144【二年生修了】
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「おうじぃーおはよう」
久しぶりに迎える海の家の朝。
そこには当然、猫人族のマツもいる。
抱き着いてきた猫耳をもふる。
「おはようマツ。朝ごはんもお魚たべた?」
「うん!おさかなだいすき!」
猫耳にそのセリフはピッタリと思うのは日本育ちだからか。
そしてティキとブーカも居る。
クリスの話では、今十才のブーカは何とかこの夏、AかBクラスなら入学できるだろう。希望学科は普通科なのでひょっとしたらSもあるかもと。まあどこかのクラスには受かると。
しかしブーカは弟がいるので、出来るだけSクラスに入ってよい成績を取っておきたいそうだ。弟はトルネキかガスマニアのどっちの学園に行くかはまだ不明だがとりあえず準備は始めているらしい、ティキと同じ年なので追いかけて来るだろうという予測もあるそうだ。
トルネキに在籍してガスマニアに留学って手もあるよね。ボルドー殿下の逆みたいにさ。
そして今八歳のティキは騎士学部希望だが、ちょっと体格が厳しいかもということだ。なので、第一志望を騎士学部、第二志望を普通科という内容でチャレンジ予定。まだ二年あるから成長するかもしれないし、まだ余裕だな。
そしてマツもただいま猛烈に勉強中。だけど五才なんだから、遊ぶのも大事な勉強なんだよ。子供の時の遊びでなければ分からないこともあるんだから、って言ってたら、隣で一緒に聞いていた他の子供達やセバスチャンにびっくりされた。
「シュバイツ殿下は忙しくされているのに、いつ遊んだんですか」だってさ。
「俺?いっつも遊んでんじゃん。魚釣るのも楽しいし、料理も楽しいし、おいしいもの食べるのも楽しいし。楽器を弾いて歌うのも楽しいし、勉強も楽しいよ」
「何するにも気の持ちようですね」
「そうそう」
「でも、俺自身のこういう価値観とかを他人に押し付けるのも、どうかなとは思ってるけど」
「かちかん・・・?ときどき、おうじのおはなしが、わかんない」
「ごめんごめん、マツはマツがやりたいようにすればいいんだよ」
「うん!せいれいまほーがんばる」
「よし」
そしてビーチに行って精霊ちゃん達と砂の城を作って遊んでいる。
いつもなぜかウエストポーチに入っていた子供サイズの救命胴衣(しかも十着はある)を着せている。
「おはようございますシュンスケさん」
クリスがロードランダの王宮からやってきた。
「おはよう、あっちで勉強か?」
「いえ・・・お恥ずかしながら、あちらの方が涼しくてそれで」
「そうだよね。
じゃあ、いこうか」
久しぶりにガスマニア帝国国立学園に登校する。
今回はトルネキ王国の三日月湖の件のレポートを出したら二年生の修了を確定してくれるので、必要な登校だ。
馬車がめんどくさくなってついハロルドにタンデム。
『潮風がいいねぇ』
「でしょ」
「あら、シュンスケちゃんおはよう」
「おはようございます」
「クリスちゃんもおはよう」
「あ、おばちゃんおはよう」
「シュバイツ殿下、これお弁当に持っていきな」
「え?俺きょう午前中だけで」
「いいからいいから。おやつにしてもいいしね」
「ありがとう、おじさん。この桃いい匂いです!」
そうして、沿道で久しぶりに帝都の人たちと話しながら学園に向かう。
「あの、学園に入ったらびっくりしちゃいけませんよ」
「?」
「なにが?べつにかわったところは・・・」
ハロルドを仕舞って、学園の中に入る。
久しぶりの学友の顔を見て手を振りあいながら笑顔が出てくる。
やっぱり友達っていいな。
「では僕は普通科なので」
「そうだな、学園祭頑張れよ」
「はい」
久しぶりの温室を通り抜け魔法学部の教授の部屋をノックする。
「おはようございます教授。っておわっ」
「おはようございます」
出たな、俺の情報を横流しする(のはさらに下働き)侍従め。
「おお、久しぶりじゃの。おはようさん」
そんなことより!
「なんですか教授これは!」
プランターの棚がすっきりとどけられていて、俺の画像が一杯貼られていた。
その中に、
女神様に扮して舞台に立ってる俺。
「こ・・・これは」
「わしの息子が送ってくれたものじゃ」
「アナラグさんですね」
「おや、知っとったのか?」
「古書街の、シュバイツ湖の本ばっかり売ってる店で会いましたよ」
「ほっほっほっ」
「ま、そんなことよりレポートはこれです」
「うむ、では確認する間待っておれ、他の生徒も来るじゃろう」
温室のベンチに座って、侍従さんが出してくれた紅茶を頂く。
暑いのでアイスティーだ。そこに自前の蜂蜜をまぜまぜ。
「あ、シュンスケひさしぶり!おはよう」
「カーリン!」
久しぶりに見るカーリンはなんだか大人っぽくなってた。
「うーん、シュンスケ相変わらずいい匂い」
近づいてクンクンしてきたカーリンからもいい匂いがしますけど。
ああ、渡してたシャンプーが切れたんだな。
「まえの容器残してる?」
「あるわ」
「じゃあ、詰め替え用を」
と、シャンプーとコンディショナーとボディソープのセットを三セット渡す。
「悪いわねぇ。これを使いだすと他の洗い方が出来なくて」
わかるよ。
「でも、こんなに渡してくれるということは」
「これからちょっとどうなるかわかんなくて。もちろん三年生も修めなくちゃいけないから定期的に戻ってくるけどね」
「そう、気をつけてね」
「うん、あ、トルネキ王国に塩湖をつくったんだよ」
と言って、母さんに贈るようにタイマーで撮ったハロルドとのツーショットは我ながら気に入ってるので、絵葉書サイズに紙に転写していたのを見せた。
「何これ?天国の天使と天馬?」
「天国じゃないよ。あたりは一面の砂漠だよ」
「ねえ。この絵欲しいわ」
この世界に〈写真〉という単語はない。
「いいけど。どうぞ」
「これを持ってたら良いことありそう」
なんだそれ。
「お、シュンスケ、すごいなそれ」
登校してきたセイラード殿下も声をかけてきた。
「でしょ?塩の湖だって」
「私もその絵が欲しいなあ」
「ええ?殿下まで」
「他にないのか?教授の所の女優の写真はもらったけど」
「あれ複写されてるの?」
「けっこう出回ってると思う」
肖像権!って心の中で叫んでしまう。
「しょうがない」
はがきサイズの紙を出して転写する。
「はい」
「やった。帰りに額を買おうかな」
「私もジャンクさんの店に寄るわ」
俺もジャンクカンパニーに行きたかったけど、今日は時間がない。
「シュンスケ殿、手合わせしたかったのですが」
「最近あまり訓練してないよ」
「それにお時間ないんですよね」
セイラード殿下の後ろには護衛のブリドとラスもいる。次の鐘が鳴ったら騎士学部に移動するだろう。
「そうなんだ昼からあっちの学園の図書室に入れてもらうことになってて」
久しぶりに気の置けない学友と楽しくおしゃべり。
ただ、数か月の間にラスの背がさらに伸びていて。羨ましいぜ。
って言ったら、
「最近、二刀流の訓練始めたんですよ」
「おおっ、盾の代わりに剣を防御に使うってやつだな」
「はい」
「それの方が視界が確保できていいだろうな」
「しかし、そちらは利き腕ではないので、なかなかです」
「なるほど、普通に利き腕じゃない方で剣の訓練が先だな」
「そうです」
「俺はポリゴンのゲール師匠に教わったぜ」
「そうなんですか?」
「利き腕をやられたら、残っているほうで戦う必要があるだろう?」
「なるほど」
「だからほら」
といって、ウエストポーチから訓練用の刃がない剣を出して右手に構えて左手で抜いて、左手だけでブンブンと振ってシュルっと収める。
「おお、すばらしい」
「やっぱり利き腕よりは、若干動きが悪いけどな」
「いや、私から見たら左利きだと言われてもそうかと思うレベルだよ」
「サンキュー殿下」
とはいえ、ラスもまだ十二才なんだからこれから剣の腕も伸ばせるだろう。
「さすがシュンスケ。私もまだまだ訓練しなくちゃいけないわ」
「カーリン。怪我しない程度にね」
「もちろんよ」
「待たせたな、シュバイツ殿下」
教授はすっかり〈殿下〉呼び。俺も慣れたけどね。
「レポートの内容は合格じゃ」
「有難うございます」
「ところで、今年の学芸会は何をされるんですか?」
「模擬店だ」
「へえ、なにか食べ物を売るとか?」
「いや、〈ヴェール ドゥ シュバイツ〉グッズ専門店だ」
ま、まさか
「アナラグさんが来られるんですか?」
「さよう、学園は貴族も多いし、高価な本を買う生徒や父兄も居るじゃろうと言うことでの、稼ぎに来るだけじゃ」
去年に比べたら手抜きすぎではないのか?
「それと、お主のこのレポートを発表させてくれ」
「いいですよ。たぶん来年続きも出せますしね」
「それはイイ」
そうして、学友よりほんの少し早く二年生を修めて、昼にはトルネキ王国に転移をする。
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