142【二つ目の三日月湖】
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次の日は、俺は朝からハロルドに乗って空を飛んでいる。
昨日の夕ご飯のあと、もう一度地図を見せてもらって、かつてあった三日月湖の位置を確認した。
青くてすっかり美しくなった三日月湖のさらに東側に同じぐらいの大きさと形のくぼみがあった。
そしてその横にはかつての川の跡の筋。ここもそのうちね。
アヌビリさんが言ってたように、枯れた方の三日月湖には、人がいる様子はなかった。もちろん精霊ちゃん達にも調べてもらった。
サボテンさえ生えていない。
「よし、ここら辺にしようかな」
大量に吸い上げた海水から、昨日純水だけを分離して、サードボックスから湖に注いだ。
実は吸い上げて有る海水は、まだ湖の四杯分ぐらいあるんだよね。
そして、こっちには塩の方を多めで流していく。
固形物が多いから、どさどさどぼどぼ言う。塩もそのうち商品にしたらいいよな。
とは言え永遠にあるものではないからご注意ください。頼まれたらまた採ってくるけどさ。内陸の人は水も大事だけど塩も大事っていうよね。
しばらくすると、真水以外まあほぼ塩なんだけどさを全部サードボックスから出すことができた。出来るだけ平らにならしながら。久しぶりに土魔法の応用で力任せに敷き詰める。
「結構沢山あるな」
『白くてきれー。雪みたい』
「ははは、暑いけどな」
残った水を直接出してコップで飲む。
ハロルドもちょろちょろの水を浴びるように飲んでる。
『美味しいよ?』
「昨日ね、いろいろやってたでしょ?」
「うん、水遊びみたいで、王子ってやっぱり子供だなあって思っちゃってた」
「へへへっ。それでさ、聖属性魔法を混ぜると旨いってわかった」
『なるほど。それは王子にしかなかなかできないねえ』
「ははは」
『それだけで回復ポーションになりそうだ』
「そうなの?」
『うん』
いつか手持ちのエリクサーがなくなっちゃったら研究してもいいよね。
「じゃあ作業を続けようかな」
塩を敷き詰めた湖に静かに海水を注いでいく。とはいえ、蛇口からちょろちょろって感じだと何日もかかるから、湖面の面積いっぱいに、サードボックスを開いて水位を上げていく。
『うわあ、奇麗~』
「塩分きついから、脚を浸けちゃだめだよ」まあ精霊は関係ないんだけどね。
『はーい』
“きゃーきれーい”
“かがみ、みたーい”
精霊ちゃん達も大はしゃぎ。
南米にあるウユニ塩湖みたいになってきた。空と同じ色、じゃなくて空が鏡のように映っているんだ。ただ、この地域には雲がないからなあ。
前にテレビで見た時は雲があって、あれがきれいだったんだよな。
俺は力業で、地上二キロぐらいの高さで霧を発生させる。
いろいろな種類の氷が作れるように、いろいろな種類の水も発生できる。
水の粒を小さくすれば、こうやって雲ができる。
「ふむ、我ながら上出来だぜ」
水面すれすれに立つハロルドをスマホでパシャリ。
俺が作った人工の雲と空とがそのまんま水面で光って美しい。
マツを帰すの早まったかな。結構平和だよね。しょうがないけどさ。
こういうきれいな感動を誰かと共有したかったな。
と、思わず母さんへのメッセージに写真をいくつか貼り付けて送る。
≪母さん元気?≫
≪俺今、トルネキ王国に塩湖を作ったよ。ハロルドの写真送るね≫
なんてさ。
ピロン
おや、珍しくすぐ返事が来た
≪まあすてき!ボリビアのウユニ湖みたいね≫
≪そうでしょ≫
≪駿ちゃんの顔はないの?≫
≪ちょっとまって≫
リクエストが来たので、ハロルドの所まで飛んで、行って自撮りのツーショットをとる。
それから、少し離れたところに、テーブルを出して、タイマーをセット。
『なになに?』
「あれみてあれみて」
『うん?』
パシャ
スマホを確認しに行く。
おお、鏡面の湖の上で、ペガコーンと精霊ちゃん《おれさま》のツーショット。
我ながら幻想的なのではないの?
≪写真撮った、送るね≫
ピロン
≪まあ、なんてかわいいの!パパにも送ってね≫
え?父さんに?
≪送り先知らない≫
≪なんてこと、あの人もスマホ持ってるわよ≫
何ですとー。
≪去年まではガラケーだったんだけど、姉さんに託して渡してあるわ。連絡先はこれ******≫
父さん、ガラケー持ってたんだ。もっと早く教えてよね。
地球じゃない塩湖で、浮かびながら父さんの連絡先を携帯に入れて、改めて画像をメッセージする。
≪父さん元気?俺今トルネキ王国。塩湖を作ったから写真を送ります≫
ピロン。
ピロピロンピロピロンピロピロン
着信がかかってきた!あ、ビデオ通話だ。
“駿介!写真ありがとう!すごくきれいに撮れているね!”
ニコニコとフランクに話してくれるけど、一応この世界で一番偉くて麗しい王様の顔だ。
“父さん、俺今母さんに聞いたんだけど、ガラケーとかスマホとか持ってたんだ”
“母さんに持たされてね。あんまり得意じゃないんだけどね”
まあ、この世界の人とは使わないよね。でもビデオ通話できるなら大丈夫では?
それに母さんと連絡してたんだ。さすがです。
俺だけがそのことを知らなかったのか。
ちょっと寂しいじゃん。
“じゃあ、それだけだから”
“声が聞けて顔が見れてすごくうれしいよ”
“うん、俺も。また連絡する”
“まってるよ!”
砂漠の雄大なパノラマの風景の中で、親と携帯で通信するなんてすごい体験だな。しかも地球じゃない場所で。
「さてと」
そのままスマホの時計を見ると丁度お昼だ。
基礎をちゃんと作ってないけど、塩湖の西寄りにぽんとログハウスを乗せる。
ロードランダのカルピン木材店からキットで取りよせて組み立てておいたもの。トイレはポータブルな状態です。
お腹空いたな。
アイテムボックスから、おにぎりを出して、ログハウスのリビングで齧る。ちゃんと家具付きなんですよ。
あ、インスタント味噌汁があるじゃん。マグカップに入れてお湯は魔法で。
ふう、落ち着く。目の前は絶景だしね。
みそ汁はドールハウス用のカップに入れると、赤色くんと白色くんも汁だけ楽しんでいらっしゃいます。
“ほっとするよね”
“しみじみ”
君たち渋いぜ。
「黄色ちゃんアントニオ殿下とプローモ殿下は今何してる?」
“ん-とね、それぞれおひるごはん”
「よし、ではこの絶景にご招待しよう。とは言えあの人達の国だからな」
ログハウスの扉を開けて、まずは学園の食堂の出入り口に出る。
「やあ、プローモ殿下」
「シュバイツ殿下!どうされました?」
プローモ殿下は学友と食事が終わって談笑していた。
「作業が終わったし、見に来ない?皆もどうぞこちらから」
と食堂の扉からログハウスに誘導する。
塩が大変だから直接触るなと十分に伝える。
続いて王宮の食堂へ。
丁度、国王陛下も食後で、まったりしていたから、アントニオ殿下と一緒にご案内。
「うわああ」
「ここは本当に我が国なのか」
「ええ」
「きれーい」
「この景色は今日明日しか見られないと思います。空に浮かんでいる雲も俺が無理やり作ったものですから」
「雲を作る?」
「はい」にっこり。詳しく聞かないでね。
「あの水が引いたら、そこには塩と少しのミネラルを含んだ固形物が残ります。調味料や肉や魚の保存用に使えますよ。詳しくは鑑定してから使ってみてくださいね」
ガシッ
「シュバイツ殿下」
両肩を掴まれてブラックライオン族の顔が近づく。少し鬣が逆立っていて結構な迫力です。
「はい国王陛下」
「塩は我々内陸の人間には貴重なものなのです、海よりさらに内陸に寄ったこの地に塩があるだけで、どんなに皆がありがたいか」
「そうですね」
「この塩を我々が売りに行った売り上げの一部をシュバイツ殿下の口座に入れていきましょう」
「ちょ、それは・・・・」
「いいですか?必ず受け取ってくださいね」
「・・・・はい」
ブラックライオンの圧には勝てなかった。しくしく。
「よし、では、この塩湖のネーミングを募集するのと、塩を売るための部署を作るのと会議にかけよう」
「はい父上!」
「本当にすごいなあシュバイツ殿下は」
「いえプローモ殿下。俺あの、また・・・」
仕事を増やしてすみません。
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