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139【短期留学生】

いつもお読みいただきありがとうございます!

このページでゆっくりしていってください~♪

 朝、目が覚めると爽やかな風が通路側の窓から入ってきた。スマホを見ると六時だった。習慣ってすごいねと言いたいけれど、アラームが鳴ったんだ。


 俺が滞在している宮殿は、三階建ての棟を真ん中に二階建ての建物二つがコの字型に並び、その中に泉が常にあふれて、小さな水路に流れている中庭がある。


 その中庭に面した一階の部屋を借りていた。 

 マツと来たときは、水がほとんどなくて黴臭の漂う、どんよりした庭だったが、昨日湖が浄化されたことで、水栓が開かれたのだろう。


 水路を挟んで追いかけるように配置された花壇も、そのうち育って花開くかもしれないけど、今見たいなあ。


 大理石の(ような)床が冷たくて気持ちいい。

 真ん中の噴水へペタペタと裸足で歩いていく。


 真ん中の噴水は四つの黒い美しい大理石でできた冠を載せたライオンが四方を向いて、口からきれいになった水を流している。ただ、みんな顎から腹にかけてが水垢で残念な様子だ。


 俺はその四つのライオンに浄化魔法をかけ、水垢をきれいにしながら、水路ごと浄化していくと、底にこびりついていたコケもはがれて流されていく。


「・・・このコケ、どこかに行ってしまうよね」

「はい、宮殿外の水路へと出て行ってしまいます。排水口が詰まる心配は不要ですよ」

 後ろから侍従長の声がした。

「フロアさん、おはようございます。きのうは醜態をさらしてしまって」


 風呂に浸かったところまでは覚えていて、気が付いたら、豪華そうなパジャマで天蓋付きのベットで寝ていたんだもんな。

 この王都は昼は暑くて夜型らしいから、油断していたぜ。

 着せてもらったパジャマのまま、中庭で噴水で遊んでいるガキ。


「おはようございます、シュバイツ殿下。なんの、あなた様はお小さいですからなんてことはないですよ。

 私も、翅の生えた精霊様のお世話が出来て大変光栄です」

「ははは」

「それに、そのパジャマはアントニオ殿下のおさがりですが、シュバイツ殿下が着られると、また全然違う衣装に見えてしまいますね」

「違う衣装?」

 全体的に白いシルクでできた、ノースリーブで膝上丈の裾がゆったりした上着には、ツタのような縁取りがウエストぐらいまでグラデーションに描かれている。

 ボトムも膝上のゆるゆるパンツ。


 アントニオの小さい時ってどんなだったんだろう、黒い猫?いや見たかったとは言いませんよ。


「ええ。まさしく精霊か妖精って感じですよ」

「なるほど!」


 たしかに、レリーフの壁の合間にある、磨かれた大理石に写る俺のシルエットは、仲良しの精霊ちゃんに見えるかもしれない。でかいけどな。


「じゃあ精霊(緑色)ちゃんになったつもりで、花壇をきれいにしようかな」

 “もちろんてつだうわ”

 緑色ちゃん付き合い良いぜ!


 “あたしもあたしも!”

 “ひかりも、いるだろう!”

 “みずはまかせて!” 

「よし、いくよ~」


 翅を羽ばたかせて低めに飛びながら、回復魔法をまき散らす。

 すると、アニメで見たような、草花の高速再生が始まる。ああ、いくつかは低木だったんだ。それが切り株の小さなベンチみたいだと思ってたけど、根っこのほうは生きてたんだね。


「なんて可愛らしいのかしら」

「なんとこれは・・・宮殿の庭に精霊がいらっしゃる」

「父上、シュバイツ殿下は精霊の王子ですよ」

「これを見ると、精霊の存在を信じるしかないな」

「シュバイツ殿下の周りに、いろいろな光が飛び交っていますね」


「おや、国王陛下、アントニオ殿下、ローナ王女殿下も、皆さんお早うございます」

 二階の通路から、庭を見下ろす皆さんの高さまで飛んで行って空中から挨拶をする。


「「「おはよう、シュバイツ殿下」」」

「「おはようございます」」

「まあ庭がよみがえって」


「宮殿のことは後回しにしようと思っていたのですが。ありがとうございます」

「初めまして、ベージュさん。大変でしたね。もう大丈夫なんですか?」

「おかげさまで、十分休ませて頂きました。これも殿下のお蔭です」


 ローナ王女をはじめ王族はブラックライオン族だが、ベージュさんは普通の金色のライオン族の獣人さんだ。

 誘拐未遂犯のガト達に拘束されて、数日厨房の地下に入れられていた、ライオン族のベージュさん。可愛らしい金色の丸い耳と、一つにまとめた三つ編みの金髪。清楚な雰囲気のロングスカートからはライオンらしい尻尾が見える。


「気にしないでください。この庭もね、俺が奇麗になった所を今すぐ見たくなっちゃって、勝手にしたことなんですから」


 さて、俺も着替えて朝ごはんをもらいに行こうかな。

 夜型のお城だけど、涼しい朝も動く。お昼寝が長いらしい。


「本日は、学園に行かれるとか」

「はい、昨日地質学者の先生とはあまりお話しできませんでしたし、気になることもありまして、本日は授業があるとか。授業も少し見学させていただくそうなので楽しみです」

 ガスマニアでは化学はあくまでも魔法属性に紐づくところしか学ばない。


 朝ごはんを食べ終わって軽く顔を洗い、手持ちのガスマニアの帝国国立学園の夏服に着替える。この服なら黒目黒髪がなじむよなと思うんだけど、シュバイツとして出席するので、緑銀髪で緑色の目のままだ。耳も尖がって翅つき。

 まあ、正直慣れてきた、うん。顔の前に鏡をぶら下げるわけじゃないからね。自分に見えなければいいんだよ。


 コンコンコン

「おはようございます」

「おはようシュンスケ」

「おはようございます、レオラ新隊長、アヌビリさん」


 レオラさんは挨拶で寄ってくれたらしい。

 初めに会った騎兵隊長さんは、別部署に移動。すみませんなんか俺のせいで?

 いや、勉強不足だから自業自得なんだ。と俺と同じ十九歳なのに、新婚で新騎兵隊長のレオラさんが笑っていた。

 ライオン族は一夫多妻制を推奨されているらしく、初めに結婚するのも早い。羨ましいぜ!


 でもこの国の現王様は、王妃様ただ一人を愛されていて、病気で亡くされてからは独身を貫いている。跡継ぎにはアントニオ王太子がいて、彼には弟もいる。それに王様自身の兄弟姉妹が多いからこれ以上王子は不要らしい。先代まであった後宮も解体済みだそうだ。一途な王様もかっこいいっす。


 アヌビリさんは今日も俺がプランツさんから借りていた、ロードランダの夏向けの侍従服に軽鎧の上から身を包み、左側に剣を履いた姿だ。

 この世界の冒険者は、かっこいい臨時の護衛や侍従ができるのがすごい。そういう依頼を受けるための、講習を受けて取得する免許もあるらしい。

 そんな彼は王宮の中の侍従用の空いてる部屋で泊まったらいいのに、寝る時まで肩の凝った場所は御免だと、冒険者ギルドのそばにマンスリーの賃貸を劇団のみんなで借りたんだって。そこから馬で出勤してくる。


「では、シュバイツ殿下行きますよ」

「はい」


 俺もハロルドを出し騎馬で学園に向かう。眩しいな。学園に着くまでメジャーリーグの帽子を被っちゃう。つばのでっかい大人用のを後ろで飛ばないように調節する。

 本当に明るい緑色の目は赤道直下の日差しがきつい。


 母さん、子供向けのグラサン頼んでいいですか?


 三日月湖の東翼側にあるトルネキ王国国立学園は、学校の規模や学部の設定などはガスマニアとほぼ同じ。

 ガスマニアのボルドー第二皇子殿下は魔法学部のSクラスへ最終の2学年在籍していたらしい。

 国際関係が良好になったからこそと言ってたな。平和で何よりだ。


 で、件の地質学者さんは、都合の良いことに魔法学部の教授だった。


「空と大地、緑と水を知ることは、自然が持つ魔力のもととなるマナを知り、人が持つ魔力のオドとの対話をよりスムーズにし、魔法の威力あげ、行使をしやすくなるのである」


 階段教室の、後ろで、ひっそりと講義を聞く。今日の授業は俺と同じ全魔法学部の全学年の特別授業だった。俺がいるから・・・。そして、通路を挟んで別のブロックの後ろの席には、他の教授や講師が並んで座っていた。


 リリュー フォン カオン博士は、ロムドム団のカランさんと同じリカオン族の女性だが、四十前で僕っ娘のリカオンさんとは全然違って、落ち着いた理系の学者だ。眼鏡と白衣がお似合い。


 講義を聞いていて、今更だけど、人に内包しているのがオドで、自然から取りこむのがマナ。

 地竜たちがアナザーワールドで無意識に振りまいているのはマナ・・・。うん、違いが分かんない。


「かつてこの大陸は、水と緑あふれるマナの豊かな環境であったが、水の中には水草や魚介などが住み、そこからもマナが発生する。

 しかし、二百五十年前のある日、ここよりさらに西の方から流れてくる川の流れが止まり、もちろんその川の支流も止まってしまったために、草木は枯れ、砂漠となり、生き物も絶えていった。残念ながら、砂漠という自然からはマナが発生しない。

 時折地殻変動で見つかった鉱脈の鉱石からわずかに発生するのみだ」


 うんうん、マナはマイナスイオンみたいなものだ。森や海などに多くある。だからマナが多すぎて魔力を体に蓄えた魔物が発生するわけだ。魔力の多すぎる自然には魔物が多いのだ。


「川が枯れ、流れ込むマナが急激に減った湖も、自浄作用がなくなり、不浄な汚染が進む一方だった。それを昨日、ロードランダの王子がたった一人で浄化してくださったのだ」

 そう言ってリリュー博士が俺を指し示す。


 キャーやめてください~

 って心の声は聞こえないよね。


 階段教室中に俺への拍手が鳴る。

 皆立ち上がって。


「シュバイツ殿下有難うございます」

「暑い国で水分補給や空調の水が足りなくて大変だったんだ」


 そりゃよかった。


 学生は半分獣人、半分人間族だ。エルフはいない。

 エルフって暑いところ苦手なのかも。商売には来るようだけどね。


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