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143【干すのは洗濯物ではない】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 「塩湖だと!なにそれなにそれ、見たかった―!」


 モサ島に戻って、リリュー教授に報告に行くと、文句を言われた。


「え?塩湖作るって言ってたじゃないですか、ここで。教授居たでしょ?」

「いたでしょ?」

 プローモ殿下がのんびりルアーセットで桟橋から釣り糸を垂れている。

 釣り道具の指導も兼ねて、二連休でモサ島に来ている。

 いや、俺が指導できるほど釣りは、以前にセバスチャンとしたぐらいだ。


「・・・いたけど」


 今日は侍女のミアも休みなので、教授の朝食の世話だけしてそのままバカンスモード。

 パラソルの下で水着&グラサンでお昼寝中だ。


「確かに言ってたけど。海の景色に夢中で聞いてなかった」

「ひでぇ」

 アヌビリがみんなの気持ちを代表して言う。

 今日はプローモもアヌビリも俺もみんな海パンだ。


「あ、引いてる」

「よし!っと」


 おお、なかなかの大きさだ。鯛のようなフォルムで色もピンク色。

「うまそう!」


 ひとしきり釣りをして満足した殿下と、いったん移動。


 プールのそばのテラスには物干しざおと、それには紐のついた木製の洗濯ばさみがずらりと並び、買ったばかりの新しい盥のようなフォルムの桶を持参。そして、塩湖の塩も。


 俺はさっき自分で釣った、鯵にそっくりで少し大きい魚、〈ラアジ〉をどんどん腹から二枚に開いていく。骨は残っているほうがその周りが旨い。

 今回は大漁で三十匹。一瞬で入れ食いでした。日本じゃ船釣りじゃないと難しいのでは・・・。


 バケツに真水を魔法で入れて濃度が一〇パーセントぐらいになるように塩水をつくる。

 海水に塩を足せばいいんだろうけど、濃度調整が分からないから水から。

 今後のためにちょっと舐める。

「しょっぱ」

「ははは、そんなに塩を入れたら塩辛いだろう」

 俺のリアクションがアヌビリに受ける。

「まあね、どの位辛いか知りたかったんだ」

 なにしろ初チャレンジなので、スマホでレシピを見ながらである。


 さて、できた塩水に、開きになって内臓などを洗ったラアジを漬けていく。

 三十分ぐらいたったら、塩水から魚を出して、乾いた布巾で水気をとる。ここはキッチンペーパーを出したいのを我慢。


 そして、ラアジを物干しにセットされている洗濯ばさみでぶら下げていく。一匹に二か所ずつ挟んで、開いたのが閉じないように。

 三十匹の開きが一列に並んでいるのはなかなか壮観だ。

 日光に少し透けているのがまた良いぜ。スマホでパシャリ。


「うわ、シュンスケ、何干してるんだ」

 アヌビリが俺には壮観な風景にびっくりする

「こんなの見たことない?」

「・・・烏賊のは見たことある気がする」

「魚もうまいんだよな」


 その間に、炭コンロをセットする。

 煉瓦で作っているコンロは、バーベキューでいつも大活躍。

 薪もいいけど、今回は炭だ。遠赤外線でじっくりね。


 待ちきれないから六匹ほど水魔法で水分を抜いて、闇魔法で少し熟成を。

 そして鑑定する。

 〈ラアジの干物:高級品 標準小売価格 小銀貨三枚〉

 うそ、一尾三千円?スゲーじゃん。


 とりあえず、炭も良い感じに赤くなってきたから焼こうかな。

 もちろんごはんもキッチンで炊き上がって、蒸らし中。


 網も熱せられたから、開いた方から焼く。

 良い汗が垂れているぜ。

 そしてトングでひっくり返していく。

 ジュワー

 きつね色!

 うっまそーじゅるり。涎が口の中であふれている。


「もう、匂いだけでたまらん」

「始めて嗅ぐ香りですが美味しいだろなってわかります」

「だろー、そして俺と殿下はまだ無理だけどここはあれだ!」

 と、ユグドラシルのエメラルド葡萄ワインを出す!エールと。

「おおーっ」

 パチパチパチ

「キャー」「殿下だいすき♪」

 リリュー教授も、昼寝から覚めたミアも大はしゃぎ。


 他には、アボカドやトマト、チーズを混ぜたゴロゴロサラダも用意した。


 カラフルで豪勢なランチの完成だ!

「「「いただきまーす」」」


 では、俺から。アジの開きをお箸で。


「・・・う、旨ぁいー」

 ホロホロふっくら焼けた身は最高で、骨の所の美しい焼き色の所も絶妙だ。

 そして、魚と海の塩味一杯の口に、ホカホカの白ご飯を放り込む。


 ああ、幸せだ。


 魚、ご飯、魚、ご飯ご飯。

 止まらないループが!そして魚が残っているのに、ご飯のおかわりを!

「おおっ、なんだこれは!」

 土鍋で炊いているから、おこげと干物の組み合わせがまた!

「旨すぎる!エールが進む」

「ワインと合う」


 皆も夢中だ。

「骨に気を付けてね」

 なにしろ、みんな箸じゃないからさ。


 『これは、長生きしている私でも初めてのおいしさです』

 食通のスフィンクスから美味しい頂きました!

 彼はお箸が上手。やっぱり料理上手はお箸上手だよね、なんちゃって。


 モサ島の特産品が爆誕した瞬間だった。


「スフィンクス、そこの、お日様で干したほうが絶対旨いんだよ、あした取り込んで一尾ずつラップしといてね」

 と、ラップを渡す。

 『分かりました!』


 翌日の夕方、まだ夕焼けにも早い時間に、皆を塩湖にもう一度連れていく。

 五日の間に、鏡面が楽しめる面積が半分ほどに減っていた。それでも、真っ白で一面塩になっている部分もすごく美しいのでリリュー博士には何とか納得してもらった。


「そうか、昔は緑豊かだったのか」

「なにか季節風でも吹いていたのかもしれませんね」

「やっぱり、世界樹(ガオケレナ)がどうなってるのか知る必要があるな」

「はい、そちらの文献や書物はありますか」

「ある。こちらの図書室に行ってみるか」

「良いんですか!」

「もちろん。ただ、入れる場所には制限がある。シュバイツ殿下が入れぬ場所がどれくらいあるかだが」

「なるほど、博士は全部は入れるんですか?」


 リリュー博士は持ってたポシェットに入れていたのか、眼鏡と白衣姿に戻っている。

 すみません、今日までお休みなのに先生モードに戻してもらっちゃって。


「・・・残念ながら、一か所入れぬ。今は入れる生徒がいない。しかしそこに肝心な書物があるかもしれん」

「なるほど、では明日お伺いします」

「うむ。私も入れるエリアである程度探しておくから、昼から来ておくれ」

「分かりました」


 明日は丁度、ガスマニアの学園に登校しなければいけなかったので、助かった。




 夜、俺は久しぶりにガスマニア帝国の帝都の海の家に帰ってきた。

「「お帰りなさい、シュンスケ様」」

「ただいまセバスチャン。ミアも急に悪かったね」

「いえ、シュンスケ様。あたし、あの島に行くのが大好きです。

 それに言われていたお米とかも買っておきましたよ」

「ほんと?ありがとう。んじゃ明日の夜また干物をここで焼こうか」

「はい!スフィンクス様がラップされたのを持ってきていただいております。

 本当においしかったですよね。焼くのはお任せください!」


 今日も干物の晩御飯♪


「お帰り、シュンスケ」

「ゴダ、ただいま」

 すごく久しぶりに頭をポンポンされる。

「これって魚?」

「うん、海水の三倍ぐらいしょっぱい水につけてから、開きにして洗濯物みたいに干すんだよ」

「へえ」

「美味しく食べるためにちょっと乾かすなら冷蔵の魔道具で一週間ぐらい。カラカラに乾かせばもっと長く保存がきくんだよね」

「なるほど、それはイイな。漁協に教えてもいいか?」

「いいよ、注意事項を書き出しておくね」

「さんきゅ」


 ウリアゴで活動することもあるけど、半分は漁に出ているゴダが家にいた。

「二人は?」

「いまは、ポリゴンにいるぜ。こないだギルマスが馬車で帰ったのに護衛して。途中で実家に寄って赤ちゃんをお披露目するんだって」

「そっか」

「でもこの夏はウリアゴで海の家の予定なんだ」

「じゃあもうすぐこっちに来るんだな」

「ああ、シュンスケも自分の誕生日に帰って来いよ」

「そっか、とうとう俺も二十歳になるんだ!」

「酒が解禁だな!」

「酒飲むために、大人サイズで祝ってもらおうかな」

「そうしよう。大人になる誕生日だ」

「おお!」

「何か飲みやすそうな酒を探しておくよ」

 酒に弱いゴダが選んでくれたら、心強いよ。

「お願い!」



 後日、干物にはまったゴダが、いろいろな種類の魚を干して、干物にぴったりな種類をいくつか作っておいてくれた。

 キンメダイっぽい赤い奴が気になる・・・。


 もちろんマジックバックやアイテムボックスに入れて、大量に保存。

 そして、ロードランダのお城にもお中元としてお届けした。クリスが。


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