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141【魚を放流するまでが復活だ!】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 「プローモ殿下も、リリュー教授を迎えに行くときに少し海で遊びましょう」

「はい!お願いします」


 俺は、プローモ殿下を伴って、宮殿に戻る。海水を採取しているうちに、下校の時間になっていたようだ。殿下は学園の寮で暮らしているが、俺の作業を見たいと付いてくることになった。


「アントニオ殿下」

「シュバイツ殿下お帰りなさい。プローモも」

「ただいま兄上」


 宮殿の湖側の出入口にたどり着く。半ズボンのままのプローモ殿下は俺と一緒にハロルドに乗せたら喜んでいる。


「アジャー島の付近で海水を採集してきました。そこから水だけを湖に流してきます」

「有難うございます。宜しくお願いします」

「あ、あのシュバイツ殿下、僕も連れて行ってください」

 ハロルドに乗ったまま、お願いされる。

「おい、邪魔するなよプローモ」

「大丈夫ですよアントニオ殿下。そうですね。この国の王子に立ち会ってもらう方が良いですし」

「じゃあ、プローモ殿下、少し前に移動してください。鞍が無くて不安かもしれませんが、ハロルドの風魔法で支えてくれます。

 とは言えしっかり手綱を持ってくださいね。俺は自分で飛びますからね」

「は、はい」


 『プローモ飛ぶよ。ちゃんと手綱を持った?』

「は、はいお願いします」


 俺と、ハロルドと彼に乗ったプローモ殿下の三人だけで、湖の真ん中に出る。

 湖底に水を転移してもいいんだけど、ちゃんと水だけを取り出して流し込めるのか、まだ自分自身で疑問に思っていた。


 ちょろ、ちょろろろー


 空中から少し垂らしてみる。

「ははは」

 なんか・・・みたい。でもそれにプラスチックのコップを近付けて受ける。

 俺が保育園から小学校にかけて、給食の時に持って行ってた、大好きだったキャラクターを集めるゲームの絵の描いたコップだ。


 ちょろちょろ


「この水があの海水ですか?」

「そう」

 くんくん。よし、磯の香りはない。

 ごくごくごく。

 うん、水だな。ミネラルの残し具合がわからないので、H2Оだけを取り出した。純水だ。おいしくはないけど飲める。


 もう一度ちょろちょろ注いでみる。


「プローモ殿下飲んでみて」

「はい」


 ごくごくごく。

「すっごくおいしいです」

 えーそうかな。

「さっき学生食堂でいただいたユグドラシルの湧き水ほどではないですけど」

「でしょ、あれには絶妙なバランスでミネラルっていうものが入っているんだけどね、海水にも同じものは入っているんだけど、めちゃくちゃ多いんだよ。ほんのちょっと入ってると美味しい水になるんだけどね、そんな微妙な分離は出来ないから・・・俺の錬金術の技術では」

「錬金術で分離してるんですか」

「そうだよ。でもま、殿下から味のオッケーが出たから流していこうかな」


 雲のない雨って感じ?

 空中から行きなりザーっと湖に振り入れる。


 今回サードボックスと名付けた空間収納から、一気に湖に落とすと、いくら湖畔に人がいないことを確認したとはいえ、湖から高波とか津波とか発生させたらシャレにならないもんね。


「わあ、すごいです。大規模な噴水って感じ」

「だな。せっかくだから遊んじゃおうかな」

 『なにするの♪』

 ハロルドは遊ぶのが大好きだ。


「霧雨とか?」


 一部はさっきのように降り注がせたままで、宮殿の向かいの湖面から三十メートルぐらいの高さに霧雨を降らせる。


 サアアァァァ


 シュバイツ湖の朝の霧が立ち込めるているのに似ているかもしれない。


 『低い雲みたいだねえ』

「そうだな。あ、あれ見てプローモ殿下」

「え?あれは、なんてきれい。

 噴水で出来る小さいのは見たことありますけど、こんなに大きいのは初めて見ましたよ」

 『わあ虹だー、本当に奇麗!』

「俺もこんなにでっかい虹を作ったのは初めて。うまくいってよかった」


 宮殿の方を見ると、アントニオ殿下も両手を振って喜んでいるのが見える。


「んじゃ、いつものパターンだけど歌おうかな」

 『やったー』


 今日はミニギターを肩から掛けて、歌う。

 水の女神様の歌と、大地の女神様の歌。


 すっかり、ハロルドも歌うのが好きになっちゃってるんだよ。

 そして気が付くと、プローモ殿下も歌ってる。


 一人でも多くで歌うと楽しいよね。


 すると湖の縁に沿って草木が生えていく。緑色の美しい縁取りが出来る。

 このまま、オアシスっぽくヤシの木が生えたらいいななんて思ってたら、本当に生えてきた、なんて。

 アティママ神(おば)様のおかげでしょうね。


 ほら。


 『ほほほ、カンがいいのう』

 空中に出てこられたけど、今回は透けているから見えない人もいるかも。

 『ほれ、こっちも持ってきてやったえ』

 もちろん水の女神さまも来てます。

 いつも二人でいらっしゃる。仲の良い姉妹だ。


「シュバイツ殿下、ここここの方々は」

「見えればわかると思うけどね、こちらが大地の女神アティママ神様、こちらが水の女神ウンディーナ神様。多分、宮殿から見えているのは、アヌビリだけ。ワンチャン、アントニオ殿下も見えてるかもしれないけど、内緒だよ」

「はい!」


 とりあえず美しい女神達に近づいていく。

「叔母さま方、来ていただいてありがとうございます」

 『われらはいつでも可愛い甥っ子に会いたいからのう』

「甥っ子?」

「そうらしいよプローモ殿下。で、ウンディーナ神様その水球は」

 『必要じゃろ?』


 青い髪の叔母さまは某テーマパークにあるでっかい地球のようなサイズの水球を三つほど持ってきている。中には様々な魚が泳いでいて、まるで水族館の淡水コーナーの水槽の様だ。

「その魚、美味しいんですか?」

 『もちろんじゃ、生食は今一つじゃが、塩振って焼いたり、煮たり炊いたりすると良い。お主が前にやってた、むにえるってのもイけると思うぞ』

「ははは、またご馳走しますよ」


 おいしい恩恵に思わずニコニコとプローモ殿下を振り返ると。


「あ、あ、ありがとうございます」

 満面の笑み。ちょっと笑うと猫みたいで可愛い。

 『ほほほ、こっちのライオンの子もメンコイの』

 でしょ。

 叔母さまから見たら老人だって幼子かもしれないよな。

 『そんなことはないえ』

 あ、心を読まれた。

 『ほほほ』

「じゃあ、魚たちを放流してもらいましょうか」

 『いくえ』

「はい、お願いします!」


 三つの水球が静かに湖に降りていく。


 『ライオンの子よ』

「はい!」

 『ある程度増えるまでは、竿で釣るんじゃよ、四~五年後には網で採っても大丈夫じゃろうが、先に冒険者ギルドで係か漁協のようなものを作って管理が必要じゃ』

「分かりました!

 僕の仕事をこれにしようかな」

「そりゃいいじゃないか。民の食料を守るのは大切なことだよな」

「はい」


 湖に浮かんでいる俺たちの足元では魚が元気に泳ぎだした。


 パシャッ


「あっちで跳ねてる」

 プローモ殿下が指さす。

「ほんとだ!」


 岸を見るとずいぶん水位が上がってきている。そろそろいいかな。

「じゃあ、宮殿に帰ろうか」

「はい!」


 宮殿の前にたどり着くと、国王陛下も出てきていて、俺の前に跪いていた。


「シュバイツ殿下」

「国王陛下、頭を上げてください」

「あなた様は本当に素晴らしい方だ」

 いきなりなんだろう。

「この枯れた湖を浄化するだけでなく、このような素晴らしい恵みまでもたらしてくれるとは。なんて感謝をすればいいか」

「恵みって、魚は俺が持ってきたのではないですが」

「わしは見えましたよ、あのおかたは女神様でしょう?」

「見えたのですか!良かったですね」

 その方が、俺だけの手柄じゃなくていいよな。


「父上、僕は直接お話が出来ました!

 それで、シュバイツ殿下は、なんと女神さま方の甥らしいですよ!」


 わーそれ口止めするの忘れていた!


「あ、だからスピリッツゴッドなんですね」

 きらきらした目でこっちを見てきた。

 興奮した様子で話すプローモ殿下を国王陛下とアントニオ殿下が温かい笑顔で見てるので、その雰囲気に水を差すのをあきらめた。


「それに、女神さまから魚を獲ることの注意もいただきましたよ」

「そうか、それを踏まえて、乱獲や密猟などが無いように色々整備する必要があるな」

「そうですね、頑張ってください」

 仕事を増やしてすみません。


 すっかり虹も収まった湖は水位も上がって、青空が映っている。

 海と違ってこっちもまた良いな。


 黒ライオンの王様がまったり釣りをする姿が見れたら平和でいいだろうな。

 俺は手持ちのルアーをいくつかと、バス釣りセットを三セット渡す。


 受験が終わったら行こうと友達と約束して、買ったまま部屋に置きっぱなしになってたはずのものだ。なぜか母さんのウエストポーチから出せる。


 母さん、ひょっとして、東京の俺の部屋にはもう何も無いんじゃないですか。



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