145【オアシスの学園にて】
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トルネキ王国の学園にお昼からお邪魔する。
「こんにちは。リリュー教授」
「よく来た」
ガスマニアの図書室は一部だけが地下だが、トルネキ学園の図書室は全部が地下にある。
教室さえ半分くらいは地下にあったりする。
なぜかと言うと、
「砂漠にはあまりマナがないだろう」
人が使う魔法には、自然からのマナを取り込んで体内でマソに変換して使うものが多い。そうして、自分自身の魔力不足を補うそうだ。
だから、トルネキ王国は魔法学部より商業学部の方が上で、魔法の実習なども高価な魔石を使ったり、比較的マナの多い湖の近くでするしかない。
「だが、地中深くにはマナが安定してあるのだ」
「なるほど」
学園の真ん中に直径二十メートルほどの大きな竪穴が突き刺さっている。
その周りにらせん状の階段と扉がいくつかあって最下迄五階層ある。
扉の向こうはまた通路になっていて、それぞれの教室や研究用の部屋がある。
もちろん、魔法学部以外の設備もある。
「そして、地下のマナを利用して、全体的の防御と保存の魔法を掛けてあるのだ。いざとなると、ここが国の民のためのシェルターになる。時折砂漠からあり得ない砂嵐が来るときがあるのだ。その時の避難に使われる」
階段を下りながら説明される。
「図書フロアは地下四階と最下層だ」
と言いながら降り立ったのは地下四階だ。
それぞれの階層の高さがあるのか、四階と言われても六階以上の深さを降りた感覚はある。
そこは大きなホールになっていて、下に続く穴や階段は見られない。
丸いホールの真ん中には、一本の針葉樹と、その周りに花壇が整えられていた。
王宮のようにぐるりと水路もたたえられている。
数人の学生が、花壇の前に置かれているベンチで読書をしていた。
丸いホールには六つの扉があって、それぞれに色がついているので、ガスマニアと同じように、属性ごとに蔵書を分けられているのだろう。五属性の蔵書と、属性を超えた内容、または魔法と関係ない書物を入れている扉。
「取り合えず水属性と、土属性の扉に行くか。入って見たまえ」
「はい」
青い扉には取っ手がない。はめ殺しって奴だろうか。
手を触れると埋め込まれていくので、奥へ抜けれそうではある。
“まっておうじ。ここはあたしが、あけてあげる”
青色ちゃんのお言葉。
“たのんだよ”
すると、青い扉が消えて、目の前に通路とその向こうに本棚が見える。
「おお、さすがですな。こういう開き方は初めて見ましたぞ」
「そうなんですね」
一人で通路に入る。
中には専用の司書がいた。
「ようこそ、シュバイツ殿下」
「今日はお邪魔します」
「何をお探しですか?」
「この国と水に関する事柄の載っている書物はありますか?」
水属性だけとはいえ、学校の図書室にしては蔵書が少ない。
「この部屋には国の歴史は無いですね。湖の治水に関してのことなら総合の扉にあります」
「なるほど分かりました、ありがとうございます」
水が少ないと水の本も少ないのかまさか。
六つ目の扉は精霊ちゃん達皆で開けてくれる。
“どぞどぞ”
まあ、ここだけは普通に取っ手の付いたドアなんだけどね。自動で開いたよ。
「ありがとうみんな」
ここには司書もいるけど、リリュー教授が出てきた。
「殿下、湖の本はあったけどな、すでに汚染されてからのレポートのようだな」
「そうなんですね」
渡された本をいくつか見て、奥付をみると、どれも比較的新しいものだ。
歴史書が集められてある棚に行く。
「どれも砂漠化されてからのお話ですね。しかも自然環境の内容は無くて、政治や人の内容ばかり。
やっぱり、これ以外となると五階層ですかね」
「そうだな」
「とりあえず入り口だけでも教えてくれますか」
「こっちだ」
針葉樹のホールに連れてこられる。
よく考えたら、オアシスとは言え赤道近くの砂漠に針葉樹が珍しすぎる。
しかし、そのフォルムは俺がこの世界に落ちてきたクリスマスイブに町のあちらこちらで飾り付けられたものに似ている。
そろそろ俺の誕生日。日本では春だし、まあ全然ずれているけどね。
針葉樹の周りの花壇に一か所途切れている部分があって、そこに立つ。
真後ろは赤い火属性の扉。
それにしても、この針葉樹に飾りをつけたいなあ。
「あ、みんな何人かずつ出てきてよ」
“はーい”
“なんだなんだ?”
“きたよ”
精霊ちゃんをたくさん呼んだ。
もちろんキュアは一人なので俺の頭にいる。肩には黄色ちゃん。
黄色ちゃんは他にも数人居る。
俺の周りに飛び交っている、精霊を感じる生徒がいるのだろう。
さっき読書していた子たちが俺の後ろにやってきた。
「シュバイツ殿下、魔法ですか?」
「光ってますぅ」
「ばか、あれは精霊なのよ」
よくお分かりで。
「みんな、この木をくすぐってみない?」
“おもしれー”
“わかったわ”
“おれはてっぺんとるぜ”
白色くんが先っちょに行くみたいだ。
「じゃあ行くよ、せーの」
“こちょこちょこちょこちょこちょこちょ~”
“こちょ・・・・こちょ”
“こちょ~こちょっ”
“きゃははーこちょこちょー”
“こちょっこちょっ”
くすぐり方にも色々あるんだな。
色とりどりの精霊ちゃんが針葉樹のあちらこちらをちらちらと揺らしているのが、楽しそうで良い。
でもそれ以上に、すごくきれい。この世界に来た日の夜の町で見かけたイブの風景をまた思い出す。ベンチで読書するには魔道具があるみたいだったけど。地下だから薄暗いので、精霊ちゃんの光が結構きれい。
すると、針葉樹が自分でも震えだした。
ぷるぷるぷるぷる
やっぱりこの木は、普通の木じゃない。マナではなく明らかに魔力があったからな。鑑定結果とは姿が違いすぎてさ。
『きゃーやめて、くすぐったい』
“しゃべったー”
『まいったまいった』
“おれらのかちー”
するとみるみる木が小さくなって、そこには小さな妖精がいた。うん、迷わない。こいつは精霊じゃなくて妖精だ。
「おお、木がなくなった」
「リリュー教授無くなってないですよ。ここにいます」
と指を差すが。
「何もない」
そこには緑色の三角帽子と洋服を着た、ノームとは色違いの妖精がいた。
鬚が無くて口や目が見える。ノームよりは若い印象だな。
「僕には見えますよ」
生徒の一人が言う。
「ねえ、いるよね」
他の子も頷く
「あたしにも見えるわ。緑色の小人さん」
「きっと大人には見えないかもしれないな」
では、改めて、
「おれはシュバイツ。君は誰?」
『おれっちはバオ。木の妖精だ』
「バオよろしくな」
握手にはサイズ的に無理があるので右の人差し指をだす。
するとバオは、その指を両手でがっちりと抱えると、クンクンしだす。
クンクンクンクン。また・・・ノームと言い。なんだろう。
今度は俺がくすぐったいぜ。
『お、シュバイツは王子なんだな。よろしく』
見た目は小さな妖精だが、話し方はハロルドみたいな高位精霊みたいにスムーズに聞こえる。
「この国には木が少ないけど、なぜか知ってる?」
いきなり本題を聞くと、バオは項垂れるように顔を下に向ける。
『世界樹からの魔力の供給が途切れているからだ』
「世界樹って、ガオケレナ様のほうだな」
『そうだ』
「詳しい資料は君の下にあるのか?」
『ある』
「見に行っても良いか?」
『王子なら』
「この子たちは」
バオの姿を認識できている生徒を振り返る。
『むりだ』
「そうか、ざんねん」
『今から行くのか』
「ああ」
『では入り口を開けよう』
すると、静かに機械がうなるような音というか振動が足元に伝わってきて、針葉樹が植わっていた部分が百五十センチほど持ち上がっていくと、そこにはぽっかりと入り口が開き、その下に階段が見える。
振り返ると、白衣のリカオン族が固まっていた。
「リリュー教授、行ってきます」
「あ?ああ」
「いつ戻ってくるかわからないから、俺が出てくるのを待たないでくださいね」
「それは・・・」
「いいですね」
待ってると思ってたら動きにくいし。
「しょうがないな」
「何かあれば、アヌビリさんに連絡できますから」
「そうなのか?」
「ええ」
「では行ってきます。でも、そちらのおねえさん」
「は、はい」
一人の人間族の女の子にアイテムボックスから一つ白いバラを出して渡す。
赤い髪と瞳で青い瞳。歳はセイラード殿下より上かな。
「申し訳ないんですけど、俺が潜ってすぐに、もしもこのホールに何かあれば教えて」
「はい、あ、ここに精霊さんがいますね」
「見えましたね」
“よろしくな!”
「まあ、よろしくおねがいします」
「用事があれば、下校時間になれば当然、遠慮なく帰って大丈夫だから」
「分かりました、シュバイツ殿下。あたしはキヌア。キヌア フォン ガスマニアです」
「じゃあ皇帝陛下の?」
ガスマニアと名乗れるのは、皇位継承権十五位までと聞いたことがある。ボルドーとセイラード殿下の間?の姉妹?
「いえ、帝都の副ギルマスの娘です。こちらには留学で」
今はこの人が留学中なんだな。
「ああ、アマラントさんの。彼にはお世話になってるんだ。とりあえずお願いします」
「はい、どうぞご無事で」
「図書室に行くだけだけどね」
「でも、誰も入れなかったエリアなので」
「俺ね、ガスマニアの図書館の最下層にも入れるんですよ。だから心配いらないです」
「まあ」
「じゃ行ってきます。キヌア先輩」
にっこり笑って、扉をくぐり階段を下りる。
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