147【海水のおかわり】
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翌日、俺はまた、朝からモサ島に来ている。
今日は一人で。でも、島に来てしまえばすっかり魚の開きの生産にはまっているスフィンクスと、モササがいるけどな。モサが追い込んで、スフィンクスが柄の付いた網で掬ってるらしい。ずるい方法だぜ。
南国の家のテラスには、ラアジの開きがひらひらと干されている。
『王子、ラップまだありますか?』
「あるよ」
と言って一ダースぐらい渡しておく。ラップは他にも使い道あるし、なぜか補充されているからな。
「そんなに大量に作ってどうしているんだ?生魚よりは日持ちするけど」
『もちろん、時間停止のマジックバッグで運搬しておりますよ。シュバイツ湖の周りの地域に海魚が受けるのか、よい売り上げになっておりますよ』
いつの間にかシュバイツ印の品目が増えていた。
ちなみにラアジはガスマニアでは釣れないみたいなので、ゴダたちが作ってる干物とは種類が被らなくて良い。
「モササっ」
「シュンスケ、すぐに会えてうれしいわ」
「俺も。今日はまた海水を採りに来たんだ」
「そうなの?じゃあ手伝うわ」
桟橋に腰かけながら、モササの青いつるつるした鱗を撫でる。
気持ちいいよ。
「今回はめちゃくちゃ沢山取り込むんだ。当分来れなくなるかもしれないからね」
「そうなの?でも一年に数回は会いたいわ」
パシャパシャ
「もちろん!すぐに来れるからさ」
「分かったわ。きっとよ。あ。それから、先日は伝えそびれたんだけど、ちょっと前に私又脱皮しちゃってね」
「うん?」
「また、鱗を受け取ってほしいのよ」
「ほんと?いいの?」
「私にはゴミなんだから」
「そ、そうか・・・じゃあ」
「はい!」
そうして、撫でていたモササの背中にポンと巾着袋が出現する。給食エプロンとか体操服を入れてたようなサイズだ。
「この袋はどこで手に入れるの?」
「時々タイナロンから鱗と引き換えにもらうの」
「へえ、鱗一枚で一袋もらえるのよ。だから沢山持っているわ」
この袋、マジックバックだから高価なんだけど。鱗一枚分?前にもらった鱗も二枚しか使ってないのにさ。
なにか良い使い道があればいいよな。
「それより、取水だ」
「ええ」
今回は、なんとかH2Oだけを取り込むようにしよう。
海水から引き上げる時点で、錬金術を錬成して、サブボックスに入れていく。
この間、塩は全部塩湖に吐き出したから。まだ水は残っていたけどほとんど真水だ。そこに新たに海水を足していく。
前みたいに海水丸ごとじゃないから、魚が混じる心配がないので、最初の数リットルが入りだしたら、ポンプをイメージして、自動的に取り込むようにする。
その間手が空くので、水上マーケットに繰り出す。
モサ島から、アジャー島の水上マーケットまでは十キロメートルほどの距離だからすぐだ。
海路で行くわけじゃないしね。
てなわけで。
「こんにちわー」
久しぶりに南国情緒たっぷりの冒険者ギルドにお邪魔する。
今日は黒目黒髪の人間族になっております。
「おう、シュンスケじゃないか」
相変わらずギルマス業務中の人魚族の族長のタイナロン様がいた。
「どうした?遊びに来たのか?」
「うん、先日も島には来てたんだけどね、たまにはタイナロン様の顔をみたくてさ」
「そうか。俺も、可愛いシュンスケの顔が見れてうれしいぜ」
「可愛いってやめてくださいよ」
「ははは。昼飯は今からか?」
「はい」
「じゃあ、オクトパスヌー焼きしないか?」
「やるやる!とっておきのソースを持ってるぜ粉もあるし!」
「おおっ」
オクトパスヌーはたこの魔物だ。体内に魔力を持っているが普通にたこだ。
普通のタコと違うのは、墨を履くのが鋭くて、魚の胴などは貫通するらしい。危険だ。
だから、時々駆除しなければいけないんだが、俺が前に提供した壺で、蛸壺漁をしたそうで、昨日引き揚げたら全部の壺に二匹以上ずつかかってたそうだ。
それらの内の十匹ほどをもらって、ギルドの厨房に入り込んで作業をする。
鉄板は前回クラーケンの時に使ったのが置きっぱなしというかきちんと収納されていた。
もちろんギルドのエプロン借りましたよ。
クチバシと内臓を取ったタコに、サブボックスに移動しておいた海の塩を大量に投入して塩もみ洗いしてぬめりを取ってから真水で流す。そして、麺棒でトントンと叩いておく。これをしておくと身が柔らかくなるんだよな。
そして沸騰しているたっぷりのお湯に足先から入れて、絵にかいたタコのように足がくるんとなったゆでだこにしていく。
ゆでだこは、火魔法を逆に発動して粗熱を取ったら細切れにカットはもちろん面倒くさいので、黄色ちゃんの協力のもと、風魔法で!だって十杯分もあるんだもん!
そのあいだに水溶き小麦粉の種と細ネギっぽい野菜は、厨房のスタッフに小口切りにしてもらっておく。
「よーし、材料が出来たぜ」
「よし焼いて行こう!」
タコ焼きを焼きながら、別にとっておいた少し太めの足のところの皮を取り除いて、白い身の所だけスライスして、こっちは刺身で楽しむように。酢味噌も作りました。
「できましたよー」
本日の冒険者ギルドの特別日替わりは
〈タコ焼きとタコの薄造り〉しかも、アジャー島の名誉島民のシュンスケの手によるもの。
レストランコーナーには列ができております。
「おお!」
「「「「「うまそー」」」」」
「「「「いただきまーす」」」」
全部俺が焼くわけないよ?一周したらギルドの人にチェンジしたさ。
「おねえさん白ご飯有りますか?」
「はいどうぞ」
どんぶり半分に入れてもらった白ご飯にタコ焼きを乗せて、シーフードスープ茶漬けに。
ずるずるはむはむ・・・・
「うまーい」
「お、なんだそれは。俺もやろう・・・・うまい!」
「でしょー」
「ふーんそれで海水を採りに来たんだ」
食べながら俺が来た目的を話題にする。
「そうなんです」
「湖三つ目?」
「普通の湖にするかダム湖にするか思案中で」
「俺は灌漑とかは専門外だな」
「ですよね」
取り込みもそろそろいいかな。
俺は島で採りこんでいる作業を遠隔で止める。
「それじゃ、俺行きますね」
「おー、またいつでも顔出せよ」
「はーい」
と言いながら、ギルドのドアから直接トルネキ王国の宮殿の前に転移する。
まずは現地調査だよな。俺はハロルドを出して、鞍がないと案外目立つのでせめてゼッケンをつけて乗り、街道までパカパカ歩く。
二つの三日月湖は 東西に並んでいて、どちらも南に向かって膨らんでいる。
上から見たら二つの目がつぶっている感じだった。一つの湖で琵琶湖ぐらいの広さ。
琵琶湖を実際に上から見たことはないけどさ。小さいときに母さんが連れて行ってくれて、大津のホテルの最上階から見たことがあるきりだ。あの時はスゲーって叫ぶぐらいで、広いってことしか覚えていない。周りの建物は違うけど東京湾の海との違いも分からなかった。
ちなみに我?シュバイツ湖は広さ三十八万キロ平方メートル。なんと日本列島ぐらいで、細長いです。ラーズベルトと世界樹の所がくびれているから向こう岸が見えているけど、他の地点では世界樹のような背の高いものはないし、海と見間違える旅人もいるらしい。
閑話休題
その二つの三日月湖の北側に繋がった眉のように東西に川の跡がある。三日月湖エリアをぬけて両方で蛇行が始まっている。
西の彼方に海、つまり河口。東北東に水源あるいは世界樹があるはずだ。
枯れた川は、西に向かって途中から他の支流からの水が入り込んで海まで続いている。
そちらにはにぎやかな港町があって、前にアントニオ殿下も乗ったセイレンヌアイランドへ往復している魔動ファリーが発着している。
前は、王都に行くのが目的だったからカウバンドから選んだルートはサバンナから砂漠の乾いた地域だったが、もう一本海に出る街道もある。それは古書の街からも繋がるんだよな。
しばらく王都の宮殿には帰らないと言っているので、完全な自由行動だ。
まずはラオポルテという港町を目指す。
もう十四時近い。赤道近くの夏は眩しいのでおそろいの麦わら帽子を被る。
母さん!サングラス有難う!子供用のグラサンが入れられていました。
「ラオポルテに陸路ならどのぐらいかかる?」
確か五百キロあるって、プローモ殿下が言ってた。東京から大阪ぐらいかな。新幹線の感覚を知ってる日本人なら二時間半って思ってしまうけど、馬は一日に休憩いれても四~五十キロしか走れない。ママチャリで行くようなものだ。
『普通のお馬さんなら十日かかるけど、僕なら冒険者ギルドに日没までに行けるよ』
そんなに急いでないし、もう気分は夏休みだからなぁ。
とりあえず、王都の冒険者ギルドに行くか。
ぱかぱかとハロルドに乗って、初めて王都のギルドを訪ねる。
「こんにちわー」
「あれ?シュンスケ?」
「シュンスケじゃーん!」
おおぅ
ギルドの入り口にはロムドム団が揃っていた。リカオン族のカランさんにぐりぐりされる。
「皆さん数日ぶりですね」
一人、知らない顔の男性が居た。
「紹介するわね、この人はボン。チェンバロとか楽器が得意で、作曲なんかもするのよ」
人間族で、黒目黒髪、身長も百七十ちょっとぐらい。俺が人間族の大人に変身するときとすこし近い。鑑定では、ああ少し東の方の民族が入ってるんですね。若干アジア系の顔立ち。しかも髪の毛を背中まで伸ばして括ってるところが、おれが変身して伸びてしまう髪を括った時に近い。親近感がわく見た目だ。
「俺は田中駿介と言います、カウバンドの町からここまで皆さんにお世話になりまして」
「タナカシュンスケ?シュバイツ殿下では?」
「ああ、そうも言われてますけど、一般的には駿介と名乗ってます。父もそう呼んでくれてますので」
「シュバイツ殿下のお父さんって・・・」
「この人よ」
って横から看板女優のタレンティーナさんが大金貨をチラリと出す。
そんな高額コインをここで出さないで―。
「皆さん、これから出発ですか?」
「座長のネタ探しに古書街に長期滞在だ」
「しばらく〈シュバイツ湖〉の話は難しいかなと」
「ハロルド様を作るのが二年待ちだとさ。しかも発注の順番待ちが!」
「それは・・・」
「人気の職人だからなしょうがないのさ」
「ところで、シュンスケはどうしたんだ?」
アヌビリさんが相変わらずの金狼族のイケメンを隠さず聞く。
少し離れた所で、女性の冒険者がちらちらと見ていらっしゃいます。あ、目もハートになってる。
「枯れた河の調査に河口から攻めようと思って、今から〈ラオポルテ〉を目指そうかなって」
「なるほど。それ、俺もついて言って良いか」
「いいの?」
「どうせ、次の演目が決まる迄することないしな」
「それはありがたいけど、途中から飛ぶよ?」
「たぶん大丈夫だ」
「ははは。日当はいつも通りでいいかな」
「なくてもいいぜ」
「それは俺がやだ」
『王子、アヌビリのほうが土地勘があるから同行してもらった方がいいよ』
「そうだな」
「ありがとう、ハロルド様」
『そうなると、タンデム用の鞍をひとつ買ってくれない?』
「いいのか?」
『うん、その方が乗りやすいでしょ?アヌビリ』
「もちろんです」
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