くのが目的の人も増えている。あの子の演奏スケジュールを私より知ってるおばさんがいっぱいいるのよね。

 教会の司祭のおじいちゃんも、あの子目当ての信者がたくさん来れるようにと、助祭と同じ聖職者の衣装をシュンスケのサイズで、助祭よりずっと質の良い真っ白なローブを用意して、演奏するときは着させている。さらに天使感が増すってものよ。手入れされた、黒い髪に天使の輪が輝いて見えるもの。


 そうやって、あの子は来てまだ三か月というのに、もうすっかり町の人気者ね。


 でも、シュンスケって子供だからって、最小限のものしかお金を使ってるところは見ない。

 学費ってどのぐらいかかるんだろう。

 貧乏貴族の次男などは、入学金だけは何とか親から出してもらって、他は苦学して学費を払ったり、卒業してから返す借金の制度とかを利用したりするそうだけどね。

「ま、私が出資しておいてもいいしな」

「ギルマスは本当に子供を大事にするんですね。特にシュンスケを」

「ああん?そりゃそうさ。子供を大事にするのは大人の義務だ。

 まあ、そんなこと考えられる余裕のある大人はすごく少ないけどな。大きな権力や大金を持っている大人ほど考えないがな。

 貴族()自身のための先行投資だと言えば周りの貴族たちも納得するさ。」

 ギルマスは目の前の紅茶を飲んで続ける。

「ウリサ、お前の時も私が出すって言ったのに突っぱねたじゃないか」

「まあ、アリサやゴダがいましたからね」

「そんなの孤児院が見るのに」

 その時はじめて知ったんだ。

 兄さんが帝都の学園に行くチャンスがあったのに、あたしたちの面倒を見るために諦めていたなんて。

 そんなあたしの心の中に気が付いたのか、

「その気になれば、勉強なんて何ともなるけどな」ってギルマスは言葉を続ける。

「そうですね。ギルドの図書室の本を読むだけでも違いますしね」

 そうなんだ、あたしは本なんか全然読まないな。ゴダなんか、何年教室に行っても読めないみたいだし。


 ギルマスは続ける。

「シュンスケもそれが分かっているのか、初めの1か月で文字を半分ほど習得した後は、すごい勢いで図書室の本を読んでいるのだ。ものによっては、2~3周繰り返して読んでいる本もあって、もはや図書室の本だけでは彼の学習意欲には不足しているのだろう」

 ふわぁ、シュンスケってすごい!あんなにお仕事も色々しているのに。

「そうですね。彼はもともと賢いのでしょう。算術なんてびっくりしましたしね」

 って兄さんの言葉に、うんうんと頷く。

 そう!あたしも思った。

 たしかに最初、彼は «読み書きを知りたい»って言ってて、算術の存在を知らないのかな?って思っていたけど、数字や計算記号を知らなかっただけで、覚えた後は、ありえないほど計算が早くてそのうえ正確らしい。最近では孤児院やギルドの帳簿も手伝ってるんだって。


 ギルマスの話は続く。

「ただ、ここの図書室には魔法書がない。魔法を使えるものも少ないしな」

 兄さんも風魔法を使えるけど、攻撃に使えるほどではない。魔力も少ないんだって。

「あの子には魔法の学習が必要なんだ」ギルマスはあたしたちも感じていることを言う。

「そうですね」

 兄さんの返事に、あたしもうなづく。


 ところで、ゴダはね、あたしの隣に座った瞬間から寝てるのよ?大事な話なのにね。


「だが、彼は人間ではない。この国は人間族至上主義だからな」

 二人で静かに頷く。

「だから、お前たちも帝都に拠点を移して、一緒に暮らしてやってほしい。向こうの住むところもちゃんとしたのを用意しよう。家賃も私が払う」

 え?帝都に住めるの?やった!

 やっぱ、帝都はいろんなお店もあるし、美味しいところもあるし。

 なんてちょっと気分が上がる。

「そして、シュンスケを護衛するのですね」

 兄さん?護衛?保護ではなくて?

「ああ。たのむ。私も折を見て帝都に行き、様子を見に行くから」


 ギルマスと兄さんの会話の詳しいことはちっとも分からなかった。

 それは、あたしが本を読まないからだと言われた。

「本にシュンスケの出てくる物語でもあるの?」

「そんなのあるわけないだろ」

 ますますわからない。


 でも、帝都の今よりたぶん良いお家で冒険者生活が待っている♪ ってことに、あたしの気持ちがどんどん高まってきた。


 シュンスケってかわいいだけじゃなくて、あたしたちにも良いことを運んでくれるわ。


お星さまありがとうございます。もっと頂けたら♪

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